ウルトラマンゼロの使い魔
第五十一話「脅威のカブトザキラー」
異次元人ヤプール人
ミサイル超獣ベロクロン
一角超獣バキシム
蛾超獣ドラゴリー
火炎超獣ファイヤーモンス
異次元超人カブトザキラー 登場
超獣。その呼称をつけられた怪獣群が最初に現行地球人に観測されたのは、西暦1972年のことである。その年、地球に突如として異次元人ヤプール人が侵略を仕掛けてきた。
ヤプール人は、それまでの侵略宇宙人とは比較にならないほどの驚異的な力を持った侵略者であった。侵略の武力として怪獣を送り込むのは他の異星人もよく使う手段なのだが、ヤプール人は自分たちの怪獣に独特の改造を施して、最早全く別の生物に変えたものを手駒としていたのだ。その、地球人に「怪獣を超えた怪獣」という意味で「超獣」と呼ばれることになる生体兵器第一号のベロクロンは、通常の怪獣とは桁違いの破壊力でもって地球防衛軍を全滅させた。ベロクロンは後に超獣専門対策チーム・TACと新たなウルトラ戦士・ウルトラマンエースによって倒されたのだが、ヤプールはその後も多種多様な超獣を次々送り込み、エースとTACを徹底的に苦しめた。
ヤプールの侵略兵器である超獣の脅威は、後世にもしっかりと伝わっている。怪獣の生命力と兵器の破壊力を併せ持つ超獣は、怪獣との長い戦いを勝ち抜いた現在の地球の人々にも心の底から恐れられているのだ。
その超獣が今、ハルケギニアに牙を剥いて襲い掛かる!
「グロオオオオオオオオ!」
「ギギャアアアアアアアア!」
「ギョロロロロロロロロ!」
魔法学院前の平野に並ぶ、ベロクロン、バキシム、ドラゴリーの三大超獣。狂ったように咆哮を上げるそれらを見上げ、才人は顔面蒼白になって戦慄していた。
「何てこった……! 超獣が、一気に三体もだなんて……!」
今までの『レコン・キスタ』の工作活動の裏にはどれも、侵略者の影があった。そのため才人は今度も、宇宙人かその配下の怪獣が現れるものとは予測していた。
しかし目の前の光景は、その予測を超える事態であった。超獣ということは、ヤプール人自らが指揮を執っているに相違あるまい。
「あぁぁ……!」
「サイト、どうしたの? 確かに怪獣が一度に三体なんて大変なことだけど、そこまで恐れることないんじゃないの?」
震える才人を案じて、ルイズがそう呼びかけた。彼女からしたら、今の事態がそれほどの脅威であるとは思えないのだ。数だけならば、タルブ戦や円盤生物軍団、ヒッポリトの大怪獣軍団の時などの方が上回っている。
「超獣はただの怪獣じゃないんだよ! 見ろ、攻撃を始めるッ!」
「グロオオオオオオオオ!」
才人の言った通り、ベロクロンが腕と身体を広げて攻撃の構えを取った。
直後に、全身に生えた突起から大量のミサイルが発射! ミサイルの雨は別々の軌道を描き、学院の周囲の大地に着弾。爆発を起こし、瞬く間に学院を大火災で包囲した!
