仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第八話です。
今回は戦闘というよりも、会話メインです。
長ったるしい駄文なので、お時間のある時にお読みください。
よろしくお願いいたします。



【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


Question008 Why did three envoys show up?

2021.11.06 10:32 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 2階

「どうしてすぐに逃げなかったっ!?」

 アクトが「ソルダート」と呼んだ怪人たちと戦いながら、あまねに訊いた。

 

「何でって、お手洗い行ってたから……」

「そりゃぁ仕方ないか」

「あまねちゃん! とりあえず教室の中に入って!」

「分かった!」

 

 リベードの言葉であまねは教室の中に入り込んだ。

 それを確認するとリベードとアクトは、ディスペルクラッシャーを振り回し、ソルダートを斬り裂いていく。

 

「「はあっ!」」

 

 横一文字に剣を振ると、エネルギー波が一気に集団を斬り裂いた。

 爆散する兵士たち。

 

 次は大物だ。

 走ってオレンジ色の化け物に襲いかかる。

 

 すると化け物はファスナーの部分にあるスイッチの一つを押した。そうすると右脚に四つ穴の空いた青色のアタッチメントが現れた。

 そこから数本の白い筒が火を吹いて飛び出して来た。

 

「あれミサイルだよね!?」

「ああ……。ヤバいな」

 

 すぐさまディスペルクラッシャーをガンモードに変形させると、端末をかざした。

 

『『Are you ready?』』

 

 端末を再びドライバーに装填すると、銃口を前に向けた。

 

『OKAY. "ACT" CONNECTION SHOT!』

『OKAY. "REVE-ED" CONNECTION SHOT!』

 

 引き金を引いた。

 緑色と青色のエネルギー弾が全てのミサイルを撃ち抜き、激しい爆発が起こる。

 

「今よ! この高さだったら飛び降りても骨折しないから!」

「どんなアドバイスだ!? お前娘に何言ってるんだ!」

「オッケーママ!」

「オッケーじゃない! パパはオッケーじゃないからっ!」

 

 あまねは教室の窓を開けて、指示通りに飛び降りようとする。

 やけくそに頭から行こうとした。

「うおおおおお!」

「ステェェェイっ!」

 

 だが

 

「痛っ!」

 

 アクトとリベードが教室に入って目にしたのは、床に転がっているあまねの姿だった。

 

「お前、何してるんだ?」

「それが、出られないんだけど」

「は?」

 

 試しに窓から手を外に出そうとする二人。

 だが何も遮るものの無いはずなのに、何故か向こう側に手が届かない。

 

「どうなってるんだ、これ?」

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.06 10:40 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 校庭

 生徒と保護者の避難は終わり、敷地内に残ったのは警察関係者のみとなった。

 今、校庭の外にある通路には数台の警察車両が停車し、緑色の人工芝の上には白いテントが置かれている。

 そのテントの中に、春樹と碧以外のSOUPのメンバーたちが入って行く。

 森田が引き継ぎを終わらせると、四人はパソコンを立ち上げ、早急に作業を始めた。

 

「第二十三号『スイッチング』は胸のスイッチを押すことで、様々なアタッチメントを出現させるみたいです。大体30個くらいですかね」

 圭吾がパソコンを見ながら言う。パソコンのモニターには、先程のアクトとリベードの戦闘の映像が映っていた。

 

「あと、体表がオレンジ色なのは、エネルギーが身体中に充満しているからでしょうね。倒したら校庭(ここ)ごと吹っ飛びます」

 薫が机上のお菓子を食べながら続けた。薫のパソコンには、スイッチングを赤外線解析したものが表示されている。

 

「要はあいつを外に放り出して、爆破しても大丈夫な場所に誘導すれば良いってことですか?」

「そうだな。21年前の、『ゴ』のミカクニンと同じ対応だ」

 

 21年前の未確認生命体には「ゴ」と呼ばれる階級があった。

 グロンギ族の中でも上位にいる彼らを倒した際、その爆発は凄まじいものとなってしまい、警察庁が四号(クウガ)を危険視したことがあった。

 そこで、爆発による被害を最小限にするため、特定の場所に誘導し、そこで撃破することで事は収束したのだ。

 

「この近くだと、明治通り沿いに廃ビルがある。そこの地下だったら何とかなるだろう」

 

 

 

 

 

『そうか分かった。改訂マルエム法に基づき、渋谷区に非常事態宣言を発令、その廃ビル周辺の半径1キロを48時間封鎖するよう連絡する。事務作業は任せろ。君たちは誘導の方法を早急に考えてくれ』

「「「「了解」」」」

 

 岩田室長への報告が終わった丁度その時、一本のグループ通話が入ってきた。

 

「もしもし」

 電話に出る森田。

『椎名です』

 春樹からだった。

 

 

 

 

 

『今……学校に閉じ込められています』

「……は?」

『いや、だから学校に閉じ込められてるんです。試しに全ての教室、及び非常口等と含めた出口からの脱出を試みましたが、何故か出ることが出来ません』

 

 閉じ込められた……?

