ようこそ絶対選択肢に逆らえない教室へ   作:球磨川善吉

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明日は我が身

入学してから一週間。今日は水泳の授業があるらしい。前世では金槌だった記憶がある。昨日は逆立ち歩きで疲れた体に鞭打って、泳ぎに関しての動画を何本か見た。この時期から水泳って早くないか?因みに今のDクラスはほとんど崩壊しかけてる。仲が悪いとかじゃなくて、授業中の態度が問題だらけ。スマホは弄るし、お喋りは止まらないし、挙げ句の果てに(やすり)で爪を削る金髪もいる。チャットで授業の態度を坂柳、ハg...葛城、一之瀬、龍園に聞くと、ここまで酷くはないらしい。授業態度はA、B、C、Dの順で良いらしい。ますますDクラス不良品説の現実味が帯びてきたぞ。

 

「おーい。ちょっと良いか?」

 

 どうやら、俺に話しかけてるらしい。遂に俺にも友達2号が!

 

「俺は池寛二。確か、お前は...」

「春秋冬風だ」

 

「ああ! 春秋冬ね。もちろん、俺は分かってたぞ」

「何の用だ?」

 

「実はさ、今Dクラスの男子で賭けやってんだよ! お前も一緒にどうだ?」

 

 お前ら、まだ高校生だろ! 賭け事はいけません! それにしても賭けかぁ。何で賭けてるんだ?

 

「女子の胸の大きさで賭けようってなってるんだけどさ。ちなみにオッズ表もあるぞ」

 

 ファ!? 胸の大きさで賭けてるの? 確かにこのクラスはデカい人多いけどさぁ。胸で思い出したけど、あれ以来櫛田とは連絡先を交換してから一切話してない(´・ω・`)。まあ、そんな櫛田も一之瀬の胸部装甲には遠く及ばない。

 

 ピロン!

 

【『俺は高校生に興味はない』】

 

【『金を賭けるってことは、ちゃんとバストを測るってことだよな?』】

 

 今気づいたけど、女子が養豚場の豚を見る目で俺と池、その他諸々の男子を見ている。めちゃくちゃやりたいけど、唯でさえ下がり続けている好感度。なぜか先日の1年生の他クラス凸で一之瀬に気があるとか、坂柳に気があるとか、龍園とか、葛城とか葛城とか葛城とか...って言われてるらしい。(綾小路経由の櫛田情報)マジで意味わからん。きちんと要件言ってから凸ったのに!

 

「俺は高校生に興味はない」

「えぇ~。つれないこと言うなよ。じゃあ、春秋冬はどんな女が好みなんだ?」

 

 おい、やめr...

 

 ピロン!

 

【『つるつるペッタンの幼女に決まってる!』】

 

【『色気がある年上に決まってる!』】

 

 その質問は絶対選択肢の餌食になるから、やめて欲しかった...クソ。しかも地味に俺の性癖を当てている。何で年上フェチだって知ってんだ!? 上は犯罪者予備軍だから下を選ぶしかないか。

 

「色気がある年上に決まってる!」

「あ! そういえば初日に茶柱先生に告ってたもんな。そりゃあ、興味がないわけだ」

 

 違う! あれは告白じゃない! 弁解しようと思ったのにもう行っちまった。時間あるから綾小路にでも話しかけるか。

 

「綾小路は女子に賭けたか?」

「俺はよく分からないから、上位に適当に賭けたぞ」

 

「意外だな。てっきり綾小路ならスルーしそうだけど」

「あいつらの圧に押されたんだ」

 

 


 

 

 お楽しみ?のプールだ。どうやら室内らしい。さすが国営だな。ちなみに水着選びには一苦労した。春秋冬君の春秋冬君がデカすぎてモッコリしない奴を探すのにかなり時間が掛かった。プールサイドで黄昏れてるが、本当に広いな。お! どうやら綾小路も来たらしい。

 

「綾小路、お前の腹筋エグいな」

「これでも、中学の時は書道部に入ってたんだ」

 

「いやいや、さすがにそれだけだとこんな体にならないだろ」

「そういう春秋冬こそ腹筋割れてるぞ」

 

 これが一週間、地獄のトレーニングに打ち勝った成果だ。まあ、元々体は出来てたが...

 

「うわ~。凄い広さだね~」

 

「き、来たぞ!」

 

 池が叫び、女子たちが入ってくる。これは刺激が強すぎてR18の規制がかかっても可笑しくないな。そもそもこの学校は可愛い子が異常に多い。髪の色も派手だし目の色っていうか虹彩の色もカラフルなんだよな。虹彩の色は1色じゃなくて2色の人もいる。まあ、俺も青と黄色の虹彩で髪色は青みがかった黒だ。あ、オッドアイではないぞ。虹彩の上の部分が青で下の部分が黄色。綺麗すぎてお風呂の鏡で毎日5分くらい見てる。それにしても女子の人数少なくないか?......って思ったら見学用の2階の席にぞろぞろ居るな。自分の体を下劣な目で見られるってそりゃあ怖いよな。ただ、この手法が何度も続くとなると成績がやばくなりそうだな。

 

「何を話しているの?」

 

 おお...スク水姿の堀北だ。他の女子と比べてやや劣るがこれはこれで中々...

 

「別に何を話しててもいいだろ」

「綾小路君も他の男子たちみたいに猥談をしてると思っただけよ」

 

 酷い言い草だな。

 

「綾小路君と春秋冬君、貴方たち何か運動してたの?」

 

 ピロン!

