転生したけど祖父が怪奇現象起こしてる   作:ちゃっぱ

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第六話 じゃあねおやすみはじめまして

 

 

 気が付いたら白と黒のモノクロな世界の中にいた。

 

 

「遊びましょう」

 

 

 リクオに向かって微笑んだ女の子。

 将来美人になること確定しているような彼女がリクオに向かって手を伸ばす。

 今いる場所がどこなのかわからない。神社だろうか。そもそも俺は家に帰って寝たはずだ。リクオと一緒に居た記憶がない。

 

 俺が悩んでいる合間にも時間は進む。

 手を伸ばした少女にリクオも笑って「いいよ!」と頷く。

 白と黒の世界に溶け込んだ違和感。まるで映画でも見ているかのような感覚。

 

 俺がいることに気づかずにリクオは少女と遊んでいるように見えた。

 

 

「リクオ? その娘は……」

 

「おとうさん! おねえちゃんがね、あそんでくれたの!」

 

 

 鯉伴さんの戸惑うような声に、ようやく理解した。

 

 

 彼女は。

 

 

 いやちがう。彼女こそが────。

 

 

 鯉伴さんの声が聞こえる。あの山吹の。

 

 

 

「────り、はんさ」

 

 

 

 白黒の世界に色がつく。

 

 花々が散っていく。

 赤く染まったそれは、本来の花の色ではない。

 

 その赤は地面に零れ落ち、強烈な香りとなって周囲にまき散らされた。

 

 

 

「あ、あああ……ああああああああああっっ!!!!!」

 

 

 

 悲痛の声が周りに響き渡る。

 少女が鯉伴さんを刺したのだ。いつの間にか握りしめられた剣によって。

 胸を刺された鯉伴さんは即死だった。

 

 少女の意に反する行為。

 その行いによって、少女────山吹乙女は羽衣狐へ生まれ変わる。

 

 それをまったく知らないリクオが二人に近づいた。

 

 

「おねえちゃん、だれ?」

 

 

 

 冷たくなり倒れてしまった鯉伴さんと、うつむいた姿の少女。

 

 

 

「おとうさんをさしたのは、だれ?」

 

 

 

 

『悪夢を見るのはそこまでじゃ。そろそろ起きよ』

 

 

 

 響いてきたのは自分の声。……いや違う、ジジイの声だ。

 まるで無理やり誰かに引っ張り上げられるような感覚に襲われる。

 

 そうして思わずベッドから飛び起きた。

 

 

「っ────はぁ、はっ!」

 

 

 汗だくになった身体が気持ち悪い。

 ただの悪夢だったというのに、あの山吹に濡れた血の香りが鼻にこびりついているかのようだ。

 

 

「へんなゆめみせやがって……」

 

『思い出せぬのなら無理やり思い出させるまでじゃからな。鯉伴を救うというのなら、全く知らぬよりはマシじゃろ?』

 

 

 お茶目に笑うジジイの声が頭に響く。

 それが酷く煩わしい。

 

 本当に嫌な夢だった。誰も幸せになることができない夢だ。

 それが現実になるかもしれないのかと、ようやく理解した。

 

 

 

・・・

 

 

 

 リクオは快く彼の父に会うことを承諾した。

 俺がリクオの家にお泊りに来るようなものだと思っているのだろう。とっても楽しそうな顔で「うちにいるみんなといっしょにあそぼ!」といってくれたから。

 

 まだ三歳ぐらいのリクオは無邪気に皆を驚かせるための悪戯でもしようと計画も立てている。ちっちゃい身体で一生懸命かくれんぼをしたり、皆と協力して落とし穴を作ったりだ。

 リクオは妖怪を家族として見ている。だからいろいろと隠すことなく俺に話してくれる。まあ、冒頭に「今のところは」と入れなきゃいけないかもしれないが。

 

 リクオが人間に隠さず自慢するように言うことを、妖怪たちはどう思っているのか。

 奴良家に遊びに行った時に感じたのは、リクオを傷つけるような行為がなければ別にどうでもいいということかな。

 

 以前俺がリクオの家に遊びに行った時だが、驚かせようとしたのか、納豆小僧を含めた付喪神たちに影から隙間からと怪奇現象を起こしまくっていた。その後すぐリクオが指さしながら「みーつけた!」といっていたので、あの時は突発的なかくれんぼの鬼として動いていたかもしれない。

