元々腕のない私ですが、最近さらに腕が落ちたなと思っています。
そんな私の駄文でございますが、どうぞよろしくお願いします。
また、感想や評価等を下さると作者のモチベーションになりますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2
2021.12.13 11:36 東京都 渋谷区 恵比寿国立博物館 大庭園
「へ、変身した……!?」
遊撃車の中のメンバーがモニターに目を見張っている。
それもそうだ。
突如として現れた人物が、いきなり変身をしたのだから。
「自分で自分を祝うとか、お前なんか可哀想だな」
「うん。ホントに可哀想だけど、行こう」
春樹と碧が端末にカードを装填した。
『"ACT" LOADING』
『"REVE-ED" LOADING』
電源ボタンを押す。
先程の歌とは打って変わり、軽快の音楽が流れる中で二人はポーズを決める。
そして同時に言葉を放った。
「「変身!」」
『『Here we go!』』
素体へと姿を変えた二人に、それぞれ銀色の装甲が装着されていく。
あっという間に変身を遂げた二人は、目の前にいる標的を睨みながら剣を取り出した。
そして腰を落として、臨戦態勢に入る。
「「READY……GO!」」
走り出した二人。
だがオーズと市長は走り出すことは無く、代わりに市民たちが二人に襲いかかって来る。
彼らと戦い始めて二人は思った。
この怪人は、まるで鰯のようだ、と。
はっきり言って、市民一人一人の戦闘力はソルダートと同じくらいに大したことがない。誇張した表現でもなんでもなく、片手間で倒せるようなくらいだ。
そんなのでも、数が集まれば力が結集され強敵にも敵うようになる。
この集団は、それを体現するのに打って付けであったのだ。
刃先の鋭い槍を幾つも剣で弾いては、持ち主の体を斬り裂いていく。
たったの一振りで塵となっていく市民たち。
だがキリのない群れの攻撃に、流石に二人に疲労が溜まってきた。
「これだけあると、疲れるね……」
2体の市民の槍を1本の剣で支えながら、リベードが後ろのアクトに話しかける。
「そうだな。一先ず、市長を倒そう」
「オッケー!」
アクトとリベードは自身の剣に、ドライバーから取り外した端末をかざした。
『『Are you ready?』』
再び端末をドライバーに挿し込む。
『OKAY. "ACT" CONNECTION SLASH!』
『OKAY. "REVE-ED" CONNECTION SLASH!』
それぞれの刃に緑と青のエネルギーが籠められていく。
周りの市民たちが襲いかかってきたところで、一気に斬撃を放った。
「「ハァァッ!」」
斬撃が一気に周りの市民たちを蹴散らす。
殆どが爆炎と共に塵となって消滅していった。
だがそれでも増え続けていく怪人の群れ。
するとリベードがあることに気がついた。
「ねぇ! あれ!」
リベードの指差した方向にあるのは、海外の史料が展示されている第2棟だ。
その中に数体の市民が入って行こうとしている。
「まずいっ!」
「私行くね!」
リベードが全速力で第2棟に向かう中、アクトは目の前にいるオーズに対象を決めた。
一息ついたところで、すぐに剣を握りしめて対象に向かって行った。
2021.12.13 11:38 東京都 渋谷区 恵比寿国立博物館 第2棟
第2棟は世界70を超える国と地域の史料を展示するため、その広さは尋常ではない。
大勢が避難するとしたらここが最適。深月の考えは正しいようだ。
ただ一つだけ誤ったことがあるとすれば、この棟、と言うより博物館全体のシャッターは老朽化のため古くなっており、いとも簡単に破壊されてしまう、ということだろうか。
結果として十数体の市民が中に侵入。
中に避難していた来場客はパニックとなりながら、非常口に向かって一気に走り出す。
その中にはあまねと日菜太の姿もあった。
急いで非常口に向かおうとするが、人が溢れており中々奥に進むことが出来ない。