 

【『夜の運動を少々...』】

 

【『特に何もやってないぞ』】

 

 がっつり下ネタじゃねえか。ここは下で良いだろ。

 

「特に何もやってないぞ」

「自慢じゃないが中学校は帰宅部だったぞ」

 

「あれ? 綾小路はさっき書道部に入ってたって言ってなかったか?」

「...書道部はあまり行ってなくて幽霊部員だったんだ」

 

「それにしては綾小路君のは筋肉の発達が異常すぎる気もするのだけれど」

「親から恵まれた体を貰ったんだ」

 

「堀北さんは泳ぎは得意なの?」

「得意でも不得意でもないわね」

 

 櫛田が割り込んできたな。ウッ... やばいぞ。櫛田のスク水はR18なんてレベルじゃない! R40くらいあるぞ。アカン、下腹部に血液が溜まる。

 

 ピロン!

 

【≪悔しい。でも感じちゃう! この授業中は常時マキシマム状態になる≫】

 

【≪心を落ち着かせろ。 この授業中は常時シナシナ状態になる≫】

 

 これはつまり、standしてるかってことだよな? さすがにマキシマム状態だとバレるから下だ!

 

 

 ≪心を落ち着かせろ。 この授業中は常時シナシナ状態になる≫

 

「私は中学の時、水泳が苦手だったんだ。でも一生懸命やって泳げるようになったの!」

「そう」

 

なんか櫛田の扱い雑だな。流石孤高(笑)の堀北だな。

 

「よーしお前ら集合しろー」

 

 ガチムチのおっさんが集合をかけ授業が始まる。

 

「見学者は16人か。まあ、いいだろう。早速だが、準備体操をしたらお前らの実力が見たい。泳いでもらうぞ」

「あの先生俺あまり泳げないんですけど...」

 

 一人の男子が申し訳なさそうに手を挙げる。安心しろ。俺も前世は泳げなかったぞ。

 

「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやる。泳げるようになれば後で必ず役に立つ。『必ず』だ」

 

 めっちゃ強調するじゃん。これは何かの伏線なのか? 他のクラスでもこの言葉を言ってたら怪しいんだけど...

 

 教師の指示で50メートルほど流して泳ぐ。凄い。俺、泳げてる。涙が...止まらない。

 

 

「取りあえず、ほとんどの者が泳げるようだな」

「余裕っすよ。先生!俺中学の時は機敏なトビウオって呼ばれてましたから」

 

 池が元気に答えるが、大して他と変わってなかったぞ。

 

「そうか。ではこれから競争をする。男女別50M自由形だ。一位になった生徒には、俺から特別ボーナス、5000ポイントを支給しよう。

 一番遅かった奴には補習を受けさせるから覚悟しろよ」

 

 補習... ガチムチの先生と二人きり。絶対選択肢の前では何も起こらないはずがなく... これは絶対選択肢の餌食にされるな。何としてでも阻止してみせる!

 それにしても太っ腹だな。もしかしたら体育以外にも優秀な成績を収めたら先生からポイントをもらえるのかもしれないな。

 

「女子は人数が少ないから5人を2組に分けて、一番タイムの早かった生徒の優勝にする。男子はタイムの早かった5人で決勝をやる」

 

「最初は男子からだ。今から組を発表するから、最初の組の生徒はコースにつけ」

 

 競争に参加するのは男子が16人。女子が10人。男子は5、5,6の三組に分けるらしい。この戦いは負けられない。奇行で下がった好感度を実力で上げてみせる。

 

「綾小路は何組目だ?」

「俺は1組目だな。ちなみに高校一年生の50Mの平均ってどれくらいなんだ?」

 

 ピロン!

 

【『20秒切るか、切らないかくらいじゃないか?』】

 

【『40秒切るか、切らないかくらいじゃないか?』】

 

 何か選択肢おかしくないか?20秒は早いし、40秒は遅いよな... まあ、遅いよりは早い方がいいだろ。

 

「20秒切るか、切らないかくらいじゃないか?」

「今の高校生は中々早いんだな。ちなみにその情報は間違ってないよな?」

 

 ピロン!

 

【『大丈夫だ、問題ない』】

 

【『俺を信じてくれ』】

 

 あれ、これもしかしてまずいか? まあ、嘘の平均教えたところで何も起きるわけないだろ。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「よーし、一組目始めるぞー」

 

「じゃあ、行ってくる」

「ああ、健闘を祈る」

 

 綾小路の隣はブーメランパンツの高円寺だった。ちなみに高円寺は入学式の日にバスにいた唯我独尊君だ。授業中に爪を研いでいるのもあいつ。股間の主張に思わず女子も目線を背けてる。マジでヤバいな。

 

 始まった第一レース。綾小路がもの凄い勢いで飛び出した。続く高円寺も中々速い。てか、あいつ泳ぎながらずっと笑ってるんだけど。怖いな。決着は僅差で綾小路が勝った。やっぱりあいつの筋肉は見せ筋じゃなかったか...

