米花町の人魂さん   作:鈴北けいと

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人魂さんは今日も米花町で笑っている

はぁい、こんにちはこんばんはおはようございます、人魂さんです。

先日ゼロ執がまぁ無事に終わりまして。国際会議場を狙撃したヒロさんは降谷さんにこってり怒られ、今はポアロでバイト中です。安室さんの多発する早退欠勤の穴埋めを命ぜられたんだとか。ドンマイ。

私はヒロさんら以外に見られることもないので、今日もゆるゆると米花町内を散策中。劇場版ほどの威力じゃなくとも事件は起きるし、悲鳴は上がるし、名探偵はとんでくる。今日も元気に逝ってみよー!のノリで始まる殺人事件は、もはや日課。

警察の皆さんが税金泥棒って言われるくらい事件が減ってやっと平和になるんだろうね。この世界は。

 

『安室さんがいないってことは近々何か動くかな。名探偵も嗅ぎつけてたし、こちらも情報収集始めますか。』

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

で、集めた結果、最近の目立った未解決事件がこれ。

 

・『連続ビル爆破事件』

・『連続児童誘拐事件』

・『連続死体消失事件』

 

連続連続って、すごいね。何より最後のやつ身に覚えがありすぎてツライ。あれだね、人魂さんの噂だね。死体が消えたと思ったら一ヶ月後に見つかるっていう、二百越えしてる案件。ヒロさんから聞いてはいたけど、マジで降谷さんが担当してたとは…。

ほんと、私、人魂で良かった!!殴られたくはないもんね!!

 

浮かれ調子で警視庁に戻った私は、ヒロさんに見せられるまで、届いた文書に気が付かなかった。

 

「人魂さん!人魂さん!これ見て!」

 

『ん?どうした?』

 

「連続ビル爆破、児童誘拐、死体消失事件の犯人が名乗りをあげてきた!脅迫状だよ!」

 

そう言ってコピーした文書を机に置いて見せてくる。そこにはなんと…、人魂さんを名乗る犯人が、三つの事件は全て自分がやったもので、これからも犯行を続けていく、といった旨の文が書かれていた。

 

『は?』

 

「は?でしょ?俺、人魂さんは連続死体消失事件にしか関わってないと思ってたのに!」

 

『そーだよ!連続死体消失事件にしか関わってないよ!どー考えたってコイツ偽物!人魂さんが実在する人間なわけないじゃん!人魂さんはわ・た・し!』

 

人魂さんは爆破が嫌いだから爆破事件なんて起こさないし、児童を誘拐する手も足もない。憑依すればいけなくもないけど、ゼロ執以降やってない。許すまじニセモノ。私の名を語るなら一回死んでからにするんだな。

 

『ヒロさん!この三つの事件の詳しい資料ちょうだい!』

 

『コイツ絶対許さない!』

 

ゴリラと死神と人魂を敵に回した犯人、いい度胸じゃない。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

あれから三日。

新たな誘拐事件が発生。降谷さんと風見さんが同時に動き、私も独自で犯人が立て篭もったビルを見つけた。さて、ここで問題なのがメンバーだ。降谷さん、風見さん、私ときてあの名探偵が合流しないわけがない。このビル絶対爆発するね。

 

『てか、え…、私の出番なくね…?』

 

許さない、とか言っときながらやれる事がない。くそぉ。

 

仕方がないので、犯人の最後でも見届けようと降谷さんの後を追った私は、そこで目を覆いたくなる現実と直面することになる。

 

「コナン君!!!」

 

「動くな!!」

 

降谷さんと見知らぬ男の叫び声が響く。ビルの一室で対峙する大人たちの真ん中には、倒れている少年が一人。はい、我らが主人公でございますね。

これで意識なしときたら、あー、そういうことね、完全に理解した。つまり、だ、今回の児童誘拐の児童はコナン君ってことですね!大正解!これは囮なの?それとも素?あ、素。そっかぁ素かぁ。名探偵は名探偵でも、後ろから近づいてくる男に気付かないでちっこくなっちゃうタイプの名探偵だもんね…。ディスってないよ。

