前回は全ての始まりについて、今回は碧について書くことになりました。
シーズン1も今回を含めて残り5話です。
どうぞお付き合いください。
宜しくお願いいたします。
【歌詞使用楽曲】
Wonka's Welcome Song (From "Charlie AND THE CHOCOLATE FACTORY")
(作詞:John August, Danny Elfman)
【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=e369d288687d4266
Willy Wonka, Willy Wonka
The Amazing Chocolatier
Willy Wonka, Willy Wonka
Everybody give a cheer!
リビングで私が歌を歌うと、必ずお兄ちゃんが乗っかってきてくれた。
今、ソファに座っている私の隣に座ったお兄ちゃんは、一緒に歌ってくれる。
He's modest, clever, and so smart
He barely can restrain it
With so much generosity
There is no way to contain it
To contain it, to contain, to contain, to contain
歌いながらお互いの顔を見合って微笑み合う私とお兄ちゃん。
歌が続いていく度に、声がどんどん明るくなって、二人とも盛り上がっていく。
すると
「楽しそうだね」
お父さんがキッチンから顔を出した。
茶色いセーターの上から緑色のエプロンを着けたお父さんは、笑顔でこっちの様子を見てくる。
「お父さん!」
私とお兄ちゃんが駆け寄ると、お父さんは私たちのことを思いっきり抱きしめてくれた。
見上げた顔はとても優しそうで、なんだかホッとする。
「さぁて、ご飯にしようか」
「「やったー!」」
三人で食卓を囲むように座る。
テーブルの上に並んでいるのは、鍋の中に入ったビーフシチュー、ボウルの中に入った山盛りのサラダ、皿の上に盛られたバゲット。どれも美味しそうに照明の光を反射させる。
お父さんに頼まれて、私は小皿の上にビーフシチューを乗せて早歩きで移動する。
持って行ったのは別の机の方だ。3段の引き出しがあって、上には写真の入った写真立てが置かれている。
写っているのは、お母さん。
これがお母さんの代わりだ。
だってもう、お母さんはいないんだから。
目の前にお皿を置いて手を合わせると、自分の席に座った。
目の前に座るお父さん。
左側に座るお兄ちゃん。
写真の中で笑顔を浮かべるお母さん。
こんな生活がずっと続いたら良いのに──。
それが続くわけでは無かった。
大学1年生の時、お兄ちゃんが失踪した。
突然退学届を提出し、家からも忽然と姿を消した。
全く連絡も取れず、忽然と姿を消してしまった。
3年くらい前から何かの研究にのめり込んで、中々家に帰って来なかったお父さんの代わりだったお兄ちゃん。
だから実質、私はもうひとりぼっちだ。
でも、それから3年が経ってそんな状況は変わった。
ある日、私が大学の図書館で調べ物をしていると、1人の男の人に出会った。
「あの、本、お好きなんですか?」
突然話しかけられた。曰く、彼は学生以外も利用出来るこの図書館をごくたまに利用しているらしく、そこでいつも調べ物をしている私に興味を持ったらしい。
どうせナンパだろうの一種だろう。実際、同じような手口で何人かがこれまでに声をかけてきた。まぁ、いつも断ってはいるのだけれど。
ただこの人は何かが違かった。
ダメージジーンズに緑色の長袖のシャツを着た彼は、これまで私に言い寄ってきた男たちと雰囲気も何もかもが違かった。
それ以来、私と彼──春樹は定期的に話をするようになった。とは言え図書館の中に学生以外の人が入れるのは月曜日、水曜日、木曜日、金曜日だけと言う制約がある。だから連絡先を交換して、図書館の外でも会うようになったのだ。