市民のうちの2人が左手を向けると、腕輪が微かに光った。
すると何故かあまねは目を閉じ、その場に倒れ込んでしまう。
「え!? あまねちゃん?」
日菜太があまねを揺さぶる。だが応答することは無く、ずっと目を瞑ったままだ。
ふと横を見ると、同じように倒れている女性が1人いた。
それは、先程二人に話しかけた老年の女性だった。
その様子が見えた瞬間、日菜太は市民に突如として蹴飛ばされた。
「うっ……!」
通路の案内が書かれた大きな柱に背中からぶつかり、倒れ込む日菜太。
そこで日菜太の意識は途切れた。
さて、大庭園ではアクトとオーズが火花を散らしていた。
アクトの剣に対抗するために、オーズは両腕から長い鉤爪を展開する。
アクトが剣を縦に大きく振るが、オーズは両腕の鉤爪でそれをブロック。
一回転をして右足で回し蹴りを食らわそうとするが、オーズは飛蝗のように凄まじい跳躍力を持った両脚を使って跳躍。相手と距離をとった。
「君に見せてあげよう。相性の
するとオーズは両サイドのメダルを取り外すと、メダルケースから2枚の黄色いメダルを取り出した。
それを開いたスロットに挿し込むと、再びドライバーを変形。スキャナーを取り出し、メダルを読み込んで胸に当てた。
『ライオン! トラ! チーター!』
オーズの周りを硬貨のようなオーラが取り囲むと、その顔と両脚が黄色いものへと変化した。
ライオンや向日葵のような顔で、両脚はまるでチーターの模様がついている。
『ラタラッター! ラトラーター!』
全身が黄色い猫類系の力を得た形態──ラトラーターコンボに変身したオーズが再度鉤爪を展開すると、突然姿が見えなくなった。
「グアッ……!」
突如として痛みが襲ってきた。
体から火花を出しながら、思わず倒れ込んでしまうアクト。
後ろを見ると、そこには先程まで目の前にいたはずのオーズが立っている。
「なるほど。高速移動か……」
チーターは獲物を追跡する際、僅か2秒で時速72キロメートルに達する場合がある。
そんなチーターを模したオーズの両脚は走ることに特化した形状へと変化しているため、尋常ではないスピードで走ることが出来るというわけだ。
それに対抗するため、アクトは1枚のカードを取り出し、ドライバーから取り外した端末に装填した。
『"KABUTO" LOADING』
電源ボタンを押した。
ゲートから出現した赤い兜虫が高速移動をしながら攻撃を仕掛けるが、オーズも同じように目にも止まらぬ速さで動いて応戦する。
そして端末がドライバーに挿されると、兜虫が分解し装着されようとするが、さらにその上から銀色の鎧が重なった。
『Changing, Wearing, Flying away! I’m the justice! SHEDDING KABUTO! Going on the way to the heaven, and rule all.』
カブトシェープに変身をしたアクト。
だが変身はこれだけでは終わらない。
すぐに2枚のカードを取り出して、そのうちの1枚をドライバー上の端末にかざした。
『CAST OFF』
銀色の鎧にひびが入り、アクトの体から分離をする。赤い体になった戦士の頭部から角が展開した。
『Change to the next shape.』
第二形態に変身すると、もう1枚を使用した。
『CLOCK UP』
オーズが自身の鉤爪でアクトを攻撃しようとする。
だがそれをすんなりと避けられてしまい、逆に右の脇腹を蹴飛ばされてしまった。
「ノアッ!」
すぐに態勢を立て直し、再度襲いかかるオーズ。
今度は真正面からではなく、地面をスライディングしながら胸部に斬りつけた。
「ガッ……!」
咄嗟に防ぐことが出来ず、もろにダメージを負ってしまう。
そこからは片方が攻撃をすれば、もう片方がまた仕掛けるというイタチごっこだった。
流石に決着を付けなければ……。
