転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第二話 じわりじわりと這い寄る何か

 

 

 

 鯉伴さんに助けてもらった後のゴタゴタはあまり思い出したくはない。

 リクオが泣いて、先生たちが大慌て。穴があった場所は大人さえすっぽり入るほど深く、自然に形成されたのではないかと推測されたらしい。

 おそらくだが────通りすがりに幼稚園まで顔を出しに来た鯉伴さんが世話役の烏天狗か誰かの騒いでる声とリクオの泣いている声を聞いて来たのかもしれない。なんにせよ命の恩人であることは確かだ。

 

 何か嫌なものに襲われたような気がしたけれど、今はすっかり元気になったから大丈夫。

 鯉伴さんにさりげなく穴に何か変なものがいたと言ったけれど、「何もいねえぜ?」と安心するような顔で笑ったため首を傾けつつも受け入れることにした。

 

 奴良組二代目が来たことで『畏れ』た妖怪が逃げたのかな。

 あの時鯉伴さんにじっと目を見つめられ、探るように頭を撫でられたような気がしたけれど、多分気のせいだろう。

 

 そう思うことが出来たけれど、間違いだったかもしれない。

 

 

「……またかわってる」

 

 

 玩具部屋と呼ばれている場所。

 もっと大きくなったら自室として使うことになる部屋にあるぬいぐるみや本の位置が変わっていた。ぬいぐるみがある場所は本来棚の下に入れられていたはずだ。なのに床の真ん中に放り投げたように置かれている。本も何冊か読まれ積まれたような状態。俺がやったわけじゃない。両親もやった覚えはないという。

 

 それだけじゃない。

 俺は自覚していなかったけれど、お父さんやお母さんが言うには深夜に何度か目を覚まし寝室から出たらしい。

 

 今は両親と寝ているのでトイレにでも行っているのだろうと思われたようだけど、俺は行った記憶がない。

 ついでに長くかかり過ぎて心配になり何度か迎えに行ったけれどトイレにはおらず玩具部屋で寝ていたという話もされた。

 

 そんな記憶あるわけないのに。

 

 

(操られてる? 意識を乗っ取られてるのか?)

 

 

 ゾッとするような感覚に襲われ気分が悪くなった。畏れたともいえる。畏れは妖怪にとって一番重要なものだ。だから俺のこの感覚は敗北に等しいモノ。やってはいけないことだと分かっているけれど、恐怖を止めることはできない。

 

 自覚した翌日、リクオに会った時に思わず俺に違和感ないかどうか聞いてみたが、首を傾けられ「ないよ!」といわれた。まだぬらりひょんとして覚醒してないせいだろうか。ふくふくとした柔らかいほっぺを赤くしてにっこり笑ったその顔は可愛いけれど、今はとにかく安心したかった。

 

 リクオの家に遊びに行ってもそれは変わらず。

 ……いや、違うな。リクオのお父さんやお爺ちゃんにじっと見つめられるような気がしたけれど、嫌な感じはしなかったので放置されてる?

 

 でも妖怪に害を与える人間を見た奴良組が放置するか?

 じっと様子を見られているような気がするのは何故だ。俺の気のせいか?

 

 分からない。分からないことが怖い。怖いけど……ちょっとだけ腹が立った。

 なんでそんな意味不明な現象に悩まされなきゃいけないのか。漫画に似た未来を辿るのであればきっとこれからが大変だというのに。

 

 じわじわと何かが侵略していくような感覚。自分が自分じゃなくなっていくような感じにどうしたらいいんだろうと何度も何度も考えて────熱が出た。

 

 それにすら負けたような気になって、ムカついたのだ。

 

 

 

『随分と負けん気の強い孫じゃのう』

 

 

 

 朦朧とする意識の中聞こえてきた声は、自分の身体から出たものだった。ちょっとだけしょうがないなというような、我儘を受け入れるジジイのような声。

 

 髪の毛が揺らめいて、赤色がちらついたような気がした。俺の髪色は赤じゃないのに。

 そうして何かに沈んだような感覚に襲われる。

 

 それはまるで、全ての元凶たる落とし穴に落ちた時のそれに近い感じだった。

 

 

 

 

 

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