 

「20秒02だと...」

 

 あまりの速さに教師を含め、皆が綾小路を見ている。対する綾小路は無表情。高円寺はずっと笑っている。

 

「おい。春秋冬。これはどういうことだ」

「いやぁ~、冗談のつもりだったんだけど」

 

「中々やるじゃないか。フィッシュボーイ」

「高円寺、なんだその呼び方は」

 

「まさか私を超える者がいるとはねぇ。君がいたらこの学校も面白くなりそうだよ」

 

 髪をかき上げながら去っていく高円寺。心なしか、モッコリの度合いが大きくなった気もするが、そこを突っ込むのは野暮だろう。

 

「綾小路、放課後職員室へ来い。お前の担任の茶柱を通して水泳部に入ってもらう。これは強制だ」

「え... 嫌です」

 

「お前のタイムなら全国優勝は確実だろう。もし、そうなれば学校側からかなりの額がお前にいく筈だ。お前にとっても悪い話ではないぞ」

「......」

 

「凄い話になっちゃったね~」

「全くだ」

 

 櫛田を間近で見ても俺のムスコは何一つ反応しない。ただの屍のようだ。

 

「あ~やだやだ運動神経抜群の奴って」

「綾小路、お前凄いな!」

「まあ、俺ほどではないけどやるじゃん」

「まあな」

 

 今、綾小路と話している奴らは三馬鹿トリオとクラスで呼ばれているらしい。上から、下ネタが好きな池、バスケ馬鹿の須藤、嘘の山内(綾小路情報)

 

「彼、綾小路君は只者ではなかったわね」

「やっぱり筋肉の発達がおかしかったもんな」

 

 あれ? 堀北から俺に話しかけてる・・・? これって初じゃないか? やったぜ! それ程、堀北も動揺してるってことか...

 

「じゃあ、第二レースを始めるぞー」

 

「頑張れよ、春秋冬」

 

 ピロン!

 

【『別に一位を取ってしまっても構わんのだろう?』】

 

【『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』】

 

 ・・・・・・大丈夫か、これ。 どっちも死亡フラグビンビンするんだけど。

 

「別に一位を取ってしまっても構わんのだろう?」

 

 続く第二レース。俺の隣には勇者こと、平田がいる。女子たちの歓喜の悲鳴がすごい聞こえてくる。絶対選択肢が無かったら...俺だって。

 

「春秋冬君、一緒に最高の泳ぎをしよう」

「もちろんだ」

 

 眩しすぎて、平田を直視できない。これが陽キャか。綾小路が俺を応援してくれたんだ。やってやるぜ!

 

 ピロン!

 

【≪俺は宙を舞うトビウオ!≫】

 

【≪俺は深海を彷徨うクラゲ≫】

 

 ファ!? なんだこの抽象的な選択肢。見た感じトビウオの方が良さそうだけど... クラゲはどうせプカプカしてるだけだろ、多分。

 

 ≪俺は宙を舞うトビウオ!≫

 

 開始の笛が鳴った瞬間、俺は宙を飛んだ。俺の意思じゃない! 絶対選択肢の野郎...! 景色が目まぐるしく変わる。どうやら最初の飛び込みだけじゃなく、継続してトビウオみたいに跳ねるらしい。やばい。操作めっちゃ難しい。もう少しでゴールだけど止めらんねえぞ!

 

 ゴン!

 

うっ... 痛い。けどトップだぞ! よし!タイムは27秒ほど。まあ、綾小路には遠く及ばないけど、金槌でここまで来たなら十分だろ。

 

「速かったね。春秋冬君。完敗だよ」

「完敗って言うほど、距離は離れてないだろ。平田も十分速かったぞ」

 

「春秋冬、大分速かったな」

「綾小路に比べたら、まだまだだろ」

 

 続く第三レース。これは須藤の圧勝だった。決勝は綾小路、高円寺、須藤、俺、平田の5人でやるらしい。臨むところだ!

 

 決勝だからか、皆盛り上がってるな。色々な声援が聞こえるが、誰一人俺の名前を呼ぶものはいない。

 

「頑張ってー! 春秋冬くーん!」

 

 櫛田...お前はホントに良いやつだな...

 

 ピロン!

 

【≪俺は宙を舞うトビウオ!≫】

 

【≪俺は深海を彷徨うクラゲ≫】

 

 前回と同じ選択肢か... ここは安定の上で行くか。

 

 開始の笛が鳴った瞬間、俺は宙を飛んだ。スタートダッシュは俺が一番速いが、中盤からはドンドン先を越される。マジであいつら速すぎ。化け物じゃねえか。

結果は4位でタイムは25秒。2秒も速くなってる。やっぱりこの体凄いな。ちなみに一位は綾小路だった。まあ、納得の順位だな。

 

 男子のレースが終わり、女子のレースが始まる。ほとんどの男子はウキウキでプールサイドに座り込んで品定めをしている。対して、俺は選択肢の影響か女子の体を見ても、心も体も反応しない。何か大切な物を失った気がする。てかさっきから隣の三馬鹿の1人が『櫛田ちゃん、ハアハア』みたいなこと言ってて引くんだが。

 

「皆、目に焼き付けろよ!今日のおかずを確保するんだ!」

 

 

 ピロン!

 

『おう!』

 

『おう!』

 

 ・・・・・・はあ... 選択肢もクソもないじゃねえか! 池も大声でそんなこと言うなよ...今日でだいぶ女子からの男子の好感度が下がった気がする。まあ、俺には下がる好感度もないがな。

 

 

「「「「おう!」」」」

 

 あ、良かった~。どうやら他の男子たちも返事をしたらしい。女子からの好感度は下がってるが男子間の絆は強まってる気がする。やはり工口は偉大だな。

 

 

 


 

 

 入学してから3週間が経った。この3週間、放課後にただひたすらに逆立ちで歩き続けた。最近は放課後になった瞬間に選択肢が出るからまだ誰とも遊んでない。大体3時間くらい拘束されるから、終わる頃にはヘトヘトだ。神様... いったい俺が何をしたっていうんだ! でも慣れなのか体力が付いてきたからか、はたまたスペックが良いのか、翌日には疲れが取れるようになった。これは逆立ちで歩く選択肢を選ばなければいいっていう話でもないんだよな。他の選択肢が【ここから脱獄する】だったり【無人島に泳ぎに行く】だったり。この学校から出る選択肢ばっかなんだよな。ちなみに今は3時間目の古文の授業中だ。不思議と最初の水泳の授業以外は授業中に選択肢が出てこない。さすがの絶対選択肢も鬼ではないらしい。もしかしたら、嵐の前の静けさかもしれないけどね。