アクトは剣を銃へと変形させ、ドライバーから端末を取り外すと銃にかざした。そして再び端末をドライバーに装填する。
同時にオーズもスキャナーを右手に持ってドライバーに滑らせた。
『OKAY. "KABUTO" CONNECTION SHOT!』
『スキャニングチャージ!』
銃の周りに赤色のエネルギーが溜まっていき、発射態勢に入る。
オーズの前には黄色い円形のアーチが連なり、まるで1本の道のように続いていく。
その時、オーズの黄色い顔が突如として強く発光した。
「……ッ!」
あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまうアクト。同時に右手で構えていた銃を地面に落としてしまった。
今がチャンスと言わんばかりに、オーズが全速力で作られた道の上を激走。走った時の摩擦でコンクリートが次々と削られていく中、アクトの前まで来たオーズは鉤爪で胸部を思いっきり引っ掻いた。
「ハァァァァッ!」
「グァァァッ!」
爆炎が上がると同時に変身が解除されてしまう。
吹き飛ばされ倒れ込む春樹を見たオーズは、先程リベードと市民たちが入って行った第2棟に目を向ける。
「上手くいった、かな?」
「? どういうことだ」
なんとか立ち上がった春樹がオーズに問う。
それにオーズは鼻で笑いながら答えた。
「今、君の娘。いや、
「! そのために今日、この場所を襲ったのか!?」
「そうだ」
しまったという顔で驚きを見せる春樹。思わず右手で頭を抱えてしまい、上に滑る右手で前髪が上げられていく。
遊撃車の中の四人には、何故春樹がそのような表情と慌てようを見せるのか全く持って理解をすることが出来ない。
「ん?」
オーズは突如、ドライバーを横に直すと全てのメダルを外し、メダルケースの中を物色し始めた。
そして取り出したのは緑色の3枚のメダルだ。それをドライバーに装填し、再び斜めに倒してスキャナーで読み取らせた。
『クワガタ! カマキリ! バッタ!』
三度オーラが取り囲む。1つにまとまったものがオーズと一体化した後、見えた姿はまた別物になっていた。
『ガータ ガタガタ キリバ、ガタキリバ!』
昆虫類の力を得た緑色の姿──ガタキリバコンボに変身したその時、突如として
「は!?」
驚く春樹を他所に、分身したオーズたちもその両脚の跳躍力を活かして第2棟へと跳んで行った。
「おい、待て……!」
すぐに追いかけようとする。
が、斬りつけられた胸からの強い痛みが襲いかかってくる。思わず胸を押さえて、その場に倒れてしまった。
さて、それよりも少し前のことである。
第2棟に到着したリベードが見たものは、市民の大群のうちの2体が2人のぐったりとした女性を抱えて連れ去ろうとしている光景だった。
一人は着物を着ており、顔の皺と白髪から年配であることが推測出来る。
そしてもう一人は、見たことのあるセーラー服を着ている。後ろ姿しか確認することが出来ないが、一体誰なのか確かに判った。
「! あまねちゃん!」
すぐに剣を握りしめて大群に向かって行く。
それに気がついた他の市民が槍を持って掛かって来る。
正面に突かれてきた槍を左手で持ち、右手の剣で腹部を斬り裂く。
横から来る槍を避けると、槍を回し蹴りで蹴飛ばし、その勢いで再度回転。仕掛けてきた市民の顔面を蹴った。
それでも全く人数が減ることはない。
それに対する嫌気と二人を取り返さなくてはならないという焦りから、リベードはカードケースから3枚のカードを取り出した。
うち1枚をドライバーから外した端末に装填する。
『"EX-AID" LOADING』
槍を避けながら電源ボタンを押すと、ゲートから出現したマイティが次々と市民を自慢の大きな両手と両足で蹴散らしていった。
その最中、リベードは数体の市民を倒しながら端末をドライバーに挿し込んだ。
『Here we go!』
鎧が解除された素体の体に、マイティが分離したことによって出来たアーマーが次々に装着されていく。
