愛の敵を、証明すべし   作:十三

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■前回のあらすじ

 トリニティ自治区辺境の分教会を訪れていた《シスターフッド》の長、歌住サクラコ以下数名のシスターは、雇い主が不明の傭兵生徒の襲撃を受ける。分教会の責任者である神永メノウや、連絡を受けて駆け付けた《正義実現委員会》の協力もあってそれを退けたが、サクラコは襲撃自体に裏があると断定。自身も動きながら、外部機関である《シャーレ》に捜査要請を出したのであった。


中篇

 

 

 

 

 キヴォトスの中心地、サンクトゥムタワーより約30km離れた外殻地。

 様々なオフィスビルが立ち並ぶ一角、やや入り組んだ道を進んだ地区の中心部。そこにあるのは、周囲のそれらよりも頭一つ抜き出る高い建物。

 

 連邦生徒会直轄、連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)。そのオフィスビル。

 隣接している道路の交通量自体はそれほど多くない筈であるのに、そのビルを訪れる人は日々絶える事が無い。そしてその光景こそが、この組織が十全に活動している事の証左であるとも言えた。

 

 そしてこのビルの主であり、連邦捜査部の顧問(責任者)である”先生”は――。

 

 

 

 

「……ん? あぁ、早いね、二人とも。ごめんね、こんな体勢で出迎えちゃって」

 

「い、いえ。それは全然大丈夫なのですが……」

 

「せ、先生? もしかして酷くお疲れなのでは……?」

 

「えっと、まぁそうかもね。ここ三日ほどロクに眠れていなくて」

 

 

 ――完全に、睡眠不足に陥っていた。

 

 

 連邦捜査部、などという大仰な名前が掲げられてはいるが、この組織の実態はいわゆる「何でも屋」である。

 設立された当初は仕事内容すら定まっておらず、文字通り閑古鳥が鳴いていたのだが、設立から約一年が経とうという今、打って変わって仕事が大量に舞い込むようになった。

 その仕事内容はやはり様々である。学校や部活の存続を賭けた大仕事から、祭りの準備や不良生徒への対処、落し物の捜索まで。

 別にここでなくとも解決できるだろうと先生自身が判断したものは、依頼者の許可を得た上で信頼できる専門業者へ仕事を流す事もあるが、勿論その一連の手配をするのもまた先生である。こうして仕事の量は際限なく増え続けていくのである。

 

 そして、シャーレには先生以外の正規雇用職員が存在しない。

 否、建前上は“部活”を名乗っている以上、部員と呼ぶのが正しいのかもしれない。特定の学校に所属しているわけではないシャーレに常駐できる生徒は存在せず、先生の世話になった生徒達が厚意で“シャーレ当番”なるものを作り上げ、持ち回りで業務の手伝いなどを行っているが、それでも追いついていないのが現状である。

 

 結果的に先生は徹夜上等の日々を過ごすようになり、過労気味で倒れて緊急搬送を食らったのも一度や二度ではない。

 その度に各学校の医療業務に携わる生徒から烈火のごとく怒られたり泣きそうになられたりするので、当人としても気を付けてはいるのだが……それでもアイマスクとエナジードリンクが手放せない日常を送らざるを得ないのだ。

 

 そして今日も、来訪の連絡は受けていたのにソファーで仮眠したまま時間を迎えてしまっただらしない大人の姿がそこにはあった。

 

 

「大丈夫大丈夫。この前徹夜してたらフウカにガチギレされたから毎日三時間は寝るようにしてる」

 

「それは大丈夫とは言いません‼」

 

「あ、あの、もう一度ゆっくりと睡眠を取られた方が……」

 

 目の下に薄いクマを作った先生に対して、シャーレを訪れた二人組――トリニティ総合学園《シスターフッド》所属のマリーとヒナタは叱責と困惑の様子を見せる。

 無論彼女らも、未だ生徒である自分たちと大人である先生では仕事量が違う事は充分承知している。それでも、無茶をしてまた病院のベッドのお世話になる可能性がある先生をこのまま見過ごせるほど薄情ではない。

 半ば無理矢理にでも睡眠を取ってもらおうと思っていた二人であったが、その厚意をありがたく受け取った上で、先生はソファーから立ち上がった。

 

「ありがとね、マリー、ヒナタ。でも結構緊急の要件なんでしょ?」

 

「……分かってしまいますか?」

 

「まぁ、ね。他の子ならともかく、君たち二人が“今日中にお話ししたい事が”なんて言ってきたら察する事はできるよ。――あぁ、別に迷惑なんかじゃない。私でどうにかなるような事なら、喜んで聞かせてもらうよ」

 

 直後、浅い眠りからの寝起き直後だとは思わせない表情に切り替える先生。

 その意識の切り替えの速さに二人ともが息を呑むが、何か声を出す前にベッド代わりにしていたソファーから立ち上がる。

 

