仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第二十八話です。
シーズン1も今回を入れて残り3話となりました。
因みに今回、シーズン2の伏線を大量に入れました。
にも関わらずかなり手を抜きましたが、どうぞ宜しくお願いいたします。



【歌詞使用楽曲】
モーニング娘。 - 恋愛レボリューション21
(作詞:つんく)

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


EPISODE 10 超超超いい感じ(SUPER GOOD FEELING)
Question028 Do you love each other?


2021.12.24 16:33 東京都 新宿区 焼肉専門店 ぎゅう

 正直、クリスマス・イブに焼肉屋に来る人はそうそういないだろう。

 しかもまだ夕方だ。テーブル席とカウンター席を合わせても、合計で10人程しかいない。

 

 その中で、岩田とあまねは真ん中の方のカウンター席に座っていた。両者共に無言を貫いている。

 そこに靖子が大皿を持って来た。

 

「お待たせしましたー! 焼き鳥20セットでーす」

 

 灰色の大皿に乗せられているのは、大量の焼き鳥だ。白と茶色の2色が混在している皿の上の具が、店の照明の光を鮮やかに反射させている。

 

「有難うございまーす!」

「あれ? 今日は初めての方が一緒なんですね」

 

 目の前の厨房にで調理をしていた不二雄があまねに声をかける。

 

「ああ、昔お世話になった岩田さん」

 

 あまねの右側に座る岩田は軽く会釈をする。

 ごゆっくり、と一声かけて靖子は退散した。

 

 岩田は自身の方に寄っている白い肉を、右手と箸を使って器用に外していく。箸で肉を押さえ、串を回して先から取り外す。

 

「素朴な疑問なんだが、どうして君は、いつも私の隣にばかり座るんだ? テーブル席も大量に()いているのに」

「私の前に座ってくれるのはパパとママ(あの二人)だけが()い。それだけです」

「……そうか」

 

 あまねも自身の方に多く盛り付けられているタレのかかったものの中から、ねぎまを選んで同じように串から外していく。だが串を持っていた左手の指が汚れてしまったため、左手に置かれているおしぼりに指を擦り付ける。

 

「うちのパパ、今後はどうなるんですか?」

 

 仕方なく岩田の方に置かれているナンコツを取って頬張る。

 固い咀嚼音が鼓膜を刺激する中で、岩田は話し始めた。

 

「今回の潜入捜査は、常田海斗の居場所を突き止めることと、彼がフォルクローの研究に携わっているかの有無の確認が最終目的だった。

 その二つが達成された今、捜査は終了になる」

 

 咀嚼音は止み、ゴクリと喉が鳴った。

 

「終わるのは、捜査()()()()()()、ですよね?」

 

 若干の微笑み。

 沈黙は時に言葉よりも意味がある。その言葉の意味がようやく解るような気がした。

 

「明日には結果が分かる。……唯ちゃん、折角だし会ったらどうだ?」

「その名前で呼ぶのはやめてください」

 

 互いにジョッキに入った飲み物を流し込んでいく。

 それより後に間を埋めたのは、沈黙だけだった。

 

 

 

 するとテーブル席の接客をしていた日菜太が厨房に戻って来た。

 牛肉の塊を捌いていく不二雄のもとに来る。

 

「すみません。明日のバイト遅れます」

「え、あ、うん、そう。分かった」

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.12.24 16:33 東京都 新宿区 SOUP

「「ハァァァァッ……!」」

 

 2本の剣が火花を散らしてぶつかり合う。蛍光灯だけが灯る廊下の中で荒い呼吸音と、金属の音だけが聞こえる。

 二人とも黄金のエネルギーを溢れさせている剣を振り回して、己を曝け出しているのだ。それ以上に視覚と聴力を刺激するものは必要無い。

 

 一閃。

 リベードの剣がアクトの右肩を斬りつける。

 

 一閃。

 アクトの腹部を突く。

 

 一閃。

 互いの胸部に剣を当てるとそこから火花が散って、二人とも後ろの方へ倒れ込んだ。

 

 なんとかして立ち上がったアクトとリベードは、トランスフォンをドライバーから外して剣にかざした。

 

『『Are you ready?』』

 

 端末をドライバーに再び装填する。

 

『OKAY. "BARLCKXS" CONNECTION SLASH!』

『OKAY. "ORGA" CONNECTION SLASH!』

 

 さらに力が溜まっていく。収まりきらなかったエネルギーは金色に輝く雫となって地面に落ちていく。

 走り出して再び剣で争い合う。

 だが下へと振ったアクトの剣は、リベードが右から左に動かした刃によって弾かれてしまう。

 

 そして武器を失った彼の首元を目掛けて、リベードの剣が放たれた──。

 

 

 

 

 

