転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第五話 つまりゴリラになれということか

 

 

 

 

 妖怪になれと言われてなれるわけがない。

 そう思っていたけれど、ジジイがスイッチを押すような感じでその気になれば人とは全く異なる感じになる。

 

 周囲の気配が鋭くなるし、何をやればいいのか無意識に動くことができる。

 そういう細かい制御はジジイがやってくれていると話してくれた。俺は俺の思うがままに動けばいいのだと。

 

 髪の毛が血のように真っ赤に染まり、力が漲る。そこはまだいい。ただ口調もジジイみたいになってしまうのはなぜなのか。デフォか? 主導権を握っているのは俺だから、妖怪としての姿はジジイのままであり、変えられない部分もあるということか?

 まあそこらへんは後で考えようと思う。

 

 妖怪ってこう、非現実的な力が出てくると思っていたんだ。雪女が出す吹雪みたいな感じのやつ。でも出てきたのは拳。物理的に強くなった感じがする。

 試しにと夜中にこっそり外へ出てジジイのようなコンクリートも一撃で粉砕できたぐらいだしな。これ以外に何かやれそうな気はする。たぶんあれだ、制御されてるから俺には取り扱えないような妖怪としての力は隠されているようなものなのだろう。今はただ人外としか思えない物理的な力を手に入れただけ。それだけでも嬉しいもんだが……。

 

 

「うむ、なるほど。このワシがゴリラになれということか」

 

『うはは! 孫がワシの口調してて面白過ぎるんじゃが』

 

「ぐぬ……じじいめ、あとでおぼえておれ」

 

 

 妖怪姿で喋るだけだというのに、頭の中でジジイの笑い声が響く。

 例え夜中にこっそり外へ出て人間の幼女としてではなく赤髪の妖怪ロリとして食われそうになる人を救っている間にもひっきりなしだ。そろそろあの真っ赤に染まった花々が咲いている世界に赴いてジジイをぶっ飛ばしに行った方がいいかもしれない。まあでも、あそこは多分俺かジジイの精神世界だと思うけど行き方が分からねえから、いつか絶対にやるって程度に覚悟決めただけ。

 

 それと妖怪を倒してはいるが、奴良組かどうか事前に調べたり直接聞いたりしてるから大丈夫だと思う。たぶん。

 

 あと思ったんだけど怪奇現象が多い! 多すぎるんだよ!

 なんか普通に夜中に待ち歩くだけで人外共がいるのなんなんだよ。年中無休でハッピーハロウィーンってか!?

 

 とりあえず今のところ妖怪相手に怪我無く対応は出来ている。まあ不良相手に粋がるような行為だ。そこらにいる不良に勝てたからといって本物の極道相手に勝てるとは言えない。自分の力を過信してはならない。その一線だけはちゃんと見定めているつもりだ。

 

 とにかく俺がやらなきゃいけないことはある程度やった。

 あとはどう動くか。要所要所で介入という形を取れたらいいんだが、その場合リクオ達に俺の正体がバレるのは避けたい。

 

 でも無理だよな。いろいろ動いてみたけど鯉伴さんを助けるには奴良組に近づく以外ない。殺害が行われるという細かな日程すら俺には分からない。

 込み上げてくる不安だけしかない。鯉伴さんはとっても凄い人だ。この一週間で二度ほど夜中に出歩いて、妖怪たちを見ていただけ。それでもちゃんと実感するのだ。あの関東最大の任侠一家奴良組を束ねている鯉伴さんがどういう妖怪なのかも。

 

 ジジイが反対しないなら、早く動こうかと思う。

 

 

『うむ、勝手にせい』

 

 

 

 頭に響いた声に俺は頷いた。

 

 

 

 

 

「かなちゃん! おねつはもうだいじょうぶなの?」

 

「おう。なおったよ!」

 

「よかったー!」

 

 

 ぎゅっと腕に抱き着いたリクオの頭をいっぱい撫でる。本当に可愛いなぁこいつめ。

 

 

「あのね。くびなしからあやとりおしえてもらったんだ! いっしょにやろ!」

 

「うん、いいよ」

 

「かなちゃんみててね。これをねー。こうやってねー」

 

 

 よいしょよいしょと小さな声を出しながらも精一杯俺に教えようとしてくれるリクオ。

 首無といった名前に聞き覚えがある。奴良組の妖怪かな。

 ……やっぱり一人で動くのは難しいかな。でもどうしよう。

 

 

『悩む必要なんてなかろう。お前さんが信じるままに動けばいいんじゃよ』

 

 

 うるせえ。

 ……別にジジイが言ったから動くわけじゃねえからな。これはある意味ちょっとした賭けだ。奴良組に近づくための手段の一つ。リクオには悪いけど、ちょっとだけ『リクオのお友達』という大義名分を使わせてもらおう。

 

 

 

「りくおくん」

 

「なぁに、かなちゃん」

 

「りくおくんのおとうさんに、はなしたいことがあるの」

 

 

 リクオは俺の声を聞いてきょとんとした。

 でもすぐに笑って「いいよ!」といった。とても嬉しそうに言った顔に少しだけ罪悪感が込み上げてくるけれど、必要なことだとその感情を忘れることにした。

 

 

 

 

 

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