「マリーもヒナタも紅茶の方が好きだったよね? 安物のパック紅茶しかないけど大丈夫?」

 

「い、いえ‼ 私が淹れてきますので先生は座っていてください‼」

 

 普段はお淑やかだが、時折妙に押しが強くなるマリーに促されて再びソファーに沈む先生。自主的ではなくとも、この世界のヘイローを持つ少女たちに膂力で勝る事は不可能だ。こういう場合は逆らわないに限ると、この一年間で先生は学んでいた。

 

「しかし、トリニティも大変だね。ミカの聴聞会が迫っているって言うのに、また何かトラブルがあったのかい?」

 

「え、えぇ。少し先生にご相談というか、ご協力していただきたい事がありまして……」

 

「ヒナタだけならまだしも、マリーも着いているとなると《シスターフッド》からの正式要請かな? 少し長い話になりそうだね」

 

 ひどく自然体な先生であったが、その両目には徐々に真剣な色が帯び始めた。

 ヒナタはその眼に見覚えがあった。かつて自分の不注意で《シスターフッド》が保管していた古文書を文字通り粉々にしてしまい、その復元を手伝って貰った時。あの時は物事を解決に導くために四苦八苦したものだったが、それでも先生は最後まで自分に付き合ってくれた。最後まで、それこそ自分が諦めようとした時にさえ、先生はより良い最善策を得るために奔走してくれた。

 この人は信頼できる大人の方だ。心の底からそう思えたからこそ、今日ここに足を運ぶことにも一切の躊躇が無かった。

 

 ソファーの背もたれから身体を離し、少し長い話を聞く体勢を取った先生に対して、ヒナタは一足早く状況説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……成程ね」

 

 状況を噛み砕き、ゆっくりと飲み込むように、先生はその一言だけをまず吐き出した。

 

「ゲヘナ自治区に隣接したトリニティ自治区内にある分教会が武装集団に襲撃された、か。それは割と大問題だ。……とりあえず、誰も大きな怪我をしなかったようで安心したよ」

 

「ありがとうございます。とはいえ、私は子供たちを避難させて連絡をしただけに過ぎなかったのですけど」

 

「そ、そんな事は。私だって後方でグレネードランチャーを撃っているだけでしたし」

 

「いやいや、二人とも頑張ったね。――とはいえ、だ」

 

 先生は紅茶に口を付け、一拍置いてから脳内で反芻した意見を述べていく。

 

「《正義実現委員会》や《トリニティ自警団》がその件で動いたという話は聞いていないね。……その二つの組織が動いていないって事は、《ティーパーティー》そのものに話が上がっていないって事かな?」

 

「……はい。その通りです」

 

「昨日、所用でゲヘナに行ってね。《風紀委員会》にも顔を出したんだけど、取り立てて別動隊を編成しているような様子もなかった。元情報部のヒナがこの事について気付いていない筈が無いから、今はお互い事を荒立てたくない、って所かな?」

 

 時期が時期だからこそ、割と面倒な事になったとも言える。

 どちらか一方の学園で騒ぎ立てれば、その影響は台風時の波風よりも早く広がっていく。トリニティの生徒は「教会を狙うなど卑怯卑劣。やはりゲヘナと和解など不可能だ‼」と騒ぎ、ゲヘナの生徒は「我々に濡れ衣を着せるための自作自演だ‼」と騒ぐのは目に見えている。そうなると、両校の関係修復はほぼ不可能になると見ていいだろう。

 

 ヒナタとマリーの頬に、一筋の汗が流れる。

 シャーレのモットーの一つに「如何なる学校の生徒の相談でも受け付ける」というものがある。その為、先生の情報網は異様なほどに広い。

 何せその情報力を求めて、学校のトップが直接勧誘を仕掛けてくるレベルである。先生はその全てを断り続けているが、どこか一つの学校が先生を独占しないよう、“シャーレ当番”に参加している生徒たちの間で協定が結ばれているほどだ。

 そんな先生に思考を先回りされると、思惑が全て見透かされているような感覚が走る。無論当人にそんな意識はなく、今のは単に情報の共有をしただけに過ぎない。

 

 彼の考えとしては、《シスターフッド》の行動は間違っていないというものだった。

 色々と神経質になっている今のトリニティ内で徒に騒ぎを広げるべきではないし、そうなってしまえば騒ぎを助長した張本人として《シスターフッド》も少なからずの被害を被る事となる。

 《ティーパーティー》が半分機能停止に追いやられている現状で基本的に中立を保っている組織にまで飛び火が発生するのは避けるべきだろう。とはいえ――。

 

「情報封鎖も長くは持たないだろうね。……それで? 《シスターフッド》責任者、歌住サクラコさんからの依頼内容は何かな?」

 

