米花町の人魂さん   作:鈴北けいと

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人魂さんは今日も米花町でやり返している

【爆弾だよ!全員集合!】

 

L○NEに投下したメッセージ。既読は一瞬で5、付いた。

 

【すぐ行く】

【すぐ行く】

【すぐ行く】

【動くな】

【俺のスマホ盗んだの人魂さんかぁぁぁ!!】

 

さぁ今日も元気にいってみよう!

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

コナン君、降谷さんと知り合ってからそこそこたった。あれから一度も死体に憑依していない私を誰か褒めてほしい。

 

ぬいぐるみの体を手に入れた私は、コナン君の傍にいたり、ヒロさんの傍にいたり、風見さんの手伝いをしたり、降谷さんを寝かしつけたりして過ごしている。え?どうやってあのゴリラを寝かしつけてるのかって?かんたんかんたん。こう、憑依して交感神経と副交感神経をパパ~っと強制的に切り替えれば、ほら!睡眠薬よりも効果絶大!体に優しい!強制入眠の完成!です!ってかんじ。

寝てる間の仕事を降谷さんが気にするもんだから、寝てる体をお借りして出来る範囲で仕事を代わってあげてる私、マジ天使だと思う。人魂だけど。

寝てる間まで社畜しないで下さい、、、と言った風見さんの言葉は優しいほほ笑みと共に無視された。

 

 

 

 

さて、仕事がひと段落したと思ったらフラグが立ったのだが聞いてくれるか?

明日からミラクルランドへ行くという死神御一行、そこにコナン君からお誘いがかかった。絶叫しなかった私はえらいと思う。ミラクルランド、スーパースネーク、八〇島シーパラダイス、リヴァイアサン、う、頭が!間違いなく劇場版第十作、探偵たちの鎮魂歌。少し前までゼロ執やってたのにね。時系列なんてなかったんだ。

ぶっちゃけ、リアルタイムで死人がでるわけじゃないし爆発も最小限の鎮魂歌はノーマークだった。私が怖いのは摩天楼だよ。あれはヤバい。動機も酷い。

 

 

 

馬車道の爆弾を何とかしちゃえばあとは犯人説得するだけだし、そのへんは主人公様にお任せしてお楽しみしよ~と考えている人魂さんであります。

コナン君に抱えられるようにしてレッドキャッスルにイン。そのまま依頼人をモニターで見たとき、ふと何か頭に浮かんだ気がしたがすぐに忘れてしまった。きっと重要なことじゃない。フリーパスがぁ、爆弾でぇ、エリアがぁ、無理に外すとぉ、ドカンッ、って説明されてるのを軽く聞き流して、私はこれから起こるドキドキわくわくに胸を躍らせていた。いたから気が付かなかった。気が付かなかったんだ。

 

―名探偵に置いて行かれたことに。

 

『は?』

 

気付くと椅子にポツンと一つ取り残されていた。

もともと事件となると周囲が見えなくなる癖はあった。後先考えずに突っ走るし、好奇心のまま行動することだってよくある。無理だってするし、今回みたいに蘭ねーちゃんが絡むとなおさらそれは大胆になる。だからストッパーとして最近は仕方なしに傍でアドバイスとかしてたのに。暴走すれば憑依して止めるし、ケガ防止に尽力したりもした。そりゃあ人魂さんの能力使えば、事件解決が少しカンニングっぽくなったりしたけど、安全第一ってことで貫いてきた。

のにのに、それなのに!お・い・て・い・か・れ・た!!憑依解除で追いかけることも出来るけど、そうなった場合ぬいぐるみは確実に回収される、てか現在進行形でされそう。ぬいぐるみは小さなリュックを背負っていて、その中にはスマホが入っている。そう、漏れたらめちゃくちゃやばい人たちの連絡先が入ったスマホがここにある。無理だよね、置いていけるわけねぇ。

 

『ヒロさんが自分もろとも打ち抜こうとしたレベルのスマホだよ!コナン君追うより大事に決まってんだろぉぉぉぉぉ!!』

 

飛んだ。

レッドキャッスルのバルコニーから飛んだ。

親方!空からウサギのかわいいぬいぐるみが!!って言ってくれる人はいなかった。

 

 

 

 

物陰に隠れてメッセージアプリを起動する。

 

【爆弾だよ!全員集合!】

 

公安組まで来てくれるらしい。ヒロさん、スマホ盗んだのは悪かった。私のスマホ今ちょっと諸事情で使えないんだわ。

 

 

そしてすまないな、名探偵。謎は解かなくても解決することだってあるんだ、そういう世界なんだ、前世持ちチートがここにいるからな。いや決して?おいて行かれたことに腹立ててるとか?お楽しみ奪われて腹いせとか?そういうのじゃないから。べっつに怒ってなんかないんだから。

 

 

 

 

―今作の白馬君、CV石田さんなんだよ!!生で聞きたかった!!!生で!!声!!聞きたかったの!!!録音しようと思ってたのに!!!おぎゃあ!!

