転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第十六話 それは式神であり器であるモノ

 

 

 

 妖怪たちは人間を殺そうと躍起になる。しかしそれを押しとどめるのが小さな火の少女。身体中から火を発生させ、頭の髪の毛がそのまま真っ赤な炎になったような幼女が人間を守る盾としてそこに存在する。

 

 その容姿は明らかに俺にそっくりで────。

 

 

 

「待って誰!?」

 

「家長さんの妹?」

 

「ちょっと待ってなんか頭燃えてる!!? 水何処!!?」

 

「あああああ違う違う! 私の妹じゃないから!! み、見知らぬ他人。人……見知らぬ妖怪みたいな!」

 

「妖怪みたいな!?」

 

 

 混乱しすぎて頭が回らない。

 何とか否定するがそれでもうまく誤魔化せたような気がしない。悪い夢だと思いたいが絶対にこれは現実だ。

 

 というか何が起きた?

 舌っ足らずだけどさっきこいつ俺のことを「ご主人様」って言ったよな?

 

 

『お前さんが以前言っていたじゃろう。身代わり人形とな』

 

 

 不意に聞こえてきたのは、ジジイが得意げに言う声。

 それに耳を傾けているとまたも妖怪の斬撃がぶち当たりそうになり、死にかける。

 

 しかしそれら全てを幼女が自身の身体でもって受け止め、火として燃やしていったのだ。

 意味が分からない。幼女が頬に怪我を負った瞬間それが燃えて傷すらなくなるんだぞ。最強かよ。なんだこいつ不死鳥か?

 

 

『不死鳥ではないわ。先ほども言った通り身代わり人形じゃよ』

 

「だから一体何だよそれ……」

 

『陰陽師なら式神、電話であれば端末。料理を入れるための器。ノートであるところの一枚の紙切れといったところじゃな』

 

「紙切れ? ……ってか、おい待てクソジジイ。あの子はお前が作ったのか。俺が知らない間に?」

 

『……お前さんが寝ている間にちょちょいっとな?』

 

 

 このクソジジイ後で絶対にぶっ飛ばす!!

 ってか、じゃああれっていわゆる式神ってことかよ!!

 

 

『うーむ。合ってはいるが少し違う。幅広い範囲で言うならそうじゃが……あれはワシらの身代わり人形じゃよ。ワシらの残機ともいうが、あれがワシらの怪我や死の危機から身代わりとなってくれるもの。代わりに消滅するがまあそこは気にせんでもよいじゃろうて!』

 

「いや気にするわ!!」

 

『何を言うか。むしろあれは最強の器じゃぞ? 今回は軽いお披露目といったところじゃがな。アレを使った修行もしてもらう。ちゃんとカナに習得してもらうためにな』

 

「はぁ?」

 

『鯉伴と同じく、ワシも子を甘やかしてはならぬと気が付いてなぁ……。お前さんが持っているクマ太郎のぬいぐるみより適正率の高い器なんじゃよ、アレは。まあ一度器として中に入り込んだら最後、外に出た瞬間すぐさま消える儚いモノじゃが……あのチビらの材料は人を食らう妖であったからな。死んでも構わぬじゃろ?』

 

 

 今回は見せただけ。何かあれば自分が表に出るからというような身勝手さを感じ取った俺は怒りに震えた。

 

 いやマジで、あんな可愛らしい幼女をわざわざ殺すような真似出来るわけねーだろうが!!

 意味が分からなくてブツブツ呟きながら震えていると、気がふれたとでも思ったのか巻ちゃんや鳥居ちゃんが背中を撫でてくれた。

 

 というか、寝ている間ってなに? あれってどういう状況で作られたの?

 ああもう、俺が知らない間に何してたんだあのクソジジイ。後で問い詰めなきゃ……。

 

 

「どうしたのカナちゃん? やっぱりあの子のこと知り合い?」

 

「アッ! ち、違うよ!」

 

「あの子……人間じゃないよね。やっぱりこれって夢なのかな。私達より小さい子なのに守ろうとしてくれてる」

 

「そ、そうだねー」

 

 

 巻ちゃんたちの声に引き攣りながらも頷いておく。

 周りは多分夢だとか思っているのかもしれないが、その方が都合がいいだろうか。

 

 今ならあの幼女がどうにかしてくれるはず。今の俺が妖怪になっても周りにバレる可能性が高いからちょっと無理だし。

 

 

『ああ。やはりまだ耐久度は低いか……』

 

 

「あっ?」

 

 

 

 聞こえてきた声に何があったのかと頭を上げると、幼女が勢いよく燃えていた。

 先ほどよりも身体中を包み込むほどの熱量。その余波で周りにいた小さな妖怪が悲鳴を上げながら消滅するが……。

 

 

 

「ごめんちゃい。ごちゅじんちゃま……」

 

 

 

 聞こえてきた声がかすれて消える。

 そこに会ったのは火の粉の残骸。儚い夢のように終わっていったそれに、俺は唖然とした。

 

 燃えた跡しか残らないそれを見た妖怪たちがうすら笑う。

 

 

 

「ようやっと消えおったわ……」

 

「三代目は何処じゃ……」

 

「どうせ逃げられぬ。全員殺せ」

 

 

 

「っ────!」

 

 

 

 

 聞こえてきた声に背筋を震わせる。

 奴らは本気で俺達を殺そうとしている。殺意はこちらを射貫いた。こうなればもうバレてでも良いから妖怪になって抵抗した方がいいんじゃないだろうか。

 

