仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第二十四話です。
因みにシーズン1は、今回を含めて後7話で終了します。シーズン2になるとイメージOPとイメージEDは変わる予定です。楽しみにしていてください。
よろしくお願いいたします。
因みに、Twitterに投稿した以下の情報が結構重要(かもしれない)ので、ご一読いただけると幸いです。URLは以下の通りです。
https://twitter.com/KotoShimura06/status/1624334928207876098?s=20&t=KG6B7cRsjeoWa_RaWjnwgQ



【イメージED】
米津玄師 - 恥ずかしくってしょうがねえ

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


Question024 Whose force has she borrowed?

2021.12.13 21:00 東京都 文京区 聖イユ教会 別棟 クレメンスホール

()()、何処にある?」

 

 松本の発言にあまねは目を見開いて驚く。

 だが何処か心当たりがあるそうで、下を向いて絞り出すように言葉を放った。

 

「……。何の話?」

(とぼ)けないでくれ。君だけなんだよ。()()が無ければ、()()()()()は自由に動くことが出来ない。君が教えてくれないと、何も始まらないんだよ」

「始まらなくて()い。何も始まらないことが、()()()()への弔いだから……」

 

 僅かな光しか届かないこの部屋の中に、再び沈黙が走る。

 その中で自身を睨みつける少女の顔をまじまじと見つめていた松本は、ふと微笑み立ち上がった。

 

「そうか。これでは君を誘拐した意味が無い。残念な結果となった」

 

 そして後ろを向いて、待機をしていた(しもべ)たちと共に部屋の外に出て行った。

 

 先程と違い光の差し込んだ室内。

 だが視界に入ってくる情報が変わっただけで、状況は何も変化することはなかった。

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.12.14 11:45 東京都 文京区 聖イユ教会

 聖書の中に「神は光である」という内容の一節がある。そのため、陽の光によって光り輝くステンドグラスに拝むことは、神に拝むことと同じであるとされているのだ。

 だが、今日の空一体に白に近い灰色の雲が広がり、中に入ってくる日光は僅かなものとなっている。

 

 今日、神は降りてこないと言うことだろうか。

 

 ステンドグラスを背に松本は、深く息を吸って時間をかけてゆっくりと吐いていく。

 目を瞑っていながらも、目の前に微かに人気を感じた。

 

「来てくれたのか」

 

 目の前に立っていたのは碧だった。右手には、先日米国の研究員が持って来たアタッシュケースが握られている。

 

「交渉は、成立というわけか」

 

 互いの目を見つめ合う二人。

 碧の目は細く眼光が鋭い一方、松本の目も細いが余裕綽々なようで頬が緩んでいる。

 

 碧が自身の持っていたケースを松本の方に投げ渡すと、松本も自身の後ろに置いていたケースを碧の方に投げた。

 中身を確認すると、その中にはそれぞれのお目当ての物が入っていたため一先ず安堵する。

 

 再び互いを見合う二人。

 

「二人を解放して」

「良いよ。出来るものならやってみてくれ」

「……。は?」

 

 

 

 

 

 時を同じくして、クレメンスホールの前には大勢の機動隊員が銃を構えて扉の前で待機していた。

 教会の入り口の前には遊撃車が停車しており、機動隊員のヘルメットに付けられたカメラから送られてくる映像をパソコンで確認している。

 

 慎重に屋敷の前で目と耳を澄ませてその場に待機する。

 そして突入の合図とともに入り口の引き戸を開けようとした、その時だった。

 

 扉に手をかけた瞬間、突如として開かれた引き戸から大量の市民たちが現れた。

 手に持っている槍が次々に機動隊員の持つ盾を貫いていく。

 

 押された機動隊員が後退した影響で教会の敷地外に市民たちが解き放たれてしまう。

 そして市民の中に紛れていた市長(マントを着けた個体)が遊撃車の方に向かって来る。

 

 すぐさま車内にいたメンバーたちと運転手が逃げ出そうとした、次の瞬間。

 

 市長が突如として右側に吹き飛ばされてしまった。

 転がって地面に倒れる市長。

 

