垢BANされたらVとピース 作:TEAM-POCO/CHIN
続かない(鋼の意志)
出来は……んにゃぴ……
死んだら前世の記憶を保持したまま生まれ変わりましたなんていう題材の創作物は今やありふれたものだがあくまでもフィクションというのは当然のこと。
だが事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、まさかそれを自分が実際に体験するとは思いも寄らないだろう。
前世はなんてことはない普通の一般社会人男性。仕事に出向く他は家でゲームや漫画、ネットに噛りついているような所謂陰の者。容姿は平凡も平凡。平の凡。
今世は自分で言うのもなんだが結構かわいい女の子。これで今世は勝ち組陽の者確実だなガハハ!
──なんて都合のいいことがあるわけがない。
容姿が整っていたことは嬉しい誤算だったが根暗オタクな前世の記憶やら人格やらが引き継がれているのだから当然今世もあまりリアルで人前に出て行動は起こせないコミュ障。人はそう容易く変わることなんてできない。
故に──
「ねぇ細井さん」
「ヒェは、はい?」
「よかったらだけど、放課後みんなでカラオケにいくんだけど……細井さんもどうかなって」
「ぁ、私、勉強しなきゃだからぇえとその、ごめんね?」
しかもこの行為、たちの悪いことに中学生頃からよくやっていたためか完璧に癖になっていて今ではほぼ反射的にしてしまう。コミュ障ここに極まれりで友達がまずできないボッチ。
また少し話は逸れるが、これは転生ものの創作物にありがちなことだが、現実的に前世の記憶を持っているから学力無双ができるなんてことはまったくない。できてもだいたい小中学生くらいまでで、高校生あたりで求められる知識となるとまず日常的に使ってないと前世云々以前に社会人になってから忘れてしまっていることがざらにある。
ましてや俺は前世の頃から特段頭が良いわけではなかったし勉強も適当だったからしっかり勉強をしなければ余裕で赤点だ。
そしてそんなんだったから大人になってからもっと勉強していればよかったと後悔することも多かった。大人になっても勉強は必要でしかも専門的な知識が求められるから学生時代の積み重ねは大事ってわけだ。
故に俺は学校の空き時間は全部勉強に費やすことに決めている。
これも俺に友達ができない一要因だ。
まあ人付き合いから勉強を口実に逃げているだけと言われてしまえばそれまでだが。
でも、確かに現実逃避という側面もあるが決してそれだけが学校で勉強漬けになる理由ではないのだ。
というのも前世の趣味が今世の趣味になっている俺だ。やりたいことはたくさんあるわけで。
俺は趣味に打ち込む時間を稼ぐために、帰宅したら極力勉強しなくても大丈夫なように学校ではがり勉に徹しているということだ。
そして今世、今一番熱中している趣味というのが──
「Hey guys! We have a 以下略ということでオッスお前らー」
画面の中で動き、喋る2Dキャラクター。
「今日も元気にヨウツベ君とのチキンレースの傍らゲームしていこうや!」
白髪ショートロリというもはや手垢まみれもいいところな、テンプレートをなぞった容姿。そこに多少個性を出しましたとでもいうように加えられた肌が灰色で瞳が紫のジト目、そして額に二本のちんまりとした角という属性。
そんな少女がその見た目や若干わざとらしい可愛らしい身振り手振りとは大きくかけ離れた言動をまるで羞恥心など存在しないとでもいうように披露する。
──ナナシノ・バン。通称BANちゃん。
Vtuberの総数が今や飽和気味な世において相対的に地味もいいところなビジュアルで汚い言動だけを頼りに配信活動をする個人勢Vtuberである。
そう、今世での大きな趣味とはVtuber活動。ゲームも創作活動も、それを皆と共有することもできることから始めた最高の趣味だ。
──俺はこの配信活動で、ノリと勢いを武器にVの道を駆け上がり、脱コミュ障を果たしコミュ力強々のツヨになってやる!