 

「ちょっと静かにしろー。今日はちょっとだけ真面目に授業を受けて貰うぞ」

「どいうことっすか~。佐枝ちゃんセンセー」

 

 『今日は』...か。何か大事なことをするのか? てか、何で授業中にスマホ触ってるやつとか私語使ってる奴いるのに注意しないんだ? 実力主義だから、騒いでる分にはいいけど後でツケが回ってくるからか? 監視カメラもあるし授業態度を見てるっていうのは間違いないと思うんだけどな... 俺みたいな奴が注意しても説得力がないと思ったから一応、平田と櫛田に授業態度を注意してもらったけど何も変わらなかったな。クラスでカースト上位の二人が言っても辞めないのなら俺にはどうすることも出来ない。

 

「月末だから、小テストを行うことになった。時間は50分間だ。裏返しにして後ろに配ってくれ」

「えぇ~。聞いてないよ~。ずる~い」

「そう言うな。今回のテストはあくまでも参考用だ。成績表には反映されることはない。ノーリスクだから安心しろ。ただしカンニングは当然厳禁だぞ」

 

 ノーリスク... 嘘臭いな。成績表に反映されなかったら、50分もかけてやる意味なくね? 絶対裏がある!

 

 ピロン!

 

【≪最初の問題から解く≫】

 

【≪最後の問題から解く≫】

 

 意味深な選択肢だな... 先生の発言を踏まえると恐らくこの小テストに何かあるのは間違いない。加えてこの意味深な選択肢...実力主義のこの学校だからこそ、最初はめちゃくちゃ難しくして、最後は簡単っていう型を破った問題かもしれない。決めた! 下だ!

 

≪最後の問題から解く≫

 

「それでは、始め」

 

 テストを裏返して名前を書き、問題に一通り目を通す。問題の意味が分からない。最後の数学の3問が難しすぎる。パスだ!パス! ...ってあれ? シャーペンが動かない... もしかして正解しないと次に進めないのか? クソ! 絶対選択肢の野郎! 失敗した。もう、ダメだ。おしまいだ。 いや、でも先生は『成績には関係ない』って言ってたじゃないか!つまり何点とってもいいってことだ!(手のひらクルクル)

 

 ピロン!

 

【≪クーロンの法則を使う≫】

 

【≪ガウスの法則を使う≫】

 

 いや~、ちゃんとアフターフォローもあるって俺は分かってたけどね! 解き方も教えてくれるなんて最高すぎる! 確率は2分の1。どっちも知らない法則だから運になるな。でも数学で法則って名前のつく奴ってあったけ? まあ、どっちも分からないから上でいいか。

 

 ≪クーロンの法則を使う≫

 

 おお! 手が勝手に公式書いてる! それと一緒に公式についての内容が頭に入ってくる。不思議な感覚だな... なになに... 

[クーロンの法則( Coulomb's law)とは、荷電粒子間に働く反発し、または引き合う力がそれぞれの電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例すること]

 

 ん? 電荷?って科学だよな... あっ... 外れの方引いたのか!

 

 ピロン!

 

【≪ガウスの法則を使う≫】

 

【≪キュリーの法則を使う≫】

 

 じゃあ、ガウスの法則が正解ってこと? 正解の方を選ばなかったのにもう一回出てくるのか... なんか優しすぎない? イヤナヨカンガスル。

 

 ≪ガウスの法則を使う≫

 

 スラスラと公式を書く。今度こそ来てくれ...

[常磁性物質においては、 その物質の磁化は、(ほぼ)かけられた磁場に正比例する。]

 

 ピロン!

 

【≪キュリーの法則を使う≫】

 

【≪ケプラーの法則≫】

 

 あっ...終わった。全く関係ない奴しかない。これめっちゃ時間かかる奴じゃない? そもそも法則の説明が一文で終わってて、公式のアルファベッドが何を示してるのかが分からない。選択肢を選ぶときの時間停止中にカンニングしようにも他の生徒がこの最後の問題を解けるように思えない。そもそもここまでたどり着いてないし、俺の視線は問題に釘付けでこの停止中は動けない。これ、詰んだんじゃね? いいや、諦めちゃダメだ! いくら小テストど言えど0点を取ったらクラスの笑い者にされるぞ! まあ、答案を隠し通せればいいが何かの拍子で俺の点数が分かっちゃうかもしれない。妥協は許されない!! そうしている間に頭痛が始まってきた。結構痛い。いいぜ! やってやらあ!

 

 

オラァ!オラァ!オラァ!オラァァオラアァああああああああああああああああああああああッ!!!

オラオラァあぁああああ…オラ…オラッオラッー!オラァああああああ!!!オラオラオラァオラァオラァああああ!!!

オラァオラオラ!オラオラ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ。後ろから前に答案を渡せ」

 

 ハアハア... 50分間の死闘を終えたぞ。多分選んだ選択肢は1000を超えてると思う。一応解答欄を埋めたけど、合ってるかは分からない。やっと書き終えたところで時間が来たから、あの問題しか解答欄を埋めてない。次の問題に行けたら、合ってたってわかるんだけどなぁ... 不安で不安で堪らない。

 

「綾小路はどうだった?」

「俺は、50点ってとこかな」

「最後の問題まじで、難しかったよな」

「正直、アレを解けるのはこの学年で1人もいないだろうな」

 

「春秋冬は何点くらいとれそうだ?」

 

 ピロン!