 ドアが開かない……?

 想定外の報告に戸惑う四人。

 

『試しに正門の窓ガラスを撃ってみてください。この学校の窓は強化ガラスでできていて、撃ってもまるで効かないですけど、どうなることやら』

「分かった。SATに連絡。試しに正門への射撃をしてくれ」

 

 森田の指示で警察官の一人がSATに通達をする。

 すると銃器対策警備車から二十人近くの隊員が出現。正門前で銃口を向ける。

 そして、一斉に引き金が引かれた──。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.06 10:46 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 2階 1年6組

 ドドドドド。

 絶え間ない銃声と同時に目の前で火花が散る。

 普通、このような状態であれば、人は怖気付いてその場にしゃがみ込んでしまう。

 だが

 

「あー……全然(ぜんっぜん)びくともしないわ」

「ホントだね〜。これじゃ今日一日出るのは無理かな〜」

「えぇー。19(しち)時から『WOW! ウチらの動物園』2時間スペシャルなのに……」

 

 この三人だけは違かった。

 これ以上に怖い場面を経験しているからでも、怖いもの知らずなだけでもない。

 どうにもこうにも攻撃が無意味になってしまうからだ。

 

 結局のところ、正門のガラスは全く割れなかったため、今度は三人のいる1年6組の教室の窓ガラスを直接攻撃することにした。

 だが、これも何ともならない。様々な種類の弾丸を使っても、本来ヒビの入って壊れるものが全く壊れないという事実に、熟練の先鋭部隊も困惑せざるを得なかった。

 

 そしてついには

 

「ん? あれ何持ってるの?」

「え? どれ?」

 

 ほらあれ、とあまねが指差す方では、SATの隊員の一人が小さな()()をモゾモゾと手の中で動かしている。

 その隊員以外の全員が後ろにはけると、()()をいきなり春樹たちの方に投げてきた。

 

 

 

 それが深緑の手榴弾であることに三人が気がついたのは、それが窓の目の前に来た時だった。

 

「「「ああああああ!」」」

 

 流石にその場にしゃがみ込む三人。

 

 その瞬間

 

 ドーーーン!

 

 けたたましい音と共に、激しく炎が舞った。

 これなら窓ガラスは木っ端微塵になり、容易に脱出出来る──。

 

 

 

 はずだった。

 

「あれ?」

 

 起き上がってみると、何ともなっていない。

 本来であれば、窓の近くにいた自分たちには大量のガラス片が刺さるはずだ。だが何かが刺さった様子もない。

 数秒前と変わらない光景が広がっていた。

 

「これでも駄目なのーっ……!?」

 

 もうどうしようもないと感じたのか、あまねは自分の席に着席した。

 

「これもアイツの力なの……?」

「……分からない。現状ではそれしか言うことがない」

 

 二人は廊下に出てその様子を確認する。

 

 先の戦闘の影響で床は歪んで焦げ付いており、窓ガラスにはヒビが入っている。廊下を照らしている照明も点滅を繰り返していた。

 

 そんな中に、アイツ(スイッチング)は立っていた。その体表はオレンジから白に変化しており、元々血の気を感じなかったがさらに失せたような気がする。

 

「あれ、さっきはオレンジだったよね? 何で白くなってるの?」

 いつの間にか後ろに立っていたあまねが二人に訊く。

「『ホメオスタシス』って知ってるでしょ? アイツの身体には大量のエネルギーが蓄えられていたの。ただそれが、さっきの戦闘で殆ど使い果たしちゃったから、今は身体を休めているってわけ」

 

 ホメオスタシス(恒常性(homeostasis))とは、W・B・キャノンによって提唱された生物学の用語で、自律神経、内分泌系、免疫の三つによって身体の状態を一定に保とうとする現象のことだ。

 実際、21年前に出現した未確認生命体第二十一号は、超高温の体液を口から吐き出す際、体内温度が約280度になっていた。そのため、身体を冷やすために定期的に水の中にいることと、腹部の蒸気口から余分な蒸気を排出する必要があった。