 サクラコ本人から依頼内容が聞けない理由も大まかに理解できる。

 念には念を入れたのだろう。シャーレを直接訪ねて他の生徒から情報が洩れればそれでアウト。通話をしようにも盗聴されている危険性が無きにしも非ず。

 そしてその懸念はある意味正解だ。本日マリーとヒナタの二人が訪れるという事で、ミレニアムの《ヴェリタス》副部長である各務(かがみ)チヒロにお願いして、同部の音瀬(おとせ)コタマがシャーレに仕掛けた盗聴器を一斉排除してもらった。

 彼女が盗聴器を仕掛けるのはいつもの事なので通常時はスルーしているのだが、流石に依頼の話が来る時などは小鈎(おまがり)ハレ特製の装置からジャミング電波を出すか、チヒロに直接除去してもらっている。当然、シャーレに普段来ない生徒がそんな裏事情など知らない為、警戒自体は正しいのだ。

 

「はい。『分教会襲撃事件の首謀者の特定』――それが依頼内容です」

 

「き、期限については仰っていませんでしたけど、「先生ならご理解いただけると思います」と」

 

「買い被っているようにも思えるけど……成程。如何に彼女と言えどティーパーティー(ナギサ)を欺き続けるのは三~四日が限度かな。タイムリミットもその辺りだと考えると――余裕は無いね」

 

 本来先生は、生徒同士の話し合いや喧嘩で済ませられる問題であれば必要以上に深く介入することは無い。

 生徒の自主性を重んじ、生徒の成長を促す。そしてそれに伴って発生した責任を問う案件は先生自身が処理をする。教育者としての最低限の義務として、彼はそれを常に守るよう努めていた。

 

 だが、今回の件は違う。下手をすれば正規の武装組織同士の全面対決になる危険性を孕んでいる以上、積極的に動かざるを得ない。

 

 生徒が先生を頼る事はあっても、先生が生徒を頼る事があってはならない――キヴォトス(ここ)に来たばかりの頃はそう思っていたのだが、その考えが傲慢であるという事もすぐに思い知らされた。

 ここには自分よりも遥かに仕事が出来る生徒達がたくさんいる。自分よりも遥かに強い生徒達がたくさんいる。そんな子達に支えられながら、その分だけ自分も彼女たちを支える。――いつの間にか、それが当たり前の光景になっていた。

 だからこそ、先生がそう決めた瞬間に躊躇いなく自分のスマートフォンを取り出したのも、当たり前の事だったと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

――*――*――

 

 

 

「トリニティ学区内で武器取引や傭兵斡旋が出来るような場所、ですか?」

 

 トリニティ学区郊外の公園。その東屋のベンチに座った状態で、守月(もりつき)スズミは聞き返した。

 日課にしている《トリニティ自警団》のパトロールの最中、一息つこうと公園の自販機で飲み物を買った直後に先生からかかってきた電話に、彼女は0.5コールという神速で反応した。因みに普段あまり私生活に拘らない彼女にしては珍しく、先生からの着信音は別に登録してあったりする。

 またトリニティを来訪する際のボディーガードの依頼だろうかと思い電話を取ったが、そこから聞かされたのは彼女自身瞠目せざるを得ないような内容だった。

 

 確かに《トリニティ自警団》は学園の正式な部活ではない。故に部費も存在しておらず、所属している生徒は自主的に学区内をパトロールするだけの存在に過ぎない。

 だから、正式な治安維持組織である《正義実現委員会》が秘匿している事件に関して何も知らないのも無理はない。だがそれでも、小さな子供たちもいた分教会を傭兵が襲撃するなどと言う、“正義”とは最もかけ離れた蛮行が行われたことに対して、彼女が怒りを募らせたのも無理からぬことだろう。

 しかしその内なる怒りを霧散させたのも、また先生の声だった。

 

『心当たりは無いかい?』

 

「……無い事はありません。巡回する中でそういった取引の現場を見た事はあります。トリニティ自治区はご存知の通り古い遺跡や廃棄された旧街区なども多いですから、そういった場所で違法取引が行われるパターンが多いですね」

 

 ですが、と前置きしてスズミは続けた。

 

「そういった場所は我々自警団や《正義実現委員会》の方々が重点的にパトロールしています。お恥ずかしい話ながら検挙率が高すぎて、最近では人気が少ない場所でたむろする者達も少なくなってきまして」

 

『大口の取引もあまり行われなくなってきた?』

 

「あくまでも我々の知る範囲内では、ですが。ああいった場所に監視カメラや監視ドローンを仕掛けようにも、死角が多すぎて役に立ちませんし、地下に潜られたら流石に発見は難しくなります。……ですが昨今の出来事を鑑みて、パトロールそのものもかなり強化されています。この現状下で、大々的な取引をしようとする者もいないでしょう」

 