 

【『100点に決まってるだろ!』】

 

【『0点に決まってるだろ!』】

 

 おい。お前には中間ってものが無いのか。う~ん。悩ましいな。嘘つくか本当のことを言うか。まあ、どっち選んでも冗談に聞こえるか。

 

「0点に決まってるだろ!」

「え... それはさすがにやばくないか?」

「いやいや、冗談だよ、冗談」

「そんなものなのか?」

「そんなものだ」

 


 

 今は授業終了直後の放課後の教室。どうせ今日も逆立ち歩きだろう。小テスト頑張ったからそろそろ遊びたい。これじゃ、只のコミュ障になってしまう。

 

 ピロン!

 

【≪坂柳と遊ぶ≫】

 

【≪一之瀬と遊ぶ≫】

 

【≪龍園と遊ぶ≫】

 

【≪綾小路と遊ぶ≫】

 

 ああ... 神よ。ありがたき幸せ。

何か綾小路だけ場違い感、半端ないよな?アイツはこのメンツだと能力値で比べると見劣りする。水泳は凄かったが...てか、ハg...じゃなくて葛城だけ居ないな...まあ、リーダーは二人も要らないよな。

 

選択肢が4つ。過去最高の数だが、女子は論外だな。だって、緊張するし... それに絶対、絶対選択肢の餌食にされる。

入学2日目からほとんど毎日、綾小路と(たまに3馬鹿とも)食堂で食べて、話してるが...転生してから人とまともな会話を出来てない気がする。最近は綾小路と話す時だけ、ホワイトルームだの月城だの4期生だの綾小路先生だの訳の分からないことばっか、選択肢に出てくる。

 

これには流石の能面の綾小路にも応えたみたいだ。めちゃくちゃ警戒してた。そりゃ訳の分からないこと言われたら誰でも警戒するよな。今までが反応し過ぎなかっただけだよな。誰だってそうするし、俺もそうする。でも綾小路は普通に俺と話してくれてる。本当に良いやつだ。

 

女子とは遊ばない(というか遊べない)時点で選択肢は龍園か、綾小路のどっちかだけど... まだ一回も綾小路と放課後遊べてないんだよな。ここは綾小路だろ。

 

 ≪綾小路と遊ぶ≫

 

「綾小路。今日俺と遊ばないか?」

「別に良いが、何して遊ぶんだ?」

「カラオケとかどうよ?」

「カラオケ...か。歌唱ないし主旋律を担う楽器を演奏する際に、事前に制作された伴奏を再生して歌唱・演奏する行為、だったか」

「お前そんな覚え方してるのか? 凄いな」

 

 

 

「え~。今日は私が綾小路君と遊ぼうと思ったのになぁ~」

 

 ファ!? (;つД⊂)ゴシゴシ (゚Д゚)え? ナンデジョシガアヤノコウジにハナシカケテルンダ。

 

「今日は春秋冬と遊ぶから我慢してくれ。後で埋め合わせはする」

「え!? ホント!? じゃあ、次のデートの時パフェ奢ってねえ~」

 

 嵐のように来て、嵐のように過ぎ去った彼女は他の女子のところに行ってしまった。一体3週間の間に何が...

 

「なあ...綾小路。彼女は...」

「軽井沢恵だ。まあ、なんだ。俺の彼女って奴か」

 

知らない間に、綾小路が遠いところに行ってしまった(涙)どうして俺には、彼女どころか女子との会話さえ...

 

 ピロン!

 

【『綾小路、一発殴っていいか?』】

 

【『それで、やったのか?』】

 

 なんだこの二択... そりゃ、少なからずは嫉妬もあるけどこの2択はないだろ!遊べると思った矢先にこれか。飴と鞭だな。こういうとき素直に祝ってやるのが友達(ダチ)って奴だろ! マジで性根腐ってる。

 

「綾小路、一発殴っていいか?」

「ん? 何でだ?」

 

 ピロン!

 

【『歯ぁ...食いしばれよ。最強!』《全力の一撃を放つ》】

 

【『歯ぁ...食いしばれよ。最強!』《寸止めの一撃を放つ》】

 

 いやいやいやいや、なんでそんなに綾小路に殺意湧いてるんだよ。しかも寸止めの一撃を放つってなんだよ。言い方おかしくね? すまん。綾小路避けてくれ。

 

「歯ぁ...食いしばれよ。最強」

 

《寸止めの一撃を放つ》

 

 

 

 


 

 

 

 ハ!?急に視界が暗転したと思ったら、綾小路に抱えられている? 何が起こったか分からないが、恐ろしい物の片鱗を味わった気がする。

 

「いきなり殴ってくるとは思わなかったぞ」

「いや、すまん。寸止めのつもりだったんだが。てか、手刀できるのか。凄いな」

「まあな」

「あれから何分経った?」

「大体0.083分くらいだな」

「秒数でいいぞ」

「5秒くらいだな」

 

「本当にさっきはすまなかった。反射で体が動いた」

「こっちこそ、いきなり殴ってごめん」

「じゃあ、カラオケに行くか!」

「ああ」

 


 勿論ドリンクバー付きのフリータイムのプランにした。やっと高校生デビューって感じがする。逆立ち歩きは高校生がやることじゃない!

 

「ドリンクは俺が注いでくるか?」

「いや、俺も行こう。春秋冬にばっかり押しつけられない」

 

 ピロン!