「きゃあああああッ!? い、今の何!? あいつ、何を飛ばしたの!?」
一瞬の出来事に、ルイズやコルベールは愕然となった。科学文明が中世レベルのハルケギニアにはミサイルなど存在しないので、正体が分からないのは当然である。
「ミサイルだ! 自ら火を噴いて空を飛び、軌道を曲げることの出来る大砲の弾の進化形みたいなもんだ!」
「そ、そんなものが存在するっていうの!?」
「今見ただろうが! 超獣はそういう破壊兵器を全身に仕込まれた怪獣兵器なんだよ!」
ベロクロンだけでなく、バキシムとドラゴリーも攻撃を始める。
「ギギャアアアアアアアア!」
「ギョロロロロロロロロ!」
バキシムは楕円形の両手と鼻先からバルカン砲を発射、ドラゴリーは両腕の先端からロケット弾を放ち、ベロクロン同様学院の周りを火の手で覆い込んだ。これでは、誰も学院の外へ逃げることが出来ない。
しかしどういう訳か、学院そのものには矛先を向けない。
「グロオオオオオオオオ!」
ベロクロンは才人たちを、才人を見下ろし、身体を揺すって笑うような仕草を見せた。
「くそッ、あいつら……!」
才人には、超獣を通してヤプール人が挑発しているように思えた。
人間どもはいつでも殺せる。早く変身して戦え、と言っているようであった。
「……ルイズ、先生、一旦下がろう! ここは危険だ!」
「ええ!」
「う、うむ!」
才人は安易に挑発に乗らず、二人とともに学院の方へ退却する。
「うわははははははは!」
その時に、復活したメンヌヴィルが狂ったような笑い声を上げた。彼はコルベールに向けて叫ぶ。
「見ろ、隊長殿! これが究極の炎だ! 実に素晴らしいだろう! このまま世界の全てを焼き尽くしてしまいそうではないか!」
コルベールは超獣たちの起こした、大地を焦がし、その後に何も残さないような勢力と規模の火災を見回し、冷や汗を垂らした。
「これが……こんなものが、究極だと……!?」
メンヌヴィルはコルベールの様子に構わずに続ける。
「俺はあんたに近づこうと磨いた自分の炎に自負を持っていた! しかしそんなものは、この炎を見せてもらった時に砕け散ったよ! 所詮メイジの、人間の炎など、これと比べたらちっぽけなものでしかなかったのだ! そして俺は思った! この炎が欲しい、と! 俺の依頼主殿は、快く応えてくれた!」
「ま、まさか……!」
才人が目を剥いてメンヌヴィルを見やる。
「あんたにも見せてやるぞぉ、コルベール! 俺が手にした、究極の炎を! その炎であんたを焼き、俺は人間を超越するのだぁーッ!」
絶叫したメンヌヴィルの身体が、降りかかった火災に呑まれた。
かと思った次の瞬間に、炎の中から新たな超獣が立ち上がった!
「ア――――――――オウ!」
「超獣ファイヤーモンス! メンヌヴィルは超獣に改造されてたのか!」
赤と青の色彩の鋭角的な超獣を端末で調べた才人が叫んだ。超獣は地球の生物と宇宙怪獣を合成し改造して作られると言われている。ヤプールの技術力ならば、人間と超獣を合成することも簡単なのであろう。
変わり果てたメンヌヴィルを見上げて、コルベールは大きく舌打ちする。
「副長……とうとう悪魔に魂を売ったのか……!」
「ア――――――――オウ!」
ファイヤーモンスはとがった口から火炎を吐き出す。メンヌヴィルだった時の炎とは比べものにならない、人間などあっという間に焼き尽くす地獄の業火だ!
「うわぁぁぁぁぁッ!」
「きゃあぁ――――――――!」
業火が三人を襲う。このままでは学院にたどり着く前に全滅は必至。そのため、才人はウルトラゼロアイ・ガンモードを手にルイズとコルベールから離れた。
「俺が囮になる! その間に逃げてくれ!」
「ま、待ちなさいサイトくん! 危険すぎる!」
「先生危ないッ!」
コルベールが止めようとしたが、火炎が飛んできたのでルイズが慌てて引っ張って助けた。
「この野郎……人間であることを捨ててまで、そんなに『究極』が欲しかったのかよ!」
才人はゼロアイのビームで威嚇射撃を行い、超獣たちの気を引きつける。しかしすぐにファイヤーモンスが火炎を放ち、反撃してきた。
「ア――――――――オウ!」
才人の姿が一瞬にして、炎の中に消えた。
「サイトくぅーんッ!」
絶叫するコルベール。しかし、才人に問題はない。
「デュワッ!」
炎の中からウルトラマンゼロが立ち上がり、ファイヤーモンスにアッパーの一撃を食らわせた。不意打ちをもらったファイヤーモンスはヨタヨタと後退する。
「ウルトラマンゼロ! やっぱり来てくれたのか!」
「サイトはゼロが助けてくれたはずです。先生、下がりましょう」
ゼロの登場に安堵するコルベール。急かすルイズとともに学院の方へ下がっていく。
「ジュワッ!」
「ア――――――――オウ!」
ゼロの方は持ち直したファイヤーモンスと対峙している。しかしその周りにベロクロン、バキシム、ドラゴリーが集まり、ゼロの前方を取り囲んだ。
「グロオオオオオオオオ!」
「ギギャアアアアアアアア!」
「ギョロロロロロロロロ!」
ゼロに立ちはだかる四大超獣。無敵の戦士、ウルトラマンゼロも一度に四体を相手にするのは厳しいだろう。
だが既にご存知の通り、ゼロには頼もしい仲間たちがいるのだ!
