仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第七話です。
バトル少なめの回です。
感想等書いていただけると有難いです。
よろしくお願いいたします。

因みに、あまねの担任の先生はシソンヌの長谷川さんをイメージして書いています。
シソンヌのお二人って、すごく演技がお上手で、コントを観ていると言うより、演劇を観ているような感覚になります。
「ばばあの罠」というネタが本当に面白いので、皆さんにも是非観ていただきたいのです。
https://onl.bz/LMmgZhh (公式の動画です)



【イメージOP】
PEOPLE1 - 銃の部品

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


EPISODE 03 学校閉鎖(SCHOOL CLOSURE)
Question007 What happened in the school?


?????

 だだっ広く、薄暗い部屋の中で、三人は向かい合って椅子に座っていた。

 背広の男は読書に集中し、チャイナ服の女はマニキュアを塗り、少年はゲームに夢中だ。

 

「まさか、クロトがやられちゃうだなんてねぇ。貴重なライフを削られた、ってちょっと怒って帰ってきたわ」

 

 爪の中央から側面へ、徐々にマニキュアを塗っていく女。

 本来、紫色のマニキュアは良く映えるものだ。だがこの部屋が暗いせいで、中々その魅力を醸し出すことは出来ない。

 それでも我が子を見つめる母のような眼差しで、映えることのない爪を眺めていた。

 

「でも楽しそうだったよ。聞いてみたら、もうじき新しい力が手に入るって言ってた」

 

 少年は20年ほど前に販売されていた白いゲーム機で遊びながら答えた。

 ポリゴン状で映し出される主人公が、縦横無尽にステージを動き、前に進んで行く。

 敵も少なくなってきた。後はゴールを目指すだけだ。

 

「へぇ。それは……楽しみだね」

 

 主人公はただ真っ直ぐゴールを目指し、トップコートを塗るだけとなった。

 

 暫し、沈黙が流れる。

 

 すると男は本を閉じ、二人に呼びかける。

 

「そろそろ、()が動き出す頃かな?」

「早くない!? まだ時間はあるよ」

「良いじゃない。早ければ早いほど良いのよ。善は急げって言うでしょ」

 

「あと、私たちも()()に挨拶をしなければならない。少ししたら出かけよう」

 

 丁度、女は全ての爪が塗り終わり、コミカルな音と共に主人公はゴールに辿り着いた。

 

「「はーい」」

 

 二人に対して微笑みを見せる男。

 

 ふと左側を向いた。

 暗い壁の側面に巨大な窓があり、そこから外が見渡せるようだ。

 

 そこに写っていたのは、殺風景な街の姿だった。

 街と言っても、ビルは朽ち果て、ひび割れたコンクリートの上を砂煙が舞う、荒廃した世界。

 人影は一切無く、それどころか生物がいるのかすら判らない。

 

 男は何を思っているのだろう。笑顔は消え失せ、無表情で朽ちた街を見つめる。

 少しだけ口角を上げると、立ち上がってその場を後にした。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.10.31 19:32 東京都 新宿区 代々木ホール

 生憎(あいにく)の雨だった。

 朝のニュースでは、雨が降っているせいで渋谷に仮装をして行けない、と愚痴をこぼす若者の姿。

 そしてあれ(ヒュージルーフの出現)から一年が経ったことが放送されていた。

 

 一年が経った今でこそ、風景に溶け込み、すっかり日常の一部になった屋根。

 ニュースを見てそんなこともあったな、と空を見上げ思い出す人も多いようだ。

 

 だが、()()が嘆くことも、上を見上げ何かを思い出すこともなかった。

 なぜなら、()()のお目当てのイベントは、屋外ではなく屋内での開催だからだ。

 

 

 

 

 

 色鮮やかな照明と振りかざされるペンライトで照らされる会場内。

 掛け声を出して盛り上がる観客の視線は、大きなステージの上に立つ一人の女性に向けられていた。

 

【挿絵表示】

 

 金髪のボブカットの女性──江戸川(えどがわ)ミソラは、黒い衣装を着、ステージ上で歌って踊っていた。

 

 曲が終わった。

 歓声と拍手が曲の次に響く。

 

「みんなー! アンコールありがとー!」

 

 再び上がる歓声。

 様々な格好をした観客の中である男は目を輝かせていた。

 法被(はっぴ)を纏い、両手にはペンライトを握った男──深月だ。

 この国を護るという仕事の重圧を忘れ、ただ熱狂の渦に飲み込まれながら、屈託のない笑顔を魅せる推しを眺めていた。

 

