転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第九話 お前これから奴良組な

 

 

 

 ゆっくりと意識が戻ったそこにあったのは見知らぬ天井だった。

 よく泊まりに行く奴良家でも、自分の家でもない。アルコールのような薬草のようなとても渋い匂いがしていて、少しだけ心が落ち着くように感じた。

 

 

「いでで……」

 

 

 起き上がろうとしたが身体中に激痛が走った。主に首から右腕にかけて。よく見れば包帯が何重にも巻かれており、また薬を塗っているのか薬草の香りがツンと鼻にきた。

 どこだろうかここ。奴良組の……どこか。ええと、薬草とかに優れている妖怪って誰だっけ。いや、初期からいて、男前な容姿をしていることは分かっているんだ。ただ名前が出てこない……。

 

 再び起き上がろうとするが激痛のせいで呻くだけしかできない。

 左手は自由に動かせるので天井に向かって無意味に伸ばしてみた。倦怠感が強い身体はその動きすら簡単には出来なかったが。

 

 不意にバシャンという大きな音が聞こえてきた。

 何かが落ちたような音だ。無理やり音のした方へ顔を向けると、そこにいたのは涙目のリクオだった。後ろには見知らぬ妖怪たちもいる。護衛かな。

 あとリクオが持っているのはタライだろうか。床が水浸しになっているが気にせずリクオは特攻してくる。

 

 

「かなちゃ……がなぢゃっっ!!」

 

「りくおっ────いでででで!! ちょっ、のるなのるな!!」

 

「がなぢゃん!! よがったよぉー!!」

 

「り、リクオ様!? 流石に娘の布団の上に身体ごと乗られては怪我に障ります!」

 

「うっ ごめんなさい」

 

「ううん。だいじょうぶだよ」

 

 

 泣き喚くリクオを嗜めたのは烏天狗だった。その後ろからやってきたのは気難しそうな顔をしている男。……そうだ、思い出した。鴆だったな。

 

 あれ、そういえば俺何で怪我して────。

 

 

「っ! そうだ、りはんさんっう。いでで……」

 

「アホか! 無理やり立つ馬鹿が何処にいるってんだ! おい無理すんじゃねえ。水飲めるか?」

 

「うっ……」

 

「だいじょうぶだよ。ぼくがいれたからね! はねははいってないよ!」

 

「あぁ? おいこらリクオてめえ俺が怪我人相手にドジするわけねえだろうがゴファ―!!!」

 

 

 感情が爆発したのだろう。

 派手に吐血した鴆によって、俺は全身のほとんどが血に濡れてしまう。それにギョッとしたのはリクオ達だった。

 

 

「うわぁー!!」

 

「何してるんですかぁー!!?」

 

 

 阿鼻叫喚とはこのことか。

 普通だったら俺もパニックの一員になってるはずだけど周りが落ち着いてないと逆に冷静になるというか。烏天狗って間近で見ると本当にぬいぐるみみたいなんだよなぁ。モフモフしてそう。触ってみたい。

 

 

「おう、無事に目が覚めたか……ああいや、無事とは言えねえ状況だな。派手にやったなぁ鴆」

 

 

 襖を開けてやってきたのは無傷に見える鯉伴さんだった。

 生きていたのだ。あの時死ぬはずだった人が、無事に生きていた……!

 

 

「おとうさん!」

 

「りはんさっ────!」

 

 

 待って。なんか鯉伴さん怒ってない?

 笑顔を浮かべているのは確か。でも何だろうか。美人が怒ると怖いというか。とても寒くなるというか。背筋が凍るような感覚に襲われる。

 

 

 

「カナ────この馬鹿野郎が!」

 

「あぅ」

 

「自分の力にも目覚めちゃいねえ筈のお前が何故あそこまで無茶をした。カナが死んでいたらリクオが悲しむんだぞ!」

 

「そ、れは……でも、りはん……さんもあぶなかった。りはんさんがしんだらリクオがかなしむんだから!」

 

「そうだ。情けねえことにどっちも死んでたかもしれねえんだ。あの時の俺は何も出来やしなかった。腕の中で冷たくなっていくカナに俺はみっともなく取り乱しちまった。あの時どうすりゃあよかったのか今でもわからねえ。……俺が言うのもあれだがな。カナ、お前はまだ弱い。戦う術も知らねえお前が衝動的とはいえ守ろうと動かなくても良かったんだ」

 

 

 大人として子供に説教するように。

 命の大切さを説く。自分も危ない目に遭ったけれど、それはそれ、これはこれだと怒られている。

 

 一言二言言い切った鯉伴さんがこちらを見下ろした。

 

 腕に巻かれた包帯と、首に巻かれたモノ。

 よく見れば鯉伴さんも俺と似たように巻かれている。もしかして鯉伴さんもまだ完治してないのか?

 

 いやでも死んではいないんだ。怪我をしていても生きているなら何とかなるはずだ。だから俺はこれでよかったんだと胸を張れるはず。鯉伴さんをもっと上手に救えたらよかったという後悔は残るけれど、それは贅沢な悩みだ。

 

 彼を救えてよかった。それだけで満足しよう。

 

 ふと、鯉伴さんが俺の頬を軽く触ってくる。

 鴆がタオルでもってふき取ったがまだ残っているかもしれない血に濡れた顔だが、鯉伴さんは少しだけ痛々しいように俺を見た。

 

 

「……痛いか?」

 

「ううん。りはんさんをまもれたあかしだよ。いたくても、いたくない」

 

「ハハッ、カナは強いな。……ありがとなカナ。お前のおかげで俺は生きてる。カナ、お前が生きててよかった。カナは俺の命の恩人だ」

 

 

 でももう危ない真似は済んじゃねえぞ。危険だと分かっていてもむやみに飛び込むな、と釘を刺される。

 それに何とか頷いてリクオを見た。

 

 

「かなちゃん。……ぐすっ……いきててくれて、ありがとう!」

 

「う、ん……」

 

「こんどはぼくが、かなちゃんを……おとーさんもみんなもぜんぶ、まもるよ!」

 

「うん」

 

 

 覚悟を決めたようなリクオの顔は、漫画で見たものに似ていた気がした。

 

 

 

 

 

 

「ああそうだ。カナ」

 

「はい」

 

「お前さんこれから奴良組の傘下に入れ。これは確定事項だから拒否権はねえぜ」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

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