リコリス・ディフェンダー ~リコリスを守る者~ 作:RA-MSR
「一条、ここを頼む。」
「司令、何処に?」
「野暮用だよ」
緊急車両を使い向かった先は、旧電波塔だった。
ゆっくりと、ある場所へ向かっていた。
夕焼けがきれいだ。と、そう思ってしまう。
その先に見たものは、吉松氏の遺体と、助手が倒れている姿だった。
その隣には、ミカの姿がある。
一足遅かったようだ。
まぁ、私が手を下すよりは、大人がけじめをつけるほうがいいのだろうが。
「お別れを済ませたのか?ミカ」
査子に気づいていたのか、振り向かず告げるミカ
「シンジのこと、頼めるか?」
頭を撃ち抜かれながらも、血を流し続ける吉松
「本当に、狂ってたのか。吉松は…」
アラン機関を盲信していたがための結果か。
その姿を見て、吉松の胸の中に、千束の心臓がある事はすぐに解った。
「解った。心臓循環器外科の医師らを、聖〇〇医科大学病院に集めている。そちらで措置しよう。ただ、吉松の血液型によっては処置に時間がかかる。」
「頼む」
「…5分程度で、回収チームを寄越す。それまでに、別れを済ませてくれ。」
そう伝えると、査子は司令部に連絡し回収チームを送るよう指示する。血液凝固阻止剤も忘れずにと。
一人にしてやろう。そう思い、その場を後にする。
しかし、ふと違和感を覚えた。
周りを見渡すが、なにか変だ。なんだ、この嫌な感覚は。
「はっ、延空木の航空障害灯が、ついてないだと!司令部!」
『一条です』
「延空木で何が起きている!」
『5分前に突如、主電源が落ち延空木が停電しました。現在確認中です。非常用電源も立ち上がりません。展望台デッキの状況は不明。DAアルファー1が、真島と交戦アルファー2が負傷、エンジェルが真島と交戦中とのこと。なお、アルファーチームはエレベータの予備電源で降下中』
「旧電波塔にヘリを寄越してくれ。それと、みのりのチームを呼んでくれ。鳳の進捗はどうだ?」
『8割の撤去は終了したとの報告が上がっています』
「時間がないぞ。急げと伝えろ。まだ、延空木に居る医療チームは救護活動中だな?」
『数名は病院に同行しましたが、現在も救護中です』
「緊急手術が必要なやつが行く、受け入れ体制を整えるように通達」
『了解』
「よし、これでなんとか持つな。搬送調整班!この子を頼む。これで終わりか?」
SDの一員として様々な医療研究を支援してもらっていた一人の医師、世界戦場に渡るほどの外科の名医でありアラン機関にも招致されたが断った一人である。元国境なき医師団の一人。しかし、唯一SDに来た理由は、査子の一言だった。
【人のために尽くすのは、他人のためではない。自分のエゴだ。やりたいことをやる。それだけだよ】
それに共感してSDに登録したのがきっかけだった。
「本部より通信!1名、重症者が来ます!」
有名人は暇なしか?まぁ、有名人になったつもりはないが。
簡易手術室を出ると、3名の少女の姿が見えた瞬間、無意識に走り出していた。
「これは、どういうことだ?」
フキが見た景色は、まるで野戦病院だった。
「この子か!ストレッチャー!」
「おい、何をする!」
突然出てきた男性に罵声を浴びさせるフキ
「素人は黙ってろ!ここからは私達の戦場だ」
初めての災害医療現場を目の当たりにするフキ
男の声で、医師・看護師と書かれた人たちが、サクラを囲む
「止血帯用意して!左脇!と右腕!」
医師の手で、左側腹部皮下を指触したが、弾丸はなさそうだった。
「腹部の弾丸は抜けているようだ。すぐに止血オペをするぞ。電源はあと何時間持つ!」
設備班がすぐに反応する
「1時間が限界です!」
「すぐにオペ室へ!輸血の残りは!」
看護師が、DAの制服につけてあるblood typeタグを見つける。
「2500です!」
「足りるか…やるしかないか。とにかく、止血だけでも行う。応急オペ後、帝都医科大学付属病院に搬送準備!」
大人たちがサクラに対して、医療処置を行う姿を呆然と見るフキ
「こいつらは、いったい…」
DAからは、救護班を送るとは言っていたが、普段は応急処置程度でサクラは助からないと思っていた。
が、目の前には医師らが数名、看護師に至っては十数名いる。
サクラが助かるかもしれないという、気持ちと、こいつらはいったい何処から湧いたという、疑念が渦巻いていた。
周りが暗くなる中、延空木は、静けさが漂っていた。
ヘリに乗っていたのは、みのりの救助隊精鋭3名と、みのり本人そして査子だった。
延空木のヘリポートについたのは、ヘリを呼んでから30分後の事だった。
電源が止まってから35分が経過している。
「司令は司令部にどっしり構えてなきゃだめじゃないんですか?」
「良いんだよ!さて、確認だ。今、この下では第2ラウンドが始まる可能性がある。千束の心臓もそろそろ限界だろう。結果がどうあれ、敵味方関係なく戦いが終わり次第突入、救助活動を実施する」
救助隊精鋭の一人は、災害派遣医療チームでの現場を経験した外科医を連れてきている。全員には防弾ベストを着用させ、さながら戦場に赴く衛生兵にも見える。
延空木の非常用階段から、室内に入るとき、銃声が鳴り響く
「始まったか、司令部。鳳の進捗は?」
『先程、報告があり撤去完了と通信がありました』
よしっ。真島よ、お前のバランスの定義を変えさせてもらう。立っているのと崩れているのでも、バランスはいいだろ?