 つまりリクオにとってはそれぐらいは日常に潜んでいるということ。人間を驚かすのも必要な行為だと許容している。図太いという部分もあるのか、妖怪への畏れはあまり抱いてないのかな。

 

 とにかくだ、奴良組にとってリクオは大切にすべき跡継ぎということ。

 その周りにいる俺が異物であると知った場合どう出るのか。想像だが「とりあえず危険性があるから見張っておこう」が七割。残り三割が「危ないから排除しておこう」である。

 まあ数百年と続く奴良組だからな。過激派がいるとすればこれぐらいはやるかもしれないという程度だ。まあ一番心配するのは人間の血を濃く受け継ぐリクオをよく思わない反対勢力だろうか。

 

 俺はこれから先起きるだろう未来を変えたい。

 ジジイが見せてくれたあの鯉伴さんが死ぬ未来。

 

 

 それを阻止するために向かうのだ。

 

 

 

「よぉカナちゃん。俺に用ってのはなんだい?」

 

 

 色男が楽し気に言う。

 様子見していたあの色はもうとっくにない。俺がどういう存在か決断を下そうという圧力を感じる。

 まあそれは俺が肩を揺らした瞬間すぐかき消える程度には優しいものだったけれど。

 

 

「こんにちは、ある意味初めましてになるのかな。奴良鯉伴さん。家長カナです」

 

「かなちゃん?」

 

 

 いつもとは違い流暢に喋る俺に、リクオが首を傾ける。何故初めましてと言うのかもわかってないんだろう。

 舌っ足らずな部分もあるから、長文はうまく喋れないところもあるけれど、今は大事な場面だから格好良く決めたい。

 

 隣にいるリクオをチラッと見て、安心するように笑いかけた。

 今はまだ夕方。太陽の日が沈む間際の危うい時間帯。

 今日は奴良家に泊まることを俺のお母さんに伝えてはいる。だから大丈夫。何があっても耐えられる。

 

 

「今の私は、どちらに見えますか?」

 

 

 鯉伴さんの傍には様々な部下たちの姿が見える。こっそり護衛している人もいるのか。

 

 

「ふーむ。さてはて。妖怪か、人間か……まあ、俺はどっちでもいいと思うがね。カナちゃんみたいな可愛い子なら白は白に、黒は黒く染めてえもんだ」

 

「……つまり?」

 

「今のカナちゃんは俺らに近い存在だ。人間に戻りてえってんならそう言いな。俺がなんとかしてやろう」

 

 

 ウインクしながらも言った鯉伴さん。それが今の俺の正体。その答えだった。つまりジジイと同化した俺は妖怪になったようなもの。人間ではない存在になっているのだろう。きっと。

 

 いつの間にか変化し真っ赤に染まった髪の毛にリクオが目を輝かせて笑う。

 

 

「かなちゃんすごい! かみのけきれい!」

 

「ありがとうリクオ。じゃがツッコミ所はそこなのか?」

 

「なんかじいちゃんみたいだね!」

 

「うっ、しょうがないじゃろう! 気が付いたらこうだったんじゃからにゃ!」

 

「にゃ?」

 

 

 あー舌噛んだ!

 もう台無しじゃないか!

 

 

「あははははっ!!」

 

 

 楽し気に笑う鯉伴。それに慌てたような周り。

 リクオも楽しそうに笑う。

 

 この親子の行く末をずっと見ていたいものだ。

 

 

「奴良鯉伴さん。ワシと似た妖怪の人。力の使い方を教えてくれにゃいか?」

 

「またにゃっていった!」

 

「いってないぞ!」

 

「いったよー!」

 

 

 うーん雰囲気台無しだな。

 楽しそうに笑った鯉伴さんが部下たちにも命じてちょっとだけ手助けをしてくれると言った。ある意味今の俺はか弱い妖怪だから、これからどう生きていけばいいのかを学ばせてくれるということ。

 

 グダグダした空気のまま、話は進む。

 まあ変に殺気立つよりはマシ。敵対するよりはマシと考えよう。問題はこの先だ。

 

 

 あの夢で見た場所に遭遇できるようにしないと────。

 

 

 

 

 

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