 

「俺に近づくな!近づいたら爆弾のスイッチを押す!俺が無事ここから脱出出来たら、爆弾のスイッチを押す!」

 

どっちみち押されるのか、爆弾のスイッチ。

なら、

 

「おとなしくその爆弾を解除しろ!」

 

先手必勝、犯人を制圧した方が早い。と考えたのか、降谷さんは一歩踏み出した。が、次の瞬間。

 

ドォォォォォォンッッッと凄まじい破壊音と共にビルが揺れた。窓ガラスが一斉に割れ、壁にヒビが入る。

 

『うわっ!爆破しやがった!』

 

「元からこのスイッチは何処にも繋がってねぇんだよ!お前が入ってきた瞬間からタイマーは動いていたのさ!」

 

そういった犯人の男は窓に足をかけ、飛んだ。

 

「俺の特技はパルクーーール!!」

 

「待てっ!クソ!ボクシングで殴る前に逃げやがった!」

 

「っコナン君!」

 

爆発の衝撃で崩れた床に名探偵が吸い込まれて行く。が、どう考えても降谷さんは間に合わない。

犯人を追いたい気持ちは山々だが、…致し方ない、命には変えられん。これは貸しだからな!

 

『風見さん、犯人逃げた!私追えないから風見さん追って!!』

 

伝言だけ残して、名探偵にダイブする。後悔は後で悔やむから後悔であって、今することじゃないね!これから仲良くしようや、コナン君!

 

「コナン君⁈無事か!」

 

『コナン君、ぶっじでーす!』

 

地に足つけて生存報告。かすり傷は許して欲しい。

 

「コナン君?…違う、貴様は誰だ?」

 

「ヒロさんの相棒です!おおっと、その拳は引っ込めてー。事件の最中に乱闘騒ぎ起こしてる暇ないですからね。今の私は見た目はコナン、中身は別人だと思えばいいです。まってまって!後でしっかり説明しますから!」

 

話してる間にも炎は迫ってくるし、ビルは崩れていく。まったくどんだけ爆弾設置したんだあのヤロー。覚えてろよ、夢枕に立って悪夢しか見れない呪いかけてやる。

 

なんとか瓦礫の合間をぬって五階から四階までたどり着いたものの、そこから先が塞がっていて通れない。おまけに爆発の炎上で視界が悪いときた。ここまでの道のりで何度か降谷さんが壁を破壊して活路を開いたりはしたけれど、それにも限界がある。

 

「あー、壁すり抜けてぇぇぇぇぇ!!!」

 

「バカなこと、言ってないで、手を、動かして、下さ、い…!」

 

「分かってますって!あぁクソッ!コナン君だったらボールで壁破壊出来るのに!」

 

憑依元の能力引き継げないのが不便すぎる!

 

「もし、無事に、助かったら、君の、名前、教えて、下さい、ね…。ヒロ、の、相棒」

 

「え?っちょ!やめてフラグ立てるの!って!えっ?降谷さん!降谷さん⁈」

 

慌てて降谷さんに近づくも意識がない。多分煙の吸いすぎだ…。

 

『やばぁ…。うそやろ…』

 

いきなり一人取り残されてしまった。

今から助けを呼ぼうにも救助は間に合わない。意識不明者二人、ビルの四階、迫りくる炎、見事に立てたフラグ。

 

『あーもう!私の平穏犠牲にしてやる!降谷さんとの約束守りたくないけど守ってやる!感謝しろよ二人ともぉっ!』

 

こうなった以上動けるのは私だけ。

私のこと見える人が一人や二人増えようが、もうどうにでもなれってんだ!

 

勢いよく降谷さんの体に憑依して、ポケットからスマホを取り出す。そこからワンコール。

 

「もしもしヒロさん!ねぇ降谷さんってビルの四階から飛び降りても生きてるよね⁈」

 

『は?よく分かんないけど生きてるんじゃね?』

 

はい、オッケー!

