転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第一話 ソレと目が合ったせい

 

 

 

 気がついたら死んでいたけれど、見たことのある幼女に生まれ変わった俺はこれまた見たことのある『家長カナ』という名前だった。

 

 でもその漫画うろ覚えなんだよなぁ。どうしようかなぁと思ったのはつい最近だった。

 ヒロインの一人だけど傍観してればいいかと思っていたんだ。だって俺は前世では男だったけどTS転生しただけのヒロインもどき。

 

 両親から怪しまれないためにも男口調とか改めたんだ。まあそれでも男の子っぽい部分は治らなかったが。この世界は漫画じゃないし、現実なんだ。

 本来生まれるはずだった家長カナちゃんには本当に申し訳ないけれど、いろいろ考えていくうちに本来のカナちゃんの意識を奪ったというよりは、前世の記憶を思い出したからこうなったと感じるようになった。いや、実感するようになったかな。

 

 俺がいる時点でこの世界は漫画ルートから破綻しているようなもの。

 

 幼稚園に入ってから出会ったリクオのことを弟みたいに可愛がっていくうちにそう思うようになった。リクオの家に遊びに行くことになって見たのが明らかに人じゃない生き物ばかりだったけれど、それをリクオはとっても楽しそうに紹介してくれたし、それが自分の家なんだって自信満々に言っていた。

 遊びに来た時に挨拶してくれたリクオの両親は息子のことをとても優しい目で見つめていたのが印象的だった。可愛いよな。分かるよ。

 

 だから余計に実感したのだ。

 漫画のリクオは俺の知る『リクオ』じゃない。

 家族のことが大好きで、妖怪の事も大好き。それが俺の知る奴良リクオなんだ。

 

 小学校になったらどうなるかは分からない。朧気ながらも覚えている漫画の一話部分。リクオが人間だと意地っ張りになりながら妖怪部分を拒否するような場面ぐらいは覚えている。

 

 いつかはそうなるかもしれない。

 でも今のリクオは妖怪を家族のように思い、楽しそうに自慢するとっても可愛い幼児である。俺よりちっちゃいし。弟みたいに扱うのもしょうがないだろう。

 

 

「かなちゃん、きょうはどこいくの?」

 

「ようちえんのうら! あそこにいっぱいかぶとむしいるんだ!」

 

「かぶとむし!」

 

 

 夏真っ盛りの時期だった。

 目をキラキラとしたリクオの手を引っ張り歩き始めた。中身はリクオより年上だとしても肉体が精神に影響を受けるのか今の気分は探検しに行く冒険隊みたいな感じだった。

 リクオもそうなんだろう。小さな口で一生懸命「あのね! かぶとむしみつけたらね!」と皆に見せびらかしていっぱいお世話するんだーと話していた。可愛いだろう俺の弟分なんだぞ。

 

 もしかしたらどっかにリクオのお世話役が隠れているかもしれないけれど、そこはまあ仕方ないということであまり周りを見るのは止めようと思う。前世一般人かつ今もただの幼女な俺に分かることなんて何もないのだから。

 

 そう思っていた時だった。

 

 

「かなちゃん!?」

 

「ふぇ────」

 

 

 土だった場所が、急に穴が開いたみたいに落ちて行った。

 幼稚園児の誰かが作った落とし穴にはまったのかと思ったけれど、異様に深いそれは人間が作れるようなものじゃないと思えたのは、きっとはるか上空から響くリクオの泣き叫ぶ声のせいだろうか。

 

 

「かなちゃん!!」

 

 

 上空に光が差し込んでいるというのに、何故か周りは真っ暗。

 触った感触から俺の周囲は土に覆われているというのは分かった。ただ酷く腐った臭いがしたのだ。雨に濡れた土のような感じではない。まるで何か、肉が腐り落ちたような嫌なものだった。

 

 足を捻ったのか痛くて立てない。

 でも必死に空へ向かって手を伸ばしていた。リクオにも届かないソレに、必死に。

 早くここから出なくてはならないと思ってしまったから。

 

 奴良組の誰かがリクオの異変に気付いて対処しているのか、リクオの声が遠ざかる。

 泣き叫ぶそれが遠くなったせいで、自分が一人きりになったように感じた。どうしたらいいのかと空を見上げるのを止めて周りを見た時だった。

 

 

『────』

 

 

 ソレと、目が合った。

 土だと思ったそれは、土じゃなかった。

 

 これが何なのかは分からない。ただそれが俺の目を通して見ているというのが分かる。

 冷や汗が流れているけれど、それを拭う暇がない。

 

 死の恐怖が鮮明に思い出せてしまった。

 前世で思い出すつもりもなかったそれは、一人っきりで寂しい孤独と恐怖と、誰にも助けてもらえないんだという感覚に────。

 

 

『────』

 

 

 ふと、何かに頷けと言われたような気がした。

 無意識にそれに肯定した自分がいた。

 

 すぐにそれはやってはならない行為だと自覚し────。

 

 

 

 

「大丈夫かい、カナちゃん」

 

「あっ……」

 

 

 

 不意に恐怖が消える。温かい手が俺の背中に回って抱きしめられたのが分かった。

 手を伸ばしてくれたのは、リクオのお父さん。鯉伴さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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