ウルトラマンゼロの使い魔   作:焼き鮭

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第二十七話「狙われた少女」

ウルトラマンゼロの使い魔

第二十七話「狙われた少女」

赤色火焔怪獣バニラ

青色発泡怪獣アボラス

溶岩怪獣グランゴン

冷凍怪獣ラゴラス

サーベル暴君マグマ星人 登場

 

 

 

「きゃああああああッ!」

「うわああああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 トリステイン首都、トリスタニア。今この街は、必死に逃げ惑う人々の悲鳴が喧騒を作り上げ、混乱の真っ只中にあった。

「ミィ――――――――イ!」

 人々が逃げ惑っている原因を作っているのが、今街を蹂躙している赤い怪獣。口から火を吹いて、トリスタニアの家々を焼き払っている。

 この怪獣の名前はバニラ。三億五千年前の地球の超古代文明に「赤い悪魔」と呼ばれ、封印された大怪獣である。別個体が1966年の日本に復活し、科学特捜隊と大激闘を繰り広げた。

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

 そのバニラの正面には、別の青い怪獣が同じように街を踏み潰し、口から吐き出す溶解液でドロドロに溶かしながら侵攻をしていた。

 こちらの怪獣の名はアボラス。バニラと同じ時代に生きて、古代人から「青い悪魔」と恐れられた怪獣で、バニラと同じく液体の状態でカプセルの中に封印された。非常に獰猛で、バニラとは宿敵の関係にある。

 二体の怪獣に蹂躙されるトリスタニア。しかし怪獣はまだいた。

「ギャアアアアアアアア! グガアアアア!」

「キィィィィッ!」

 バニラとアボラスの左右からは、それぞれ四つ足の背中に赤いコアを持った怪獣と、アボラスのように青い体表の怪獣が家々を蹂躙している。

 前者の名前はグランゴン、後者はラゴラス。互いに対の関係になる地底怪獣と深海怪獣であり、バニラとアボラスのように、この二体も争い合う間柄にある。

 現在トリスタニアは、四体もの怪獣の攻撃を受けていた。怪獣たちの猛威により、城下町は地獄絵図の様相になっている。

「ミィ――――――――イ!」

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「ギャアアアアアアアア!」

「キィィィィッ!」

 四体の怪獣は十字を狭めていくように四方向から近づき合い、同時に激突した。怪獣たちの四つ巴の戦いが始まる。

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「ミィ――――――――イ!」

「キィィィィッ!」

「ギャアアアアアアアア!」

 アボラスがバニラの腕に噛みつき、バニラはラゴラスへ火炎を吹きつけ、ラゴラスはグランゴンの側面を蹴り、グランゴンがアボラスの脚に食らいついた。四体の怪獣は揉み合いながら混戦を繰り広げる。

 だが、その混戦に巻き込まれるトリスタニアの人々はたまったものではない。怪獣たちのもつれ合いながらの攻撃の余波で街が破壊されていき、大勢の市民は逃げ場を失っていく。今も大勢の人たちが瓦礫と火の手に囲まれて悲鳴を上げる。

「ぎゃあああああああああああッ!!」

「ひいいいぃぃぃぃぃぃ!」

「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇ!」

 トリステイン軍の騎士たちが出動して空から怪獣へ攻撃を仕掛けるが、怪獣たちは何食わぬ顔で戦いを続ける。自分たちの介入は蚊ほどにも効いていないようで見向きもされないことに、騎士たちは誇りを傷つけられて歯ぎしりした。

 トリスタニアを地獄に塗り替えていく怪獣たちの暴挙を止める者は、誰もいないのか?

 いや、それは違う。見よ! 今、空の彼方から赤い光の玉が超高速で怪獣たちの下へと飛来してきた!

「ミィ――――――――イ!」

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「ギャアアアアアアアア!」

「キィィィィッ!」

 赤い光球は怪獣たちの間に割り込むと、弾けた際の衝撃で、四体の巨体を大きく吹き飛ばし、城下町の外へ別々の方向に追い出した。怪獣たちはもんどりうって、野原の上に転倒した。

「デュワッ!」

 光球の弾けた後には、青と赤の巨人が仁王立ちしていた。別宇宙から迷い込んで、ハルケギニアを蹂躙する怪獣の脅威から、この地の人間たちを護るためにはるか遠くの世界からやってきた光の戦士、ウルトラマンゼロだ!