 スズミ自身も、学業の傍ら巡回の時間を増やしており、《正義実現委員会》では手が回らないような郊外の住宅街や自然公園内などを、同僚たちと共に歩き回っている。

 自分たちの足で集めた情報こそが絶対だと思えるほど高慢ではないつもりだが、少なくとも事実だけを述べるのであれば、数十人単位の傭兵が特定の組織に雇われたという情報は入ってこなかったし、数台の輸送車両や分隊支援火器クラスの取引が行われたという知らせも無かった。

 

 だがその時点で、スズミも先生が知りたい情報が何であるのかを理解していた。「情報が無い」だけでは手がかりそのものが途切れてしまう。だから今必要なのは、次に繋げられる僅かな情報の糸だ。

 

「もし、その類の取引が行われるのだとしたら、D.U.(キヴォトス中央首都地域)のブラックマーケット辺りが怪しいかもしれません」

 

 確証はない。経験則から来る憶測でしかない。先生を失望させてしまうだろうか、という要らぬ心配が一瞬だけ頭を過るが、通話先の先生は「あ”~……」と気の抜けたような相槌をした。

 

『スズミもそう思う?』

 

「可能性の高さを追求するのでしたら」

 

『あの辺りにはあまり良い思い出が無いんだけど……仕方ないか。()()()に協力してもらいつつ捜査してみるよ』

 

「先生のご要望なら、私も協力致します」

 

 モノ探しそのものが得意なわけではないが、警護であればそれなりに経験がある。そう思っての提案だったのだが。

 

『ありがとうね、スズミ。でもスズミには()()()で動いてもらう事になるかもしれない。お願いできるかな?』

 

 “別の事”。正直なところ、《正義実現委員会》ではなく自分が頼られたことで何となく想像はできていた。

 自警団に属する生徒が着る制服は灰色。普通の学園生活を謳歌する生徒が着る白でもなく、正義を執行する生徒が着る黒でもない。その狭間を歩きながら、自分たちだけの正義を為し、平穏を守る。権力に与せず、権力に守られない自分達だからこそ為せる仕事があるのだとしたら――他ならぬスズミが断る理由など有りはしない。

 

「――お任せください先生。必ずやご期待に沿ってみせます」

 

 

 

 

 

 

 

――*――*――

 

 

 

「はい、便利屋68の陸八魔です」

 

 窓のブラインドから漏れる陽の光に照らされながら、葡萄色(ワインレッド)のロングコートを羽織った少女――陸八魔(りくはちま)アルが、事務所にかかってきた電話を取る。

 

 ゲヘナ学園の部活の一つである《便利屋68》。しかしながら部活とは名ばかりで、学園の校則に反した運営をしている為、部活としても会社としても本来は存在していない。

 違法運営が祟って《風紀委員会》にも度々目を付けられている組織だが、裏社会では(割と悪い意味で)目立ってきていたりもする。

 そんな会社の経営は基本的に火の車であり、依頼とあれば二つ返事で飛びつき、痛い目に遭う事もしばしば……なのだが、そんな不憫にもめげずに今日も社長は受話器を取った。

 

『やぁ、アル。今日も元気に頑張ってる?』

 

「あ、あら先生? ここに電話してくるなんて珍しいわね」

 

 陸八魔アルにとって先生は、頼りになる大人であり、後援者であり、そして未来の外部経営顧問でもある。個人的にも結構親しくしている為、何か用事がある際はモモトークで行うのが通例だった。

 

「え? 先生から電話? アルちゃん私にも代わって~♪」

 

「ムツキ、邪魔するのはやめなって」

 

 アルと同級生の浅黄(あさぎ)ムツキと、それを諫める学年が一つ上の鬼方(おにかた)カヨコ。そしてその様子を遠くからオロオロして眺めている最年少の伊草(いぐさ)ハルカ。この四人が、問題児集団《便利屋68》の全メンバーであった。

 基本的に閑古鳥が鳴いているこの会社に仕事の電話が舞い込んでくることは滅多にない。あっても小銭稼ぎにしかならない仕事がほとんどなので、今回先生からかかってきた電話も、少し差異はあれど世間話の範疇だろうと、そう思っていた。

 

『――君たちに、仕事の依頼をしたくてね』

 

 その瞬間、アルの双眸が一瞬真剣みを帯びた。普段はふざけ合っている他の面々も、その空気を察して口を噤む。小悪魔的な言動が日常茶飯事のムツキですら、少し驚いた様な表情をしていた。

 

「久し振りね。先生からそんな話が来るなんて」

 

 便利屋と行動を共にする事はあっても、彼が正式に彼女たちに仕事を依頼して来た事は少ない。

 確かにアルが仲間たちと共に便利屋を始めた最初の理由は「アウトローな事がしたかった」という至極曖昧なものであったが、活動を続けていくうちにいつしかそれなりのプライドのようなものも芽生えてきた。

