転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第3章 共犯者は牛鬼
第十九話 協力者か、敵なのか


 

 

 

 奴良リクオが総大将として跡を継ぐという件についてはいったんの保留となった。

 

 それは身体的な幼さ。精神的に未熟な部分があること。

 否定的な意見も多数見られること。

 そして────家長カナという異物の存在だった。

 

 家長カナは妖怪ではない。

 一部の妖怪たちは彼女を同じ存在と認め受け入れているが、奴良組幹部ともなればその存在の異様さに気づく奴も増える。

 

 その中に真っ当に評価する者はどれだけいることやら。

 牛鬼は静かに周りを見つめ、心の奥底でその激情を隠した。

 

 家長カナの存在は奴良リクオにとって害悪となり、将来的に総大将が確定しているため洗脳し操られている可能性。

 そんな馬鹿馬鹿しい意見が総会の最中に飛び出してきたこともあったが、それは否定しよう。

 

 あの家長カナは奴良鯉伴を救い出した命の恩人。

 そんなまどろっこしい真似をするぐらいなら、鯉伴すら見殺しにしていることだろう。

 

 ならば、家長カナは危険人物か?

 それについても牛鬼は否定した。畏れすらまともに使いこなせないアレに負ける要素などない。我らが大人であれば奴は幼子である。

 

 家長カナは脅威となり得るか?

 それを牛鬼は────。

 

 

『お前さん、牛鬼……じゃったな?』

 

「…………」

 

 

 一人でいるところを狙っていたのか、縁側に佇む小さな炎たる家長カナがそこにいた。

 彼女が牛鬼に向かって笑いかける。それを警戒して────しかし彼女は『身構えるでない。ワシは敵ではないんじゃぞ?』と軽やかに言った。

 

 通常であれば警戒すべき相手が軽やかに言った内容なのだからと、冗談でとらえる者。挑発だと思う者がいることだろう。

 しかし牛鬼がそれを本気で言っているように聞こえたのは、きっと牛鬼自身が奴良リクオと共に遊ぶ家長カナの成長を密かに見たことがあったせいだろうと彼自身は考えた。

 

 

「……何用だ」

 

『なに、お前さんにちょっとしたお誘いをしに来ただけじゃよ』

 

「誘いだと?」

 

『悪だくみじゃな。ワシとわるーいことせんか?』

 

 

 

 楽しそうに笑うそいつを信じていいのか悪いのか。

 

 なんでも彼女は牛鬼の企みを知っていると。

 知っているからこそ、リクオを強くさせたい。そのために家長カナ自身が悪として見られても構わないのだという。

 

 ────たとえ、牛鬼に切り捨てられても構わないのだと、彼女は言った。

 

 

『牛鬼組は奴良組に属していない妖怪どもを抑え込んでいるのじゃろ? 防波堤みたいなものじゃな。それを突破されては叶わぬとリクオのことを見定める気なのは分かっておるよ』

 

「…………貴様」

 

『そんな怖い顔はするな。ワシはだーいすきなリクオのために動きたいだけじゃよ。例え悪の敵として君臨する可能性があろうとも、リクオにならば倒されても文句は言わぬ。じゃから強くなってほしいためにワシも動きたいんじゃ』

 

 

 何を言いたいのかが分からない。

 理解するためには知る必要がある。

 そのため、牛鬼は彼女を排除することを止めたのだ。

 

 

 家長カナが言った言葉は信じ切れない。 

 しかし利用はできると牛鬼は判断した。

 

 だから数年の間だけでいいと心に決める。

 牛鬼は家長カナを見定めることにしたのだ。

 

 

 

 

 家長カナは脅威となり得るか?

 

 それを牛鬼は────肯定する。

 

 

 

 彼女は奴良組の内部を知っている。何が起きているのかも理解し動いている。

 異物。違和感。それら全てが理解できないがゆえに、牛鬼は彼女を脅威と見ていた。排除するべきか否かはこれからの行動次第。

 

 

 家長カナが奴良組のために動くというのなら、その覚悟を示してもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 


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