「あぁッ! ウルトラマンゼロが来てくれたぞ!」

「これでもう大丈夫ね! 怪獣をやっつけて!」

「頑張れー! ゼロー!」

 トリスタニアの住人たちは、恐慌から一転、安堵してゼロを応援し始めた。彼らは、ゼロがどこから来た誰なのかを知らない。けれども、怪獣に立ち向かって自分たちの命を救ってくれる彼をすっかり受け入れ、新しい守り神と崇めていた。

「ミィ――――――――イ!」

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

 一方、いきなり吹っ飛ばされた怪獣たちは一斉に起き上がって怒りの咆哮を上げる。たとえゼロでも、一度に四体の怪獣から街を守るのは無理があるだろう。どんなに強くとも、身体は一つだ。

 だが、ゼロは一人きりではない。ともに戦ってくれる仲間がいる。

『はぁッ!』

『ジャンファイト!』

『よっしゃぁ! 出番だぜぇッ!』

 教会のステンドグラスのきらめきから銀と緑色の巨人が飛び出し、上空から飛来した戦闘機がロボット戦士に変形。街の一画からは、赤い炎の戦士が回転しながら巨大化した。

「ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーも来てくれたぞぉ!」

 三人は、ゼロと肩を並べて戦う勇敢な戦士たち。鏡の騎士ミラーナイトと、鋼鉄の武人ジャンボット、そして炎の戦士グレンファイヤー。彼らとゼロを合わせた四人は「ウルティメイトフォースゼロ」と呼ばれる、新宇宙警備隊なのだ。

 ゼロたちは城下町から跳び出すと、ジャンボットがグランゴン、ミラーナイトがラゴラス、グレンファイヤーがバニラ、そしてゼロがアボラスとそれぞれ対峙した。ウルティメイトフォースゼロと怪獣軍団の決闘が始まる。

「ギャアアアアアアアア! グガアアアア!」

 グランゴンは口から火炎弾を、真正面のジャンボットへ発射する。グランゴンの背には高熱を作り出すマグマコアがあり、そこから生成された火炎弾の威力はかなりのもの。ジャンボットの鋼鉄のボディでも危ないかもしれない。

 だがジャンボットは頭部からせり上がった銃口からビームエメラルドを照射。火炎弾を貫通し、グランゴンを撃ち抜く。

「ギャアアアアアアアア!」

 ビームエメラルドに撃たれてたじろぐグランゴン。その隙を突いて、ジャンボットはどんどん攻勢を掛ける。

『ジャンミサイル!』

「グガアアアア!」

 背部から大量のミサイルを飛ばし、グランゴンに降り注がせた。グランゴンは爆発の連続に晒され、立ち往生する。

『バトルアックス!』

 そしてジャンボットは左肩のシールドを戦斧に変形させると、それを手に回転。遠心力をつけた斧の振り下ろしを、グランゴンに叩きつける。

『必殺! 風車ッ!』

 マグマコアに斧の刃が深々と突き刺さり、グランゴンは一瞬の内に木端微塵になった。

「キィィィィッ!」

 ラゴラスはミラーナイトに冷凍光線を吐いた。ラゴラスの冷凍光線の温度はマイナス240度。どんなものでもたちまち凍らせてしまう威力がある。

『はッ!』

 しかしミラーナイトがディフェンスミラーを張ると、冷凍光線は折れ曲がってラゴラスに戻っていった。どんな威力があろうと光線である以上、鏡を凍らすことは出来ないようだ。