最近読んだ本の話や私の大学での話、とにかく沢山話をした。その中でも家族の話題は結構少なかったなぁ。彼のご両親はもう亡くなっていたらしい。お母さんが死んで、お父さんが研究でめったに帰って来ない私と何処か似ているところがあって、さらに距離は近づいていった。
そして、私が春樹と付き合い出して2年が経とうとしていた頃、全てが動き始めた。
ある日私が大学にいると、一人の男性が話しかけてきた。話を聞くと警視庁の方らしく、来て欲しい場所があるらしい。別に予定も何も無かったので、とりあえず行ってみることにした。
連れて来られた先にいたのは、春樹だった。何故春樹も連れて来られたのか全く検討がつかないと言う。私もそうだ。どうして私たちはこの人に呼び出されたのだろう。
そこはどうやら工事中の地下トンネルのようだ。何人もの作業員たちが様々な工具を使って開いた穴の中を固めていっている。
作業中の彼らの中を潜り抜けて案内された先にあったのは、だだっ広い空間だった。壁に無数の絵が描かれ、中央には円形に並んだ3つの棺。そして真ん中には岩で出来た卵の殻のような残骸が残されている。
そこで私たちは男性──岩田室長から全てを聞いた。未確認生命体に次ぐ脅威がここから現れたこと。早急に対応を行いため、この壁に描かれた絵の解析をお願いしたいと言うこと。
俄には信じ難い事実だったけど、室長の見せてくれた映像で全てが真実で現実であることが分かった。
幸いにも卒業論文は書き終わって、就職も大学に附属している研究機関への内定が決まっていたので、時間を取ることは出来た。
学校の帰りに遺跡を訪れては、壁画の解析を急ぐ。春樹が珈琲を差し出してその様子を見守る。それが私たちの日常となった。
そこから3年の月日が経った。と言うのも、広いドームの中だけでは無くそこに続く通路に描かれたものまでも解析しなくてはならなかったからだ。1ヶ月でどれか1つの登場人物の解釈が終われば良いくらい、この作業は途方も無いものだった。
だけど春樹がいるから頑張ることが出来た。何も発すること無く、ただ優しく見守ってくれる彼がいたから。
本当に春樹がいて良かったと思っている。
8月にお父さんが失踪した。連絡もつかず行方不明。こうして私はついに一人になった。
その悲しみを抑えるために解読に熱中した私のそばに、いつもいてくれた。
その時は彼の有難みに気が付かなかったけど、今思えば本当に有難いと思っている。
そして解読開始から4年が経った、2020年2月1日。
全ての壁画の解読が終了して暫く経ったその日付を覚えているのは、私の人生を変えてしまう事が起こったからだ。
その日、私が朝のランニングから家に帰ると春樹と室長、そして1人の女の子がいた。春樹は大学を卒業してから同居しているため何ら不思議は無かったけれど、室長と少女がどうしているのかは全く分からなかった。
室長は私と春樹に、この少女──唯ちゃんは四谷遺跡から蘇った零号に狙われているため、事が収まるまで匿って欲しいと頼んできた。どうやら零号たちに対抗するための装備がもう間も無く完成するそうで、私たちには装備の有資格者たちをサポートするためにまた協力して欲しい、とも。
結果として唯ちゃん、いや、与えられた名前で呼ぶならあまねちゃん、か。そのあまねちゃんが我が家に加わったのもその日だった。
けれど、それ以上の出来事が起きたのは、その日の昼過ぎだった。
あまねちゃんは外食に行ったことが無かった。ずっと身を追われていたため、人が人間社会の中で経験していくことの殆どを、彼女は室長の別荘で完結させていたのだから。
本人が「蟹を食べたい」との要望を出してきたので、近くの食べ放題の店でたらふく食べた。
その帰り、あまねちゃんが家の中に入った瞬間、まだ玄関の前にいた私と春樹に誰かが話しかけてきた。