 

【『本当にいいのか?』】

 

【『じゃあ、行くか』】

 

 ? ここって選択肢出る必要あるか? 普通に下でいいだろ

 

「じゃあ、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾小路は何飲むんだ?」

「俺は...ココアかな」

「そうか」

「じゃあ...俺は...」

 

 ピロン!

 

【『お茶とメロンソーダを混ぜて化学物質を作るか』≪お茶とメロンソーダを混ぜ混ぜ≫】

 

【『ココアとコーラを混ぜて化学物質を作るか』≪ココアとコーラを混ぜ混ぜ≫】

 

 どっちも化学物質じゃねえか... 化学物質ってさすがに味の比喩だよな? 『』で囲われてるのはセリフだから大丈夫だと信じたい。≪≫で囲われてたら俺の行動ってことになるから現実味が帯びてくる。お茶とメロンソーダは絶対合わないよな。ここはココアとコーラだな。

 

「ココアとコーラを混ぜて化学物質を作るか」

 

 ≪ココアとコーラを混ぜ混ぜ≫

 

「・・・ココアとコーラを混ぜたら化学物質が出来るのか?」

「いや、そんなわけないだろ。味の比喩だよ」

「そうなのか。なんか興味が湧いてきたな。俺も混ぜてみるか」

 

 綾小路も乗ってきたな。ココアと...オレンジジュースか... 絶対不味いだろ。

 

 

 その後は歌って歌って歌いまくった。綾小路の歌が上手すぎてびっくりしたぞ。沢山飲み物を飲んだのに綾小路は一度もトイレに行かなかった。膀胱が強いのかもな。本当に今日は楽しかった。解散した後は逆立ち歩きで敷地内を徘徊した。いい加減、休ませてくれ...

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 えー今日はポイントの振り込み、当日ですけども。えーとですね、ただいまの時刻は8時を回りました。はい、ちょっと遅れて見たんですけどもね。えー7時ちょっとすぎくらいに、えー起きたんですけども。ほんでーまぁご飯を食べたんですけども。スィー。ほんでーかれこれまぁ1時間くらい、えー待ったんですけどもポイントは何一つ増えませんでした。何一つ増えることなかったですぅ。残念ながら。はい。あまりに衝撃的過ぎて脳が浸食されてしまったが、今日は5月1日、ポイントの振り込みの日の筈なのに俺の残高は9万11円から何一つ増えなかった。入学初日の茶柱の発言から察するにポイントは振り込まれるのは確実だ。ただ、来月の入るポイントは言ってなかったかもしれない。

 授業態度があれだけ酷かったらお小遣いを減らされても文句は言えないかもしれない。それにしてもこれはあんまりだ!まあ、絶対選択肢に半強制的に山菜定食を食わされ、放課後のほとんどはトレーニングにあててるから金が残ってるのが救いだ。取りあえず俺だけ、残高が不具合で増えてない可能性を信じて学校に行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら今日の教室はいつも以上に騒がしいらしい。やっぱり皆にもポイントは振り込まれていないのか...

 

 

「春秋冬はポイント振り込まれてたか!?」

 

 焦った様子で俺に聞いてきたのは山内春樹。最近、綾小路繋がりで少し喋るようになったお盛んなスケベだ。

 

「いや、俺は振り込まれてなかったぞ」

「だよな!? 今皆に聞いて回ってんだけど、このクラスの奴らは皆ポイントが振り込まれてないんだ。何かのバグか?」

「そうだといいな...」

 

 キーンコーン♪ カーンコーン♪

 

 チャイムが鳴り、席に着く。俺の後ろにいる唯一の友人の綾小路に聞いてみるか。

 

「なあ、綾小路はポイントが振り込まれなかったことに関してどう思う?」

「ただのミスか、意図的なのか。まだどちらかは分からない。今日のHRで詳細が分かるんじゃないか?」

「それもそうだな」

 

 程なくして手にポスターを持った茶柱が来る。一体そのポスターに何が書かれているんだろうか。心なしか唯でさえ表情が硬いのに今日はいつにもまして険しい。イヤナヨカンガスル。

 

「センセー、ひょっとして生理でも止まりましたかー?」

 

 池、お前は良いやつだった。今までありがとな。女子が死んだ目をしてるぞ。これで池の女子からの評価は地の底に落ちただろう。俺の好感度と良い勝負になりそうだな。

 

「これより朝のホームルームを始める。が、その前に質問はあるか? 気になることがあるなら今の内だぞ?」

 

 数人の生徒が挙手をする。先生、絶対分かっててやってんだろ。

 

「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれてないんですけど、毎月1日に支給されるんじゃなかったんですか? 今朝ジュース買えなくて焦りましたよ」

 

 いや、それはやばくないか?人って甘い蜜を吸えば簡単に堕落するよな。もしかして、絶対選択肢はこの時の為に俺を縛り付けてたのか? でも俺はお前が俺にさせたことは絶対に忘れないからな(血涙)

 

「本堂、前に説明した通りだ。ポイントは毎月1日に振り込まれる。今日も問題なく振り込まれたことは確認されている」

 

 ポイントが振り込まれている? ソレってつまり...