「キィィィィッ!」

 光線を放ったラゴラスの腹部が凍りつく結果となる。しかしさすがは冷凍怪獣、低温には耐性があるのか、ひるむことなくミラーナイトへ突進していく。

 ラゴラスの突進がミラーナイトに決まった。……かと思われたその瞬間に、ミラーナイトの姿が砕け散った。

「キィィィィッ!?」

『こっちですよ』

 砕け散ったはずのミラーナイトが、いつの間にかラゴラスの背後にいた。鏡を使ったトリックだったのだ。

『シルバークロス!』

 ミラーナイトが水平に切った両腕から十字の光刃が飛び、ラゴラスの身体を貫通して爆散させた。

「ミィ――――――――イ!」

『おっとッ!』

 バニラがグレンファイヤーに高熱火炎を吹きつける。グレンファイヤーはそれを交差した腕で受け止めた。バニラの火炎もグランゴンに劣らないほどの熱量だが、グレンファイヤーは平然としている。炎の巨人は、高熱攻撃に耐性があるのだ。

『なかなかの炎を吐くじゃねぇか! けど、俺の炎の方がもっと熱いぜぇッ!』

 炎を受け切ったグレンファイヤーは、胸のファイヤーコアを燃えたぎらせると、バニラへと全力ダッシュする。

『ファイヤァァァァ――――――――――――!!』

「ミィ――――――――イ!」

 姿勢を低くしてバニラの腹部に抱きついたグレンファイヤーは、その状態のまま大空へ勢いよく飛び上がる。

『うらあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

「ミィ――――――――イ!」

 グレンファイヤーに運ばれて地上から離れていくバニラに、グレンファイヤーの纏う炎に熱せられてどんどん赤熱していく。そして臨界点に達すると、はるか上空で大爆発を起こし、ハルケギニアの塵となった。

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

『うおッ!』

 アボラスがゼロに溶解泡を吐きつけた。鉄骨をもドロドロに溶かす非常に強力な泡にゼロの全身が包まれた。

『せいッ!』

 だがゼロが気合いを入れると、こびりついた泡が全部弾き飛ばされた。アボラスの攻撃をはね返したゼロだったが、それだけで結構なエネルギーを消耗したので、カラータイマーが点滅を始めた。

『思ったよりもやるな。けど、本当の戦いはここからだぜッ! でやぁッ!』

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

 ゼロは瞬く間にアボラスの懐に飛び込むと、鋭い横拳を入れた。拳の一撃を食らったアボラスが後ろに下がると、反撃に溶解泡を吐く。

『おっと! せやッ!』

 横に跳んで溶解泡をかわしたゼロのビームランプからエメリウムスラッシュが飛んだ。直撃を受けるアボラスだが、動じずに溶解泡をまた吐く。

「ジュワッ!」

 再びかわしたゼロは、今度はワイドゼロショットを撃ち込んだ。だが必殺光線を食らっても、アボラスは倒れずに攻撃を続ける。

 アボラスは、科学特捜隊が武器の底が尽きるまで攻撃しても、まるで平然としていたほどに耐久力と生命力が強い怪獣だ。その異常なタフネスが真の武器と言っても良く、超古代文明の人間も、どれだけ手を尽くしてもバニラとアボラスがどうやっても死ななかったために封印という手段を選んだのではないかと推測されている。

『これも耐えるとはな! だがこれで……フィニッシュだぜぇぇぇッ!!』

 しかしゼロも負けない。ゼロスラッガーをカラータイマーに取りつけると、腕を広げて、とっておきの必殺技、ゼロツインシュートを放った!

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

 すさまじい光線の奔流を食らったアボラスは、それでもしばらく耐えていたが、遂に耐久の限界が来て、粉々に吹き飛んだ。

「やった! ウルティメイトフォースゼロの勝利だ!」

「ありがとーう、ウルティメイトフォースゼロー!」

 怪獣が全て倒されると、トリスタニアの人たちが万感の思いを込めて、ゼロの下に集まった戦士たちに手を振った。

 一人一人が超一流の戦士のチーム、それがウルティメイトフォースゼロ。如何なる大怪獣も、彼らの前では形無しだ。今日もハルケギニアを襲う脅威を取り払うため、それ行け! ぼくらのヒーローたち!