「実は、今日はみんなにお知らせがあります!」

 

 おおっ、と期待に満ちた歓声が上がる。

 

「私、江戸川ミソラ……」

 

 固唾をのむ観客たち。

 深月もゴクリと唾を飲み込んだ。

 推しの発表ほど緊張するものはない。

 得体の知れないものへの対応と同じくらい、否、それ以上に心拍数が上がる。

 

 

 

 ついに、その瞬間がやってきた。

 

 

 

「誕生日の2月6日に、日本(にっぽん)体育館での、ライブが決定しましたーっ!」

 

 今日一番の歓声が響き渡った。

 

 それもそうだ。

 日本体育館は100年以上の歴史を持ち、これまで名立たるアーティストたちがライブを行ってきた。

 その偉大な歴史に、江戸川ミソラという名前が刻まれるのだから。

 

 その歓声にお辞儀をして応えるミソラ。

 頭を上げると言葉を続けた。

 

「いやぁ。()()()()()があってすぐにデビューして、どうしたらみんなに元気を分け与えられるのかって、ずっと考えていたんです。

 一年近く頑張って、結果ああいう、すごい偉大なステージに立たせていただくことになったっていうのは、とても嬉しいです。

 これからもよろしくお願いします!」

 

 再びお辞儀をしたミソラに拍手をする観客。

 

「じゃあ、あと2曲で、本当にラストです。今日は本当にありがとうございました」

 

 照明が暗くなった。

 会場を照らすのは、思い思いの色になっているペンライトだけだ。

 

 真っ暗なステージの上で、ミソラは口を開いた。

 

「それでは聞いてください。『Be the one』!」

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.10.31 21:02 東京都 中野区

 東中野駅周辺の大通りを二人の男女が歩いていた。

 男の方は長い白髪を後ろで束ね、ポスターやらパンフレットやらの入った紙袋を両手に持っている。

 女の方はそういった類のものを持っておらず、背中にリュックサックを背負っている。

 そして二人とも、傘をさしていた。

 

「有難うね。付き合ってくれて」

 白髪の青年──七海日菜太が隣を歩く少女──筒井あまねに話しかける。

 

「ううん。私も楽しかったから」

 

 二人は今日、江戸川ミソラのライブに行っていた。

 ミソラのファンだという日菜太に、あまねが誘われたのだ。正直興味はさらさらなかったが、たまたま予定が空いていたため、同行することにした。

 だが、行ってみれば大満足。数曲しか知らなかったとしても、十数曲あるセットリストを楽しむことが出来た。

 

「最後の曲良かったね」

「『Everlasting Sky』? 良かったよねぇ。中盤にやった『しゅわりん☆どり〜みん』っていうのも良かった。

 でも一番好きなのは、やっぱり『Catch the Moment』だね」

「え待って! 私もその曲大好き! 正直ミソラの曲は分からないけど、その曲が一番好き!」

「ホント!?」

 

 互いを見つめ合い、笑い合う二人。

 暗い夜道を明るく照らす街灯が、二人の両端を静かに囲み、その光は雨によってぼやけていく。

 

 しばらくして、あまねの住むマンションに到着した。

 一階の中に入ったところで、日菜太が上着のポケットに手を入れ、中から何かを取り出した。

 

「あのさ」

「?」

 

 それは一つの長方形の箱だった。緑色の包装紙でラッピングされている。

 

「改めて、誕生日おめでとう!」

「!」

 

 そう。今日は筒井あまねの16歳の誕生日だった。正直、本人もライブが楽しすぎてすっかり忘れていた。

 

 箱を受け取り、包装紙を丁寧に取り外して中身を確認する。

 中に入っていたのは、「A」の形をしたプラスチック製の赤いキーホルダーのようだ。

 

「手作りしたんだ」

「嬉しい……有難う」

 

 笑顔でキーホルダーを見つめるあまね。

 その様子に安堵したのか、日菜太は優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 一方その頃、6階の椎名家。

 春樹と碧は二人だけで食卓を囲んでいた。机上には数本のノンアルコールビールと、柿の種や生ハム等、様々な酒のつまみが置かれている。

 

「今更訊くのもあれだけどさ」

「?」

「あまねは今日何やってるの?」

「あれ? 聞いてなかったっけ? 今日あまねちゃんは、クラスの友達と『みーたん』のライブに行ってるって」

 

「みーたん? 何だそれ?」

「え!? 知らないの? これだよこれ!」

 

