実は結構切羽詰まっているので、今後はこれくらい短いものが連なります……。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
【イメージOP】
イトヲカシ - カナデアイ
【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2
Question103 Why does it laugh during fighting?
2022.06.16 08:16 東京都 新宿区
「hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee」
本来、パラレインは165枚全てのメモリアルカードを吸収することによって、嘗てアール達の住んでいた世界を滅ぼした程の力を取り戻す予定であった。確かにそれに狂いは無い。
だが彼奴にとって想定外だったのは、八雲が開発した4枚のカードすらも取り込んだことだった。今まで存在していなかったものを取り込んだことによって更なる力を手に入れた、言わば究極態になることが出来たのだ。
しかしその代償というのは、彼奴が持っている自我を失うことであったのだが。
「とんでもないものが生まれたな……」
「うん……。結構ヤバいね……」
立ち上がった春樹達は驚愕の色を隠せない。
「一気にここで仕留めるぞ!」
八雲の合図で三人は再度戦闘をするための準備を始める。
「「「変身!」」」
姿を変えた彼らは武器を手に取って、パラレインに向けて走り始めた。
けれどもパラレインはその場から一歩も動こうとしない。
「hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee」
赤色の複眼が光った瞬間、アクト達の方へと空から降り注ぐ赤色の雷が次々と襲い始めた。
今日の天気は雷雨ではないことから、パラレインの能力によるものだろうと察しはついた。
それで終わりではない。
今度は激しい地震を起こして行手を阻み、それによって欠けたビルの一部や車を宙空に浮かび上がらせ、その全てを投げ付けた。
何とか武器で向かって来る物を粉砕した三人は、地割れを起こした地面の上を走って標的の方に向かって行った。
「「「ハァァァァッ!」」」
2本のチェーンソーの刃と電流を帯びた棍棒の先がぶつかりそうになったパラレインは、何と一瞬のうちにその場から姿を消していた。
戸惑う彼らが自身らの後ろにそいつがいると気が付いたのは、背中に強過ぎる衝撃波を受けた時が初めてだった。
「「「ッ……!」」」
転がる三人。
「hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee-hee」
嘲笑うパラレインは三人の上空に、緑色を基調とした禍々しい色の大きな球体が次々と出来上がっている。緑色や紫色、様々な色のエネルギーが集まって来るそれは、言わば水風船のようなものであった。
そしてそれがアクト達の方へと落ちた時、彼らは断末魔を上げる暇を与えられずに大爆発に巻き込まれてしまった。
炎が収まって煙の中から見えたのは、変身が解除され服が焦げた状態で倒れ込む春樹達三人の姿であった。
「chortle-chortle-chortle-chortle」
上手くいったと無邪気に笑うパラレイン。彼奴の印象は神々しいものから、その笑い方のためにまるで子供のようなものに変わっていった。白い身体の美しさを殺してしまう声は、全てを台無しにするには充分であった。
正に満身創痍と言った状態にパラレインが近付く。意識こそあって立ち上がろうと懸命に努力するのであるが、指一本動かない。
足音一つ立てず、浮かんでいるのかと錯覚してしまう歩き方をする彼奴を静止したのはアールであった。
「今日はこのへんにしておきましょう」
「?」
「まだ貴方も力を完全にはコントロール出来ていないでしょう? もう少し馴染ませてから、この世界を破壊しましょう」
主がゆっくりと頷いたのを確認したアールは、変化したまま変わらない顔で笑顔らしき雰囲気を醸し出すと、二人でその場から姿を消した。
誰もいなくなった場所に手を伸ばす春樹であるが、所詮は何も無い。
そして限界まで伸ばし切れたところで、彼の意識はプツリと途切れた。
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?????
白い身体で僅かな光を反射するだけでただ棒立ちになっているだけのパラレインを見つめながら、人間態に戻ったアールは笑顔を浮かべていた。
これでようやく目的が達成出来る。嘗て自身を魅了してくれた、いや、それ以上の力を持った彼奴は最早無敵だ。立ち向かう敵など木っ端微塵に粉砕し、全てを跡形も無く崩壊させてくれる。考えただけで笑いが止まらなかった。
そしてアールはニヤニヤと笑みを浮かべて主を凝視し、時は流れて行った。
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2022.06.16 12:22 東京都 新宿区 SOUP
「今回のことを受けて、政府は6月24日から6月26日までの3日間、非常事態宣言を出して新宿区民の一切の外出を禁止。及び新宿区への立ち入りを禁止した」
春樹達戦った三人の手当てを終えたところで、岩田が淡々と報告する。あんな力を持ってしまった生物がやって来るのだから、妥当な判断であろう。
「不幸中の幸いだったのは、カードが全て帰って来たことだな」
「はい。多分、力をコピペしたからもう必要無い、ってことでしょうね」
「使えるは使えるので、きっと役立つでしょうね」
森田と薫、圭吾が春樹の座っているデスクに目線を合わせる。そこにあったのは、メモリアルカードが重なった1つの束であった。
パラレインがアールと共に姿を消した際、元いた場所にバラバラの状態で残されていたのだ。
薫の言う通りなのであれば、全てのカードの情報や力を取り込むことが出来た彼奴にとって、それはもう用の無い物達であるのだから、手放しても何ら問題は無いものである。
すると、
「……封鎖されるんだったら、お前らは逃げた方が良い。離れたところでも指示は飛ばせるだろ。だから──」
春樹が呟いた。
深月達は変身をしたりして戦うことが出来ない。新宿区一体を封鎖しないと対応出来ないような敵を相手どるのであるのだから、ここは安全なところに避難してそこから指示やら何やらをすることが先決である。
それは春樹だけではなく、碧と八雲も同じ気持ちであった。
だが、
「そんなことしませんよ」
口を開いたのは、深月だった。
「今までいつも一緒に戦ってきたじゃないですか……。春樹さんが碧さんや八雲さんと最後まで一緒に戦うのなら、僕達も最後まで一緒に戦います……!」
彼の言葉に春樹達三人以外のメンバーが笑みを浮かべる。言わずもがなのことを彼が言ってくれたことが何よりも嬉しかったのだろう。
だが彼らより以上だったのは春樹達戦う張本人達であった。特に春樹と碧に関しては顔にこそ出さなかったが、1年前に初めて会った時よりも信じられないくらいに成長をしたことに喜びを感じていた。
「それで、どうやってアイツを倒す?」
紛らわせるために碧が話を戻そうとすると、八雲が話し始めた。
「実は、一個だけある」
キョトンとする全員の前で八雲が取り出したのは、虹色に光り輝く立方体の物体であった。
左右の面には何かを挿すための大きなスロットがあって、前面にはレーダーのような白い部品が取り付けられていた。
「これが、最後の切り札だ」
自信満々に言う八雲であったが、全員どういうことなのか解らず、首を傾げた。