 

「え、でも.......振り込まれてなかったよな?」

 

 本堂と呼ばれた生徒は周りに確認をとっている。何人かの生徒も顔を見合わせている。

 

「・・・お前らは本当に愚かなだな」

「愚か? っすか?」

「座れ本堂。二度は言わん」

「さ、佐枝ちゃん先生?」

 

 本堂は腰を抜かして椅子に座った。てか佐枝ちゃん先生って・・・ よくあんな怖い先生をちゃん付けできるよな。俺は出来ないぞ。

 

「ポイントは振り込まれた。これは間違いない。このクラスだけ忘れられた、などという幻想、可能性もない。わかったか?」

 

「いや分かったって言われても、なあ?実際に振り込まれていない訳だし・・・」

 

 本堂は戸惑いながら不満げな様子を見せる。スゥー・・・ やっぱりそういうことなのか。

 

「ははは、なるほど、そういうことだねティーチャー。理解できたよ、この謎解きがね」

 

 高円寺、脚に机に乗せとるやんけ・・・ お前、監視カメラで見られてるぞ。

 

「簡単なことさ、そうだろう?フィッシュボーイにスペシャルボーイ」

「え?」

 

 綾小路がビックリしてるが、まだその名前で呼ばれてたのか。てかスペシャルボーイって誰だよ・・・

 

 

 

 

 

 って思ってたら、高円寺がめっちゃ俺の方見てるじゃん。なんで俺が予想ついてること分かるんだ? もしかしてエスパーか?

 

「俺?」

「無論だとも」

 

 絶対、俺の行動が特殊(気狂い)だからこんな呼び方なんだろ。だがな高円寺・・・お前に言われたくない!(ブーメラン)

 

「私たちDクラスには1ポイントも支給されなかった、ということさ」

「はあ?なんでだよ。毎月10万ポイント振り込まれるって・・・」

「私はそう聞いた覚えはないね。そうだろう?」

 

 こっち見んな。おまえがこっち向くと皆こっち向くんだよ。

 

「態度には問題ありだが、高円寺の言うとおりだ。全く、ヒントをやって自分で気づいたのが数人とはな。嘆かわしいことだ」

 

 ざわ・・・ざわ・・・

 

 茶柱の報告を聞くなり教室中が騒然としだした。

 

「・・・先生、質問いいですか?()に落ちないことがあります」

 

 さすが、勇者平田。皆の為に率先して動く行動力。そこに痺れる、憧れるぅ!

 

「振り込まれなかった理由を教えてください。でなければ僕たちは納得できません」

「遅刻欠席合わせて89回。授業中の私語や携帯を触った回数391回。ひと月で随分とやらかしたもんだ。この学校では、クラスの成績がポイントに反映される。

 その結果お前たちは振り込まれるはずだった10万ポイントを全て吐き出した。それだけのことだ。入学式の日に説明したはずだ。

 この学校は実力で生徒を測ると。そして今回、お前たちは0という評価を受けた。それだけにすぎない」

 

 もしかしたら俺の奇行もマイナス要素かもしれない。ただ、放課後だから大目に見てほしい。それにしても10万円分全部吐き出したのか・・・ まじで笑えねぇ。こうなったら身を(てい)してでも授業態度を改善するべきだったか? 日々の鍛錬が辛すぎてそれをやる気力がなかったんだよな。

 

「茶柱先生。僕らはそんな説明・・・受けた覚えがありません」

「お前らは説明されなければ理解出来ないのか?」

 

「まあ、入学2日目で監視カメラの存在に気づき、校内に限らず敷地内全ての監視カメラの場所をマッピングした者もいるようだ。そこまでするだけの価値に気づいたのなら、教室にカメラがある意図にも気づいてそうだがな。春秋冬?」

 

 デデドン!(絶望)何で公開処刑するの? クラスの連中から『何で気づいてたのに言わなかったの?』って逆切れされそうで怖いな。

 

 ピロン!

 

【『俺、IQ3なんで難しい事分かんないです』】

 

【『櫛田と平田に注意するよう言ったからいいでしょう?』】

 

 ナイス! たまには俺の言いたいことが言えて何よりだ。

 

「櫛田と平田に注意するよう言ったからいいでしょう?」

「何故気づきをお前の中で留めておくんだ? もっとクラス内に広めれば結果はまた違っただろうに」

 

 おい! 燃料投下するなよ! 正論だけど、俺が言っても説得力ないだろ。教師の屑が、この野郎!

 

 

「では、せめてポイントの増減を教えてください。今後の参考にします」

「それはできない相談だな。人事考課、つまり詳細な査定の内容は、この学校の決まりで教えられないことになっている。

 社会も同じだ。お前らが社会に出て企業に入ったとして、詳しい人事の査定内容を教えるかどうかは企業が決めることだ」

 

 汚ねぇ・・・ 何でも隠ぺいする日本の政j... を体現したかのような学校だな。でもこれが社会の常識なのだろうか? 前世の事はほとんど覚えてないから分からん。

 

「しかし・・・ 私も憎くてお前たちに冷たくしてるわけじゃない。あまりに悲惨だから一つだけいいことを教えてやろう。

 遅刻や私語を改め、仮に今月マイナスを0に抑えたとしても、ポイントは減らないが増えることはない。

 つまり来月も振り込まれるポイントは0ということだ。裏を返せばどれだけ遅刻や欠席をしても関係ない、という話だ」

 

 なんでこのタイミングでそれ言うんだ? そんなこと言ったら皆バカらしくなって改善しないだろ。 教師の屑が、この野郎!(二度目)

 

 キーンコーン♪ カーンコーン♪

 

 チャイム鳴っちゃたぞ。これが終わったら皆に責められる・・・ 無念。

 

「どうやら無駄話が過ぎたようだ。そろそろ本題に入ろう」

 

 茶柱が持っていた筒から白い厚手の紙を取り出し、広げて磁石で黒板に貼り付ける。何書いてるのかめっちゃ気になるな。

 

 そこにはAクラスからDクラスの名前とその横に三桁の数字が刻まれていた。

 