さらにその上から白いアーマーが覆い被さり、まずは2頭身の第一形態へと変貌を遂げた。
『Examine, Playing, Level up! I’ll change patient’s destiny! STRATEGY EX-AID! I’ll clear this game with no-continue.』
続いて残った二枚の中の一枚を、ドライバーに取り付けられている端末にかざした。
『LEVEL UP』
白い装甲が外れ、等身大へと戻ったリベードの背中には第一形態の際の顔が取りつけられている。
それがある意味、背中を守る盾のようなものなのだろう。市民が背中を目掛けて突いた槍は、一切標的の体を傷つけることが出来ず、逆に後ろを向いたリベードに折られてしまう。その持ち主も、アクロバティックな動きで剣を振るリベードに斬り裂かれてしまった。
それを片付けてすぐに最後の一枚を端末に読み取らせた。
『"ENEGY ITEM"』
するとただでさえ多種多様な展示物の置かれた室内に、様々な色のメダルが自動的に置かれていく。
不思議な出来事に戸惑う輩を、リベードは華麗な舞で魅せるように剣で捌いていく。
四方八方を囲まれたとしても、彼女は高く跳躍し、両足でその頭をどんどん踏み潰していく。
そして爆発が起こり、市民は殲滅されていった。
急いで辺りを見渡すリベード。
だが何処にもあまねと老女を抱えた市民二人はいない。
「あまねちゃん!」
ただ彼女の声が広い館内にこだまするだけだ。
今この場に彼女たちはいない。その状況を理解しているはずだが、リベードは再度叫んだ。
「
その時、館内に何かが壊れる鈍い音が反射した。
音の聞こえた方を向くと、そこにいたのは全身が緑色の戦士、オーズだった。
「残念だが娘さんとあの女性はもういない。交渉の取引として使わせてもらうよ」
「……貴方っ!」
「全く。腹が立つよね」
怒りで声が震えているリベードの横から、今度は男性の声が聞こえてきた。
立っていたのはクロトだった。
その表情はいつもの
その場にいた全員が感じた感情は、怒り、だ。
顔や握りしめた拳だけではなく、彼の奥底にある感情がマグマが噴き出るように全身から出てくる。
「リベード、今だけで
「え?」
「お願い。僕も取り返したいんだ」
「……よく解らないけど、分かった」
答えを聞いたクロトは、着けられているドライバーにバグヴァイザーを取り付け、バグルドライバーを完成させる。
次に白いガシャットをジャケットのポケットから取り出し、黒いボタンを押して起動させた。
『デンジャラスゾンビ』
ガシャットを持った右腕を肩の高さまで上げると、持ったものをドライバーのスロットに挿し込んで赤いボタンを押した。
「グレード
『ガシャット! バグルアップ!』
目の前にゲートが現れるとその中から黒い煙が立ち込めてくる。
それを破り捨て姿を現した白い体表の戦士、ゲンム。
両手に持っている黄色い鎌をギュッと握りしめたゲンムは、目の前にいる緑色の大群に走って行った。
「うおおおおお!」
今まで見たことのないゲンムの様子に戸惑うリベード。
それを他所に、ゲンムは立て続けに緑色の戦士たちを斬っていく。
だがざっと50体近くいるオーズから食らってしまう。ある個体からは両腕の刃で斬撃をお見舞いされ、ある個体からは頭部の角から電撃を放たれた。
「グッ……!」
ダメージが効いてきている。
一部始終を見ていたリベードは我に帰ると、ショーケースの方へと走って行き、その上に置かれている緑色のメダルに触れた。
「これ、効くと良いな」
するとリベードの身体が突如として青色のゲル状となった。
そして変身した彼女は数あるうちの1体にまとわりついた。
昆虫全般の弱点は火や寒さ等、様々なものがある。
その中でリベードが瞬時に思い出したのは油、もしくは石鹸のような油との親和性があるものだ。