「どうも」
後ろを振り向くと、そこに立っていたのは奇妙な三人組だった。真ん中にいるスーツを着た中年男性、左側にいる赤いチャイナ服に身を包んだ女性、右側にいるパーカーを着た少年。まるでどうしてこの人たちが集まっているのか検討のつかない集団に、私は思わず警戒する。けれど春樹はそんな素振りを見せず、じっと三人を見つめていた。
「石川唯さんを匿っているのは、貴方たちね?」
女性──フロワの言葉で、私は身構えた。
どうして、それを知っているんだろうか。
まさか、彼女たちがあまねちゃんを狙っている人たちなのか……。
「落ち着いてよ。別にあの
「じゃあお前らは何しに来たんだ?」
私たち、と言うより身構えている私を宥めようとする少年──ピカロに春樹が問いかける。
するとアールが後ろを向くと、突如として
「どうぞ」
アールに手招きされるがままに、私たちは穴の中に入って行った。
行き着いた場所は、何とも不可思議なものだった。
暗く広い空間に付いている大きな窓から見えるのは、荒廃した街並み。ビルや道路。私たちが暮らしている世界と何ら変わりは無い。崩壊していること以外は。
そして、室内にあったのは大量の白い棺だ。全長2メートルくらいの棺が200個近く並べられている。
中を覗いて見ると、全ての中に入っていたのは人間だった。全員が白いTシャツと白いズボンを着ていて、死んだように眠っている。
「彼らは1年後、我々の
もし唯さんが
間違い無い。
彼らは壁画に描かれていた、滅びた世界から来た三人だ。
だとしたら、もし彼らに
「……。答えは
「俺も同意見だ。どうなるか分からないのに、無闇矢鱈に渡すことは出来ない」
「……。そうですか。では一つ、私に良い考えがあります。貴方方が戦えば良いんです」
アールの言葉に言葉を失う私たち。
「彼らと同等の力を持って戦えば、唯さんに干渉せずとも我らが主への養分は確保出来ます。……どうです?」
何かを発しなければならない。けれども言葉が喉の奥でつっかえて上手く出てこない。
「同じく半年後にまたお伺いします。そこでお返事を聞かせていただければと。ただ……」
するとアールは再び穴を2箇所に出現させた。
一つは私と春樹の後ろの少し遠くに。もう一つはアールの後ろに。
アールの後ろにある穴は巨大で、そこから黒ずくめの集団が何人も出て来た。良く見るとその手には刃先の鋭いナイフが握られている。
「もし貴方方が『戦う』と言う選択をなさった際、誰にも太刀打ち出来ないようでは話になりません。ここでテストさせていただきます」
そこから先は殆ど覚えていない。
気がついたら家のリビングにいて、二人とも全身が傷だらけだった。さらに部屋の中には大量の書類で溢れていた。それだけ荒らされたか、それとも慌てていたからか。
部屋の片隅にあるソファでは、私たちと対照的にあまねちゃんがすやすやと眠っている。
「解読とあの人たちの言う通りならば、あの人たちは怪物にされる手術を施されて、そして殺される。全ては彼らが崇拝するもののために……」
「けれどもし俺たちが同じ手術を受ければ、あまねが狙われる可能性は低くなるし、いざという時に俺たちが直接彼女を守ることが出来る……」
暫しの間流れる沈黙。
すると春樹が突如として口を開いた。
「あの手術を受けるのは俺だけで十分だ。これ以上、君を巻き込む訳にはいかない」
「何言ってるの? 私だってこうなることぐらい想定の範囲だった。別に怖くなんてない」
あの壁画の解読を始めた頃から、とんでもないことに巻き込まれたとは思っていた。
けれどまさかこんなことになるとは……。
「けど」
「それに!」
二人とも視線はあまねちゃんの後ろに向けられた。すやすやと眠る彼女の姿を見て、私は腹を括った。
「この
私は春樹の両手を柔らかく握って、その目を真っ直ぐと見つめた。
もう、覚悟は出来ている。
私を見つめる春樹の目も同じような目をしていた。
