転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第十四話 だれ?

 

 

 

 

 

 朝からリクオの様子がおかしい。

 昨日の妖怪を否定していたあの騒動でも元気なかったけれど、慰めた時には調子を取り戻しいつものリクオに戻ったと思ったんだけどなぁ。

 

 授業の時も心ここにあらずって感じだし、いつもなら元気いっぱいに楽しんでいた体育でさえボーっとしたまま。

 

 

「リクオ、ゆっくり歩いてるけどどうしたんだ。このままじゃバスに遅れるぞ?」

 

「……うん。大丈夫。カナちゃん先に行ってて」

 

「リクオ?」

 

 

 帰り道でもトボトボとリクオにさりげなく話しかける。

 そうすると彼は俺からそっぽを向いてこちらを拒絶した。

 

 どうしたのかと足を止めて彼の顔を覗き込んだ。体調が悪いわけじゃないよな。熱とかあったとしても奴良組の妖怪たちが気づくだろうし絶対に休ませるはず。

 思わずリクオの額に手を当ててみるが平熱だ。でもリクオは俺にされるがままで抵抗しない。何かを悩んでいる様子なのは分かるけれど……。

 

 

「……もしかして、昨日の事?」

 

 

 肩を揺らしたリクオに、何かあったのかと問いかけた。

 話を聞くにどうにも妖怪の悪い部分を知ってしまったらしい。ぬらりひょんの無銭飲食とか、人を怖がらせることとか。流石に妖怪が人を殺戮するとかそういうやばい話は聞かなかったみたいだけど、それでも失望したらしい。

 

 

「妖怪と人間が共存してもいいことなんてあるのかなって思っちゃったんだ……」

 

「んー。そっかぁ……」

 

 

 妖怪の悪さってある意味生存本能というか、人間が食事をするような行為に近いからなぁ。人の畏れを糧にするような妖怪もいるみたいだし。それを真っ向から否定するわけにはいかない。

 

 

「……リクオはそれが嫌なの?」

 

「嫌というか、情けないんだ」

 

「情けないか……本当にそう思う?」

 

「えっ?」

 

「私は妖怪だよ。人間だったけど、今は妖怪だ。人間みたいに暮らしてるけどね。……それでも情けないって思う?」

 

「そんなっ! カナちゃんは全然違うよ!」

 

「一緒だよ、リクオ。私も同じように妖怪なんだ。……つまりね、リクオの言ってる意味は妖怪が全て情けないって言ってるのと同じ。人間で例えるなら、良い人も悪い人もいるけど『人間は全員悪い奴!』って言ってるようなものだよ」

 

「うっ」

 

 

 まだ小学生だし、視野を広げて全てを見通すだなんてこと出来るわけがないと思うけれど、リクオを立派な総大将にするにはちゃんと知ってほしいと思った。いつか人間を殺すやばい妖怪についても理解してほしい。人間にも人を殺すやばい奴もいるんだ。

 

 妖怪だって同じく、人にとっては良い妖怪も悪い妖怪もいる。

 それら全てを受け入れて、そういう生き様を理解してこそ寄り添えるのかもしれない。まあある意味無差別殺人犯みたいな妖怪がいたとして、そんな奴と一緒の家に住みたいとかいう人はいないだろうから、そこらへんは考えなきゃいけないけれど……。

 

 

「妖怪ってね。人間以上にいろいろいるんだよ。そういう妖怪たちを受け入れ、理解し……従えてこそなんじゃないかな。情けないって思うのは分かるけど、弱い妖怪だっているんだし、人によっては怖いのもいるんだから……全部が全部、そうじゃないと思うよ」

 

 

 俺がそう微笑みながら言うと、リクオは眩しそうな目でこちらを見る。

 夕焼けが眩しいわけじゃないのに、とても遠くを見るようにこちらへ顔を向けていた。

 

 

「……カナちゃんは凄いや」

 

「えっ?」

 

「僕よりもずっと妖怪の事を考えてる。なんだかお父さんみたいだ」

 

「う、うーん。鯉伴さんみたいだって言われても……私はそういう器じゃないよ。ただリクオより勉強する必要があったから詳しく知ってる方なんだ。だからリクオもこれからだと思うよ」

 

「これから?」

 

「そう。リクオも私もまだまだ子供で……成長期なんだから。今の自分が駄目だから駄目だーって諦めないで、総大将になるんでしょう?」

 

「…………」

 

「リクオ?」

 

「ごめんカナちゃん。カナちゃんが言っていることは分かるよ。でも……清継君たちが言ってる話も本当だった。家で見てきたものもそうだった。それに僕がカナちゃんみたいに立派に考えて出来るのかも不安で……ちょっと考えさせて……カナちゃん、バスに乗ってよ。僕は歩いて帰るから……」

 

 

 俺から離れ、バスに乗ることなく立ち止まるリクオ。

 それに何も言えず苦笑してしまった。

 

 戸惑っているリクオに俺が声をかけても仕方がない。こういうのは自分が納得してこそだろう。

 それに意地というのもある。総大将になるのを辞めるとは言ってないし、リクオの心は折れていないから大丈夫だとは思うけど……。

 

 

「……分かった。ちゃんとまっすぐ帰るんだよ。リクオ」

 

「うん」

 

 

 リクオの頭を撫でると、彼が今日初めて笑ったような気がした。

 バスの扉が閉まり、動き出す。それを遠くから見守るリクオに俺は深く溜息を吐いた。

 

 席に座り込むと誰かが隣にきた。女子で……ええと、巻ちゃんだっけ? 前の席からこちらへ顔を覗き込む鳥居ちゃんの姿も見えた。

 

 

 

「ねえねえそういえば聞いた? あの伝説って続いてるらしいよ!」

 

「はい?」

 

「カナ知らないの? 伝説だよ。妖怪伝説!」

 

「妖怪伝説?」

 

『ああ、もうそこまで進んどったか』

 

 

 不意にジジイの声が頭のなかで響く。

 何かを悟ったような声色だった。

 

 ジジイが知っているということは、つまりこれは────原作の場面か?