『テェヤッ!』
『ファイヤァァァァ――――――――!』
『ジャンファイト!』
窓ガラスのきらめきから、大空の彼方から、宇宙空間からミラーナイト、グレンファイヤー、ジャンボットが駆けつけた! 彼らはそれぞれベロクロン、バキシム、ドラゴリーに飛び掛かる。
「グロオオオオオオオオ!」
「ギギャアアアアアアアア!」
「ギョロロロロロロロロ!」
ゼロの仲間たちともつれ合って転がっていき、学院から引き離される三体の超獣。そのお陰で、ゼロはファイヤーモンスと一対一で戦うことが出来るようになった。
『メンヌヴィル……罪のない人々を殺し、あまつさえヤプールに魂を売り渡すお前のような悪は、俺は絶対に許さねぇ! 引導を渡してやるぜッ!』
ゼロはメンヌヴィルに対して激しい怒りを抱いていた。人間の中にも、ルイズたちのように心清き者がいる一方で、侵略者にも負けないほど性根の腐ったどうしようもない悪人がいることは分かっている。だが、メンヌヴィルはその中でも極めつきの人間であった。人間同士の諍いに手を出してはならない決まりがなければ、とっくに叩きのめしていただろう悪党だ。
超獣に変じたのは、むしろ好都合。この手でお前の悪事に終止符を打ってやる! とゼロは義憤に燃えていた。その怒りは、ファイヤーモンスの炎だって凌駕する勢いだ!
「ア――――――――オウ!」
『行くぜッ!』
そして、ゼロとファイヤーモンスの決闘の火蓋が切って落とされた!
ゼロたちが超獣を食い止めてくれたお陰で、ルイズとコルベールは学院の中庭まで戻ることが出来た。そこでは既に、キュルケとタバサによってオスマンたち人質が解放されていた。
「おぉ、ミスタ・コルベール。無事であったか」
「ウルトラマンゼロのお陰です。サイトくんも、彼に助けてもらったことでしょう」
無事を確かめ合うオスマンとコルベール。だが喜んでばかりはいられない。超獣たちの放った火は相当な勢いで広がり、学院の一部に燃え移り出したのだ。
「む、いかん! 皆の衆、水のメイジを中心にすぐに消火に当たりなさい! 迅速に、しかし慌てずに取り掛かるのじゃぞ!」
オスマンの号令で、教師生徒に関係なくメイジたちが慌ただしく動き始めた。怪獣災害が発生するようになってから、こういう時のために非常訓練を施すようにしておいたのが幸いし、メイジたちは比較的整然とした行動で学院の火を消していく。銃士隊もそれに倣う。
「ちょっと、隊長さん! しっかりしてよ!」
だがそんな中で、キュルケがいきなり大声を出した。ルイズがそちらに身体を向ける。
「どうしたの、キュルケ! 何かまずいことが!?」
事態が事態なので、何事かと焦るルイズ。キュルケの面前には、アニエスが腰を抜かしてへたり込んでいた。
「それが……この銃士隊の隊長さんが、火災が起きてからこんな風に腑抜けになって動かなくなっちゃったのよ」
「あぁぁぁ……!」
アニエスは学院を覆い込む大火災を見上げ、口をだらしなく開けてガタガタと震えていた。普段の毅然とした様子が嘘のような様子に、ルイズは驚く。
「そういえば、ダングルテールは焼き払われてアニエスだけ生き残ったって……まさか、その時のトラウマが蘇ったの!?」