 先生に“生徒”扱いされるのは好きだ。それは全員がそう思っている。既にそんなものは放り捨てた筈なのに、懐古に似た感情と、それを押しのける程の喜楽が湧き上がってくる。

 

 だが、それと同じくらいに。

 同じ“社会人”としての立場で話してくれる先生もまた好きなのだ。

 

「どんな仕事かしら? 他ならぬ先生の頼みなら、《便利屋68》の総力を挙げてこなしてみせるわよ」

 

『頼もしいね。じゃあまず事のあらましから話そうか。――他言無用でお願いするよ』

 

 それを聞いた直後、アルは他の社員に向かって手招きをする。便利屋の固定電話は「レトロでカッコいいから」という理由だけで購入した旧式の黒電話であるため、全員が先生の話を聞くためにはおしくらまんじゅうもかくやと言うほどに密着しなくてはならない。

 結果的にかなり間抜けな光景になってしまったが、その後の先生の声を媒体に紡がれた事実は、密着した際の暑さを忘れさせるだけの内容ではあった。

 

「先生、《万魔殿(パンデモニウムソサエティー)》がやらかした可能性は?」

 

 メンバーの中ではそれなりにゲヘナの内部事情にも精通しているカヨコが、最も有り得る可能性を訊く。

 

『多分それは無いね。条約の一件があってからヒナ達がかなり警戒を割いているみたいだし、昨日イロハの――《万魔殿(パンデモニウムソサエティー)》の生徒の所に寄った時にもそんな話は出てこなかった』

 

「……流石にマコト(あのバカ)でも、仲間に対しても秘密にした状態でそんな事はできない、か。色々と企むのはいつもの事だけど、やってること自体は単純だからね」

 

『というかカヨコ、分かっていて訊いたでしょ?』

 

「まぁ、ね。ゲヘナの中でもトリニティに対して嫌悪感を示す生徒はいるけど、トリニティからゲヘナに対してのそれよりかは薄いんじゃないかな? 良くも悪くもその場のノリで動いてることが多いからね、ゲヘナ(ウチ)は。……ウチの社長みたいに」

 

「えっ? そ、そこまで行き当たりばったりじゃないわよ私は⁉」

 

「いやー、アルちゃんは結構その場のノリで動いてると思うなー」

 

「で、でもそんなアル様が、その、す、好きですから……」

 

 危うくいつものように話が脱線しかけた為、アルが一つ咳払いをして話を整える。

 

「それで先生? 本題のご用命は何かしら?」

 

『D.U.のブラックマーケットでの調査、だね。トリニティ自治区内での戦闘行為を主任務とした傭兵生徒を雇った存在の調査。可能であれば輸送車両や分隊支援火器を調達した業者も』

 

「か、かなり複雑、ですね」

 

「ねぇ先生~。面倒臭くなったら全部吹っ飛ばしちゃってもいい~?」

 

『駄目でーす』

 

「あはっ♪」

 

「ムツキ、静かに」

 

 ハルカは複雑だと呟いたが、実際のところカヨコには既に目星がついていた。社長(ボス)はどうだろうかと顔を覗き込むと、何も分かっていなさそうな顔で首を傾げられた。思わずコケそうになったが、まぁいつもの事かと後ろ髪を掻く。

 

「で? 状況を鑑みると時間は掛けられない訳でしょ?」

 

『勿論私の方でも探らせてもらうけど、そうだね』

 

「私たち以外にも、調査を要請した方が良いんじゃない?」

 

 カヨコの言葉は、ある意味で尤もだった。

 調査依頼という事であれば、便利屋以外にも適当な組織はある筈である。身内贔屓であるという事を差し引いても、便利屋だけに固執する理由はない。

 

『そうだね、君達にしか依頼しない理由は二つあるんだけど。まず一つは機密性の高さと適性の高さかな。勝手知ったる君たち相手なら私も安心して情報を預けられるし、ブラックマーケットでの情報収集任務なら君たちに頼むのが筋だと思ったからね』

 

 《便利屋68》の依頼達成率は、お世辞にも高いとは言い難い。

 個々人の力量が劣っているというわけではなく、チームワークが悪いというわけでもない。ただ想定外の事態が頻発したり、どこからか不幸が飛来したり、状況が致命的に噛み合わなかったりした結果、周囲に多大な被害を齎した末に失敗する事が多く、その悪い噂が更に依頼の数を少なくさせるという悪循環に陥っている。

 

 故に報酬さえ貰えれば多少危険な案件でも受けるし、それが世話になった先生からのものであれば尚の事だ。

 ただそれでも、理由だけはちゃんと聞いておきたいと思ったカヨコの判断は決して間違ったものではないと言えるだろう。

 

『二つ目の理由は、今ゲヘナ方面で頼れるのが君たちしかいないからだね』

 

「……成程。今の状況を考えれば《風紀委員会》も動かせないもんね。調査任務に適したのが私たち以外にはいなかった、と」

 