 メンバーたちが外に出ると、行動を起こした人物の正体が分かった。

 

「……クロト……!」

 

 すでに腹部にバグルドライバーを装着している青年(クロト)が市長を睨みつける。

 標的にされた自身らの長を守るために、十数体の市民が市長を取り囲む。

 

「僕たち同族が殺し合うことは確かにメリットがあるね」

 

 ジャケットから白いガシャットを取り出す。

 握った右腕を震わせながら、黒い起動スイッチを押した。

 

 

 

 

 

「だって……。()()()()()()(さら)った、お前たちを許すわけにはいかないからっ……! ……変身……!」

 

 腕と同じように震える声を絞り出しながら、クロトはスロットにガシャットを装填。ドライバーに付けられている赤いボタンを押した。

 そして目の前にゲートが出現。黒い煙が遊撃車やシチズンたちの周りだけではなく、教会の敷地内の奥の方まで立ち込めていく。

 

 念の為口元を押さえて目の前を見つめると、現れたのはゲンム レベルⅩだった。

 

 最初から身体から白い煙を出しながら悶え苦しむが、それはすぐに後に放たれた紫色の衝撃波によって掻き消された。

 

 形状はこれまでと何ら変わりはない。

 だが、何処か雰囲気が違うように感じる。

 今まで見てきた中でも特に禍々しいその姿は、姿は変わらずともより強さを身につけたことを表しているように見えてしまう。

 

 レベル(10)

 否。

 レベル(エックス)

 

 

 

 

 

「へぇ。最初から解放するつもりは無い、ってことだったんだ」

「いや。解放するつもりではいたが、君の娘が中々口を割らなかったからね。致し方なかったんだよ」

 

 松本が腹部に装着したドライバーに次々とメダルを嵌めていく。

 そしてスキャナーを取り出して、静かに言葉を発した。

 

「変身」

 

 小さな声が教会内にこだまする中で、松本がスキャナーを滑らせたドライバーから五月蝿い音が聞こえてきた。

 

『タカ! トラ! バッタ! タトバ、タ・ト・バ、タトバ!』

 

 変身の時に発生した光で、背後のステンドグラスが微かに光った。

 僅かな光に照らされるその姿は、まさに「王」。

 「オーズ」の名のもとに相応しい姿だ。

 

「やっぱり、背に腹は変えられないか」

 

 碧は端末にカードをかざしてドライバーを出現させる。

 

 するとカードケースからもう一枚のカードを取り出した。

 それは、アールの持ってきた2枚のカードのうちのもう一枚──「KING ZI-O」のカードだ。

 摘んでいる人差し指と親指の力を強めると、カードの周りに銀色の粒子が集まっていき、()()を形成していく。

 

 そうして出来上がった物は、春樹が「DESTROY DECADE」のカードに装着させたパーツと全く同じ物だった。

 だが色はマゼンタではなく、銀色となっている。

 

 部品が完成したのを確認すると、カードを端末に装填した。

 

『"ZI-O" LOADING』

 

 電源ボタンを押すと、背後に大きなゲートが出現。そこから現れたのは銀色のティラノサウルスの化石のようだ。

 その化石は上げる筈のない咆哮をガラスや鼓膜、様々なものを壊すほどの音量で響かせる。

 

 後ろのものの行動を物ともせずにポーズを決め、咆哮の残響が残る室内をさらに震わせるように叫んだ。

 

「変身!」

 

 そして端末をドライバーに挿し込んだ。

 

『Here we go!』

 

 瞬く間に身体が青色の異形へと変化すると、後ろの化石が分解。鎧として装着されていった。

 

 時計のような銀色の部品が両膝に1つずつ、両腕に2つずつ着けられ、肩と胸部に腕時計のバックルを模したピンクのラインが入る銀色の鎧が装着されている。左耳にダイヤルのような銀色の部品が、額には時計の針のような形状の角が着けられている。そして、青色の複眼には各々に「ライダー」と縦書きで書かれているが、同じく青色で書かれているため凝視して見ないと判らない。