翌日、私と春樹は室長に自分たちの決断を話した。
当然のように最後まで止められた。
けど、それでも私たちの決意は揺らがなかった。
それを室長も分かってくれたのだろう。深く礼を一つすると、私たちにそれぞれ銀色のアタッシュケースを手渡してきた。
中身を確認すると、各々のものの中にスマートフォンのような黒い端末と2枚のカードが入っていた。
「後は頼む」
室長の言葉を背に、私たちはその場を立ち去った。
それから1ヶ月くらい経った、2020年3月7日。
あまねちゃんを室長の元に預けたその日、私たちは都内の結構高いホテルに泊まっていた。
何の記念日でも無いこの日にどうして泊まることになったのか、全くもって想像が出来ない私が夜になって部屋に戻ると、部屋の中にある白いベッドの上が大量の赤い薔薇の花びらで彩られていた。
何が起こっているのか分からない私の目の前に立った春樹は、ジャケットのポケットから
入っていたのは、銀色に輝く1つの指輪だった。
涙が出そうになりながら口元を押さえて、私は春樹の言葉を待った。
けれどいくら待っても春樹は言葉を出さない。と言うより出せない。
よっぽど緊張しているんだろう。口をもごもごと動かして動きが固まっている。
おかしくなって失笑してしまった私は、彼の持っていた黒い小箱を受け取って、中に入っている指輪を左手の薬指に自分で着けた。
笑顔で左手の甲を見せる。
すると私の様子を見てガチガチに固まっていた春樹がホッとしたのか笑みを浮かべた。誘われたように私もさらに笑う。
僅かな灯りだけが灯るホテルの一室で、私たちだけの笑い声が静かに響き渡った。
そして5ヶ月後。
私たちは
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2021.12.23 21:34 東京都 新宿区 焼肉専門店 ぎゅう
「ところで、あまねはクリスマス予定あるのか?」
「え? どうしたの急に?」
「どうなの、あまねちゃん?」
いつもの個室で肉を焼いていたあまねに、向かい合う碧がニヤニヤと笑みを浮かべながら訊いた。
するとタイミング良く、個室の中に追加の注文をとりにきた日菜太が入って来た。
そちらの方を向いて笑みを浮かべる碧。
何が起こっているのか分からず、あまねと顔を見合わせる日菜太。
「そ、そりゃあそこまで話さないパパとママの仕事のこととかを話すのは日菜太くんだけだけど……」
徐々に語気が小さくなっていくあまね。
その様子を見ながらニヤニヤする碧と、そうでもない春樹。
「うん、まぁ。そ、そう言えば! 2ヶ月くらい前にすごい仕事終えたみたいじゃないですか! すごいですよねーっ」
無理矢理にでも話を逸らした日菜太の様子を見て、ついに春樹が少しだけ笑みを浮かべた。
「それ言ったのって、日菜太くんだけか?」
「うん。そうだけど」
「ふぅーん」
「折角だしデートでもして来なよ。ね?」
「え、えぇ……」
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2021.12.24 14:21 東京都 目黒区 目黒グランドプレイス
クリスマス・イブ。
高々クリスマスの前日であるだけのこの日、ビルの中にある大きな広場はカップルたちで溢れかえっていた。手を繋ぎ、腕を組み、とにかく仲睦まじい様子をこれでもかと見せつけてくる。
カップルたちが悲鳴を上げて逃げまとい始めたのは、そこにクロトと大量のソルダートたちが現れたからだった。
すぐに機動隊員たちと遊撃車、そして碧の乗ったバイクが到着し、臨戦状態へとなる。
「あの、春樹さんは?」
薫が遊撃車の中で問いかける。
「分からない。朝から連絡が取れないんだ」
森田が呆れた声で答えた。
「久々に無断欠勤ですか」
圭吾が懐かしそうな声で独り呟いた。
その中で深月だけが声を発しない。