そうとしか考えられない。今の状況は、ダングルテール地方の滅亡の時と酷似しているのだろう。アニエスは二十年前の古い記憶が呼び起こされてしまったのだ。
ルイズとキュルケでどうにか活を入れようとしたが、アニエスはどうやっても正気を取り戻してくれなかった。
『せいッ! とぁッ!』
「グロオオオオオオオオ!」
ミラーナイトはベロクロンに正面からチョップ、キックを叩き込んでいる。自分を上回る巨体で、改造により筋力も並々ならぬベロクロンだが、ミラーナイトは巧みな技量で一方的に連撃を入れ、ベロクロンを追い込む。
「グロオオオオオオオオ!」
『ふッ!』
後退したベロクロンは手から光刃を連射して反撃するも、ミラーナイトは鮮やかなバク転でかわし切った。
「ギョロロロロロロロロ!」
『むぅッ!』
ドラゴリーは両眼と口から稲妻状の怪光線を放ち、ジャンボットを狙い撃つ。ジャンボットは光線に晒されるも、身を固めて光線を耐え切った。
『ビームエメラルド!』
そして頭部から反撃のビームエメラルドを発射! ドラゴリーの胸部を撃った。
「ギョロロロロロロロロ!」
攻撃後の隙を突かれたドラゴリーはバタバタ飛び跳ねてもがいた。
「ギギャアアアアアアアア!」
バキシムはバルカン砲の集中砲火でグレンファイヤーをひたすら攻撃する。しかしグレンファイヤーは炎を全身に纏い、バルカンを防ぐ。
『こんな豆鉄砲が効くかよぉ! ファイヤァァ――――!』
バルカンを弾きながら突進し、バキシムの巨体を弾き飛ばす!
「ギギャアアアアアアアア!」
そしてゼロはファイヤーモンスのどてっ腹に横拳を叩き込んだ。
『うらぁッ!』
「ア――――――――オウ!」
よろけたファイヤーモンスは火炎を吐いて反撃。だがゼロはウルトラゼロディフェンサーで火炎を易々と防御する。
『はッ!』
「ア――――――――オウ!」
接近戦で上回り、火炎はシャットアウトする。ファイヤーモンスは誰がどう見ても劣勢であった。
しかし突如としてファイヤーモンスの頭上の空が割れ、その中から巨大な剣が降ってきてファイヤーモンスの手中に収まった。そして刀身に炎が灯る。
ファイヤーモンスの切り札、炎の剣だ! 昔に戦ったウルトラマンエースはこれに串刺しにされ、生死の境をさまよったことがある。それほどに危険な代物だ。
「怪獣が武器を!?」
驚くルイズ。これまで様々な怪獣がいたが、まさか怪獣が武装するなんて夢にも思っていなかった。
「ア――――――――オウ!」
ファイヤーモンスは炎の剣を振り回し、それまでと逆にゼロを追い詰め出す。さしものゼロも、燃え盛る危険な凶器に迂闊に飛び込むことは出来ない。素手で触れれば大ダメージ確実だ。
「シャッ!」
距離を置いてエメリウムスラッシュで攻撃するも、炎の剣を盾にされて防がれた。エメリウムスラッシュを見切って防御する剣術。メンヌヴィルの意識はもう見られないが、彼の戦闘術は受け継いでいるようである。
「ア――――――――オウ!」
ファイヤーモンスは一気に飛び込み、猛然とゼロに斬りかかる! ゼロ危うし!