 

 心臓がバクバクと動きながらも鳥居ちゃん達を見た。

 その顔は引き攣っていたかもしれない。巻ちゃんが「カナ、大丈夫? なんか顔青いよ?」といって背中をさすってくれたから。

 

 

「あ、のさ……妖怪伝説って何なのか聞いてもいい?」

 

「いいけど。大丈夫? もしかして酔った?」

 

「大丈夫だって! それで妖怪伝説って何?」

 

「う、うん。ええとね……確か子供が何人も行方不明になったんだって!」

 

「まだ警察とかも原因が分かってないって話だよ」

 

 

「それって……」

 

 

 もしかして妖怪のせいじゃないのか? 

 おいジジイ、お前何か知ってるな?

 

 

『まあ気にするな。どうせすぐわかることじゃろうて』

 

 

 とぼけた様子のジジイに後で心象風景のあの場所に行ったら絶対に殴ろうと心に決める。

 そんな俺とは違い、皆がひそひそと楽しそうに妖怪伝説について話していると清継がドヤ顔で口を開いた。

 

 

「おい君たち!!! 待ちたまえ!!」

 

 

 髪の毛を整えつつも叫ぶそれに、皆が彼を見た。

 

 

「妖怪など実際にはいない!! ボクが研究で────」

 

 

 不意に見えたのは、何かの影。

 

 

『そら、来たぞ』

 

「えっ」

 

 

「キャアアアアアア!!!!」

 

 

 

 誰かの叫び声が聞こえる。

 バスが揺れて座ったままでいるのが難しくなった。周りが暗くなっていくことに怖がる子供達の泣き声が聞こえる。

 

 身体が宙に投げ出されるような感覚に襲われ、思わず妖怪化しようとしたが、何故か人間の状態のままでいることにギョッとした。

 

 

『大丈夫じゃぞカナ。力は使わずともこのまま様子見しとくのが吉じゃ!』

 

 

 どういうことだよと叫ぼうとして、尻から思いっきり地面に叩きつけられたせいで痛みにもだえ苦しむ。

 周りを見ると阿鼻叫喚の地獄みたいだった。洞窟の崩落事故だろうか。怪我をしている子供達。大人は気絶し倒れている。

 

 そうして感じたのは、周囲に漂う嫌な妖気。

 

 

「巻ちゃん、鳥居ちゃん。私の傍から離れないで」

 

「えっ?」

 

「ちょっと何よ。どういうこと?」

 

「いいから。崩落事故があったんだと思う……周りが瓦礫で押し潰されてるから、ふとした衝撃でまた天井から瓦礫が落ちてくるかも」

 

「ひっ!」

 

 

 脅しながら言うと彼女たちは安易に動き回ることを止めた。

 とりあえず俺の後ろに居てもらう。自分の力は発展途上。戦うことすらまだできやしない。俺のランドセルの中に入ったクマ太郎ことテディベアのつぎはぎ人形を入れ物にして自分が入って動かすことはまだ出来ない。でも、妖怪だから人間よりは頑丈だ。

 

 クラスメイト達の身代わりとなっていけばきっと……もしかしたらいつか奴良組の誰かが来るかも……?

 

 

「三代目はいないのか……いや、全員殺せばいい……」

 

 

 聞こえてきた声に眉を顰める。

 懐中電灯を持った島君が明かりをつけて奴らの姿を見てしまった。

 

 見たことのない妖怪たちに困惑し、人間じゃない化け物だと知ると一斉に怯えてしまった。泣き叫び助けを求める子供たちの声に気を良くした妖怪たちが襲い掛かろうとする。

 

 それを見て、逃げることなんで出来るわけがない。

 

 

「殺すならまずは俺からだ!」

 

「カナちゃん!?」

 

「なになになに!? 何が起きてるの!? あいつら誰!?」

 

 

 そんな彼らの前に立つ俺に妖怪たちは嘲笑うだけ。

 嬲り殺しにでもする気か。それとも見せしめに殺して恐怖を味わい、全員を楽しみながら殺すというのか。こいつらって奴良組に居たか? ちょっとわかんないや。

 

 皆の目があるから妖怪にはなれないけれど、身体は皆に比べて頑丈な方だから少しは耐えきれるはず。

 

 大丈夫。

 リクオがちゃんと来るはずだから。あいつならきっと……。

 

 

『来ると思うか? カナが意識をほんの少し変えてしもうたというのに?』

 

 

 ジジイの声が聞こえた瞬間だった。

 瓦礫の隙間からぴょんっと何かが入り込むのが見えた。それに気を取られた刹那、妖怪に攻撃される瞬間を狙い俺の前に出て庇う小さい姿。

 

 俺に似た、火を纏った幼女。小さな火の玉が一つ。

 目をパッチリさせ、俺に向かってビシっと敬礼する女の子。

 

 そんな見たことのない幼女の姿にギョッとした。

 

 

「おまたちぇちまちた。ごちゅじんちゃま!」

 

「だれ!?」

 

 

 あれ、リクオは?

 

 

 

 

 






次回、リクオ視点から入ると思います。よろしくお願いいたします。


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