転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第1章 人間か、妖か
第四話 現状確認


 

 

 

 ジジイ……俺の中にいる自称祖父を名乗る妖怪もどきが何故俺の意識のない間に動き回ったのかについて問い詰めると、身体がある状態が本当に久しぶり過ぎて確認する必要があったからとのこと。

 意図して怪奇現象みたいなことを起こしたわけじゃなかったと言っていた。怖がらせてしまったことは謝ってくれたが多分あれは俺の事を見定めていたんだと思う。

 

 俺がちゃんとジジイの力を使えるのか否か。

 ジジイの意と反する行動をとる場合、今こうして好意的に交流し力を譲渡という形で俺が主導権を握れるわけがないだろうから。

 多分あのジジイは一見するとリクオのお爺ちゃんみたいに一緒に居ると楽しそうとかそういう思いを抱かせてくれるけれど、裏はきっと違う。リクオのお爺ちゃんのように、仁義に背くモノに容赦しないみたいな一定の境界線があるんだと思ってる。

 

 俺がその線を超えてしまったらきっと、ジジイにこの身体を乗っ取られるかもしれない。

 まあ怪しんでいても仕方ないけれど、いろいろと思うことはあるんだ。

 

 だってジジイが言った『身体を持ったのは久しぶりじゃからな!』という言葉はつまり、俺の魂と同化したことで受肉したようなものなんじゃないかと。

 その場所から動けなかったというのは、ジジイが封印されていたという可能性があるからかもしれないし。なんとなく別作品の呪術的な漫画を思い出すんだよなぁ。

 

 封印されていたという考えが合っていた場合、ジジイが何をやらかしたのか。悪い妖怪なんじゃないのかと思ってしまう。

 

 

『カナ。あまりふかーいことは考えん方が良いぞ。ワシが嘘をつくことはない。お前さんを罠にかけてじわじわと喰らおうなんぞ考えておらんからのう!』

 

「しこうよまないで」

 

 

 お気楽な声が頭の中に響く。それに独り言を呟くが周りには誰もいないため俺をいぶかしむ人はいない。まだ熱が下がっていないから幼稚園は休みでいいと言われたので部屋の中でのんびりしているだけ。お母さんはご飯を作りに行っているので隠れて会話しなくてもいい。

 

 

「……ここらへんも、ぬらぐみのなわばりだよなぁ」

 

『ふむ、そうじゃな。深く調べればわかるじゃろ。奴良リクオが住んでおるのが本家。それ以外は傘下、もしくは貸元などじゃな。あとは土地神も含まれておるなぁ』

 

「かしもと?」

 

『賭場を担う輩のことじゃよ。奴良組という名前だけで食っていけるわけがなかろう』

 

「うーん?」

 

『しょうがない孫じゃなぁ。カナに分かりやすく言うとな。奴良組本家だけで成り立つわけではないということじゃ。つまりな────』

 

 

 前提として、これはジジイが俺の目を通し町を歩いて感じたことを話すのだという。

 

 ジジイが言うには、土地神のお布施、貸元の賭場経営における金銭など含めて本家に集められていくということ。平安時代にも商売をしている妖怪もいたから、そういうのも現代にいると。

 もちろん収入全てが本家に入るわけじゃないだろうというのもジジイは説明する。そういう裏稼業あっての縄張り意識が強く、土地神など守るべきものを守って暮らしてきただろうと。

 数百年と長く続いているのだから繋がりも広く深いだろうとジジイは話す。

 

 浮世絵町だけでも神社やお寺の数は多いからな。あとこの世界が妖怪と近しいからか浮世絵町から離れた場所だと陰陽師が目立つぐらい怪奇現象に悩まされる人が多い。

 だから奴良組がいて成り立つ平穏というのもあるのだと知った。安泰あってこそ今があるのだと。

 

 ってか何でそういうこと知ってんだよ。平安時代に生きたジジイのくせに。

 

 

『リクオの家は任侠一家なんじゃろ? なんじゃ、お前さんそこらへんは詳しくないのか?』

 

「いやこっちこそ、なんでそんなにくわしいんだよ」

 

『カナが寝ている間に調べただけじゃよ!』

 

「なにやってんだくそじじい!」

 

