転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

4 / 20
第三話 理解したので暗躍に移りたいと思う

 

 

 

 まるでそれは幻のような世界。

 綺麗な花々が咲き乱れた花畑。それら全てが真っ赤に染まったような場所。

 

 花の強烈な香りとその光景。そして月夜のコントラストは見栄え満点であった。

 その中央に────俺と全く同じ顔をしているけれど、その髪色と雰囲気が異なる人物がいた。

 

 髪は血のように鮮明な赤になっていて、何故か母が気に入って何度も着せてくるワンピースを身に着けている。対する俺はパジャマ姿のまま。熱で朦朧としていた時の姿なせいか額には熱さまシートが張り付いた状態だった。

 

 現実とは思えない場所にいるせいだろうか。熱は引いており、体調も良くなっていた。

 

 目の前にいる幼女に目を向ける。

 俺と同じ姿をしているそいつは悪い存在か否か。なんとなく鯉伴さんに似た感じがするけれど……妖怪なのか?

 

 

「……だれ」

 

『うむ。まずは初めましてからじゃな』

 

 

 

 リクオのお爺ちゃんみたいな口調で話すそいつは、妖怪とはまた異なる存在らしい。こいつが言うには、事故でこうなってしまったとのこと。もう私の中に入り込んで同化してしまったということ。

 憑りついたのであれば奴良組が気づく。でも魂の底まで一つになってしまったから

 

 

『ワシも驚いたぞ。同化したせいで記憶を覗き見てしもうたが前世の記憶……それも憎きあのクソ陰陽師もどきが倒された話が物語として載っておったからなぁ!』

 

「いやまって。クソおんみょうじもどきってなに?」

 

『安倍なんちゃらじゃよ』

 

「あべのせいめいじゃん! おまえへいあんのようかいかよ!」

 

『そうじゃなぁ。平安時代に生きていたのは確かじゃが、妖怪とはまたちょっとだけ違うような気もするなぁ』

 

「はぁ?」

 

『ちいとばかし複雑なんでな。まあ妖怪から少し理が外れた怪異と思ってくれて構わぬ。平安時代はそれはもう様々な生き物がおったからのう。人と妖との境界線がないせいじゃろうな。半妖も同じく、ワシらのように人と同化した妖もどきもいたものじゃ』

 

 

 いや平安時代殺伐とし過ぎか?

 こいつお茶目なジジイを装ってるけど、この一週間味わった恐怖からして何をしでかすのか分からない。目を細めた俺に対し、真っ赤なそいつは苦笑するのみ。

 

 

「なにがもくてきなんだ」

 

『言ったじゃろうて。ワシは元々封じられた身。あの場所から動けなんだ。そこに通りがかったのがお前さんじゃよ……じゃからワシは動けるようになった。お前さんの魂と同化したことによってな』

 

「おれは……おとしあなからおちただけだよ」

 

『そうじゃな。お前さんにとっては不運な事故じゃった』

 

 

 封じられた身。あの場所から動けられなかったこと。いろいろ聞きたいことは山ほどある。それをまるでぬらりひょんのようにぬらりくらりと話題を逸らす。聞かなくてもいつかは分かると奴は言う。それがちょっとだけ気に食わない。隠し事をされているこちらとしては不安ばかりが募るだけだ。

 

 

『そんな不貞腐れてもなぁ……世の中には知らない方が良い事があるものじゃぞ? それにな、ワシの事を知ってももうお前さんから離れることは出来なんだ。ワシは孫……家長カナの半身となってしまったからなぁ』

 

「そんなこときゅうにいわれても……」

 

『大丈夫じゃよ。ワシは表立って出るつもりはない。意識はあるがまあそこは勘弁してほしいのう。ワシの力は譲り渡そう。お前さんが主導権を握ればいいんじゃよ』

 

「はぁ?」

 

『あのクソ陰陽師もどきが倒された場面を覗き見てな。ワシは気分が高揚したんじゃよ。もうスタンディングオベーション……ってやつかのう? とにかくぬらりひょん一族に拍手を送りたくなったんじゃ。よもやあやつを倒せる妖怪が現れるとは! ……とな。ぬらりひょんのファンになってしもうたんじゃよ!』