銃声が始まってから、10分以上は経過しただろうか、未だに拳銃の音が鳴り響いている。
「大丈夫ですか?爆発音も聞こえますが」
救助隊の一人が、心配そうに問いかけてくる
「安心しろ、というのも気休め程度にしかならんが。ここまで、流れ弾は来ない」
そして、銃声が単発・一定間隔になる。
「よし!行くぞ!足元に注意しろ!」
入った時は、既に銃声は止まっており、陰にはたきなの姿があった。
「みのり!救助!」
BolaWrapのケーブルを持つたきなの姿が露になる。
「たきな!そのままだ!絶対に離すな!」
「ぬぅぅ…」
みのり含む救助隊3人が、ワイヤーロープを持つ。
「たきなさん!離して大丈夫です!治療を受けてください。ロープ救助!対角線上にロープを張って、降下救助!」
「千束ぉ!」
「たきな!大丈夫だ。あとは任せろ。司令部!千葉西からドクターヘリを要請!」
『司令部了解。ETA20分』
「BolaWrap固定、救助ロープ固定完了!ロープ降下始めます!」
「絶対に落とすな!」
「降下開始、1m!2m!3m!--」
ロープ降下を始める救助隊、そして千束のところへ着く
「千束さん!聞こえますか!」
声をかけるが反応がない、すぐさま救助縛帯を取り付ける。
「よし、上げろ!」
みのりと、救助隊そして、査子で千束を引き上げる
無事安全地帯まで、釣り降ろし外科医が千束の容態を見る
「大丈夫です。肩の銃創に弾はありません。この子は運がいい。動脈も傷をつけていません。このまま搬送します」
「よしっ!たきな、あなたも一緒に病院で治療を」
「…」
完全に放心状態に査子が活をいるれる
「たきな!」
ビクッとし、査子を見る
「おまえが、シャキッとしていないと、誰を千束を見てやれるんだ?」
「…そうですね」
はぁ、とため息をつき、屋上のヘリポートまで行くのだった。
その後の話だ。
吉松から摘出した心臓は、生理食塩水にて厳重に洗浄した後ミカに手渡した。
千束の手術は、クルミが手配した病院で行う予定だったが、搬送した千葉西病院で人工心臓の摘出及び移植術を実施した。
が、経過観察中に突如千束が失踪。
喫茶リコリコのメンバーが、慌てた様子で私のところに来た。が、真実は教えなかった。
失踪直後、拘束はしたのだが、延命ができたのだ。自由にしてやろうと思い。
1か月間千束には、同行する専属の医師をつけた。
その医師は、サクラを救った医師だった。
「足立先生、もう大丈夫だよ?家に帰ったら?」
MINIに荷物を積んだ車で、二人旅をしている
「なんだ?おっさんと一緒じゃいやか?」
「だーってぇ~、食事制限とか、うるさいしぃ。特に、注射だけはもうトラウマなんですよぅ」
簡易血液検査キットを使いながら、経過観察中だったりする。
血一滴だけだぞ?という、顔をする。
本当は、ベッドに括り付けたいぐらいだ。
「諦めろ。こっちだって、自由に動けるよう、取り計らってるんだ」
「それは、そうなんですけどぉ~…これ、いつまで続くんです?」
「ん?やっぱり、俺といるのはいやか?」
「そういうつもりはないんですけど…。乙女の時間ていうやつが…」
「あと、3日だ」
「え?」
「あと3日で、経過観察を終了する。よかったな」
「な、なんで?急に?」
「ん?言ってなかったか?あれから、1か月が経つ。もう、十分だろう」
「…ぃいやったぁ~」
「やっぱ、おじさんではだめか」
「花の女子高生ですよ?」
「来年卒業だろ?」
「ん~、卒業の概念あるのだろうか」
「なんだ?留年か?」
「そ、そんなわけないじゃないですかぁ…たぶん」
「はは、怪しいもんだ。でも、お前さんと一緒にいた1か月、中々有意義だった」
「先生…変なもの食べた?」
「んなわけあるか」
「でも、私も楽しかった。先生」
「どうした?」
「千束を楽しませるなんて、先生もやるなぁー」
「…おぅ」
ニヤァと笑う千束
「やめなさい、その顔!」
「はぁ~い」
むすっとした顔をする
「どうした?」
「どこか、カメラとか、ネットの無いところありませんかね」
「ん~宮古島かな。あそこは、まだネット回線もないはずだ」
「お~。いいねぇ!そうしよう!」
その後、の話はまぁ、君たちにはわかるだろう。
さて、DAは散らばった銃の回収を行っているようだ。
SDはというと、緊急事態宣言を行ったため、衆議院が総辞職した。
衆議院選挙の裏操作を行い、ほとんどの議員は変わらずの状態になった。
しかし、アラン機関に関する者やSDに対して否定的な議員さんにはご退場頂いた。
SDの立ち上げ後、人員増強を行いDAとためを張れるような状態まで行った。
「さて、今度は何をしようかね」
「司令は、どっしり構えていてください」
「暇なんよ。優秀な部下がいるとね」
「それが、一番の幸せなんですよ。気づいてください」
「そうなのかねぇ~」
SDの施設が入ったビルの屋上で東京の風景を眺めながらつぶやくのだった。
Fin
これで、この小説は完結となります。
皆様が楽しんでいただければ、作者として光栄であります。
次回作、リコリコ+GATEの小説を作成しておりますが、今しばらく
お時間を頂ければ幸いです。
リコリス・リコイルも終わり、脱力感がありますが
皆様のやりたいこと最優先で、人生を全うできるよう心からお祈りいたします。
作者より