 まぁ、その蒸気口か内臓と直結していた弱点で、四号にそこを貫かれて倒されたのは周知の事実だと思うが。

 

 

 

「明日の朝までは動かないみたいだから安心して。とりあえず、脱出の方法考えましょうか」

 碧の合図で三人は後ろ側に歩き始めた。

 見渡す限り、ソルダート(異様な集団)や怪物は特にいなさそうだ。他の教室の中も探してみたが、脅威もなければ、手を差し伸べてくれるものも何も無い。ありふれた午後の学校だ。

 

「そういえば()って二本反応があったんだよね? しかもここに現れるって」

「ああ。ということは、何処かに潜んでいる可能性が高いな」

 

 後ろを振り向いたあまね。

 少女の親代わりは窓の外を見ていて、もうまもなく南中する太陽の影響でできた影が二人だけを覆い隠している。

 

「どうしたの?」

「……脱出の前に、ご飯とかどうしようかと思って」

「ああ……そっか……うん…………え、今?」

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.06 20:03 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 校庭

「三人が学校に閉じ込められているのは、()()()()()()()()()()()()ということか?」

 想定外の事態に現場に駆けつけた岩田室長とその他四人は、外に出て話していた。

 手元のパソコンの画面を見せながら、室長の質問に薫が答える。

 

「ええ。しかもフォルクローの能力でそうなっているとかっていうわけじゃありません。()()()()()()()()()()()()()()()んです」

「どういうことだ?」

 森田が訊いた。

 

「恐らく第二十四号は、身体の形状を自由自在に変化することができるんです。現在ゲル状になっている二十四号は、巨大な壁となって校舎を覆っているんです」

「だから柱に反応があっても、一切姿が見えなかったのか」

 

「そうなると問題は、いつどのタイミングで脱出するかですね。簡単に状態や形状を変えてくれるとは思いません。何か体質を強制的に変化させることが出来る条件があれば()いんですけど……」

 

 圭吾の発言に、その場にいたメンバー全員が黙り込む。

 

 次に話を切り出したのは深月だった。

 

「あの、ずっと気になっていたんですけど、『ソルダート』って何なんですか?」

「フォルクローが出現させる、言わば戦闘員みたいなものだ。フォルクロー程の戦闘力は有していないし、神経断裂弾を数発撃ち込めば泡になって消滅する。比較的倒すのが簡単なやつだ」

 

 深月の質問に森田が答えた。

 ここで再び全員は二十四号改め、サマウントの対策について協議を再開した。

 だがゲル状とはいえ壁のようにため、固く何をしても検体を採取出来ないことや、そもそも形状変化を行う相手にどのように対応して良いのか分からず、結局全員お手上げ状態になった。

 

「もう何なんですかね。分身するやつとか、海月みたいな巨大なやつとかいましたけど、今度は身体を自由自在に変化出来るやつって……」

「そうね。生物学が根本から揺らぐ可能性があるね、これ」

 

 深月と薫が同時にペットボトルに入った水を飲む。もう中の残量は残り僅かになってしまった。

 

 すると後ろからはゴソゴソと何かを漁る音と、煙草の匂いが迫ってきた。

 

 何だ何だと後ろを向く五人。

 そこには──

 

 

 

「皆さんは、まだ善処している方だと思いますよ」

 背広を着た男がニコリと笑顔を向けて立っていた。その右側では少年がポテトチップスを食べ、左側では女がキセルを吸っている。

 何処から入ってきたのか分からない侵入者に、その場の全員が驚愕した。ええ

 

「誰だ!」

「失礼。驚かせるつもりはなかったんです。私の名はアール。ポテチを食べているのがピカロ、キセルを吸っているのがフロワです」

 

 

 

 

 

「貴方方が『フォルクロー』と呼んでいる生命体と同族の存在ですよ」

 

 その発言に再び驚く一同。

 その他の警察官らは、腰から拳銃を取り出し、銃口を三人に向け始めた。

 右手を挙げる三人。まるで「自分たちは抵抗する気はない」と伝えるかのように。

 

「何処から入ってきた!」森田が強い語気で問う。

「超ひも理論*1を応用した方法だよ。余剰次元を通過して僕たちの世界から君たちの世界(こっち)に来たんだ」

 ピカロがポテトチップスを口に含んだまま答えた。

 

「本当に、フォルクローなんですか?」

 深月は三人に対して懐疑的なようだ。

「ええ。これまで貴方たちに怪物を送り込んできたのも、私たち」

 フロワが答えた。

 