 

「あのさ。ずっとおもってたんだけど……おれ、まんがのちしきなんてないはずだぞ」

 

『忘れているわけではない。思い出せないだけじゃよ。記憶というのは消えぬからな。ほれ、忘れていたはずの幼少期の記憶をふと鮮明に思い出すことはないか? まあお前さん今が幼少期じゃから分からぬかもしれぬがな』

 

「つまりおまえはおれのちしきをちゃんとおもいだせると」

 

『そうじゃよ。お前さん……つまりワシの孫が大切な弟分のリクオ君が紡ぐ物語の結末も、まだ見ぬ未知の未来についても理解しておるよ。ワシはお前さんじゃからな』

 

 

 俺と魂を同化してしまったから、俺の前世の記憶もちゃんと理解しているというそいつに何とも言えない気分になった。もちろん目の前にいる妖怪みたいな存在に安心したわけじゃない。ただ俺を食おうとする悪意ではないことは伝わったんだ。

 

 力を譲り渡すと言ったのもきっと嘘じゃない。

 主導権を握るのは俺といっても、このジジイが隠し事をしていてそれが俺には分からないから何とも言えないが……。

 

 それと今後、俺は人間として生きられるのか不安にはなった。奴が言うには『人として生きたいなら自由に生きろ』というけれど。元に戻すことはできないと言われた。くっついて混ざり合い一つになったようなもの。二つに分かれるとなると難しく、死ぬ確率の方が高くどうしようもないという。

 

 

「そういえば、ぬらぐみにおれたちのことは……」

 

『ああ、そうじゃな。同化したあの時から奴良組が居ったら流石にバレたじゃろうが……鯉伴に手を引っ張られたあの瞬間、もうワシらの魂は一つになっていた。手遅れだったんじゃよ』

 

「ばれてない?」

 

『ぬらりひょん、および奴良鯉伴にはワシらの異変に気付いてはおるが様子見しておるようじゃ。平安時代の修羅とは違い今の時代は人と人でないモノの同化なんぞあり得ぬからな。いわゆる妖怪の先祖返りに目覚めたと思っておるようじゃな』

 

「へいあんじだいどんだけだよ」

 

『クソ陰陽師もどきが当たり前に生きれた時代じゃぞ。ワシ含め周りも似たようなもんがいるのは当然じゃろ』

 

「こっわ」

 

 

 マジでツッコミたいこといっぱいで来たけど面倒くさくなってきた。

 

 とにかくだ。もう事故が起きてしまったなら仕方ないと諦めよう。

 それに力を得たというのならやりたいこともある。リクオをサポートし、裏から支えていきたいという目標。今の俺はただのヒロインもどきであり足を引っ張るだけの存在。でもそれを変える可能性があるのなら……。

 

 あの可愛い弟分を立派な総大将に影ながら支えてやりたいと思うのは姉心というやつだろうか。

 一度きりの人生だと思ったけれど、転生して二度目の人生だ。なら好き勝手に生きようじゃないか。

 

 目の前にいる真っ赤な幼女なジジイもどきも、あの安倍晴明さえぶっ飛ばせる場面が見れるのならと笑っていたぐらいだし。

 

 

「……そういえば、まごってなに?」

 

『同化しているがワシはお前さんよりずーっと年上じゃ。ワシにとっては可愛い孫みたいなもんとして扱おうと思ってな。どうせ一蓮托生なんじゃし、孫って呼ぶのもいいじゃろ?』

 

「じゃあおれはじじいってよぶ」

 

『構わぬぞ、ワシの孫!』

 

 

 うーん本当にこのままで良いのかちょっと悩むけど、お前とか呼ぶよりはまあいいか。

 受け入れられない部分もあるし精神汚染されてるんじゃねえかって思うぐらい感情は穏やかなのが妙に気になるけれど────。

 

 

 まあ、なるようになるか。

 

 

 

 




ここまででようやくプロローグは終わりみたいなもんです。
次から奴良組とのお話がメインになります。よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。