 

「……」

「……もしもし、ルイズさん。ちょっとお聞きしたいんですけど?」

 怪獣四体とウルティメイトフォースゼロの戦いの後、トリスタニアから魔法学院を繋ぐ街道を、ルイズと才人の二人が馬で進んでいた。二人とも、魔法学院に帰る最中だ。

 その中で、才人がルイズに呼びかける。ルイズは、何故か不機嫌そうな固い表情をしている。

「……言ってごらんなさい」

「確か今朝は、『休日に街に出て買い物するのって、久しぶりー!』……とか言ってませんでしたっけ。結構、楽しそうだった覚えがあるんですが。……まぁ、怪獣が出現したから途中で中止になっちゃったけどさ。でも、怪獣を倒したらお前も嬉しそうにしてたじゃん」

 おずおずと話す才人に、ルイズはつっけんどんな態度で返す。

「そんなこともあったかしらね」

「いやいやいや、気になるだろうが! 何だって今はそんなに不機嫌なんだ?」

 と尋ねかけると、ルイズはますます眉間に寄せた皺を深くした。

「そりゃあ、あんたは楽しかったでしょうね。救助活動にかこつけて、そこらじゅうの女の子にデレデレしちゃって……。もう、みっともないったらありゃしない!」

 才人は戦闘後、破壊された街で逃げ遅れた人たちの救援を手伝っていたのだが、それで助けた女性たちに囲まれて感謝の言葉を寄せられた。それがルイズには気に食わないようなのだった。才人はそれに反論する。

「デレデレなんてしてねーよ。不謹慎だな。……って、もしかしてヤキモチか?」

 ひと言言うと、ルイズは思い切り慌てふためいた。

「そ、そ、そ、そんなわけないでしょうが! バカ使い魔が迷惑をかけたら、ご主人様が迷惑するからよ! 別にヤキモチやいてるわけじゃないわよ!」

「そうかよ!」

「そうよ!」

 喧嘩腰になる二人のやり取りを端で聞いているゼロとデルフリンガーが言葉を交わす。

『この二人は相変わらずだな。なぁデルフ』

「全くだ。仲良しすぎて、俺っちの入る隙間がねぇ」

「別に、仲良しすぎなんかじゃないわよ!」

 ルイズがほんのり顔を赤らめて声を荒げた。それでデルフリンガーは愉快そうに笑う。

「まあいいじゃねえか。魔法使いと使い魔ってのはなぁ、唯一無二のパートナーなんだからよ。仲良いのはいいことなんだぜ。どうせだったら、もっとイチャイチャしたって……」

「それ以上減らず口叩いたら、溶かして屑鉄にして学院の裏庭に埋めるからね!」

 からかうと、ルイズが激昂して脅した。

「おおっ、怖ッ! 相棒、俺っちまた一休みしておくから、出番が来たら呼んでくれよな!」

 あくまでおどけるデルフリンガーは、それ以上言葉を発しなくなった。

「やれやれ……」

 デルフリンガーにいいように遊ばれるルイズに肩をすくめる才人。

 その時、彼の目に、進行方向の道の端に、人が倒れているのが映った。

(ん……? 誰か、倒れてる)

「ちょっと、サイト? どうしたの?」

「あそこ……。あの木のふもとに誰か倒れてないか?」

「え? どこ?」

「ほら、あそこ……って、行ってみた方が早いな。ごめん、ルイズ。先に行くぞ!」

 言うが早いか、才人は馬を急かして、ルイズを置いて走っていった。

「あ、ちょっと、サイト! もうっ、何なのよー」

 ルイズが慌ててその背を追い掛けていった。

 ひと足早く到着した才人は、馬から降りて木陰に倒れている人物に近寄っていく。未成年の、黒髪の少女だ。

「やっぱりだ……。人が倒れてる……。大丈夫かな……って、え、おい!?」

 その姿を観察する才人は、一番に服装に目を留めて、言葉を失った。ゼロも、同じく少女の格好に驚く。

「もう、サイト! ご主人様を置いて何してるのよ! って、本当に人が倒れてる……」

 追いついたルイズも少女に目をやると、首を傾げた。

「この娘、見慣れない格好をしてるけど、一体、どこの国の人かしら」

 その疑問に、ゼロがこう答えた。

『ルイズ、お前が答えにたどり着くのは無理だぜ』

「それってどういう意味? ……まさか!」

『察しがいいな……。その通りだ。この娘の着てるのは、地球の服だ!』

「サイトの故郷の!?」

 少女の服装は、明らかにハルケギニアの文明にない素材で出来ている。それだけではない。才人はその格好に、非常に見覚えがあった。

(この娘が着てるブレザー、俺の通ってた学校の制服だ……!)