「本当にそうなのか確証を持ちたい。出来れば何か見せていただきたい」

「いいよー。はい」

 

 森田に応えるかのように、ピカロは右手を空で振った。

 するとただでさえ暗い空の中に、それよりも黒い穴のようなものが出現した。それはさながら、フォルクローが出現する時に現れるものと同じようである。

 

 そこから顔を覗かせたのは、黒装束に白い仮面をした怪人──ソルダートの集団だった。

 

 思わず全員、声を出してしまった。

 ニッコリと微笑むと、ピカロは再び右手を振り、穴を隠した。

 

「これで、満足でしょ?」

 鼻で笑うフロワ。

 

「マジかよ……」

 圭吾は目の前で起こったことが今だに信じられない。

 否、全員がそうだった。

 

「肝心なことを尋ねたい。君たちがここに来た理由は何だ?」

 岩田室長が問いかけた。

 それに答えたのはアールだった。

 

「貴方方が私たちの同族を倒す手助けをしたい、ただぁ……それだけですよ」

 妙に溜めたアール。剽軽(ひょうきん)な様子と癖のある喋り方が何となく気持ち悪い。

「手助け?」薫が聞き返す。

 

「我々としても一刻も早く彼らを倒していただきたい。そのために皆さんにお力添えをさせていただければと」

「だが君たちがあの化け物と同族という認識を、我々はついさっき持ってしまった。そんな相手に享受された情報を、そう簡単には信用出来ない」

「でしょうね。それを承知の上ですので、信じるかどうかは皆さん次第です」

 

 ゴクリと唾を飲む全員。

 ニヤリと微笑みアールは続けた。

 

「まず、第二十四号には一つだけ弱点があります。それは『光を浴びると固まってしまう』ということです。裏を返せば、『暗がりでは固体の状態を維持出来ない』。

 今、外は数台の照明車*2の灯りが校舎に当たっていますが、それでは逆効果です。数分間暗くした後であれば簡単に脱出出来ますよ」

 

 確かに外には数台の移動照明車が配置されており、白い光が強く校舎を照らしていた。

 それが逆効果とは……。

 

「それから、皆さんにお渡ししたい物があります。フロワちゃん、お願い」

 

 アールの合図でフロワが何かを取り出し、岩田室長に差し出した。

 それは黒いUSBメモリで、表面に貼られた白いラベルには「SMALLER」と油性ペンで書かれていた。

 

「これは?」

 

「アクトとリベードの追加データよ。()()たちが私たちの仲間を倒した時に、とんでもない爆発で周囲に被害を与えるんじゃないか、ってちょっと怖いでしょ?」

「このデータをグアルダに送れば、爆発の規模を最小限に抑えることが可能になる、ってこと。もちろん、クラッキング*3なんかをするようなウイルスは入ってないから安心して」

 

 フロワは妖艶な笑みを浮かべ、ピカロは少年のような無邪気な笑みを浮かべながら言った。

 

 岩田室長がUSBメモリを圭吾に渡すと、すぐにパソコンに挿し込んで中身を確認した。

 その中にあったPDFファイルを展開すると、常人にはさっぱり解らない文字の羅列が何十、何百ページと映し出された。

 どうやら本当に問題の無いデータのようだと圭吾は報告する。

 

「では、私たちはここで」

 

 一礼をしたアール。そして三人は後ろを向いて歩き始めた。

 フロワちゃんここ多分禁煙、と恐る恐る声をかけているその背中に、一人声をかけた者がいた。

 

「あの!」

 深月の呼びかけに三人は足を止めて振り返る。

 

「皆さんは何のためにこんなことをするんですか? ただ理由も無くこんなことをしているようには、僕には思えない」

 

 すると、三人の表情がガラリと変わった。

 さっきまで余裕綽々だったのに、今は少しゆとりの無くなったように感じる。

 そしてその目は、まるで憎き誰かを睨みつけるように鋭くなった。

 

 アールは話し始めた。先程のような剽軽な話し方ではなく、もっと何か心の奥底に抉り込むような、優しい話し方で。

 

 

 

「私たちは、()()()()のためにフォルクローを送り込んでいます。貴方方で言う、『リーダー』『(おさ)』……『神』と呼べる存在です。ただ、()()()()は力の殆どを失ってしまっています。その力を取り戻すためには、165枚のメモリアルカードを、この……『メモリアルブック』に納める必要があるんです」

 