 皮肉っぽく言ってはいたが、先生に頼られた事それ自体はカヨコも嬉しかったのだ。それを相手に悟らせまいと、上司の方に向き直る。

 

「どうする? 社長。難しい仕事になると思うけど」

 

「私の判断は変わらないわよ? さっきも言った通り、他ならぬ先生からの要請なら《便利屋68》の沽券に掛けてやってみせるわ。――でも」

 

 その言葉を聞いた瞬間、カヨコは電話口から少し離れた。彼女は確かにこの組織でのNo.2であり、参謀(ブレーン)的立場ではあるが、それでも代表は陸八魔アルという少女だ。彼女が判断と交渉を行うというのなら、口を挟む必要もなくなる。

 

「“仕事の依頼”、だったわね? そうだとしたら、たとえ先生が相手であっても報酬はいただくわ。そうしないと、社員にも示しがつかないもの」

 

 アルのその発言は尤もだった。

 成果を挙げるのに手間取っているとはいえ、通常であれば金銭を対価に仕事を請け負う裏稼業の組織だ。信用と信頼という目に見えないものを金という分かり易いもので置き換える事で契約を成立させる。

 表で事業を行う一般企業ですらそれが当たり前なのだ。裏稼業であれば尚の事。そこに例外が存在してはならない。こちら側に明確な落ち度がない限り、タダ働きなどと言うのは以ての外だ。

 

 《便利屋68》代表である彼女は、そこまで深く組織運営というものを知っているわけではない。行き当たりばったりで動く事も珍しくない。それでも、「ナメられたら終わり」の稼業の最低限の常識は知っていた。

 

『勿論だよ。適正金額を私のポケットマネーから出そう。――ただしそれは前金だ。成功した暁には追加報酬も出すよ』

 

「……念のため追加報酬の内容を訊いてもいいかしら?」

 

 追加報酬、という言葉に反応して、ムツキもハルカも、一度は離れたカヨコですらも再び集まって来た。

 

『前に仕事の関係で百鬼夜行連合自治区にある老舗高級ホテルを経営している社長さんと会って意気投合してね。最高級スイート待遇4泊5日分の招待券を貰ったんだ。それを渡すから、便利屋の皆で楽しんできて欲しいな』

 

 その後、先生の口から聞かされたホテルの名前をカヨコが検索すると、間違いなく一流の高級ホテルである事が分かった。そのスイート待遇の4泊5日4人分の滞在費となれば、本来であれば3桁万行ってもおかしくない程だ。

 案の定ムツキは大喜びしており、ハルカもそれに釣られて少々卑屈さは残るものの笑みを浮かべていた。

 

『それと、その社長と話していた時に調査依頼を任せられる会社に心当たりは無いかという話になってね。その社長の名刺を渡すから、話だけでも聞いてあげてくれないかな?』

 

 それに食いついたのはアルだ。いや、宿泊券の時点で大分浮ついてはいたのだが、それでもやはり経営者。一流企業のトップからのご指名という、あまりにも美味しいビジネスチャンスにはきっちりと食いついた。

 

 最終的に、先生との仕事の契約は成立した。流石に電話上での口約束ではマズいので早々に書面媒体での契約書が届く運びになったが、アルは椅子の背もたれに深く腰掛けて息を吐いた。

 

「社長、喜ぶのはまだ早いよ」

 

「分かってるわよ、カヨコ。ムツキ、ハルカ、お金に糸目は付けないから装備はちゃんと整えておいて。何が何でも成功させるわよ‼」

 

「あはっ、最高級スイート楽しみだな~☆」

 

「が、頑張ります。いつも以上に」

 

「……分かってると思うけど、戦闘任務じゃないからね」

 

 何故鉄火場前提で仕事をしようとしているのだろうか。いやまぁ、そうなる可能性は高いのだが。

 そう思いながら、カヨコも愛銃《デモンズロア》を撫でる。元より血の気が多いゲヘナのはみ出し者の集まりのようなものだ。もし()()が必要であるのだとしたら、行使するのに何の躊躇いもない。

 

「さぁ、先生から正式な契約書が届き次第動くわよ」

 

「アルちゃんいつも以上にやる気だねぇ。やっぱり宿泊券が効いたのかな? それとも新規案件の方?」

 

「どちらもとても魅力的だわ。でもね」

 

 よく見ると、その赤みがかった琥珀色の双眸はやけにキラキラと輝いていた。

 

 

「信頼する依頼者(クライアント)からやって来た、極秘情報いっぱいの調査任務。失敗は許されず、必ずやり遂げなくてはならない大仕事。――最高にアウトローじゃない‼」

 

 そう言い切ったアルを見て、やはりカヨコは一つ溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

――*――*――

 

 

 

『――聞いていたよね、コタマ?』

 