「シェアッ!」
だがゼロは電光の速さでゼロスラッガーを両手に握り、炎の剣を受け止めた! そのまま、相手の隙を窺い合う鍔迫り合い。
『であぁぁぁッ!』
「ア――――――――オウ!」
その末に、ゼロが炎の熱にも負けずに剣を弾き飛ばした! 空中に放り出された炎の剣をゼロがすかさずキャッチ。切り札を奪い取られたファイヤーモンスは大慌てで後ずさった。
『武器に頼れば隙が生じるんだぜ! こいつはお返ししてやるッ!』
炎の剣を投げ返して、ファイヤーモンスにとどめを刺そうとするゼロ。
しかしその時、彼とファイヤーモンスの間の空が割れ、歪んだ空間が覗いた。そしてその中の、とがった頭を持つ怪人の集団が声を発する。
『さすがだなぁ、ウルトラマンゼロ! ファイヤーモンスをこうも容易く追い詰めるとは』
『ヤプール人! とうとう姿を見せやがったな!』
空の異空間に向けて叫ぶゼロ。そう、遂に侵略者たち、ハルケギニアを覆う外宇宙の悪の親玉、ヤプール人がゼロの前に姿を現したのだ。
「あれがヤプール人……!」
ヤプールの姿はルイズたちにも見えていた。割れた空の中にたたずむ異形に誰も彼もが唖然とする中で、ルイズは険しい目つきでハルケギニア全ての敵をにらんでいる。
『貴様が相手では、我らが自慢の超獣でも役者不足のようだ。しかし心配はいらんぞ。既に貴様に相応しい対戦相手を用意しているのだ!』
『何だと!?』
宣言の直後に、一瞬で空間内の光景が切り替わる。ヤプール人から、兜と鎧を身に纏ったような巨大超人のものに。
『行けぇー! カブトザキラー!』
ヤプールの叫びとともに超人の両眼に光が宿り、空を更に砕いて穴を広げながら三次元世界に飛び込んできた。空中で前転し、ファイヤーモンスの前方に降り立つ。
『こいつ……エースキラーに似てやがる!』
ゼロは目の前に現れた巨大超人の容姿について、そう発した。
エースキラー。それはかつてヤプールが、ことごとく自分たちの邪魔をしたウルトラ兄弟を始末するために造り上げた超人ロボットだ。その性能と戦闘能力はウルトラ戦士に匹敵するほどで、超獣と並ぶヤプールの切り札となっている。
『そうとも。このカブトザキラーはエースキラーを強化改造した機体! ……フフフ、この意味が貴様なら理解できるだろう』
『まさかッ!』
『戦えー! カブトザキラー!』
ヤプールの指示により、異次元超人カブトザキラーが手の代わりにハサミを持った両腕を持ち上げ、十字に組んだ。
「えッ!? あの構えは……!」
まさか。ルイズが思う。そしてそのまさかは、的中した。
『スペシウム光線!』
カブトザキラーの右腕の先端より、黄色い光線、ゼロのワイドゼロショットによく似た光線が発射された!
『うおぉッ!』
咄嗟に炎の剣を盾にするゼロ。光線はエメリウムスラッシュを防いだ剣を、一撃で粉々に粉砕した。
『ちッ、やっぱり使えるのか……! ウルトラ兄弟の技をッ!』
ゼロの独白に、ヤプールが肯定した。
『如何にも! エースキラーはウルトラ四兄弟のエネルギーと武器を与えたロボット。後継機のカブトザキラーにもその能力は備わっている。しかも我々の改造により、現在のウルトラ兄弟全員の技を使用できるようにしてあるのだぁ!』
「な、何てこと……!?」
愕然となるルイズ。ウルトラマンゼロはいくつもの驚異的な能力で、何人もの強敵を粉砕してきた。だが今の敵は、そのゼロと同等の攻撃技を持つというのだ! そんな敵が今までにいただろうか!?