 そして顔をよく確かめると、衝撃の事実に気づいた。

(ま、間違いない。クラスの委員長だった「高凪春奈」さんだ!)

 いるはずのない人物が目の前で倒れていることにショックを受ける才人。

(何で高凪さんがこの世界に来てるんだ? もしかして、俺みたいに誰かに召喚されたのか?)

「ちょっとサイト。何、この娘をじーっと見てるのよ。もしかして、見覚えがあるの?」

「あ、ええっとそれは……と、とりあえず介抱しようぜ」

 混乱気味の才人は上手い説明が頭に思い浮かばず、先に少女、春奈を診ることにした。だがそれをルイズに止められる。

「ちょっと、相手は女の子よ。男のあんたがベタベタ触るもんじゃないわ。わたしが診るから、そこどいて」

 多少の嫉妬心も含めて才人をどかすと、ルイズは春奈の側にしゃがんで診断する。

「意識を失ってるだけのようね。頭に損傷はないみたい……。サイト、急いで学院に向かって!」

「へッ?」

「へッ? じゃないわよ。わたしたちは馬なんだから、倒れてる人を連れていけるわけないでしょ? 応援を呼んでって意味よ」

「あ、ああ……。そうだな」

 才人がルイズの指示通りに、学院へと向かおうとした時、道の端の林の中から、何者かの人影が飛び出してきた。

『おっと、そうは行かねぇぜ! その娘をこっちに渡してもらおうか!』

「!?」

 現れたのは、首から下が黒ずくめで顔に口を出したマスクを張りつけたかのような容貌をしている怪人だった。胸元にはアンクレットにエジプト十字に似た紋様を飾っていて、腰には鋼鉄製のパンツを穿いている。

 怪人の姿を目の当たりにしたルイズが叫んだ。

「きゃあッ!? へ、変態よ!」

『だぁれが変態だ! 下等な原住民が!』

 たちまち激怒した怪人へ、才人が問いかける。

「お前、まさか、マグマ星人か!」

『如何にも! 俺様は宇宙の支配者、マグマ星人だぁ!』

 肯定する怪人。マグマ星人とは、M78スペースで強豪宇宙人に名前を連ねる種族の一つで、幾多もの星を滅ぼした凶悪な侵略者である。あのウルトラマンレオの故郷のL77星を滅ぼしたことで有名で、才人も端末の怪獣図鑑に頼らなくても名前がすぐに出てくるほどだった。

『しかし、俺様の名前を知ってるってことは、お前はウルトラマンゼロの変身者だな! こんな場所で出会うとは!』

 才人の正体を察したマグマ星人は、すぐに右手にサーベルを装着して突きつけた。才人はルイズと春奈を背にかばいつつ問い詰める。

「この娘に何の用だ! まさか、お前がこの娘をこっちの世界に連れてきたのか!?」

『ふッ。貴様がそれを知る必要はない。今の俺様の目的はその娘だ。大人しく差し出すと言うなら、見逃してやるぞ』

 サーベルで脅しを掛けるマグマ星人。当然、才人がそれを呑む訳がない。

「ふざけるな! お前みたいな奴にこの娘を渡せるか! そっちこそ今すぐ立ち去れ!」

「へへへッ、俺っちの出番だな、相棒。ウチュウ人相手ってのも悪かねえや」

 才人がデルフリンガーを引き抜くと、デルフリンガーが嬉々として言った。

『ゼロに変身しないで、このマグマ星人様と戦うつもりか! 愚かな! 地球人如き、俺様の敵ではないわぁ!』

 マグマ星人も退かずに、サーベルを振りかざして飛び掛かろうとする。

「来るぜ、相棒! ガンダールヴの力、見せつけてやりな!」

「おうッ! ルイズはその娘を守っててくれ!」

 ルイズに春奈を任せると、才人は前に出てマグマ星人と刃を交わした。

 