 

『To know, Take time, Get the watch! It’s RIDER TIME! KING ZI-O! I’ll be the best and best king.』

 

 仮面ライダーリベード ジオウシェープ。

 かつて王を目指した普通の人間の力を宿した戦士のその姿は、まるで王ではない未熟な「王子」と言ったところだ。

 

 そして、ステンドグラスが今日の中で一番光り輝いたところで、戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 さて、ゲンムとシチズンの群れの戦いは敷地内にて繰り広げられていた。

 ゲンムはガシャコンスパローを持つことはなく、槍を持った無数の市民たちに対して素手で戦っている。

 

 武器×数十、対、素手一人。

 それが圧倒的に不利な状況だということは、赤子でも分かることだろう。

 だがそんな状況でもゲンムは槍をへし折り、己の体一つで市民たちを粉砕していく。

 

 その隙に機動隊員たちが館の中に侵入。銃口を室内に向けながら入るが、中には鎖で縛られた人質以外誰もいないらしく、先程とは打って変わってスムーズに事が進んだ。

 鎖をカッターで切ると、両腕を持って立ち上がらせて入り口の方まで誘導する。

 

 入り口から出たあまねと美徳が見たものは、白い戦士が橙色の怪人を無惨に倒していく光景だった。

 あまねは異様な光景を見慣れているため、特に何とも思うことはない。

 

 だが本来目を背けたい筈の美徳は、ただひたすらに凝視していた。

 恐怖で震えるわけでもなく、ただ懐かしそうに、目の前の白い異形のものを見つめていた。

 

 行きましょう、と隊員に誘導されて二人がその場を後にしたのと同時に、事態は終局へと向かった。

 

「レベルXになった僕は、完全に『デンジャラスゾンビ』を制御することが出来る。雑魚の君たちに勝ち目は無い……!」

 

 微かに震える声を出しながら彼はドライバーの2つのボタンを同時に押す。

 そしてBボタンを再度押した。

 

『クリティカル・デッド!』

 

 発動してすぐにゲンムの足元から紫色の液体が流れ始めてきた。すぐに水たまりを形成していき、液体の集合体はすぐに市民たちと市長を飲み込んでいく。

 するとそこから白い腕が何本も伸びてきた。それが足元をすくい、引き摺り込もうと努力している。

 

 そして全員分の両脚を掴み終えたところで、そこに爆炎が上がった。

 赤い炎と黒い灰が白い体をどんどん彩っていく。

 

 炎の止んだ後に残ったのは、橙色の怪人だったものが1つだけだった。

 そちらの方に歩み寄ったその時。

 

 

 

『THE END OF VOLKLOW』

 

 遠くの方から電子音声が聞こえてきた。だが、いつもの低い男性の声ではなく中世的な女性の声だった。

 すぐに死骸が粒子状になり、ゲンムの後ろの方へ流れて行く。

 

 ゲンムだけではない。SOUPのメンバーたちも何処かへ向かう粒の大群を目で追いかけた。

 だがそこにはもうすでに誰もいない。

 

 代わりに、いたはずの誰かの置き土産がポツンと置かれていた。

 拾い上げて確認をする深月。

 

 それは1枚のメモリアルカードだった。

 全身が橙色の人々が広い広場で生活を営む様子がエドワード・ホッパーのようなタッチで描かれており、下部には白く「No.097 CITIZEN MAGE」と印字されている。

 

 細やかなプレゼントを見つめながら、深月は何かを考えることに耽っていた。

 

 

 

 

 

 一方の(オーズ)王子(リベード)の戦いである。

 オーズの両腕の鉤爪とリベードの持つ剣がぶつかり合うことで火花が散ると、互いにやや距離をとって再び攻撃を再開する。それの繰り返しだった戦いに変化が生じたのは、リベードが近づいて来たオーズを蹴飛ばした時だった。

 

 オーズが両サイドのメダルを変えたのと同時に、リベードもカードを取り出して「KING ZI-O」のカードに付いたパーツのスロットに装填した。

 

『"KABUTO" LOADING』

 