 アールは手元に持っていた()の表紙とその中身を見せた。

 古びた分厚い赤黒い本で、表紙には見たことのない文字が白く書かれている。

 中のページは真っ黒で、文字の羅列や挿絵があるわけではなく、円形に5つのスロットが並べられていた。

 前書きが数ページとスロットのあるページが33ページ、後書きのようなものが数ページあるその本を、アールは我が子のように大切に持っている。

 

「貴方方は、これを単なるとてつもなく規模の大きな迷惑行為と捉えるでしょう。でも、私たちにはこうするしかないのです。失礼します」

 

 再び後ろを向いて、そのまま姿を消した。

 誰も止めることはなく、その三種三様の後ろ姿を見つめている。

 残された者たちの身体を、何処からか入ってきた十一月の冷たい風が冷ました。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.06 20:31 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 2階 1年6組

 外からの大きな光だけで灯される教室の中、三人は席に着いて食事を摂っていた。

 (かろ)うじてあまねの鞄の中にお菓子が入っていたので、昼にはそれを食し、今は春樹と碧がいつも携帯している梅昆布で飢えを凌いでいる。

 

 梅昆布が残り僅かになったところで、二人の端末がポップな短い音を鳴らした。確認すると深月からLINEにメッセージが届いていた。

 

「今からあの照明が消える。それから5分したら、ここを脱出出来る」

「ホント!?」

「うん。ようやくお風呂に入れるよー」

 

 すると端末の画面を、バリトンボイスのゆるキャラことグアルダが突然ジャックした。

 

「? どうしたの? 急に出てきて」

『それが、圭吾からデータが送られてきた。見る限りフォルクローの撃破による爆発と衝撃波を和らげるためのデータっぽいな』

「そんなデータを圭吾が作ったのか!?」

『いや、これはアール、フロワ、ピカロ(例の三人組)からの贈り物らしい』

 

 その瞬間、二人はハァと溜息を吐いて天を仰いだ。

 え、そんな嫌な人たちから送られてきたの!? と、あまねはあまり見たことのない両親(仮)の姿に困惑している。

 

「どうする? ダウンロードするの?」

『危険性は一切感じられない。今後のためだ。ダウンロードしておこう』

 

 グアルダは画面上から消え、何処かへと行ってしまった。

 

 そこから若干の沈黙が続く。

 完全に疲れ切っているのだ。何せ何もない学校に閉じ込められ、食糧も僅か、しかも廊下には怪物がいるという最悪な環境の中で10時間近く過ごしていたのだから。

 

 再び話を切り出したのは春樹だった。

 

「なぁ」

「「?」」

 

「もし、自分の身の回りに、得体の知れない化け物が人間の(つら)をして生きているとしたら、お前は大切な人を信じられるか?」

「どうしたの急に?」

「いや、何となく訊いてみただけだ……」

 

 キョトンとするあまね。

 だが碧だけは、その質問の真意を理解していた。

 

 フォルクローの一部が人間の姿をして、この東京という街に潜伏している。

 もしかしたら自分の信じている人がそうかもしれない。

 そうなった時、自分と春樹はまだしも、あまねは耐えられるのだろうか──。

 

 

 

 

 

「大丈夫でしょ」

 あまり考えることもなく、間髪入れず答えた。

 

「昔、()()()()が言ってたんだ。『他人に裏切られたって思っても、それは相手の知らなかった部分を知っただけだ』って。なんか、この前どっかの女優さんが言ってたけど、多分()()()()のパクリだね。

 ……だから……大丈夫! 私は大切な人のことを、最後まで信じ続けるから」

 

 屈託の無い笑顔で言い切った。

 握られた右手は二人に向けて親指を見せている。

 自分の心配が杞憂だと気づくのに、これ以上に材料は要らなかった。

 

 思わず二人も微笑んでしまう。

 閑散としていた教室に三人の笑い声が微かに響き、影が少しだけ動いた。

 

 すると外からの灯りが全て消えた。

 それが全ての合図だった。

 端末のタイマー機能で5分を測りながら、荷支度を済ませる。

 

 そしてタイマーが鳴ると、急いで廊下を走って行く。

 1分も経たずに正門に辿り着いた。

 そしてドアに手を掛け、押してみると、びくともしなかった扉が軋みながら開いた。

 

 ようやく外へ出られた。

 いつの間にか深呼吸をし、空気をこれでもかと吸い込んでいた自分に、三人は少々驚いている。

 

 すぐに数人の機動隊員がこちらに向かって来た。

 あまねを保護してもらい、春樹と碧は仲間たちのいるテントへと向かう。

 