『カブトザキラーの力はウルトラ兄弟の力だ! 貴様はウルトラ兄弟全員と戦うのに等しい。その結果がどうなるか、その身をもって教えてやる!』
『ふざけるな! 相手が誰だろうと、俺はテメェらみたいな悪には負けないぜ!』
『そんなことをいつまで言っていられるかな!? カブトザキラー、メタリウム光線だ!』
カブトザキラーが上半身をひねり、戻す勢いでL字に組んだ腕から虹色の光線を発射する!
『せぇやッ!』
ゼロは対抗してワイドゼロショットを発射。光線同士がぶつかり合い、爆発を起こして相殺された。
『ウルトラブレスレット!』
カブトザキラーの攻撃は止まらない。左腕に嵌めたブレスレットを宇宙ブーメランに変え、ゼロへ投擲する。
「ジュワッ!」
ゼロは頭部からゼロスラッガーを飛ばしてブレスレットを弾き返した。だがカブトザキラー自身が突っ込んできて、両腕のハサミで切りかかる。
『うおッ!』
すんでのところでハサミをかわしたゼロは相手の手首を掴んで、ハサミの攻撃を止めた。
『エメリウム光線!』
『うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!』
メンチを切るように顔と顔を近づけたゼロとカブトザキラーのエメリウム光線が至近距離で激突。そのまま両者学院の反対側へ走っていく。
『だぁッ!』
光線の勝負は互角。ゼロたちは光線のぶつかり合いの衝撃で距離を開けると、カブトザキラーが地を蹴って高く跳び上がった。
『レオキック!』
『でやぁぁぁぁぁぁッ!』
飛び蹴りをウルトラゼロキックで迎撃。轟音とともに両者大地に落下。しかしゼロの方が先に起き上がり、カブトザキラーの懐に飛び込んで掴みかかった。
『せぇぇいッ!』
相手の首筋にチョップを連打してダメージを与えていく。が、
『バックルビーム!』
カブトザキラーの丹田辺りから光弾の連射が発せられ、ゼロを大きく弾き飛ばす!
『ぐわあぁぁぁ!?』
大地に転がるゼロ。そこにカブトザキラーの追撃!
『M87光線!』
紅色の光線がゼロに襲い掛かり、彼を大爆発で呑み込む!
『うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
「ゼロぉッ!!」
無敵のウルトラ戦士、ゼロがまさかの劣勢に、ルイズたちの表情が驚愕で染まる。
恐るべきカブトザキラーの脅威! ゼロはこの窮地を乗り越えることが出来るのか!?
≪解説コーナー≫
※「脅威のカブトザキラー」
元ネタは『ウルトラマンメビウス』第四十三話「脅威のメビウスキラー」。怪獣たちを引き寄せていた時空波の発生源が月面に存在することをとうとう突き止めたGUYSは、ミライを残してフェニックスネストで発生源の破壊に向かう。しかしそれはヤプールの罠であり、GUYSがいない隙を突いてメビウスキラーを地球に送り込んだ……という話。ヤプールとの決戦が描かれる三部作の中編。人気の敵役エースキラーがメビウスキラーとなって復活し、メビウスと死闘を繰り広げる。
※「最初に現行地球人に観測」
番組的な超獣第一号はベロクロンだが、カメレキングは古代アトランティスを滅ぼしたと劇中で語られており、スフィンクスの主であるオリオン星人は1万3000年前に地球を植民地にしていたという。そしてルナチクスはかつて月を滅ぼした超獣と、超獣そのものはかなり昔に誕生したようである。
※火炎超獣ファイヤーモンス
『ウルトラマンA』第三十九話「セブンの命!エースの命!」に登場。ファイヤー星人の使役する超獣であり、その実力はかなり高い。炎の剣を扱い、エースを一度死の淵に追いやったほどである。しかも再戦時にはTACのシルバーシャークで撃破されたので、結果的にエースと戦い、敗北することがなかったかなり珍しい超獣となった。
※炎の剣