 Aクラス 940

 Bクラス 650

 Cクラス 490

 Dクラス  0

 

「ねえ、おかしいと思わない?」

「ああ・・・ちょっと綺麗すぎるよな」

 

 何やら後ろで綾小路と堀北が話してるな。確かに綺麗すぎる。 AからDに行くにつれてポイント?が低くなっている。やっぱり優れている奴からAクラスに割り当てられるのか・・・ 俺としてはどのクラスも下一桁が0っていうのが気になるな。もしかしたらポイントをマイナスするときは10刻みでやってるのかもな。偶然そうなっただけかもしれないから憶測の域をでないが・・・

 

「お前たちはこの1ヶ月学校で自堕落な生活をしてきた。学校側はそれを否定はしない。全てはお前たちにツケが回ってくる。

 それだけのことだ。ポイントの使用に関してもそうだ。得たものをどう使おうとそれは所有者の自由。その点に関しては制限をつけていなかっただろう」

「こんなのあんまりっすよ! これじゃ生活できませんって!」

 

 池の悲痛の叫び。ただし茶柱には効果がないようだ。

 

「よく見ろバカ共。Dクラス以外は、全クラスがポイントを振り込まれている。」

「な、なんで他のクラスはポイントが残ってんだよ。おかしいよな・・・」

「この1ヶ月、全てのクラスが同じルールで採点されている。にもかかわらず、ポイントでこれだけの差がついた。それが現実だ」

 

「何故・・・ここまでクラスのポイントに差があるんですか?」

「お前はもう察しがついてるんじゃないのか? 平田」

「僕は・・・何も分かりません」

 

「この学校では、優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ。

 ダメな生徒はDクラスへ、と。つまりここDクラスは落ちこぼれが集まる最後の砦というわけだ。お前たちは最悪の不良品というわけだ」

 

 デデドン!(絶望)クソ・・・ 最後まで信じたくなかったがどうやらそういうことらしい。『不良品』って言われて、悲しいし悔しいが何も言い返せない。俺が不良品ってことはここ1ヶ月の行いを振り返れば分かりきったことだからだ。ダメだな。目から水滴が・・・ 

 

「しかし1ヶ月で全てのポイントを吐き出したのはお前たちが初めてだ。立派立派」

 

「・・・これから俺たちは他の連中にバカにされるってことか」

 

 須藤は机の脚を蹴ってご立腹な様子。そんなことするからバカにされるんだぞ。

 

「何だ、お前にも気にする体面があったんだな、須藤。だったら頑張って上のクラスに上がれるようにするんだな」

「あ?」

「クラスのポイントは何も毎月振り込まれる金と連動しているだけじゃない。ポイントの数値がそのままクラスのランクに反映される」

 

 尚更、早めに改善するように言った方がよかったじゃん・・・ 失敗した。

 

「もう一つお前らに残念なお知らせだ」

 

 黒板に張り出された一枚の紙。クラスメイト全員の名前の横に数字が記載されている。あっ(昇天)。

 

「この数字が何か、バカが多いお前らでも分かるだろう」

 

 やばいやばいやばいやばい。

 

「先日やった小テストの結果だ。一体お前らは中学で何を勉強してきたんだ?」

 

 

 一部の上位を除いてほとんどは60点前後の点数か・・・ 最下位は・・・勿論俺だった。点数は5点。でもあの難しい問題合ってたってことだよな!? なら実質100点みたいなものだろう。

 

「良かったな、これが本番だったら入学早々8人が退学になってたところだ」

「退学!? どういうことですか?」

「この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。

 今回のテストで言えば32点未満の生徒は全員対象ということになる。本当に愚かだな、お前たちは」

「は、はあああああああああああああ!?」

 

 真っ先に叫んだのは、赤点の7人たち。俺はもう、驚きすぎて声が出ない。

 

「ふっざけんなよ佐枝ちゃん先生!」

「ティーチャーが言うように、このクラスには愚か者が多いようだねぇ」

「どうせお前だって赤点だろ!?」

「一体どこを見ているんだい? ボーイ」

 

 高円寺、同率一位じゃねえか。もしかしてコイツが主人公か?

 

「それからもう一つ。この学校の謳い文句、100%の進学率、就職率だが・・・それはAクラスにしか反映されない」

「そ、そんな・・・聞いてないですよこんな話!むちゃくちゃだ!」

 

 眼鏡をかけているガリ勉みたいな男子が立ち上がった。こいつ、誰だっけ?

 

「お前らみたいな不良品がどこにでも行けたらこの国は真っ先に滅ぶだろうな」

 

「みっともないねぇ」

「Dクラスだったことに不服はないのかよ、高円寺。

 俺たちは学校側から落ちこぼれだと決めつけられて、就職も進学の保証もできないって言われたんだぞ!」

「学校側は私のポテンシャルを測れなかっただけのこと。それに私は高円寺コンツェルンの跡を継ぐことは決まっている。

 AやDというものは単なる記号に過ぎないのだよ。まあ、私を本気にさせる何かがあったら別だがね」

 

 そう言って綾小路の方を見る高円寺。どうやら高円寺は綾小路にお熱のようだ。

 

「浮かれていた気分は払拭されたようだな。中間テストまでは後、3週間。

 まあじっくりと熟考し退学を回避してくれ。私はお前らが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している」

 

 扉を力強く閉めて茶柱が退出する。さあ、こっからが本番だ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




最後の5月1日の茶柱の下りはまともにやると長すぎたので後日談風にするかリアルタイムで書くか迷いました。結局、主人公がどんな思考をしてるのかを書いときたっかのでやりましたが長すぎて心が折れそうでした。
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