昆虫の体表や気門*1はワックスのような固体の油で覆われている。そのため、少量の油や石鹸水が身体に触れると、その液体が身体全体を覆ってしまい気門の奥深くまで浸透。結果として呼吸が出来なくなり死亡してしまうのだ。
やつは見る限り昆虫のような姿をしている。もしかしたらある程度の効果があるやもしれない。
だが
「残念だが、私は昆虫じゃない。
やはり効果は無さそうだ。
自身にまとわりつくゲル状の液体に集中的に稲妻を走らせるオーズ。
「ギャッ!」
液体は電気を通しやすい。その点をつかれた攻撃にリベードは吹き飛ばされ、身体ももとに戻ってしまった。
人間態を持つフォルクローはより強力な力を持っている。
それをひしひしと感じている間に、オーズたちはスキャナーを取り出してドライバーのメダルを読み取らせた。
『スキャニングチャージ!』
するとオーズの大群は天井のスレスレまで高く跳び、そして2人の戦士に向かって一気にキックを食らわせた。
「グァァァァッ……!」
強制的に変身が解除され、その場に倒れ込む碧。
真横のゲンムに至っては、攻撃のせいで上半身が吹き飛んでしまい、下半身だけが立った状態で残っている。
とはいえ「デンジャラスゾンビ」を使うゲンムの再生能力は凄まじいものだ。すぐさまゲンムの上半身は再生され、何事も無かったかのように首を回し始める。
「さっさと返してもらうよ」
その時だ。ゲンムの体から白い煙が噴き出てきた。
以前にも起こったことだ。今使っているガシャットにまだ順応出来ていないという証拠であるこの光景に、碧は何も驚かない。
それ以上に驚愕したのは、突如としていつもの紫色ではなく白い粒子となって消滅した、ということだ。
すぐにクロトへと姿を戻らせたゲンムが紫色の土管から再び姿を見せる。
その横に現れたモニターに書かれていた文字は、「GEnM Life Point 95」。
以前よりライフが1つ減っている。
「いくら調整を行なったとはいえ、やはりまだ順応出来ていないようだな。これまでのツケがきた、ということか」
土管から出て来たクロトは胸を押さえて苦しそうに悶える。
それを遠くから見ていたオーズの大群は一体となり、後ろを向いてその場を立ち去ろうとするが、一旦立ち止まった。
「
オーズは1枚の紙切れを倒れている碧に投げた。
立ち上がりながら紙切れを確認すると、何処かの住所が書かれていた。
「それじゃあ」
「! 待って!」
碧の静止も聞かず、オーズは再び高く跳んで姿を消した。気がつくとクロトもその場から去っている。
天井に穴が開き、そこから瓦礫が降ってくる。
まるで雨が降るようなその光景を、碧はただ見つめながら右手を強く握りしめていた。
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2021.12.13 16:37 東京都 新宿区 SOUP
「どうします? 前回は問題無く行きましたけど、今回は人質がいます。無闇矢鱈に結論は出せませんよ……」
深月の言葉にその場にいる全員が険しい顔をして考える。
前回の取引は物と物の取引であったことから、取引は否決であっても問題は無かった。
だが今回は人と物が取引される。慎重に結論を出さなければならない。
「それに、あの人型のフォルクロー。春樹さんと碧さんの二人でも倒せるかどうか判らないのに、まさか春樹さんが倒れるだなんて」
圭吾の言葉の通り、春樹は今、医務室のベッドの上で眠っている。
本来であればあの程度の傷は休めばすぐに治るはずだ。だが春樹の傷は快方に向かわないどころか、それ以前に意識が戻らない。
想定外の事態に全員がさらに焦っているのだ。
「やっぱり、アイテムを形成するために
「いや、『身体を削る』っていう言い方はちょっと違うかな」
薫の発言に碧がすかさず訂正を入れる。
首を傾げながら話を聞く全員に、碧は詳細を話し始めた。
「身体を削っているっていうよりも、エネルギーを消費しているって言った方が良いかな。詳しくは私にも説明が難しいから敢えてそう言うしかないんだよね。今は急激にエネルギーを消費して間もない状態だから、ああなるのも無理はないね。