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

動くな、の言いつけ守った私お利巧さん。荒れ果てた心に染み入るイケボぉ。呼んでよかった警察学校組。

謎を解くのが三度の飯より好きな名探偵に仕返しするなら、謎が解かれる前に解いてしまえばいい。つまり、前世知識フル活用で推理すっとばしてこの事件を解決してしまえばいい。それが許されるのが人魂さんだ。我ながら意地が悪いとは思うのだが、こうでもしなけりゃ腹の虫がおさまらんのじゃよ。

 

 

馬車道には爆処組、清水麗子には捜査一課、伊東末彦には公安幼馴染組が対応。情報源はもちろん私。はっきり言って編成がオーバーキル。マッチの火に消防車で放水したレベル差の逮捕劇は、少しのトラブルを除いて順調に進み、鎮魂歌開幕から一時間足らずで幕を閉じたのだった。あっけないね。

 

さて、名探偵にご報告、と駆けつけてくれた風見さんの腕の中でスマホをコールする。

 

『やぁコナン君。』

 

「人魂さん⁈ さっきの話聞いてただろ⁈何か掴んでないか⁈」

 

『…もう終わったよ。』

 

「は?」

 

『そのままの意味だよ。謎は既に解かれているのさ。』

 

 

何か言おうとしている名探偵を無視して通話を切る。はァァァ、、、置いて行ったことを微塵も反省してない。それよか利用しようとしてんだけどあのめーたんてー。これだから謎に惹かれる人間に本体見せるの嫌だったんだ。隠密に優れてるから情報取ってこいだとか、あの人操って止めてくれだとか、私に人権はないのかな?しまいには組織に潜入してこいだと?丁重にお断りしました!風見さんみたいに天然で見える人がいたら厄介だと、耳元で120時間力説してやっと諦めてもらえたよ。降谷さんを五徹させて風見さんに怒られたけど後悔はしてないね!コナン君にもやるべきかな?

 

 

「人魂さん、諸伏からメールです。」

 

『ん?何かトラブった?』

 

「いえ、……多分トラブルではないかと…、いやトラブルなのか?」

 

風見さんがスマホの画面を見せてくる。そこにはヒロさんからの悲痛なメッセージが添えられてあった。

 

【ゼロと伊東の声が似すぎててゼロがキレたんだけど!至急応援求!人魂さん!分かってて人員配置しただろこれ!!】

 

…。

 

『あ。』

 

あぁぁぁ!何か引っかかるなぁと思ってたけどこれのことか!似てるんじゃなくて一緒、声帯一緒!ごめんわざとじゃないんだ!

 

【すぐ行く!】

 

夢のCV古谷さんコラボ、聞き逃すわけにはいかないよね!

 

 

 

 

 

 

さてさて、鎮魂歌で活躍した警察学校組だが、皆さん疑問に思ってることがあるんじゃないかな?

 

そう!いつ、どこで、だれが、どのように救済したの?って話。

 

実は私も最近になって救済してたのに気付いたんだよね。十三年もこの世界が某名探偵の世界だって気付かなかった鈍感さは健在だった。ヒロさんのスマホを盗んだ時に、L◯NEグループ作られてるの見て初めて認識したレベル。現役潜入捜査官含むグループなんて作っていいのか?っていうツッコミはご都合主義により抹殺された。神よ、私のことがそんなに嫌いか。ちなみにグループ名は「生存確認」。穏やかじゃない。

 

 

はて、どこで助けた?そもそも私介入した?っていうのはやっぱり気になるもので、あっちこっち飛び回って情報をかき集めた。違法捜査なんて朝飯前の夕食前だ!つまり楽勝!

過去の事件、事故、逮捕された人間、交番の記録等々を調べれば、答えは意外とあっさり出た。

 

 

まず初めに爆処組。

そもそも二人が巻き込まれるはずだった十一月七日はこなかった。覚えているだろうか、私の嫌いな死因第一位を。YES、爆死。あの頃は死体に憑依なんて日常だったから、死体が利用できなくなる爆死なんて地雷中の地雷で、爆弾犯狩りなんてものをやっていたくらいだ。爆弾仕掛けようとしてる犯人の背後に血だらけで立って「火の用心、火のよーじん」って唱えるあれはかなり効果抜群だったみたいで。知らぬ間に揺れる警視庁の犯人を自首に追い込んでたみたいなんだよね。二人仲良く震えてたそうな。ザマァ。

 

次のヒロさんは言わずもがな。

 

伊達さんのはホントに偶然だった。

私が死体に憑依する瞬間を運転手が偶然目撃してしまったのが発端。運転手からしたら災難だよね。通りがかった道で、死体が勝手に動き出すのを見てしまったんだから。恐怖で何も考えられなくなった可哀想な彼はその足で警察に駆け込んだ。当たり前だけど、いくら人魂さんの噂が流れてようが、支離滅裂、死体が動くなんて話を警察官が取り合うわけがなくて。彼はそれがトラウマになり、仕事を辞めて引き籠るようになってしまったらしい。今度メンタルケアに行こうと思う。流石に罪悪感がやばい。

そんなこんなでトラックが突っ込む事故が自然消滅したのはよかったのか悪かったのか。よかったと捉えておこう。伊達さんは結婚した。

 

こう見ると、私が直接介入したのはヒロさんだけなんだよね。他殺は外的要因を潰せば阻止できるけど、自殺は本人を止めなきゃいけない。あの時ヒロさんを見つけたのはほんの偶然で、今更ながらかなり奇跡に近かったんだろうなぁ、て思ってる。

 

まぁ何はともあれ、警察学校組ならぬ生存確認組を救済できてよかった。原作に突入した現在、やることは山積みだけど、暇しない日常ってのはいいもんだな!

 

『さぁ盛大にやらかした証拠消しに行くぞぉ!』

 

「消す必要あるなら最初からあの二人呼ばないでください!」

 

『自ら引っ掻き回した捜査は自らの手でちゃんと証拠隠滅するから許して!』

 

さて次は何が起こるかな?

 

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