 左側に付いているレバーを下まで下げた。

 するとリベードの後ろに銀色のルーレットのようなものが現れた。針がぐるぐるとすごい勢いで回っている。

 

『What's coming? What's coming? What's coming?』

 

 「DESTROY DECADE」と同じく少し鬱陶しい待機音が流れる。

 リベードが再度レバーを下げたのと、オーズがスキャナーを滑らせたのは同時だった。

 

小吉(SHO-KICHI)

『ライオン! トラ! チーター!』

 

 オーズの周りに円形のオーラが現れ、それが一つの塊となって一体化。また別の形態へと変化を可能にさせた。

 

 一方のリベードはと言うと、針が「小吉」と書かれた部分を差した瞬間に、突如として銀色のアーマーが液状に変化。急に形状と色味を変えていく。

 それは天に向かって一直線に伸びる角の付いた赤い鎧──「SHEEDING KABUTO」によって形成される筈の装甲だ。

 

『ラタラッター! ラトラーター!』

『You got a small luck.』

 

 仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボと、仮面ライダーリベード カブトシェープ 第二形態。

 それぞれ高速移動に特化した姿へと変貌を遂げた。

 

 リベードはすかさずもう1枚カードを取り出し、端末に読み取らせた。

 

『CLOCK UP』

 

 二人は勢いよく足を走らせ始めた。

 その速さは凄まじく、走るだけで教会の中に旋風が巻き起こる。

 

 行ったり来たりを繰り返しながら、鉤爪と剣が再び火花を散らしていく。

 

 チーターを模した右足で繰り出されたキックを左手で華麗に受け止め、ジャンプをした勢いを利用して右足を左の肩にお見舞いしようとするリベード。

 だが思惑にすぐに気が付かれたようで、オーズは掴まれた右脚を思いっきり振り下ろし、体勢を崩させた。そして左腕の爪で体を受け止めて天井に投げた。

 

「グッ……!」

 

 幸運なことに天井の面に両足の裏が向いていたのだ。

 思いっきり天井を蹴って、オーズの方に向かって落ちて行く。

 

「ハァァッ!」

 

 想定外の攻撃にオーズは戸惑ったのかすぐに対応することが出来なかった。

 落ちて来たリベードが横に振った剣に吹き飛ばされてしまう。

 

「なるほど。君の新たな形態は、私と互角いや、それ以上か……」

 

 立ち上がったオーズは全てのメダルを取り出すと、全てを緑色のものへと変えた。

 同時にリベードも姿を元のジオウシェープに戻し、別のカードを挿れた。

 

『"RYUKI" LOADING』

 

 レバーを下げた。

 

『What's coming? What's coming? What's coming?』

 

 再び姿を変えるために各々が動作を起こした。

 

中吉(CHU-KICHI)

『クワガタ! カマキリ! バッタ!』

 

 再びオーラが取り囲み、今度は王を緑色の形態へと変えていく。

 

『ガータ ガタガタ キリバ、ガタキリバ!』

『You got a good luck.』

 ガタキリバコンボに変身したオーズは、すぐさま十数体に分身。リベードの周りを取り囲んだ。

 

 するとその時、リベードの真上にゲートが出現。それが開かれるとそこから赤い龍が咆哮を上げながら飛び出して来た。

 

 優先順位として龍が上なのだろう。

 オーズがさらに分身をし、飛蝗を模した両脚を使ってジャンプ。赤い龍に飛びかかって行った。

 だが龍も自身の体を動かして次々と振り落としていく。

 

 その隙にリベードは別のカードを装填した。

 

『"GAIM" LOADING』

 

 オーズたちが龍に気を取られているのを確認してレバーを押す。

 

『What's coming? What's coming? What's coming?』

 

 分かりやすく大きなルーレットが出現しているというのに、誰も何も気が付かない。

 やはり生物は一つのものに集中をしてしまうと、周りのものが見えてこないようだ。

 

 そんなことを考えながらほくそ笑み、もう一度レバーを下げた。

 

末吉(SUE-KICHI)

 