さっきクロトがいきなりゲームオーバーになったのも、自分のライフを削りまくってアイテムを作り出すっていう超強硬手段を行なったからツケが回った、ってところかな」
やはりフォルクローは人間とは違う。しかも自身についての説明をすることも困難なほどに難解である。
そのことが今のでひしひしと伝わった。
そんな中、森田は話を展開させるために全員に声をかけた。
「さて、現在の状況を色々と整理するか」
モニターに表示されているのは、大庭園に設置されている防犯カメラの映像だ。市民の大群と市長が映っている。
最初に話を切り出したのは薫だった。
「まず、あのシチズンの大群ですが、市長と命名された個体を倒さない限り鼠算式に増えていくかと思われます。
ただそれを防ぐにしても、市民がそれを守るために大量に襲いかかって来ます。至難の業かと」
続いてモニターに映し出されたのは、松本康生と彼の変身したオーズの3つの形態の計4枚の写真だ。
次は圭吾が話を始める。
「次にあのフォルクローのことですが、どうやら赤が1枚、黄色が3枚、緑が3枚の計7枚のメダルを組み合わせて姿を変えるみたいです。黄色が猫科、緑色が昆虫、そして3色全部混ざったものが最強とみて間違いないでしょう」
「うん。メダルしか有効な対策手段は無いかもね……」
碧たちがオーズへの対抗手段を考える中、深月がそこから話を展開させた。
「あの、ところでその、松本康生って誰なんですか? すごく有名な人っぽいですけど」
深月の発言に頷く一同とは対照的に、森田は今までに見たことのない驚きに満ちた表情でパソコンを操作する。
するとモニターに表示されたのは、先程まで自身らが戦っていた男が派手な照明の中で歌っている、十数年前の歌番組の一部だった。
「松本康生。君たちは知らないだろうが、私が学生の頃に流行った歌手だ。だが5年前に忽然と姿を消している。手がかりも何も無く、全く音沙汰の無かった」
だからあれだけ驚いていたのか……。
失踪していた人気歌手が怪人として戻って来たのだから。
しかし、どうして彼はあんな怪人になったんだ……?
考えている隙に、今度は深月がモニターに映るものを変えた。
画面に映し出されているのは先程の老婆の顔写真だ。恐らく運転免許証の写真なのだろう。背景は見たことのある青色で、写真写りが妙に悪い。
「あまねちゃんと一緒に
息子夫婦は現在海外在住。2人のお孫さんと一緒に住んでいたそうですが、彼らもやはり5年前に突如として行方不明になっています。
ただ……」
「? ただ?」
不思議そうに尋ねる碧に声をかけられ、渋々と言った顔でパソコンを操作する深月。
するとまたモニターに表示されるものが変化した。
3人の人が桜が散る中で笑顔で写真に写っており、左側にある看板には大きく黒い文字で「入学式」と書かれている。
真ん中にいるのは着物を着た美徳。左にいるのは学生服を着た青年。右にいるのはリクルートスーツに身を包んだやや年上の女性。三人ともカメラに向けて屈託の無い笑顔を見せている。
だが、それを見たSOUPの面々が微笑みを見せることは無かった。
それどころか、春樹と碧は無表情でモニターを見つめ、それ以外のメンバーはまるで戦々恐々とした面持ちで画面を見つめている。
何故ならば──。
「これは……。クロトなのか……!?」
学生服を着て笑顔で写っている青年が、自身の知っている怪人へと変身する者と全く同じ顔なのだから。
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2021.12.13 20:54 東京都 文京区 聖イユ教会
この教会の名前のもととなった「euil」には、フランス語で「開けた土地」という意味がある。
初代の神父が誰おも受け入れるという覚悟を持って、この名前をつけたのだと入り口の掲示板に貼られていた。
