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【イメージサウンドトラック集】
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2022.06.25 10:05 東京都 新宿区
八雲が新たなドライバーで変身をした、新たな仮面ライダーネクスパイ。
その姿にアールは呆然としていた。
相手から放たれる空気は、自分がまるで経験のしたことが無いもの。自らの主からも感じ取ったことは無いやもしれない。
「姿が変わったからといって……強くなったとは限らないでしょう……!」
アールがネクスパイの方に向かって走り出す。何重もの波を纏った右の拳をぶつけようと試みるのだ。
それをネクスパイは軽々と左手で受け止めると、右手で左肩に付いたソニックアローを取り外し、刃でアールに斬りつける。
痛みこそ感じることは無いのだが、その衝撃で後退する。
更に右肩のソニックアローも持ってそれぞれの弓を引いて矢を放ち、ピンク色と赤色の矢が大量にアールへと刺さるのだ。
何かが刺さったようだが、アールには何が何だか判っていない。とにかく攻撃を仕掛けられていることと、そしてもう一つ、このまま攻撃を許せば自分は確実に不味いということだけが理解出来る。
なので絶対にここで食い止めなければならない。
アールは今までに無いくらいの波動を放ち、ネクスパイを確実に葬り去ろうとする。
だがネクスパイは一切避けようとせず、その場に立ち竦むだけだ。
すると複眼が赤く光ったその時、彼を起点として地面が外側の方へと歪み始めたのだ。
穏やかで静かなものであったのだが、アールが放ったものにぶつかった途端に急変。激しい爆発を起こして全てを無かったことにした。
これではっきりした。
今のアールに勝ち目など無い。
けれども勝算は一つだけあるのだ。
そしてその時がやって来た。
「ッ!? ガァァッ! ア゛ッ……!」
ネクスパイが苦しみ始めたのだ。2本のソニックアローを落とし、胸を押さえて悶える。
「貴方が戦えるのは5分だけ。もう既に2分が経過しました。相当弱っているでしょう?」
近付いて来るアール。
抵抗するため胸部に付いたソニックアローを取り外して矢を放つのだが、痛みを感じないというのがアールの能力であることから、何か衝撃が来たことを察しはするものの足が止まることは無い。
ソニックアローを弾かれて落としたネクスパイはアールによって首を絞められ、衝撃波によって後方へと吹き飛ばされてしまう。
「グァァッ!」
仰向けで倒れたネクスパイは何とか立ち上がろうとするのだが、上手くそれが出来ない。
それを見たアールはニヤついた。こんな状態では自分が勝つに決まっている。変身したことによる副作用と攻撃からの痛みに苦しむネクスパイに、アールはまた一歩一歩足を進めるのだ。
「これで、私の勝ちは確定しましたね」
後1回でも攻撃をすれば彼は間違い無く事切れる。
確信したアールがネクスパイの目の前に辿り着いたその時、
「……それはどうかな」
「!?」
胸に何かをされ、後ずさってしまう。
見ると、ネクスパイはゼロガッシャー サーベルモードを握っており、それを使ってアールを横文字に斬ったことが判る。
更に武器をボウガンの形に変形させると、次々と銃弾を放って、更にアールに後退りをさせる。
攻撃されている本人はまるで気が付いていないようであるが、彼の身体は今までの攻撃によってかなり傷付いて満身創痍の状態なのである。
「言っておくけどな、この力は俺一人がどうのこうのってものじゃねぇ……。リョーマにヨーコ、シド、そして花奈と俺……五人の力を全部混ぜ込んで作ったものなんだよ……。ただ強化しただけで、独りで何かしようとしているお前とは格が違ぇんだよ……!」
立ち上がるネクスパイ。
ゼロガッシャーを投げ捨てた彼は、じっとアールのことを見据えている。
自らを見つめる人物は1人しかいない筈なのだが、そこに何人もいるようにアールは錯覚してしまう。