 するとリベードの左手に別の剣──擬似大橙丸が現れた。

 

『You got a future luck.』

 

 そして2本の剣を合体させ、ディスペルクラッシャー ナギナタモードを完成させる。

 同時に、赤い龍が自身に襲いかかる緑色の標的たちを全て振り落とした。

 

「セイハーッ!」

 

 リベードはナギナタを思いっきり投げつけた。

 すると一気にオーズの分身たちを斬り裂いていき、ついに本物に当たると分身たちはあっという間に消えていった。

 

「さて、蹴りをつけようか……!」

 

 再びタトバコンボに変身をしたオーズ。

 スキャナーを取り出してドライバーの中のメダルを読み取らせる。

 

『スキャニングチャージ!』

 

 リベードもドライバーのプレートを押し込む。

 

『Are you ready?』

 

 そして取り付けられた端末を押し込んだ。

 

『OKAY. "ZI-O" DISPEL STRIKE!』

 

 二人とも上空に跳び上がった。

 オーズの前には赤色と黄色と緑色の大きな円形のオーラが出現した。

 一方のリベードの前には「キック」という文字の渦が現れる。

 

「セイヤァァァッ!」

「ハァァァァァッ!」

 

 そして二人がそれぞれその中へと入っていき、右足で強烈なキックを互いに食らわせた。

 

 そして教会の中には爆発が起こり、同時に起こった強風の影響で建物は全て吹き飛んでしまった。

 

 

 

 

 

 いつの間にか外には雨が降り出していた。

 崩壊した教会から出る炎を優しく鎮火していく。

 

 廃墟と化したその中にいたのは、変身を解除して佇む碧と、同じく変身を解除してその場に倒れ込む松本の二人だ。そして碧の後ろに他のSOUPのメンバーたちも合流する。

 

「まさか、私が敗北するとは……ね」

 

 自虐的な笑みを浮かべる松本。それに睨みを効かせる碧たち。特に碧の目にあるのは、標的を狩ろうとするための殺気だけだった。

 

 と、その時。

 

 

 

「当然ですよ」

 

 松本の後ろの方から声が聞こえた。

 全員がそちらの方を向くと、そこに立っていたのはアールたち三人だった。

 

「何の用だい?」

「何の用? 決まってるでしょ。貴方を()()しに来たの」

 

 フロワの言葉にその場の全員が驚愕する。

 

「ど……どうして?」

「どうしてって、君のせいで計画が破綻したからね」

「えぇ。君のせいで()()が話さなくなっては困るからね」

 

 今まで余裕綽々の様子を見せていた松本が、戦々恐々とした面持ちで目の前の三人を見ている。

 後退る彼に対してアールが素っ気無く言い放った。

 

「それじゃあ」

 

 すると突然、耳をつんざくような銃声が聞こえてきた。

 SOUPのメンバーたちは突然のことに、思わず耳と目を塞いでしまう。

 

 目を開けた者たちが次に見たのは、先ほどまで動いていた松本()()()()()だけが取り残された惨状だった。

 一切の動きをせず、沈黙を貫いている。

 

 天井の無くなったため、大量の雨が全員に降り注ぐ。

 ただの亡骸と化した敵を見つめていた、次の瞬間。

 

「……ッ!」

 

 突如として碧がその場にうつ伏せに倒れ込んだ。

 

「碧さん!?」

 

 薫が倒れた碧を少しだけ起こして状態を確認する。

 見ると、碧の鼻から二筋の赤い道が出来ており、ぐったりとした様子だった。

 

「すぐに救急車を呼べ!」

「碧さん、しっかりしてください!」

 

 機動隊員に呼びかける森田の大声と、呼びかける圭吾の声が聞こえたところで、碧の意識は途絶えてしまった。

 

 

 

────────────

 

 

 

?????