 

 

≪解説コーナー≫

 

※「狙われた少女」

 

 元ネタは『ウルトラセブン』第八話「狙われた街」。北川町の出身者が連続で凶悪事件を引き起こすという怪事件が発生。その調査に赴いたダンは、北川町で販売されているタバコが原因であることを突き止める。そのタバコを作っている怪しい男の正体とは……という話。かの鬼才・実相寺監督の代表作。社会を形成する上で必須の信頼関係に着眼した一本だが、最後のナレーションで大どんでん返しが……。

 

 

※赤色火焔怪獣バニラ

 

 初出は『ウルトラマン』第十九話「悪魔はふたたび」。三億五千年前の古代文明に「赤い悪魔」と恐れられた怪獣。もう一度言う、三億五千年前。これは誤字脱字ではない。カプセルの中に封印されていたが、偶然雷が当たったことで現代に復活、同様に復活したアボラスと激突した。この赤と青の、属性が真逆の二者の対決は『ティガ』や『マックス』でオマージュされている。

 『ザ☆ウルトラマン』第二十七話「怪獣島浮上!!」では、バラドン星人に怪獣墓場から連れ出された怪獣の一匹として登場。こちらでもアボラスと戦っている。

 『ウルトラマンパワード』第九話「復活!二大怪獣(原題:Tails from the Crypts)」ではリデザインされた「パワードバニラ」が登場。三千年前に棺の中に封印された怪獣で、音波の影響によって復活した。音波で弱らせないといくらでも復活するという驚愕の能力がある。

 『ウルトラマンX』第一話「星空の声」では過去にスパークドールズから復活した怪獣の一体として登場。お約束通り、同時に復活したアボラスと取っ組み合っていた。

 

 

※青色発泡怪獣アボラス

 

 初出はバニラと同じく「悪魔はふたたび」。封印のカプセルが鉱物試験所に運ばれ、何も知らない人間によって電気ショックを浴びせられたことで復活した。溶解泡でバニラを倒すが、これは科特隊の攻撃でバニラが負傷したからで、本来の両者の実力は互角と思われる。

 上述の通り、『ザ☆』でも登場し、バニラと戦った。

 『パワード』でもバニラ同様、リデザインされた「パワードアボラス」が登場。バニラよりは変更点が少ない。カメラのフラッシュがきっかけとなって復活した。こちらは終始バニラに対して優勢だった。

 『X』でもバニラと同時、同じ場所に現れ、戦い合った。その勝敗がどうなったのかは不明。

 バニラとアボラスは対になる怪獣であり、セットで現れている。

 

 

※溶岩怪獣グランゴン

 

 『ウルトラマンマックス』第一話「ウルトラマンマックス誕生!」に登場。自然破壊の影響で出現するようになったマックスの世界での怪獣の第一号。一度バラバラにされても、溶岩に触れれば復活する。赤いグランゴンが青いラゴラスの宿敵なのは、バニラとアボラスのオマージュ。

 第三十話「勇気を胸に」では、ラゴラスにマグマコアを食われた死体が登場。腐敗の進行が早く、怪獣の化石が残らない原因とされている。

 

 

※冷凍怪獣ラゴラス

 

 「ウルトラマンマックス誕生!」に登場。グランゴンの出現に引き寄せられて海中から出現し、グランゴンと衝突した。この二匹はマックスの初陣の相手。

 「勇気を胸に」では、グランゴンのコアを取り入れたことで肉体が変異した「ラゴラスエヴォ」という強化個体が登場した。

 

 

※四大怪獣の激突

 

 元祖対の怪獣のバニラとアボラス、そのオマージュ怪獣のグランゴンとラゴラスの夢の四つどもえである。その足元の人間たちは大迷惑だが。

 

 

※赤い光球が怪獣たちを吹き飛ばす

 

 「ウルトラマンマックス誕生!」で、赤い球に包まれたマックスがグランゴンとラゴラスの間に降下し、その際の衝撃で二体をぶっ飛ばした。

 

 

※「鏡を使ったトリック」

 