だがこの時間でも開いているはずの教会は現在、完全に締め切られている。
内部には大量の市民たちがまるで警備をするかのようにじっと立っている。
そして別棟にあるクレメンスホール*2には、両手両足を鎖で縛られた状態で座っているあまねと美徳がいた。
「ねぇ、貴女」
灯りの点いていないため視界は真っ暗なままだが、幸いにも口元は塞がれていないためこうして会話をすることが出来る。
「貴女、家族は? 家族はいるの?」
こんな時に、と一瞬思ったが、こんな時だからこそ他愛も無い話をして気を紛らわしたいのだろう。
仕方なく乗るしかない、か。
「いますよ。でも、本当の両親じゃないんです」
その言葉に美徳は気を遣ったのか、ごめんなさいと一つお詫びをした。
だが、気にしないでください、と笑顔で答えるあまね。
「慣れてますから。こういうやりとり」
精一杯優しく言ったつもりだ。
別にこのやりとりに関してはどうも思っていない。本心からそうだ。
いや、そうだと自分に言い聞かせているだけかもしれない。
何回。何十回とこんなテンプレートを繰り返してきたのだ。もうどっちが本当の自分の気持ちなのか判らず、考える余裕も無くなってきた。
「
「母は病気で亡くなって、父は11年前に……何者かに殺されました」
「……そう」
これ以上何も言えなくなってしまった二人。
しばらく続く沈黙。
灯り一つ灯っていない部屋の中で、この沈黙は自分たちが用意した最大の拷問とも言うべきだろうか。
気を遣った結果、逆に自分たちの精神を徐々に削る結果となってしまう。
すると、突如として何かが引かれる音が聞こえ、目の前から少しずつ光が差し込んできた。
今まで暗闇にいた彼女たちは、その眩しさに思わず目を細めてしまう。
目が慣れてきたところで再び状況を確認すると、大体のことが見えてきた。
どうやらクレメンスホールの入り口の扉が開かれ、そこから松本が入って来たのだ。後ろにはまるでSPのように市民たちが静かに立っている。
「元気かい? 二人とも」
松本を睨みつける二人。
そんな中でも松本は笑顔を絶やさない。
「すまないね。君には用は無いんだ。あるのは……彼女だけだ」
松本が今度は笑顔を崩さずに睨みを効かせたのは、あまねに向けてだった。
一瞬戸惑ったあまねだったが、何かを察したのか、再び松本のことをじっと見る。
あまねに近づく松本。
彼女の目の前に来た松本はその場にしゃがみ込み、目の前の相手の目をよく見て、そして言葉を発した。
「
【参考】
第8講 展示室の構造
(https://nodaiweb.university.jp/muse/text/gairon2021/gairon2021_8-1.pdf)
チーター - Wikipedia
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC)
アイテム・その他図鑑|仮面ライダー図鑑|東映
(https://www.kamen-rider-official.com/zukan/items/mode/categories?utf8=✓&item%5Bkamen_rider_id%5D=18)
昆虫の弱点はなんですか? - Quora
(https://jp.quora.com/%E6%98%86%E8%99%AB%E3%81%AE%E5%BC%B1%E7%82%B9%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B)
それっぽい名前ジェネレータ - 西洋ファンタジー用語ナナメ読み辞典「Tiny Tales」
(http://tinyangel.jog.client.jp/Name/NameGenerator.html)
教会内部と装飾物
(https://catholic-tc.jp/pages/25/)
今作のキャラクターたちの日常を描いたスピンオフがあったら、読みたいですか?
-
読みたい。
-
そうでもない。