 その連絡が突然来た時、あぁ、やっぱりバレていたかと音瀬コタマは観念した。

 数日前、副部長(チヒロ)に発見されて没収されたシャーレの盗聴器。そこまでは彼女の想定内ではあった。

 盗聴という行為そのものはコタマの純然たる趣味であり、その対象が先生となれば気合が入るのもある意味では当然ではあるのだが、彼女の仕掛けた盗聴器がシャーレの防犯の一角を立派に担っているのもまた事実。

 実際、シャーレに届けられた届元が不明瞭な荷物に仕掛けられていた爆発物による被害を未然に防いだこともあり、そういった意味で()()()チヒロが見逃している盗聴器が複数個存在している。――無論、先生のプライベートにあまり深く踏み込み過ぎないという約束の下ではあるが。

 

 今回の一件に関しては、不慮の事故という表現が一番正しいかもしれない。

 通常、先生が他の学校の生徒と、“学校そのもの”が絡む依頼を行う際は盗聴機能を一時的にカットしている。個人的な趣向としては聞いてみたい気持ちはあるのだが、それで余計なトラブルに巻き込まれるのは本意ではないし、その影響で生徒会(セミナー)にでも睨まれたら面倒臭くなるからだ。

 

 その慣例に基づき、トリニティの二人が神妙な声色で話し始めた瞬間に盗聴中止のボタンに手を伸ばしていたのだが、その直後、隣で作業していたハレが寝ぼけて卓上にあったエナジードリンクを倒してしまい、中身が周囲にぶちまけられるというアクシデントに見舞われてしまった。

 機器が水没するという、おおよそ精密機械を扱う者にとってはあってはならない危険を前にして事態の処理に尽力していた為に、その最中の声はちゃんと全部拾ってしまっていた。本来であれば聞き流しているはずなのだが、持ち前の出歯亀精神が発動して、見事に全部聞いてしまっていたのである。

 

 怒られるのならば甘んじて受け入れようと覚悟はしていたが、スマートフォンから聞こえる先生の声色から察するに、それだけではない事だけは分かった。

 

『まぁこの盗聴器に関しては前々から気付いていたし、防犯用だから怒りはしないよ。その代わり、手伝ってくれるかな?』

 

 状況的にYesとしか言えない場面ではあるが、そう言われずとも首を縦に振る程度には先生に対して特別な感情を抱いている。

 

「……ブラックマーケットの調査を行っているゲヘナの便利屋の生徒のデータサポート、と言ったところですか? 今回のトリニティの一件に対しての情報漏洩阻止に関しては当然の事として」

 

『ご明察。君たちとしても流石にトリニティとゲヘナの一大抗争に発展しかねない情報を扱うリスクは避けたいでしょう? ブラックマーケットは物理的に情報遮断しているところも多いから、出来る範囲でお願いしたいんだけど』

 

 確かに、D.U.内のブラックマーケットは区画によっては完全な情報遮断を行っている所もある。そういう場所にも裏技で潜り込む事もできなくはないのだが、潜り込んだ先でカウンターハッキングでも食らって逆探知などをされれば目も当てられない。藪をつついて蛇を出すような事は今までも何回も経験してきたが、流石の彼女ら(ハッカー)でも最低限時と場所は弁えるものだ。

 

「異存はありません。エデン条約そのものにはあまり興味がありませんでしたが、もしゲヘナとトリニティが抗争状態になって、ミレニアムまで余波が飛んで来るのは本意ではありませんから」

 

『ありがとう。ハレとマキはそこにいるかな? 彼女たちにも協力を要請したいんだけど……』

 

「ハレは三徹目でしたので今寝落ちしていますね。マキは先日ミレニアムの校舎にスプレーアートをしていたのがバレてセミナーに呼び出されたので説教の真っ最中かと」

 

『相変わらずだね』

 

「全くです。二人とも、私のように普通に日々を過ごせないものでしょうか」

 

『最初に言っておくけど私はツッコまないからね?』

 

 それは残念、と思いながらも、二人に協力をお願いするという事自体には賛成していた。

 ハレは勿論、未だ粗削りな所は垣間見えるが、マキのハッカーとしての腕前もかなりのものだ。伊達にミレニアムサイエンススクール最高のハッカー集団《ヴェリタス》の名を背負っているわけではない。

 突き詰めるのは真理。それを追い求めるのは向上心と好奇心。そんな自分たちが、闇市の情報探り程度、()()()()()()()()()

 

「二人には私から言っておきます。ところで、副部長には声を掛けないのですか?」

 

 現在、《ヴェリタス》の部長であり、ミレニアムでも歴代三名しか存在していないキヴォトス最高峰の頭脳の証である《全知》の称号を持つヒマリは、現在《特異現象捜査部》の部長を兼任しており、不在となっている。