全員がそっちを向くと、深月はひたすらにパソコンの画面を眺めていた。死んだ魚の目、と言うより、目だけでなく死人のような顔立ちだ。
誰も彼に何も言うことは出来なかった。
「クロト、何の用?」
地面にいた碧は階段の上にいるクロトに向けて声をかける。
「僕はレベルXの力を手に入れることが出来た。だからその性能はどこが天井なのか確かめたいんだ」
クロトが白いガシャットを取り出して黒い起動スイッチを押した。
『デンジャラスゾンビ』
「分かった。けど、
碧は端末にパーツの付いたカードを装填し、電源ボタンを押した。
『"ZI-O" LOADING』
「グレードX」
「「変身!」」
クロトがガシャットをドライバーに挿し込んでボタンを押したのと同時に、碧も端末をドライバーに挿れた。
『ガシャット! バグルアップ!』
『Here we go!』
碧の後ろにいる恐竜が雄叫びを上げるのを終えるのと同じタイミングで、彼らは姿を変え始めた。
クロトの体が黒い煙で覆われた後に晴れたところから白い戦士が現れる。
同時に変身した碧の体に銀色の鎧が取り着けられた。
『デンジャー! デンジャー! ジェノサイド! デス・ザ・クライシス! デンジャラスゾンビ! Woooo!!』
『To know, Take time, Get the watch! It’s RIDER TIME! KING ZI-O! I’ll be the best and best king.』
変身したゲンムの指示でソルダートたちがリベードに襲いかかってくる。
リベードはディスペルクラッシャー ソードモードを取り出すと、ソルダートを斬り裂いていく。次々と黒い泡となって消えていく戦闘員たち。
だがそれでも一向に数が減る様子は無い。
「流石に一人だと、キツいかなっ……!」
リベードが1体の兵士のナイフを剣でブロックし蹴飛ばすと、カードケースから1枚のカードを取り出して、部品のスロットに装填した、
『"DRIVE" LODING』
レバーを下げると後ろから近づいて来たものに回し蹴りを食らわせる。
『What's coming? What's coming? What's coming?』
再度レバーを押した。
『
するとリベードの上に巨大なゲートが出現。そこから赤いスポーツカーが降り立ち、着陸した。
『You got a good luck.』
スポーツカーは自動的にドリフト。次々に兵士たちは轢かれていった。
そして残る標的がゲンムだけとなったところで、スポーツカーはその場から消えた。
「ハァァァァッ!」
リベードは自身の剣を持って階段を駆け上がって行く。そして縦に振って斬りつけようとした。
だがすんでのところでゲンムはガシャコンスパロー 鎌モードを取り出し、そのうちの一本で防御。もう一本で逆に攻撃を仕掛けた。
「ヌァッ……!」
後退するリベード。すると次の攻撃を仕掛けようとするゲンムによろけながらも剣で胸部を斬る。
だがそれしきの攻撃ではゲンムは狼狽えない。
再度剣を使って激しい斬り合いを始める。けれども徐々にリベードが押されていってしまう。
「やっぱり進化したのね。君は強くなった。ムカつくくらいに」
「君もね。手応えが無くなってきた。けど、まだまだだねっ……!」
リベードの剣を鎌で押さえるゲンムは、その隙をついて腹部を蹴り飛ばす。
そして2つのボタンを同時に押し、そしてAボタンを再度押した。
【クリティカル・エンド!】
上空に浮かび上がるゲンム。紫色のエネルギーを纏いながら縦に回転すると、右足でリベードに強烈なキックをお見舞いした。
「ハァァァァッ!」
「グァァァァッ!」
変身を解除された碧は、衝撃で階段から転げ落ちてしまう。
なんとか立ち上がろうとするが、全身が痛く挑戦すればするほどに痛みが増して立ち上がれない。
退屈そうに上で胡座をかいて見下ろすゲンム。一本の鎌の先で床をカンカンと叩いたその時、鋭い銃声と共に右肩から煙が出た。
誰かが発砲したのか……!?
