この後描くおまけでこのcaseは終了です。
「わたしは、人の人生って1種の物語だと思っているの。この世に2つと同じものは無い、かけがえのない物語。」そして、目線を前に居る緑髪の女性に戻した。
「その物語を記録して、記憶していたいの。・・・あなたにとっての「知識や技術」は、わたしにとっての「物語」だから。」
「…そして、同じ人の物語ばかりじゃなくて、違う人の物語も記憶したいの。だから、なるべく違う場所で休憩したりしてるのよ」
そう言って、わたしはノートと筆記具を取り出し、名前などは伏せつつ、今あった出来事を書き込んでいく。
「それに…わたしの書いた物語を、期待して待ってくれている娘もいるから。」
「…その待っている娘、というのは?」
「今年入学した娘でね。お兄さんが絵描きをしているのだけど、『わたしが文を、兄さんが絵を。いつか世界中を二人で旅をして、その事を詰め込んだ本を作るのが夢なのです!』って。
…それで、表現の幅を広げたいからってお願いされて、その娘と綴った物語を交換して読み合っているの。その後、お互いに感想や意見を、ね。」
「…なるほど、互いに教え合う、と。」
「…ふふ、そんな感じね。」と、筆を止めた。
「わたしも少しサヤ先生に聞いてみたい事があるの。」
「…なんでしょうか?」
「サヤ先生は、知識や技術等を積極的に身に付けていらっしゃるみたいだけど…どうして、教師という職に就いたのかなって。
勝手な想像だけど、そういう事は研究室の方が、時間も手段も多く取れると思って。」
それを聞くと、サヤは、ふっと笑った。
「確かに、ただ叡智を得る為であれば、その道もあったでしょう。…ですが、得るだけでは駄目なのです。それを正しく伝え、遺すのも、知識を得た者が果すべき役割だと思ってますので。」
「…それは、どうして…?」
「今の世の中では、昔から受け継がれた大切な技術や情報であっても、膨大な情報量に押し流されれば、人々から忘却され、そして記録、記憶も途絶えてしまいます。そうなれば、完全な形に戻すには多くの時間が費される…もしくは元に戻らない事だってあるでしょう。」
「…まるで御伽噺や伝承のようね。」とわたしは少し悲しくなり、そう呟いた。
「…ですが、私達がそれを止める事も出来ますよ。」
そこでチャイムがなった。授業開始10分前を告げる予鈴だった。
「…また、あなたと話し合いたいものですね。時間を取れる時に。」
「…ふふっ。それなら、今度の土曜日、町外れの灯台はどう?わたしのお気に入りの場所なの。」
「…えぇ、良いでしょう。日時はまた後日に。」
(後日、おまけ掲載予定)
おまけ…お互いの先生としての様子を描写予定