 碧は端末の画面を春樹に見せた。

 そこには江戸川ミソラの画像が大量に表示されていた。

 

 「みーたん」改め、江戸川ミソラ。

 去年の11月にデビューし、瞬く間にトップアイドルへと成り上がった新星だ。

 歌唱力やカリスマ性等がずば抜けており、新曲を出せば世界ランキングに必ずランクインする。

 まさに、2020年代のカリスマアイドルといったところだ。

 

 すると、そんなアイドルに魅了された少女が部屋に入って来た。

 

「ただいま〜」

 

 あまねの表情をふと見た春樹は唖然とした。

 普段、あまねは余り笑顔を見せない。いつも冷静沈着で、笑顔と言っても微笑む程度だ。

 そんな少女が、満面の笑みで帰って来たのだ。

 明日は必ず雪やら強風やらの異常気象になる。春樹は内心で確信した。

 

「おかえり〜。デートはどうだった?」

「は!? ででで、デート!?」

 

 碧の爆弾発言に立ち上がって驚愕する春樹。

 ついにこの日がやってきたのか、と、とりあえず冷静になろうとするが、如何にもこうにも出来ない。

 

「ち、違うからね! 日菜太くんとはそういう感じじゃないからっ!」

 慌てた様子で弁明するあまね。

 

「へぇ〜っ。その日菜太くんから、()()をもらったんだ」

 

 碧は自身の右手を見せた。そこには先程あまねが日菜太からもらっていた、包装されたプレゼントの箱が握られていた。

 

「い、いつの間に!?」

「こういうのを知っておくと、私の仕事では役に立つのよ」

「役に立つ機会は無いし、今後も一切やってこないな。あとそれ絶対他所(よそ)でやるなよ。近所の人から変な目で見られるから」

 

 春樹の指摘を聞き流し、碧はラッピングを剥がして中身を開けた。

 

「え? (から)?」

 

 箱の中には製品が入っておらず、完全に空の状態だ。

 フフンとドヤ顔で両腕を組むあまね。

 

「どうせこんなこともあろうかと、前もって抜いておいたのよ」

「それでリュックに付けているというわけか」

 

 春樹の言葉で碧はあまねの後ろに回り込んだ。

 よく見ると、リュックサックの金具に日菜太から貰ったキーホルダーが付けられていた。

 

「何で気がついたの?」

()()()()は、人の些細な言動を気にしなくてはならない仕事だった。だから分かるんだよ、大体、俺は一応お前の保護者だ。大体のことは分かる」

 

「パパ……気持ち悪いよ」

 

 (しばら)膠着(こうちゃく)していた春樹は表情一つ変えずに、後ろを向いて冷蔵庫のある台所に向かって行った。

 その脚が産まれたての子鹿のように震えていたのを、碧とあまねは見逃さず、見つめ合って苦笑した。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.06 10:23 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 2階 1年6組

 ざっと三十人近い生徒が黒板に視線を集中させている。

 二時間目の今は、担任の先生が物理基礎の授業を行なっている。本来であれば、この黒縁眼鏡をかけた大柄の担任の授業は二・三割が雑談だ。ただの雑談ではなく、物理基礎の授業に直結するタメになる雑談だ。

 だが今はそんな話をする余裕は担任には無く、況してや生徒も気を抜く余裕は無い。

 

 後ろでは大勢の保護者が、自身の子が勉学に励む姿を見守っている。

 

 何故なら、今日は公開授業だからだ。

 保護者の優しい目線が、生徒たちには鬱陶しいものに感じられてしまう。

 

 その鬱陶しい目線の中には、春樹と碧(あまねの保護者二人)のものも混じっていた。

 いつものように春樹は無表情で、碧はニコニコしている。だがあまねは勘づいていた。

 あの二人、ちょっとニヤニヤしている。

 前を向きながら、すごく嫌そうな顔で一つ溜息を()いた。

 

 暫くして、授業が終わった。

 休み時間に入り、各々が自由に動く。

 

 

 

 

 

 その時だった。

 大音量の短い音楽が鳴り、校内放送が始まった。

 

【生徒と保護者に連絡します。只今より、校内の緊急点検を行います。生徒と保護者は、校庭へ集合してください】

「皆さん! 私が校庭に誘導いたします! 着いて来てください!」

 

 担任の誘導に従い、生徒と保護者が教室から出て行く。他の教室でも同じように、教員の誘導に従って校庭に移動しているようだ。

 