「あーあ。どうしてあんなことしちゃったんだろうね、彼は」

 

 ピカロが残念そうな声を出しながら、白い角椅子の群の上に寝そべる。

 だがすぐに興味のある事柄が変わったのだろう。パーカーのポケットから携帯ゲーム機を取り出してゲームを始めた。

 

「ねー。どうせ彼らは()()()()()()になるしかないのにね」

 

 フロワは手鏡を見ながら自身の顔を確認して、口紅やらチークやらを使ってメイクを直していく。

 

「まぁ。いずれ殺されるのだから勝手をしようとするのは、同然のことでしょうね〜」

 

 アールがその場で仁王立ちをして笑顔で答えた。

 

 その時だった。

 

「次は僕が行こうか?」

 

 暗い部屋の奥の方から優しい男性の声が聞こえてきた。

 すると三人が驚きを隠せない様子でそちらを向く。

 

「本当ですか?」

「ねぇ、どういうつもり?」

「いよいよかー」

 

 三人の様子を見ながら、男はニッコリと微笑む。

 そして右手に握られた大きな黒い銃を見つめながら、独りポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 今会いに行くからね。

 碧。

 

 

 

2021.12.14 16:32 東京都 新宿区 SOUP 医務室

 ベッドの上に置かれている端末が震えた。

 何だ何だと、隣で眠っている碧を目覚めさせないようにそっと端末を拾う春樹。

 そして寝転びながら受信したメッセージを確認する。

 

 

 

そろそろ、彼が来るそうです。

井川

 

 

 

「いよいよか……」

 

 ハァと一つ吐くと春樹は端末を机上に置き、気怠そうな様子で布団を被った。

 だが頭を布団から出し、カーテンの向こう側にいる碧のシルエットをじっと見つめる。

 寝息を立てながら静かに眠る彼女の影を見て微笑む。

 そして笑みが消えた。

 

 

 

 

 

「もう、お前ともお別れだな。碧」

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.12.14 18:44 東京都 新宿区 SOUP

 春樹と碧以外のメンバーたちが神妙な面持ちで自身の席に座っている。

 全員顔は下を向いており、部屋中に暗い雰囲気が立ち込めている。

 

 すると目の前の扉が開き、誰かが入って来た。

 

「どうした? 急に呼び出して」

 

 岩田室長がドアの前で全員を眺める。

 すぐに何かがおかしいことに気がついたのは、自分を見つめる全員の表情が緊迫したものになっていたからだ。

 

「? ……どうした?」

「全部……話してもらいますよ」

「? 全部?」

 

 何のことかさっぱり分からなそうな岩田に向けて、深月が言葉を紡いだ。

 

「ずっと気になっていたんです。クロトの言葉が」

 

 

 

 だって……。おばあちゃんを攫った、お前たちを許すわけにはいかないから

 

 

 

「確かにクロトは美徳さんのお孫さん、大野玄斗(クロト)さんに見た目が酷似しています。当初僕たちは、あれはフォルクローが行方不明になった人たちに擬態をしている。そう考えていました。

 けど、彼は美徳さんのことを『おばあちゃん』と呼んだ。

 もしかして、彼は擬態したフォルクロー、と言うより、()()()()()()なんじゃないんですか?」

 

 ずっと全員が気になっていたことだ。

 嘗て森田が、元々がフォルクローだったのか、それともいつからかフォルクローになってしまったのか、という趣旨の質問をしていた。

 その時、春樹と碧は判りやすい表情を見せて返答を渋っていたのだ。

 

 指摘に顔を背ける岩田に、今度は薫が続けた。

 

「調べてみたんです。春樹さんと碧さんを除いたフォルクローの総数は165体。そして、5年前に失踪した人たちの人数は……丁度165人です。

 考えたくはありませんが、もしかして、フォルクローの正体は行方不明になった人たちなんじゃないですか?」

 

 気まずそうな顔を浮かべる岩田。

 

「それから、筒井あまねさん。もう亡くなっているはずですよね?」

 

 圭吾の発言に、顔を正面に戻して驚いた表情を見せる。口を少し開け、深く呼吸をし始めた。

 

「どうして貴方は、亡くなった方の戸籍を彼女に与えたんですか?」

 

 岩田は何かを発しようとするが、あと一歩のところで詰まってしまう。

 