 故に、現状この部の最高責任者は副部長であるチヒロになる。彼女のハッカーとしての実力は非常に高く、それを良く知っているはずの先生が何故彼女に声を掛けなかったのかが、純粋に疑問だった。

 

『チヒロには別の仕事をお願いしててね。ミレニアム権限で限界があるようなら、一時的にシャーレの管理者権限を使っても構わないから。……ただし、悪用はしないでね?』

 

「………………えぇ、分かっています」

 

『今の微妙な間については何も言わない事にするよ。――そうだ、報酬は何が良い? 前に手伝って貰った時にチヒロに同じ話をしたんだけど、「先生からお金は受け取れないから」って言われちゃってね』

 

「報酬、ですか」

 

 素直に言ってしまえば幾らでも考え着くのだが、それを提示したところで先生は良い顔をしないであろう事は分かり切っていた。金銭ではなく、他のメンバーも喜ぶような報酬。

 それを少し考えていると、コタマの脳に妙案が浮かんだ。

 

「では、先生が作ったお弁当を食べてみたいです」

 

『弁当?』

 

「先生がゲヘナの生徒に料理を習っているという情報を小耳に挟みまして。その、私達も堪能してみたいな、と」

 

『それも盗聴からの情報でしょ……まぁいいか。じゃあ今度ミレニアムに行くときに持って行くね。皆の分も』

 

 そう言って、先生は通話を終了した。コタマは椅子に深く座り直してから、一つ息を吐く。

 大事な仕事だという事は理解している。すぐにでも取り掛かるべきである事も。しかし、先生が自分たちに“ご褒美”を用意してくれるという事実に、コタマは珍しく少しだけ口元を緩ませていた。

 すると、隣の席から乾いた音が鳴った。音の方を見るために視線を下げると、床に空になったエナジードリンクの缶が転がっていた。

 

「起きましたか、ハレ」

 

「……うん」

 

「その様子だと、途中から起きていましたね? 事のあらましと、これからすべき事の説明は必要ですか?」

 

「いらない、かな」

 

 眠たげな瞳をこすりながら、画面に向き直るハレ。

 

「先生には色々と迷惑を掛けちゃっているから、最大限協力する。……お弁当を作ってきてくれるなら、少し生活リズムを整えておかなきゃだし」

 

「じゃあまずは、そのエナドリの空き缶を片付けましょうか。私のスペースまで侵食されているので。マキも、そろそろ帰ってくる頃でしょうし、ね」

 

「……そうしよっか」

 

 情報収集、及び情報操作に於いてミレニアムでも屈指の部活の仕事準備。

 それは、他者が思っているよりも地味な作業から始まった。

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 方々の生徒に連絡を取った後、先生はスマートフォンをテーブルの上に置いて、目を伏せたまま天井を仰いだ。

 全員が快く応じてくれたのはありがたい。安全が約束されているというわけではない為に心配の種は尽きないが、何はともあれここまでやったからには、ふかふかのベッドでの熟睡はまた少し先の事になりそうだった。

 

「マリー、ヒナタ」

 

「「は、はい」」

 

「今日はありがとうね。折角来てもらったんだし、少しゆっくりして行って。私はちょっと外に出るから」

 

「えっ? えっ? お、お仕事ですか?」

 

「い、いけません先生‼ 差し出がましい事だとは思いますけれど、お体を休めないと……‼」

 

 二人の目から見ても、先生の体調は決して絶好調とは程遠いように見えた。だが同時に分かってもいる。この人が、自分たちの制止程度で止まる方ではないという事を。

 

「ごめんね。でも生徒達に動いて貰っている時に、私だけずっと休んでいるわけにはいかないからさ」

 

「っ……」

 

「流石に今から交渉するところは電話越しというわけにはいかないからね。直接こちらから出向いて話さないと」

 

 ハンガーにかけてあった、左胸の所に《シャーレ》の刺繡が施された愛用のスーツを羽織り、襟首を正す。その一連の流れは一分の隙も無い程に洗練されていて、その様子を見た二人は今度こそ口を噤んでしまう。

 そもそもがシスターフッド(こちら)からの協力要請なのだ。であれば、先生が動くと決めた時にそれを止める権利などありはしない。

 それでも自分たちに出来ることは無いかと言おうとした直前、先生が口を開いた。

 

「そうだ、二人とも。教会に戻ったらサクラコに伝えて欲しい事があるんだ」

 

「は、はい。必ず‼」

 

「そう気負わなくても大丈夫だよ。長い言葉じゃないから」

 

 必要以上に気を張る二人に近づいて、先生はサクラコに伝える言葉を口にする。二人はその短い言葉を聞いて小さく首を傾げていたが、それでも構わなかった。

 

 こうして、長いようで短い先生と生徒の奔走が始まったのであった。

 

 

 

 






各生徒の一人称、二人称、口調とかを解釈違い無しで書くの難しすぎんか?(出来ているとは言っていない)

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