その場の全員が困惑する中、全員の目線が碧から見て左側の方に向けられた。
そこには1人の男が立っていた。
そしてその手には黒い銃が握られており、銃口からは白い煙がゆらゆらと流れていた。
じっとゲンムを見つめる男の顔を見て、碧は言葉が出なくなった。
目を見開いた彼女は言葉を静かに発し、自身の心の奥底からの驚きをようやく表せた。
「お父さん……!」
「え!?」
遊撃車の中で待機をしていた全員が碧の言葉に驚いた次の瞬間、突如として遊撃車のドアが開いた。
外に立っていたのは、スーツに身を包んだ眼鏡をかけた男だ。
明らかに関係者では無さそうな男に全員が困惑する。
「誰だ!」
森田が問いかける。
「警視庁警備部の井川と申します。現時刻より、指揮権は
冷静に言い放つ井川。
それでも彼らはこの状況を飲み込むことが出来ない。
「そもそも、どうして公安がここにいるんですか? 管轄外のはずですが」
「ええ。それをまず教えて頂けないと、協力は出来ません」
薫と圭吾が井川に僅かな抗議をする。
「その理由はすぐに分かります。どうぞご協力を」
「どうして君がここにいるんだ?」
「どうしてって、
「
コートの男──
だが海斗は後退する様子も無く、ニッコリと笑みを浮かべている。
「お前はレベルXの力を試したいと言っていたな。……私が相手になろう」
すると海斗は1枚のカードを取り出した。メモリアルカードともアシスタンスカードとも違うそのカードを手元の黒い銃のスロットに装填する。さらに銃身に当たる部分を引き延ばした。
『カメンライド』
待機音の流れる中、海斗は銃を持った右手を上げ銃口を宙空に向けた。
そして静寂と混乱で満ちたこの場所に響き渡るように言い放ち、引き金を引いた。
「変身!」
『ディエンド!』
放たれた銃弾は何かのマークを形成。同時に赤色、青色、緑色の3つの像が辺りを動き始める。その像が海斗に一体化するとその身体がモノクロの戦士へと姿を変わる。
さらにそこへ上空にあるマークが10枚近いプレートに分解。全てが頭部に刺さると、モノクロの戦士の体にシアンの色が差し入れられた。
「そんな……。お父さんも……」
仮面ライダーディエンド。
神出鬼没の戦士が
「ハァッ!」
ゲンムが2本の鎌を使ってディエンドに襲いかかる。ディエンドは後ろに少し下がることでそれを軽々と避け、両肩に2発ずつ弾丸を撃ち込む。
再び立ち向かうゲンムだったが、胸がガラ空きであった。そこを左足で蹴り飛ばすとゲンムは後ろに吹き飛んだ。
「ノァッ……!」
するとディエンドは黒い銃──ディエンドライバーの銃身を収縮させると、腰に着いたドライバーの右側にある黒いカードケースから、2枚のカードを取り出してディエンドライバーに装填した。さらに銃身を再び引き延ばす。
『カメンライド』
銃口を宙空に向けて引き金を引いた。
『サソード! サガ!』
銃口から2発の銃弾が飛び出し、それが6つの像となる。それが2つの形にまとまって収まった。
変わった後の姿は、まさに戦士。
紫色の気高き戦士──仮面ライダーサソード。
白銀の美しき戦士──仮面ライダーサガ。
「召喚かぁ……」
ゲンムは2本の鎌をギュッと握って向かって行く。
サソードとサガは1本ずつ剣を持っている。力としては互角と言ったところだろうか。
跳び上がってサソードを左足で蹴り飛ばすゲンム。さらに右側から襲いかかるサガを、右手に持った鎌の柄で殴りつけた。
今度は左右から同時に斬りかかって来る。ゲンムがリンボーダンスのような体勢をとると、標的を見失った刃は味方を傷つけてしまった。
『ガシャット! キメワザ!』
ガシャットを挿し込んだゲンムは上体を起こした。
『シャカリキクリティカルフィニッシュ!』
「オリャッ!」
そして両腕を広げて1回転。緑と紫と白の混ざった斬撃を食らわせ、2人の戦士を撤退させた。
「やっぱり、君が一番強そうだね」
「当然だ。そいつらは所詮実像。生物じゃないからな」
言葉と共にゲンムの目の前に急激に接近するディエンド。気がついた時には何発も弾丸を撃ち込まれてしまった。
狼狽えながらも何とか食らいつくゲンムであったが、次々と銃弾が放たれ、徐々にダメージが蓄積されていく。
ダメ押しだろうが、ディエンドはさらに1枚のカードを装填し、銃を操作した。
『アタックライド。ブラスト!』
何重にも重複した弾丸が標的を襲い、ゲンムは白い煙を上げて吹き飛ばされた。