「室長。もう、我々に全て話してくださいませんか?」

【将吾。もし君が話したくないのだと言うのなら、私が話そう】

 

 諭す森田に続けて、いつの間にかモニターに現れたグアルダが声をかけた。

 

「……。いや、大丈夫だグアルダ。……分かった。全て話そう。着いて来い」

 

 ようやく腹を括った岩田。

 そして後ろを向くと、扉の外へと出て行った。

 

 

 

 岩田に連れられて全員が歩いているのは、SOUPの中にある車道だ。いつも出動の際に使っているあの車道だ。

 あと数十メートルしたところで右のスロープを上れば、地上に繋がる。

 

「君たちは疑問に思ったことはないか? 何故SOUPの本部が地下にあるのか。そして何故、四谷にあるのか」

 

 スロープのところまで来た。だが岩田の目線はスロープの方ではなく、目の前にある何もない黒い壁に集中している。

 その壁にパスケースの中に入った自身のIDカードをかざす。

 

 すると、何と言うことだろうか。

 突如として壁が開いた。その中にはまた壁。それがまた開いていく。さらに壁。開く壁。

 次々に展開され、壁の層は消えた。そして出来上がったのは両端にある松明のようなもので照らされるだけの暗い道だ。

 

 その中を歩いて行く全員。

 後ろの面子は、目の前で繰り広げられていく光景に気が動転しており、驚きのあまり声を出すことも出来ない。

 

 しばらくして、岩田が突如として立ち止まった。

 どうやらついに目的地に辿り着いたようだ。

 

 一気に灯りが灯る。

 だが先程のような直線上ではなく、大きな円形に灯っていくのだ。

 

 辿り着いた目的地は、学校の体育館ほどの大きさの円形の場所だった。

 壁一面によく分からない壁画が描かれており、中央には岩で出来た棺が3つ、円形に並べられており、さらにその中央に岩で出来た、剥いたゆで卵の殻のようなものが置かれていた。

 

「ここは……?」

「四谷遺跡の最深部だ」

 

 四谷遺跡。

 そこは嘗て、石川大教授率いる城南大学考古学研究室の研究チームたちが謎の死を遂げた、未知の場所だ。

 その最深部の隣にSOUPの本部があったのか……。

 

 けど、何故?

 

「全て話す前に、君たちの質問に答えよう。まずはフォルクローが行方不明者の変貌した姿ではないか、と言うもの。

 結論から言うと……イエスだ」

 

 やはり、フォルクローは行方不明者が怪人になった結果だった。

 その事実に頭が理解出来ない。

 つまり言えば、自分たちが今までに倒したのは、自分たちと同じ人間なのだから。

 言わば、人殺しだ。

 

「そしてもう一つ、あまね(彼女)のことだが……」

 

 何故、彼女は死んだ筈の人の戸籍を利用しているのか。

 何故、彼女はいきなり攫われたのか。

 何故、彼女はフォルクローを見ても何も動じないのか。

 何故、彼女は春樹と碧と共に生活を営んでいるのか。

 

「それを話すためにも、まずは()()()()()()()()を君たちに教えなければならない」

「? 本当の名前?」

 

「ああ。彼女の本当の名前は……ユイ。石川(ユイ)

「石川? ……まさか……!」

 

 

 

 

 

「そうだ。彼女は10年前、()()に殺された石川教授の実の娘だ」

 

 そして岩田は話し始めた。

 彼の知りうる範囲での、全ての真相を──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現時点で未確認物質解析班が把握している

新型未確認生命体の残り総数

通常110体

B群6体

不明1体

合計117体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: Whose force has she borrowed?

A: She has borrowed force of the king who changed his destiny himself.




【参考】
観察力を磨く 名画読解
(早川書房, エイミー・E・ハーマン著, 岡本由香子訳, 2016年)
もう一歩深く知るデザインのはなし〜教会のステンドグラス
http://www.interior-joho.com/interview/detail.php?id=1312&page=2

今作のキャラクターたちの日常を描いたスピンオフがあったら、読みたいですか?

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