むんずとコナン君を小脇に抱えて、ひしゃげた窓枠に足をかける。ビルの下には降谷さんのRX7、きっといいクッションになってくれることだろう。

 

『さー、いくぞ!We can fly!』

 

宙に浮くいつもの感覚と、慣れない重力の力。

今度ジェットコースターに連れて行ってもらおう。

 

 

 

 

 

 

「で?これが、例の噂、人魂さんの正体なのか…?」

 

『はいそうです!降谷さん。ヒロさんの相棒で、風見さんの協力者の人魂さんです!以後お見知り置きを!』

 

「は?風見ぃぃ⁈」

 

警察病院の一室に元気な叫び声が響いた。

降谷さんの死に際、じゃなかった、意識を失う直前の約束をしっかりと守り、自己紹介ついでにヒロさんとお見舞いに来た私たち。コナン君には先程挨拶してきた。

 

予想通り、私が憑依した生者は人魂状態の私が見えるようになるようで、コナン君も降谷さんも大変気持ちの良い驚きっぷりでした。眼福。

 

ちなみにコナン君はかすり傷、降谷さんは両足骨折で済んだ。四階から落ちたのにね。

 

 

 

『やっぱり犯人、私の名を語って犯行を行なってたみたい。許すまじ』

 

「巷で有名な人魂さんの名を使えば、注目が集まると思ったんだと。死体消失は、名乗りをあげれば自分が人魂さんだと信じ込ませやすくなるからやったと言ってただけで、一切関係なかった。」

 

『そりゃそーだ。犯人私だし』

 

「よく僕の前で堂々と自白できるな…」

 

『お詫びに二百件分の殺人犯洗い出しといたから!』

 

死体は拝借したけど殺人はやってないからね!一部手伝ってはもらったけど犯人は私が見つけました!死体への憑依をやめた今、私だけじゃパソコンも資料も触れないからね。

 

「人魂なんてどう考えても逮捕出来ないじゃないか。こんなチンチクリン、どこで見つけてきたんだヒロ!」

 

『それが命の恩人への態度か』

 

「人魂さんに喧嘩売ると悪夢見るぞゼロ…」

 

「寝なければ問題ない」

 

「ヒェ。怪我人寝ろ」

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「あぁ、そうだ、人魂さん。」

 

『ん?』

 

「これあげる」

 

てっきり降谷さんへのお見舞いかと思っていた大きな紙袋から、ヒロさんがおもむろに何かを取り出す。

 

『へ?うさぎ?』

 

「それ、昔ヒロがゲーセンでとったやつ!まだ持ってたのか」

 

「かわいいだろ」

 

ヒロさんの手に収まっていたのは、全長三十センチほどのうさぎのぬいぐるみ 。色は警察官らしくさくら色。

 

『え?これをどうしろと?』

 

「人魂さん、手が欲しい足が欲しいって言ってたろ?死体への憑依もやめてるし、他に代わりになる物あるかなぁ、って考えてたらこれが出てきた。死体、生者、ってきたら人形でもいけるだろ。」

 

その発想はなかった。元が人間だからか、人間にしか憑依出来ないと思ってたけどそうか、その手があったか。

 

 

 

『おぉぉぉぉ!憑依出来た!!動かせる!これで捜査資料自分で盗み見れる!ありがとうヒロさん愛してる!!』

 

「おー、存分に使ってくれ〜」

 

後ろでベットに穴空いた音したけど、気のせい気のせい。あ、壁にクレーター出来てる。ダメだよ降谷さん、器物破損だよ。

 

「ヒロ…、その人形に名前はついてるのか?」

 

「え?ついてないけど…?人魂さんが入ってるから人魂さんでよくね?」

 

「今からその人形の名前はマッチだ」

 

「何故に⁈」

 

「あのフヨフヨ浮いたやつがすぐ消えそうなマッチそっくりだったから」

 

『遠回しに消えろって言われてね?』

 

「人魂0.48秒、人魂さん0.61秒、マッチ0.35秒。一番言うのに時間がかからないのが魅力だぞ」

 

「ゼロ、寝ろ」

 

『大丈夫だよ、ヒロさん』

 

ちょっと降谷さんのネクタイ全て赤色に変えてくるから。

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