 そう思って警戒し構えると────不意に、何処からか月の光が空から降り注いできた。

 トンネルの外側から崩れていくような気配がする。これはきっと……。

 

 

『まあ、意識を変えたというてもあのリクオはカナを慕っておったからな。総大将の跡目が好いた女を救うために動かぬわけないじゃろうてなぁ』

 

 

 えっ、じゃあ何でさっき脅すようなこと言ったんだよ。

 

 

『今はまだ、というだけの話じゃからな。このワシがカナと同化しておるんじゃから……いつかリクオに見捨てられる可能性だってあるんじゃぞ。覚悟はせよと爺ちゃんは言いたかったんじゃよ』

 

「どういうことだ……?」

 

『知らぬ方が身のためじゃが。……まあ、後で話してやろう』

 

 

 なんだか意味深なことを言うジジイに眉をひそめた。

 そうしている間にも月明かりが大きくなっていくのを感じる。

 

 

「おほ……見つけましたぜ若ァ!! 生きてるみたいですぜぇ――!!」

 

 

 聞こえてきたのは青田坊の声だろうか。

 上を見上げればそこにあったのは百鬼夜行の姿。妖怪たちに囲まれる小さな総大将。

 

 

 

「……ガゴゼ。貴様……なぜそこにいる?」

 

 

 人間じゃないリクオだ。

 初めて見た妖怪姿のリクオ君。雰囲気とか姿とかたくさん変わっているけれど、根っこの部分が変わらないような感じがする。

 

 でもって、今はガゴゼに対して怒りに満ちているみたいだった。

 

 

 

「よかった……無事で。後ろに居てくれ、カナちゃん」

 

「う、うん」

 

 

 微笑んだリクオの姿はとても頼もしい。

 ガゴゼに立ち向かうのだって、他の妖怪たちにやらせようとはしない。妖怪としての力の使い方を分かっているのだろう。

 

 まだまだ未熟な俺とは違い、本能で理解しているのか。

 

 

『未熟とは違うぞ。ワシが制御しているだけじゃよ』

 

 

 ……マジでこのジジイと話し合う必要が出てきたな。

 いろいろ好き勝手されるのも嫌なんだよ。制御してるって言っても、俺がやりたい時にやれないようじゃ意味がないだろ。

 

 お披露目とか言いやがった、あの幼女についてもな。

 

 

『うむ。そこらはもちろんいうつもりじゃったよ。リクオが覚醒した日にな』

 

 

 ああ、もしかしてジジイのそれって全部知ってるからこその余裕なのか?

 俺は漫画の知識を持ってないから、ジジイだけが知っている知識だからこそ好き勝手出来るのだろうかと、少しだけ不安に思ってしまった。

 

 

 そう思っている間にも状況はいろいろ変化していたらしい。

 

 

 

「フ、フハハハハ! ザマぁ見ろ!! こいつらを殺すぞ!? 若の友人だろ!?」

 

「えっ」

 

 

 考え事をしていた俺に近づいてきたのはガゴゼそのもの。

 人質どころか本気で殺そうとしてきたらしいそれに、一瞬でもいいから奴の身体の中へ入り込んで隙を作ろうと思った。

 

 けれどその刹那、前へ躍り出てきたのは小さな影。

 勢いのあるがままにそいつはリクオに斬られていく。

 

 

「情けねぇ……こんなんばっかか。オレの下僕の妖怪どもは! だったら────」

 

 

 畏れを抱いたのは誰か。

 覚悟を決めたのは、誰か。

 

 これが始まりなんだと理解した。

 物語の本当の意味での始まりだと────。

 

 

 

「オレが三代目を継いでやらあ!! 人にあだなすような奴ぁオレが絶対にゆるさねぇ!」

 

 

 

 切り捨てられたガゴゼに恐怖を抱いたのはその一派たち。

 周りにいる子供たちすら、リクオの言動に尊敬の目を向ける。

 

 

 

 

「世の妖怪どもに告げろ!! ────オレが、魑魅魍魎の主となるっ!!」

 

 

 

 

 きっとこれが、リクオの覚悟だ。宣誓でもあったのだと思う。

 あんなにも不安そうだったというのに、堂々とした立ち振る舞いは総大将の器足り得るもの。これで反対する奴らの気が知れない。

 

 

 

「全ての妖怪はオレの後ろで百鬼夜行の群れとなれ!!」

 

 

 

 ガゴゼがリクオの手によって倒れる。

 ボスがやられてしまったからか、その手下たちたる妖怪の何人かが逃げようとしていくため、そんな奴らをとっ捕まえようと────。

 

 

「あれ……」

 

 

 待ってあれ鯉伴さんじゃね?

 逃げようとした妖怪の一匹を蹴り飛ばしてるけど……。あっ、こっち見たことに気づいて片目をウィンクしてきた。

 

 

『ああ、牽制してきたか……』

 

 

 

 なにが?

 

 

 

 

 





明日やる気あったら書きます。
やる気なかったら明日は書きません。すいませんまたかって感じで気にしないでください。
何時間もかけて書いたというのに、続き投稿した途端に低評価(しかも一話で)きて心がグサッとなっただけなので。こんな軽いことで書かなくなるメンタルで申し訳ありません。

次話書くとしたらジジイと孫のお話です。フラグ回収をある程度しちゃいます。
それからまた鯉伴やリクオのお話かな。
明日書かないとしても火曜日はメンタル回復してると思うので、頑張ります。
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