EVOLの摘み取る花 作:わんわんわんだほーい
ナイトローグというイレギュラーを除けば、おおよそ完勝と言っていい初戦を終えた勇者たちは、"神を崇める"という組織にしてはあまりにも近代的かつ科学的な部屋で一人の青年と向き合っていた。
「とりあえず、初戦は上手くいったようだね」
白衣を着た青年は、手元で何かを組み立てながら淡々と述べる。そこに、無事に帰ってきた勇者たちへの安堵や信頼など欠片も存在せず、とりあえず形だけでも労っておこうという気持ちが丸見えだった。
「全く思ってないだろ!!」
「当然だろう?今回はバーテックス側からすればこちらの戦力調査に過ぎない。この程度の敵に負けるなら、人類はさっさと滅びた方がいい」
小柄な少女、土居球子が少々オーバーアクション気味に突っ込むが、その言葉に対して呆れたように淡々と話す青年。そんな歯に衣着せない青年の言葉にその場にいた全員が苦笑を零すが、そんな様子を尻目に青年は机の上に置かれた二本のボトルを手に取って手元で組み立てていたアイテム──黒いベルト、ビルドドライバーにはめ込む。
【ラビット!タンク!ベストマッチ!】
「ようやく帰ってきてくれたね、ラビットタンク」
どこか嬉しそうに微笑んだ青年は一度ボトルを抜いて、ビルドドライバーと赤と青のボトル、ラビットとタンクのボトルを高嶋友奈に渡す。
「これは、ビルドドライバー。その二つのボトル…ラビットフルボトルとタンクフルボトルの成分を引き出して力に変える僕の発明品だ」
「フルボトル?」
「…10数年前、地球に隕石と共にあるものが落ちてきた」
聞きなれないフルボトルという言葉に友奈が首を傾げると、青年は研究室の中央に厳重に保管されている一つの箱に目を向ける。
「それがあれだ」
「あの箱は一体?」
「あの箱を僕達はパンドラボックスと呼んでいる。名前通り、開けば世界を破滅させられるようなエネルギーが内包されているからね」
青年はパンドラボックスから目を離すと、一瞬友奈の持つボトルに目を向けて話を続ける。
「フルボトルは、そのパンドラボックスの中から発見された物だ。ラビットとタンクを含めて合計60本。有機物、無機物を問わず成分の内包されたそのボトルは振ることでその成分を活性化させることが出来る。だから…」
「フルボトル、という事ね」
「その通り。僕は初め、そのボトルの成分を誰にでも扱えるようなシステムを作る計画に参加していたんだが…あるシステムを作り上げたタイミングで開発計画のトップだった父が事故で死んでしまってね。計画は無くなった」
「それは…」
「とはいえ、その計画のおかげで君たちの勇者システムに数多くのシステムを組み込めた。そのうちの一つが、そのビルドドライバーだ」
青年は友奈の持っているものとはまた別のベルトを取り出すと、それを黒髪の少女、郡千景に渡す。
「郡千景、君にはボトルとはまた別の物を作っている。当然、乃木若葉を含めた他の勇者にもね」
青年はパソコンにコードを打ち込むと、そこに表示された題名を見て、そこにいた全員が首を傾げた。
「PROJECT CROSS-Z?」
「その通り!勇者適正の高い高嶋友奈を中心とするプロジェクト、プロジェクトビルドと对を成すプロジェクトさ!凄いでしょ?最高でしょ?天ッ才でしょ!」
「まだ、何も説明されてないのだけど」
「書いてあることが難しすぎて全く分かりませんね…」
「というかプロジェクトビルドってのも説明されてないぞ!」
テンションが上がった青年に冷たい目を向ける千景と、苦笑する気弱そうな少女、伊予島杏。そんな勇者の視線を受けて、青年は落ち着いたのか、一度咳払いをする。
「まあつまり、このシステムが完成すればこの星をバーテックスから取り戻せるかもしれないと思ってくれればいい」
「…本当かしらね」
「ああ。完成するまではどこまでの性能を発揮するか分からないが、きっと君たちの力になるはずだ。そのことは、僕が保証するよ。この、天才物理学者
そう言って、青年──葛城巧は静かに微笑んだ。
お待たせしました