ファイヤーモンス並びにファイヤー星人一番の武器。ファイヤーモンスはファイヤー星人から投げ渡されることでこれを武装していた。ただ振り回すだけでなく、メタリウム光線を切り払う離れ業を披露している。ファイヤーモンスが倒された後は、ファイヤー星人自らが剣を拾い上げてエースと戦った。
※炎の剣を奪うゼロ
炎の剣を持ったファイヤー星人に追い詰められたエースだが、剣を奪い取ったことで逆転を果たした。エースはこのように、敵の武器を奪う戦法を取ることが多かった。
※異次元人ヤプール人
『ウルトラマンA』という番組においての、そしてウルトラシリーズ初のレギュラー敵。以前までのシリーズとの差別化をしてマンネリ回避を図るためと、この時代に始まった強力なライバル番組『仮面ライダー』の悪の組織ショッカーに対抗するために設定されたものと思われる。ただ、単なるインスパイアに終わらず、歪んだ空間の中で不気味な怪人がうごめく描写で姿を表現される等の差別化がなされている。中盤まで存分に番組に影響を与え続けたのだが、登場怪獣が常に「侵略者の手先」となってしまって逆にマンネリを引き起こしたからか、テコ入れで二十三話を境に退場。以降はヤプールとの関係が不明な超獣や宇宙人が番組を引っ張ることとなった。ただ、四十八話に生き残りの女ヤプールが、最終話にヤプール自身がサイモン星人に化けて再び登場している。
以降の作品では合体した巨大ヤプールの姿で度々再登場してウルトラマンたちを苦しめており、『ウルトラマンメビウス』では負のエネルギーの具現化であるため完全に根絶することは出来ないと言及された。
※異次元超人カブトザキラー
児童誌において行われた「エースキラー強化改造計画」の最優秀賞を受賞した作品であり、その褒賞として公式キャラクター化したエースキラーの派生タイプ。エースキラー同様にウルトラ兄弟の技が使用可能で、かつ両手はハサミに強化されており、しかも実はしゃべることが出来る。現在のところは、着ぐるみにはなっていない。
ちなみに名称は「カブトザキラー」と「カブト・ザ・キラー」で表記ゆれを起こしている。
※黄色いスペシウム光線
エースキラーの使用した光線は、どれもオリジナルのものとはエフェクトが異なる。もっとも、この時期の客演ウルトラマンでは「オリジナルと違う」ということは別段珍しいものでもないのだが。
後年の、メビウスの技をコピーしたメビウスキラーの光線は、あえてエフェクトを禍々しい印象を与えるものに変えている。
※「カブトザキラーの力は~」
メビウスキラーと戦うメビウスに、ヤプールはメビウスキラーの力がメビウスの力であること、メビウスキラーと戦うことは自分自身と戦うことに等しいと挑発をかけた。
※エメリウムでメンチ切り
『ウルトラゼロファイト』で、ゼロがガルベロスが作り出したストロングコロナゼロの幻影と戦った際に、互いに顔を近づかせた状態からエメリウムスラッシュをぶつけ合った。
※M87光線
エースキラーは十字架に磔にしたゾフィー~ジャックまでの四人の兄弟からそれぞれ必殺技を一つずつ奪い取った。M87光線はその一つである。
……これだけなら特筆すべきことではないのだが、実はゾフィーはこの光線を、この時点において、映像作品中で使ったことがなかった。そう、何とゾフィーは自身の必殺光線の初披露を、別のキャラに奪われるという史上稀に見る珍事を起こしたのだ。このことはよくネタにされる。
ちなみにエースキラーが使用したM87光線は赤い光弾状だったが、後にゾフィーが使用するそれはどれも光線型で、とても同じ技に見えない。
恐るべきカブトザキラーの暴威。超獣軍団の威力。追い詰められるウルティメイトフォースゼロ。そしてとうとう悪の魔の手は学院に、アニエスに降りかかる。彼女を助けようとするコルベールの姿に、アニエスは。次回、「ある教師の墓標」。