『安心せい。奴良組にバレるような真似はしておらぬわ。カナが寝ている合間にちょいちょいっと調べたまでの事よ』

 

「なにをしたのかふあんすぎる」

 

『爺ちゃんを信用せい!』

 

「むりにきまってんだろばーか」

 

 

 とりあえず縄張りの中にいる俺は奴良組にとって異物というのは分かった。傘下に入ってない余所者みたいな感じだろう。

 先祖返りで妖怪に近くなっているという勘違いをされているみたいだけれど、そこらへんは真実を話すつもりはない。なんとかうまく誤解したまま奴良組に近づくことは出来ないだろうか。

 

 主に、鯉伴さんを助けるために。

 

 ジジイが言うにはそろそろ時期が来るらしい。

 俺を落とし穴から救い上げてくれた恩人。リクオのお父さん。

 

 そんな鯉伴さんが殺害されるという悲惨な事件が────。

 

 

「……おれまじでおぼえてねえんだけど、ほんとうにりはんさんがさされるのか?」

 

『マジじゃよ。爺ちゃんは嘘つかんもん』

 

「かわいこぶるなよ」

 

『ぬぅ、孫が冷たい!』

 

 

 戦えるのか否かといったら無理といいたい。でもやらなきゃリクオを悲しませる。それだけはちょっと避けたい。あとジジイの秘密について知りたいし、そこらへん関わるためには奴良組に近づくのが一番良いんだよなぁ。主に安倍晴明とどういう関係だったのかについて知りたいだけだけど、ジジイは頑なに教えてくれねえし。

 

 うーん、やっぱり戦えるかどうか調べる必要があるよな。今の身体幼女だし。でも奴良組の縄張りたる浮世絵町で妖怪に喧嘩売って良いモノだろうか。いや、余所者とか居そうだからそっち狙えばいいのか?

 

 そう考えるとジジイが最初の頃に言っていた『ぬらりひょんのファン』という言葉は魅力的だと思う。思いたい。言葉の受け取り方によっては喧嘩売ってると思われるかもしれないのでちょっと危険だけれど。

 でも家長カナが「ぬらりひょんのファン」というのだ。妖怪の姿、もしくは妖怪の力を使ったままそれを言いながら奴良組と敵対する妖怪を潰す。

 俺が奴良組と敵対していないということも十分伝えられるし、俺の行動次第によってはリクオの傍にいることが出来る。まあそこは運次第だな。三代目跡取りを大事にしている様子は奴良家に行った時に感じた。鯉伴さん達だけじゃない。お手伝いさんもリクオの事を大事にしている。だから俺みたいな理解不能の人間か妖かわからない存在を傍に置こうとしないだろう。

 

 とりあえず戦力として数えられるように鍛えたい。そのためにはジジイの力がどれぐらい使えるのか確認しないといけないな。

 とりあえずリクオからさりげなく奴良組じゃない妖怪の存在を探って、そいつら倒せるか試してみようかな。本当はジジイの力なんて使いたくもないし、自分の力だけで動きたかったけれどそうも言ってられない。

 

 

 そう考えていた思考をまた勝手に読んだのか、訝し気なジジイの声が聞こえる。

 

 

『なんじゃ、奴良組の傘下に入るつもりか?』

 

「いや、おれはべつにようかいになりたいわけじゃないよ」

 

 

 第三者として関わりたいだけだ。

 あとリクオを可愛がりながら三代目総大将として立派に育ててみたい。後方彼氏面ってやつやってみたいんだよなぁ。リクオは俺が育てましたみたいな。まあ俺なんかより鯉伴さんの方がもの凄いからそんなこと出来るわけないけれど。

 

 

「あんやくするかぁ」

 

『おっ? ワシの出番じゃな?』

 

「うきうきすんじゃねえくそじじい」

 

『ワシの孫冷たすぎじゃろ。ワシと同化して妖怪もどきになって生きておるんじゃし、もう少し気楽に楽しんでみたらどうじゃ。……ああ、それにしてもカナ。お前さん自分がまだちゃんとした人間だと勘違いしておるようじゃが。そろそろ自覚しないと手遅れになるぞ?』

 

 

 

 お茶目に笑いかけたであろうジジイの声は、すり林檎をもってやってきた母の声にかき消された。

 

 

 

 

 

 

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