 ミラーナイトは鏡の能力を使用した幻惑戦法が得意。攻撃した先が鏡に映った虚像だった、というのは基本。

 

 

※泡を弾き飛ばすゼロ

 

 「悪魔はふたたび」でウルトラマンに泡攻撃を仕掛けたアボラスだが、ウルトラマンは瞬時に振り払った。しかしカラータイマーは赤くなっていたので、エネルギーは消費してしまったようだ。が、ミスで一瞬だけ青に戻っているシーンがある。

 

 

※「本当の戦いはここからだぜッ!」

 

 元々は『ウルトラマンダイナ』の主人公、アスカの決め台詞。

 

 

※三発目の光線で倒されるアボラス

 

 アボラスは古代人に「悪魔のような怪獣」と呼ばれ、実際にスペシウム光線を二発まで耐えるというかなりの防御力を見せつけた。

 

 

※サーベル暴君マグマ星人

 

 初出は『ウルトラマンレオ』第一話「セブンが死ぬ時!東京は沈没する!」と第二話「大沈没!日本列島最後の日!」。レオの故郷の獅子座L77星を滅ぼした恐るべき侵略者であり、レオの仇敵。しかし当人自体の戦闘力は高くなく、配下の双子怪獣ブラックギラス、レッドギラスが主力。地球ではまずセブンを追い詰めて変身できなくなるほどの重傷を負わせ、双子怪獣の能力で島を一つ沈め、東京もまた沈没しかけるほどの津波を引き起こした。第一話からハードもいいところの展開である。

 結局は生き残り、第三十話「怪獣の恩返し」で再登場。宇宙で一番美しいと言われる怪獣ローランを嫁にしようとつけ狙うストーカーという、あんまりにもあんまりな役割になっていた。この時は、露出していた口元がマスクで覆われている。このためか定かではないが、別人扱いされることもある。

 『アンドロメロス』ではグア軍団の配下であるマグマ星人三人衆が登場。リーダーは身体を機械化しており、改造マグマ星人とも呼ばれる。

 『ウルトラマンメビウス』第十六話「宇宙の剣豪」では兄弟のマグマ星人が登場。オオシマ彗星上で宇宙剣豪ザムシャーに二人掛かりで挑むが、相手にならずに一蹴されるやられ役だった。

 映画『ウルトラ銀河伝説』ではベリアルの怪獣軍団の一人として登場。等身大の姿でレイモンを攻撃するが、返り討ちにされた。

 『ウルトラゾーン』ではババルウ星人とともに美容室をやっているカリスマ美容師。一応先輩だが、あまり敬われてはいない。

 『ウルトラマンギンガ』番外編「残された仲間」では、ダークルギエルのエージェントの一人として登場。が、ずっと裏方としてこき使われ、ルギエルが討たれた後も一人だけ地球に取り残されたことでやさぐれていた。八つ当たり気味にゼットン(SD)にダークライブして、ウルトラマンとティガにライブした千草と健太と争う。

 『大怪獣ラッシュ』では主人公格の一人に「マグママスター・マグナ」が登場。これまでのマグマ星人のイメージを覆すような熱血漢だが、若さ故に先走りしやすく、墓穴を掘ることもしばしば。他にも「フッグ」「トライド」「ヴァイザー」というキャラがいる。

 『ウルトラマンX』では第十二話「虹の行く先」、第十三話「勝利への剣」に登場。シャプレー星人とともにグア軍団入りし、ウルトラマンエックスとビクトリーと戦う。グア軍団入りは上記の『アンドロメロス』のオマージュと思われる。今回は両手にサーベルを嵌め、ビクトリーとも互角に戦う実力を見せた。きっと特訓したのだろう。

 口元が出ている珍しいデザインで人気のある宇宙人ということもあり、ショーなどではよく司会を務めている。




 突然才人とルイズの前に現れた地球の少女。それを狙うマグマ星人! ナターン星人! 才人の剣戟がうなる! ゼロの必殺光線が宙を切る! 果たして宇宙人たちの目的とは!? これから才人たちを何が待ち受けるのか! 次回「その名は春奈」みんなで見よう!

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