この素晴らしい世界であなたに幸福を! 作:エリス様にはやんでれの素質があります
1、女神アクアの襲来
それはキャベツ収穫クエストの宴会の夜。
何時もの日課であるエリス様との会話をするために念を送っている時に起こった。
『──!』
「んー? 何かノイズのようなものが……」
『───! ────!』
「何か回線悪い? これに回線あるのか知らんけど……というか何か話し掛けてきているような」
『無視すんな!』
「おおう!?」
ノイズのようなものに意識を向けた瞬間知らない女の声が脳細胞を駆け巡った。
『あっ! やっと繋がったわね!? ちょっと? このアクア様が直々に話し掛けてあげてるんだからさっさと耳を傾けなさいよ!』
あ、頭が……っ!
エリス様の染み渡るような優しい声じゃない。脳が震える衝撃が永遠に続くような……気持ち悪い……
『ちょっと!? ナニ吐きそうになってんの!?』
「おまえの、せいだろうが……!」
誰だか知らんがせめて声量? を抑えろ!
『なに声量? ……あっ』
あっ、って言ったぞ。
『……コホン、初めまして佐藤和真さん』
急に脳全体が震えて破壊されそうな声ではなく、優しく全身に伝わるような声に変わった。
『ちょっとした手違いで声を脳だけに集中させてしまった事は謝りましょう。でももう大丈夫、この癒しを司る女神アクアの権能に触れたあなたは少しずつ、とは言わず既に元気ハツハツになっていることでしょう』
「今手違いって言った?」
『言ってません、必要な事でした』
この謎の声の主、嘘を付いているのでなければ女神アクアといったか。
確かに身体は万全な状態、何なら朝起きたときよりも元気な……おい。
息子まで無駄に元気になってるんですけど!?
『えー? それは知らないわよ。ただ元気で正常な状態に戻すってだけだし……もとからエロイこと考えてたんじゃないの?』
「んなわけある……か……」
頭を過ったのは昼間の事、クリスのぱんつをスティールした時の事。
確かにエロかった。罪悪感とかシュチュエーションも相まって大変興奮した。
『あんた最低ね』
うるさいわい! しょうがないだろこの世界に来てからまだ一回もまともに処理できてないんだから!
『まぁ、あんたのシモの事情なんてどうでもいいのよ、本題に入るわ』
その前に何でエリス様に繋げようとしたらアクアサマ? に繋がったか教えて欲しいんですがね。
『それも含めて説明するから安心しなさい。……まずは、エリスから何を貰ったか私に教えなさい』
何を貰った? 転生特典の事か?
『そう、それよそれ。というか念話の端々から畏敬の念が一切感じられないんですけど? 私女神様よ? エリスなんかとは比べ物にならないくらい凄い女神様よ!?』
「はぁ……」
『今呆れかえった!?』
何でもいいから話を進めて欲しい。
何で俺がアクアサマに転生特典を教えなくてはならないのか。というかそっちに記録とか残ってないのかよ。
『……そりゃ当然あるわよ?』
じゃあそっちで確認すればいいんじゃないですかね?
『いいから教えなさい! エリスの身にも関わってくるんだからね!? それにこの通話もあと数分しか使えないんだから!』
エリス様の身に?
どうも胡散臭いが、啓示を飛ばせる時点で神様なのは確定か。
仕方ないので教えることにしよう。
俺がエリス様に望んだものはエリス様からの加護だ。
特別な力は必要ない、生まれ変われるのなら自分の力で頑張ってみたいから。
エリス様と相談して、それでも規則で何かを渡さなければならない。力があったとしても大変危険な場所にそのまま送り届けるのは反対だと言われならばと
応援していて欲しいというわがままを形に変えたのがこの転生特典で俺の
まぁ、最初は気が動転しすぎてエリス様が欲しいとか言ってしまったんだけどそれは言わなくていいだろう。
『加護……? 加護…………加護?』
なんだ? 文句でもあるのか。
『いやホントにそういうの望む人っていたんだーって』
そこはかとなくバカにされてる!?
『それで、加護の内容は? 神によって付加するものが違うから聞いておきたいんだけど』
えっ? 内容って……まずこの『天啓』だろ?
そして加護だから幸運値の数値の上昇があるって言ってたような……
『あのエリスの加護だしね』
あとは……エリス教徒のかける回復魔法等の効果増幅、幸運の関係する行為の成功率上昇……後はこの世界の何処かに居る筈のエリス様の力を100%引き出せるとかいう人物を見つけ出したら凄い力を与えられるとかなんとか……他はなんだろ?
『え? それだけなわけ無いじゃない! 仮にも女神の加護、それも直接本体に会ってのものよ?』
そんなこと言われても実感出来るのがそれだけなんだから仕方ないじゃないか!
こっちに来てもう二週間以上経ってるんだぞ!
『もういいわこっちで勝手に調べるから!』
調べるって一体何を……エンッ!?
身体中が何かにまさぐられているような感覚!?
『ふむふむ、成る程? ……え? なにこれ……エリス? 何してるのよ……というかやっぱり……こことここにロックかけてーっと』
なに!? 何が起きてるの!?
クッソ男が奇妙な快感に身悶えする姿なんて誰も望んじゃいねぇぞ!
声出したら隣の冒険者にしばかれるし我慢するしかねぇ!
…………っ!
……っ!!
『はい、終わったわよ』
…………
『……あのー? 佐藤和真さーん?』
はっ!? 余りにも気持ち悪すぎて気を失っていた……
『失礼ね、水の女神であるこのアクア様が直々に身体を調べてあげたのよ? 身体の中の老廃物なんて完全に浄化されるし血液なんてさらさらよ!』
それは地味にありがたいな。
『と、言うことで佐藤和真……カズマでいっか、カズマの身体をくまなく調べたところとんでもないことが分かったわ』
とんでもないこと?