 向こう側へ歩いて行くあまねの後ろ姿を見ながら、春樹と碧は先程の言葉を思い出していた。

 

 

 

 私は大切な人のことを、最後まで信じ続けるから。

 

 

 

 再び大きく息を吸い込み、そして吐き出す。

 息は白くくっきりと姿を現し、風はもうすでに止んでいた。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.06 20:43 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 校庭

「つまり、日の出る前にアイツらをやれば良いってことだな?」

「ええ。スイッチングが再び動き出すのは、計算上明日の6時1分頃となっています。日の出の時間は6時6分ですから、5分でカタをつけなくてはなりません」

 

 圭吾の解説に頷く春樹と碧。

 遊撃車の中で二人は頷きながら、近くのハンバーガー店で売っていた、一番大きなサイズのものに食らいついている。

 

「5分でカタをつけるなんていうのは初めてのことだ。イケるか?」

 森田が全員に問いかけながら、その右腕を前に出した。

 

「当然……」

 春樹はその上に手を重ねる。

「任せてください」

 碧もそれに続く。

「なら全力でサポートします!」

 深月が気合いを入れた声をかけて、その上に手を重ねる。

「良いねー。威勢が良い」

 圭吾は思わず微笑みながら同様の手順を踏む。

「いっちょ、やってやりましょう!」

 薫も同様だ。

 

 全員がその手を重ね終わった、のように思われたが、一人忘れていたのを思い出した。

 そして森田が声をかける。

 

「室長もいかがでしょう?」

「え……私も? 良いのか?」

「どうぞ」

 

 渋々部下たちの手の上に自信の掌を重ねた。

 これでようやく全員が一つになった。

 そして、森田の言葉と共に勝鬨(かちどき)を上げるための掛け声を上げた。

 

 

 

「皆さん、出番です」

「「「「「「「うぇーい」」」」」」」

 

 その様子にいつもは現場にいない者が、若干の戸惑いを覚えたのは言うまでもないだろうか。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.11.07 06:01 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 2階

 太陽がまだ姿を見せない時間に、眠っていたものの真っ白な肌がオレンジ色に染まっていく。

 頭部のヘルメットが僅かに光り、怪物は目を覚ました。

 

 下を向いていた怪物が顔を上げると、そこには一組の男女(春樹と碧)が立っていた。

 その腰にはベルトが巻かれていて、手には端末とカードが握られている。

 

「おはよう。良く寝られた? まぁでも、今からまた眠ってもらうからね」

「ホント、閉じ込められた借りは返してもらうからな……!」

 

 カードを端末に装填し、春樹と碧はポーズをとり、そして叫んだ。

 

「「変身!」」

 

 四文字の言葉が廊下に反響する中で、二人はそれぞれ異形の姿に変わっていった。

 後ろから鎧が現れ、二人に装着されていく。

 

 二本の角を持った二人の戦士は、各々武器を携えて標的に視線を向ける。

 まるで獲物を狩る獣のように、被害者を狙う快楽殺人鬼のように、セール品を狙う主婦のように熱い視線を向ける。

 

 そして青色の戦士(リベード)が刃で地面を叩いたのを合図に、二人は走り出した。

 

 

 

「「READY……GO!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: Why did three envoys show up?

A: To say hello to their enemies.

*1
素粒子は1種類のひも(弦)の振動によって、17種類のものに分けられるという理論。

*2
正式名称「移動照明車」。防災活動等に使用する簡易的な照明設備、及び発電装置を設置した車両。

*3
ハッキングの中でも、システムへの不正侵入やデータの破壊・改竄等、悪質なものを指す。




超ひも理論、及びそれを応用した移動方法に関しては、日本経済新聞の以下の記事を参考にさせていただきました。

シン・ウルトラマン、「究極の物理学」が作る世界観
https://onl.la/Saa6E9G

皆さんの中にはこう思われている方もいらっしゃるでしょうか。
「最後に未確認生命体が現れてから8年後が2021年って、20年後だろっ!」と。

実は小説版(詳細はこちら: https://onl.la/N5v89mH)にグロンギが出ているんです。
しかも小説の世界線は2013年なんです。なので8年後と表記しています。

後書きでは毎回、裏話を小出ししていますね。
これからもダラダラと書いていきますので、本編が読み終わってお時間がありましたら読んでいってください。
よろしくお願いいたします。

今作のキャラクターたちの日常を描いたスピンオフがあったら、読みたいですか?

  • 読みたい。
  • そうでもない。
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