「さて、そろそろ締めるか」
最後にもう1枚、カードを取り出した。今までのカードとは違う、マークのみが描かれた黄色いカードだ。それをディエンドライバーのスロットに挿し、銃身を伸ばした。
『ファイナルアタックライド』
銃口がゲンムの方に向けられる。
すると銃口の前に水色のカードのようなもので出来たトンネルが出現。標的に向けて伸びていく。
一方のゲンムもバグルドライバーからガシャットを取り出して、弓の形へと合体させたガシャコンスパローに装填した。
『ガシャット! キメワザ!』
白と紫のエネルギーが溜まっていく中で、その先をこちらも標的に向けた。
『ディディディディエンド!』
『デンジャラスクリティカルフィニッシュ!』
2つのエネルギー弾が互いにぶつかり合い、その瞬間に爆炎と衝撃波が襲いかかった。
炎の次に壊れた地面のコンクリートが細かい破片となって、大量の煙が巻き起こる。
その中でなんとか立ち上がった碧は顔を両腕で覆い守る。
煙が晴れたところで、腕を下ろして瞼を開くと、目の前に立っていたのは異形の戦士へと姿を変えた自身の父親だけだった。
「逃げた、か……」
呆れた様子で声を出すディエンド。右足の踵を上げては下ろし、上げては下ろし、一定のテンポを刻んでいる。
「ねぇ」
碧が声を出す。いつものような溌剌とした声ではなく、震えを抑えることの出来ない。
「やっぱり、お父さんもフォルクローだったんだね」
「……」
「教えてよ……! どうしてフォルクローになったの!? どうしてクロトたちはフォルクローにさせられたのっ!?」
響く声。元々の声の振動もあってか、鳴り響く声は第三者の耳に届く頃には殆ど原型を留めていなかった。
「……少なくとも、私は自分の意思でなった。人類が次のステージに進むための貴重な機会だ。逃すわけにはいかなかった」
「……何言って」
「フォルクローを創り出したのは、私だ」
微かに空気が揺れる。強い風が二人の間に吹いて、そして収まった。
すると
「ようやく……」
ディエンドの後ろから声がした。
振り向くとそこに立っていたのは春樹だった。
だが様子がどうもおかしい。
いつもは冷静沈着な彼だが、同じように声を震わせ、荒い呼吸をする度に肩が揺れる。
そして何よりも──。
「ようやく見つけた……!」
上げた顔は狂気で満ち溢れており、これでもかと上がった頬と生き生きとした目が気色悪い。
そんな春樹の様子を、遊撃車の外から眺める井川は一人呟いた。
「お疲れ様です。警視庁公安部、椎名春樹警部補」
先に言っておくと、シーズン1は最悪な終わり方をします。
以前、「呪術廻戦」の原作者・
もう、何が言いたいのかお解りですよね……?
【参考】
講談社シリーズ MOOK 仮面ライダー 平成 vol.10 仮面ライダーディケイド
(講談社, 2015年)
「仮面ライダーディケイド」第10話『ファイズ学園の怪盗』
(脚本:會川昇, 監督:柴崎貴行, 2009年3月29日放送)
東京の過去の天気 2021年12月 - goo天気
(https://weather.goo.ne.jp/past/662/20211200/)
Wonka's Welcome Song-歌詞-Danny Elfman-KKBOX
(https://www.kkbox.com/jp/ja/song/GprHobhu-IKc0a2XZi)
警察法の警察階級と役職及び警察組織図-キャリア・ノンキャリア情報
(https://themepark.jp/police/class/)
色の名前と色見本・カラーコード|色彩図鑑(日本の色と世界の色一覧)
(https://www.i-iro.com/dic/)
変身装填銃 ver.20th DXディエンドライバー|仮面ライダーおもちゃウェブ|バンダイ公式サイト
(https://toy.bandai.co.jp/series/rider/item/detail/11348/)
今作のキャラクターたちの日常を描いたスピンオフがあったら、読みたいですか?
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読みたい。
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そうでもない。