どうしてそういう風に見えてしまうのか。どうして自分は彼、と言うより彼等に勝てないのか。
どれだけの想像をして推測を行ったとしても、今は全く解らない。
きっと、これから解らないまま全ては終わる。
『Are you ready?』
ドライバーのプレートの次にトランスフォンを押し込んだネクスパイは宙空に跳び立ち、右足を前方に差し出す。そこには色とりどりの果実が集まって、強大な力を授けるのだ。
そして彼の背中には大きな翼が生えて、一度大きくはためいただけで体を猛スピードで動かすのである。
『OKAY. UPGRADED DISPEL STRIKE!』
「オラァァァァァァァッ!」
強烈な一撃がアールの胸に激突する。その威力は絶大で、瞬く間に胸部を貫通。ネクスパイとアールは互いに背中を向ける形となったのだ。
胸部を貫かれたとしてもアールが痛みを感じることは無い。
もしも彼に痛覚があったとしても、あまりに一瞬の出来事であったがために感じ取れないであろう。
「そうですか……。これが痛みですか……」
知る筈もないのに言ってみる。
実に満足そうな彼が放った最後の言葉はそれだけだった。
爆発することは無く、身体は黒色と金色の粘着性がある液体となって原型を失っていく。そしてネクスパイの後ろには何も無くなってしまった。
荒い息の音だけが暗い廊下の中に響き渡る。もう限界はとうに越していて、立っているだけでも精一杯の状態だ。
強制的に変身が解除されたその時、突然世界が光り輝き始めたのだ。
思わず目を腕で覆って前方を確認すると、そこには3つの人影がある。どれも全て見覚えのあるもので、もう二度と目に映ることは無いと思っていたものばかりだ。
彼等の名前を呟こうと思っても上手く言葉が出てこない。出したくもない。
だって彼等はもう……。
ふと影が消えてしまった。けれども目の前はまた輝いたままで、徐々に鬱陶しくなってしまう。
だが次に現れた影を見て、そのうざったい気持ちは一気に消え去った。
それはヘッドフォンを首に掛けて髪の毛の一部を黄緑に染めている。
涙が出てきた。
哀しさだとかそんな陳腐なものではない。
喜びだ。
また会うことが出来たことに対してのこの上無い喜びである。
それがゆっくりと近付いて来る。
抵抗する必要性など何も無い。ただこの心地良さに身を委ねて全てを投げ出したかった。
顔が見えた。
あの頃と変わらない優しい笑顔で出迎えてくれている。
だからきっと自分も彼女と一緒にいることが出来る。
そう思って八雲は、両腕を伸ばした──
だが彼女は八雲の両腕を払うと、顔から一切の笑みを消し去って彼の頬に右手で平手打ちをした。
突然のことに驚く八雲。
自分であれば彼女の下にいることを許してくれると思った。
これからずっと隣で笑い合うことを許容してくれるのではないかと期待していた。
だからこそ、今どうして打たれたのかが理解出来ないのだ。
──もっと長生きしなきゃ駄目よ。
再びいつもの笑顔で戻る。
──じゃあ、またね。愛してるよ。
気が付いた時、八雲は何故か仰向けで倒れていた。
今まで立っていた自分がどうしてそんな状況になっているのかは皆目見当がつかないのだが、きっと彼女が自分の両肩を叩いて押し倒したと思えば納得出来てしまう。
目の前から光は消えて、ただ真っ黒な廊下が長く続いていくだけなのだ。
「嘘だろ……。またひとりぼっちなのかよ……」
自虐的な笑みを浮かべて静かに声を上げる八雲。
その声は微かに反響をしながらも何処かで途切れて何も聞こえなくなってしまう。
そして八雲は意識を投げ出し、ゆっくりと目を閉じたのだ。
今、彼の隣には先程使ったドライバーに端末、3本の弓と1丁のボウガンが乱雑に置かれている。
武器は火花をほんの少しだけ出しながら罅を付けて壊れ始めているにもかかわらず、ドライバーと端末は一切の傷が無い。
けれども深い眠りについた八雲はそんなことなど知らない。
完結まで、後5話。
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