「妙だな。不審者なら『体育館に避難してください』っていうアナウンスが入る筈だ。校庭に……?」

「それに、学校の連絡でも、今日は校舎の点検なんて伝えられていないし、尚且つ公開授業の日に点検なんて行う筈がない」

 

「「……まさか……!」」

 

 校舎の中に残った春樹と碧は、ポケットから端末を取り出し、ロック画面を確認した。

 するとそこには、赤い文字が大量に羅列され、画面の大半を覆い尽くしていた。

 

出動要請

第85番・第87番の柱の反応、及び東京都渋谷区にて赤いカーテンの出現を確認。

早急に出動してください。

出現予想時刻まで残り

00:01:29

 

 そして出現場所の位置を確認すると、その周辺に見覚えのある店の名前が幾つか表示されている。

 

「ここに来るってことか……?」

「そうみたいね……」

 

 すぐに端末にカードをかざし、ドライバーを腹部に出現させた。

 そして廊下に出て辺りを確認した。

 

 すると、ピポパポと何か音が廊下の奥から聞こえてきた。次に足音が聞こえ、最後に得体の知れないオレンジ色の化け物が現れた。

 SK-1という旧ソ連がユーリィ・ガガーリンのために作成された宇宙服に酷似した外見をしており、ヘルメットの中には頭部等は無く、上村淳之の「隼」という絵が飾られている。

 そしてそのファスナーの部分には、数十個の小さなスイッチのようなものが着けられていた。

 

 春樹は端末の通話機能を使い、全員へのグループ通話を始めた。

 

【もしもし】最初に電話に出たのは森田だった。

「今丁度、怪物(フォルクロー)が現れました。画像を送ります」

 

 怪物の写真を送り、全員に送る。

 

「要は、新型未確認生命体(ミカクニン)の第二十三号……ですか」

 薫が呟く。

「ああ」

「何というか、そこまで生きてるような感じがしないですよね」

「頭部もよく分からない絵画だし、無理もないよ」

 深月の発言に圭吾が答える。

 

「とにかく、一刻も早くあいつを倒してくれ」

「「了解」」

 

 通話を切ると、春樹と碧はカードを端末に装填した。

 

『"ACT" LOADING』

『"REVE-ED" LOADING』

 

 電源ボタンを押すと、軽快な音楽とともに鎧が出現する。

 各々変身ポーズをとり、そして叫んだ。

 

「「変身!」」

 

 端末をドライバーに挿し込んだ。

 身体が変化し、銀色の鎧が装着される。

 

『I'm KAMEN RIDER A-CT!』

『I'm KAMEN RIDER REVE-ED!』

 

 変身した二人は、剣を取り出すと怪物に向かって行こうとした。

 すると

 

「ねぇ」

「あ?」

 

 突然リベードがアクトに話かけた。

 走っていたアクトは立ち止まり、後ろを向く。

 

「そういえば、あまねちゃんは?」

「?」

「確かあの時、お手洗いに行ってた筈だけど。ちゃんと避難出来たのかな?」

「……」

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 二人の後ろから聞き覚えのある声で、悲鳴が聞こえた。

 そこには腰を抜かしたブレザー姿の少女がいた。

 

「あまね!?」「あまねちゃん!?」

 

 さらに奥の方を見ると、そこにはあまねに向かって来ている数人の異様な集団がいた。

 見た目はパウル・フュルストの描いたペスト医師のように、黒いローブに白い仮面を着けたもので、その右手にはコンバットナイフが握られている。

 

「あれは……」

()()()()()……!」

 

 異様な集団は言葉を発しず、ゆっくりと迫って来る。

 怪物の出す妙な音と、あまねの恐怖に満ちた呼吸音だけが、廊下に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: What was happened in the school?

A: A monster that looks like an astronaut and a mysterious group appeared in there.




まともな恋愛をしたことが無いので、結構そういう場面は荒く書いてしまっています。
ご容赦ください。

因みにミソラのライブシーンに関しては、
・米津玄師 2022 TOUR / 変身
・DAY1 Roselia 「Flamme」
・DAY2 Roselia 「Wasser」
こちらの三つを参考にさせていただきました。
米津玄師さんのこのライブは生で拝見させていただきまして、非常に感銘を受けました。
チーム辻本の皆さんがめちゃめちゃ格好良かった……!
RoseliaのライブはBlu-rayで拝見しまして、笑いあり涙ありの格好良いライブでした。

今作のキャラクターたちの日常を描いたスピンオフがあったら、読みたいですか?

  • 読みたい。
  • そうでもない。
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