もしかして……俺には眠れる力があってそれは時と共に覚醒するとかか!?
『そんなものはないわ』
知ってたけど、もう少し期待させてくれませんかね。
『いい!? あなたがエリスから授けられた加護はねぇ! 実は───』
うん? 声が消えていく?
『あっ、時間みたいね……残念だけどまた力が貯まるまでしばしのお別れみたい』
ちょっと待って!? 声が遠くなってるのは分かるけどその気になる部分を先に教えろ!!
『仕方ないわねぇー、じゃあ教えてあげるけどこのエリスの加護は加護じゃなくて……』
完全に声が消えた……嘘だろ!? 一番気になる部分だけお預け!?
おい! おい! ふざんけな! しっかりと結果を伝えろ気になるだろうが!
2、真・癒しの女神
気を取り直してもう一度。声が届くように祈りを込めて念を送る。
『お疲れ様です、サトウさん。お久しぶりですね』
久しぶりっていう程じゃ無いと思いますが一昨日ぶりですね。
『そうでしたか? 私としてはもう長くお話ししていないようなそんな気持ちでしたよ?』
はは、そう言って貰えると嬉しいですね。
俺との会話を楽しみにして貰えているみたいで。
『いけませんか?』
……こうもストレートに言われると、たとえリップサービスだとしても照れてしまう。
『……少し待ってくださいね?』
どうしたのだろうか? 言われた通り待ち続けて1分程経ってようやくエリス様の声が届いた。
『サトウさんの身体から、私以外の神力の痕跡が見付かりました。何か心当たりはありますか?』
心当たり? 正直心当たりしかないが?
隠す必要は一切無いので正直に伝えようとするが……出てこない。
何でだ!? あの神の名前が一切出てこない! というか何があったかすら念を送れていない!?
『……言えませんか?そう、ですよね……私の信徒でも無いのに秘密を暴こうなんて……』
違うんです! 言いたいけど言えないんです! どうか伝わってくれ!
いや待て、伝え方を考えろ。
状況的にあの神がいらんことしたのは確実、多分自分のやったことをエリス様に気付かれるのを嫌がったのだろう。
なら初めからそう説明しろや!
落ち着け、切れるのは後だ。
何があったのかを伝えることは不可能、誰がそうしたのかも無理、なら……
エリス様。
『はい?』
身を案じる。
『片言?』
調査……これはいけるのか。
つまりそういうことです!
『……成る程、今サトウさんの魂にアクセスしようとしたらロックされていて弾かれました。何処かの邪神か悪魔がサトウさんを誑かした、と考えましたが神域の神のみ。少し考える必要がありますね……でも一先ずは』
急に胸の奥が熱くなったように錯覚する。
どろっとした熱の塊を心臓に流し込まれたような、けれど不快感は無い。そんな感覚。
『この下手人がどうやって私のサトウさんに手を出したのかは分かりません。ですがせめてものプロテクトとして私の力で更に固く、ロックの掛かった上からですが固めました。次に干渉してきた時にこのロックが解かれるか壊されるかした時……私に伝わります』
何か大変なことになってきたぞ……
『ふぅ、一先ずの対処は終えました。非常に腹立たしい事ですが現状これ以上の事は出来ません日をかけて毎日ゆっくりと解析することになります』
エリス様でもそれ程時間が掛かるんですか。
『力及ばず……無理矢理してしまうとサトウさんに悪影響がでてしまいそうで……少しずつ私の力で染め上げていくのが一番かと』
マジか……あの神実は凄いやつなのか?
言動はふざけてたけどそれも計算の内、とかか?
『不安になる気持ちも分かりますがこの私が加護を与え続ける限り、必ず悪影響を与えないと約束します。ですので……』
エリス様の声色が変わる。
硬く、皆を導く指針になる女神の声から……不敬かもしれないが一人の少女としての柔らかい声へ変わったと思った。
『あなたのお話しを聞かせてくれませんか? あなたの声で、あなたの言葉で、あなたの物語を聞かせてください』
どこまでも純粋な乙女のようなそんな表情を幻視する。もしかしたら天啓から通じて本当に見えているのかもしれない。
俺は息を整えて、この2日間の出来事を話し始めた。
念話ではなく声で、毛布を被り出来るだけ声量を抑えて。
届けば良いなと願いを込めて話を紡いだ。
女神様に嘘が通じるか分からないのでありのまま、でも出来るだけ格好が付くように言葉を選んだ。
レスバとかには自信があるのだがこういう語りとしての自信は正直に言って余り無い。
自分語りでしかないこの話もエリス様は相槌をうってくれて話しやすくしてくれる。
「と、長かった異世界生活もようやくここまで来ました。キャベツ討伐報酬もどかりと入る予定ですし、やっと冒険者らしい姿になれそうです」
『それも全てサトウさんが諦めずに頑張ったからですよ。途中であったぱ、ぱんつを盗んでしまった件はいただけませんが……後でしっかりと埋め合わせをしてあげてください』
「うっ、も、勿論ですよ……ははは」
『サトウさん?』
どうにか苦笑いで誤魔化す。お詫びと言っても何をしたら良いんだろうか。
今度装備を買いにいく時にクリスも誘ってプレゼントでも買ってやるか?
『それは良いですね! とても喜ぶと思いますよ』
おっと、思念が漏れてしまっていたらしい。
だが、偶然とはいえ女神様からのお墨付きを得たのだ。これ程心強いことはない。
明日の報告を楽しみにしておいてくださいね!
『はい! 楽しみにしていますね?』