 だが、首元に刺さることは無く、すんでのところで止まっている。

 握っている右手は震え、今にも剣が落ちそうだ。

 

「どうした? ……どうしてとどめを刺さない」

 

 開いた手から剣が落ちる。地面からカランと音が鳴って反響して何重にも聞こえる。

 

「分からない。……分からないよ。……どうしたら()いんだろうね。

 君のことはさっき嫌いになったよ。これまでに無いくらいに。

 けど……」

 

「けど……?」

「解ってるでしょ……」

 

 気が付いた時には、二人とも変身を解除していた。と言うよりも、解除されていた。

 紅潮した碧は不規則な啜り声を出して春樹の頬に左手を伸ばす。

 

「ごめん」

 

 静かに春樹が言う。

 

「……馬鹿」

 

 消え入るような声で碧が言った。

 

 倒れるように春樹の胸に顔を埋める碧。

 右手でその長い茶髪に触れようとした、その時だった。

 

「春樹さん」

 

 前の方から声がした。

 見るとそこに立っていたのは、自分以外のメンバーたちだ。

 

 その中で深月が言葉を紡いでいく。

 

「以前、僕に訊きましたよね」

 

 

 

 お前は、何のために戦うんだ?

 

 

 

 初めて深月に会った時に春樹がかけた言葉だ。

 本人もすっかりと忘れていた。

 まぁ、本人にとっては所謂形式的な質問に過ぎなかったと言うわけだ。

 

「ようやく分かりましたよ。一体何なのか。

 ……フォルクロー(彼ら)は、()()を奪われたわけじゃ無い。()()を奪われたんだ。自分を、人間としての価値を、尊厳を……!

 だから、僕は……これ以上、彼らが苦しむことの無いように、彼らを倒します……!」

 

「右に同じ」と薫が言う。

「以下同文です」手を挙げて圭吾も続く。

 

「と言うわけで」

 

 春樹の胸元から碧が離れる。

 自身の目元を青色のニットの袖で拭くと、いつものような笑顔を春樹に向けた。

 

「まぁ、本当に、本当に! 大目に見てあげるから、罰として、グラブジャムン*1の詰め合わせ買って来て」

「おい。お前、糖尿病になっても知らないぞ」

「良いじゃん。どうせ明日はクリスマスなんだから。ね?」

 

 いつものような笑顔を見せ、右腕を前に伸ばす碧の顔を見て、つられて笑みが溢れる春樹。

 

 地下の寒い道中が少しばかし暖かくなったところに、全員が集まる。

 

「じゃあ私は竹下通りのあそこのお店のクレープで」

 続けて薫が碧の手の甲の上に自身の左手を重ねる。

 

「僕は『パンダ・プリンセス』のブルーレイボックスをお願いします」

 圭吾も自身の右手を重ねる。

 

「じゃあ僕はみーたんの特典付きCDをお願いします。全然ペンライトが当たらないので」

 深月も私情を惜しげも無く晒した。

 

「あのなぁ、言っておくけど、こう言うのは」

 

「倫理規定違反だろ? であれば、自分で買ったけどいらなくなったからあげたと言えば、ギリギリで乗り切れる。

 因みに、私は遊園地のチケットで頼む」

 

 文句を言いそうになった春樹を上手く丸め包め、森田も乗っかってくる。

 

 全員が微笑みを春樹の方に向けると、春樹も仕方なさそうな素振りで手を重ねた。

 

「「「「「「うぇーい」」」」」」

 

 気怠そうでも芯のある六人の声が、暗い廊下の中に微かに響いた。

 

 

 

────────────

 

 

 

?????

 暗く広い部屋の中で、床に置かれたCDプレーヤーからけたたましい音楽が流れる。

 その前にいるフロワとピカロが音楽のノリに乗って踊っている。

 椅子の上に無造作に置かれているCDケースには、カラフルなドレスを着た女性と「恋愛レボリューション21」と言う文字があった。

 

 後ろから二人を見るアールと海斗。

 エコーのかかった低い声が流れている中で踊っている二人の姿は、彼らにとってはまさに異常なものだった。

 

「あれは?」

「それが、()から貰ったCDを聴いたら、ハマってしまったらしくって……」

 

 振り返る二人。

 そこにいたのは背を向けて巨大なモニターを凝視する男だった。

 襟の部分に毛皮の付いたオレンジ色のコートにジーパンを履いた彼が見つめるモニターに表示されている文字は──。

 

 

 

P - 2 - P

RIDER SYSTEM OF NEXT GENERATION

 

 

 

「「超超超いい感じ!」」

 

 ラスサビ前の間奏に合わせてフロワとピカロがコールを送る。

 すると

 

「超超超いい感じ」

 

 男も左の拳を挙げて静かに声を発する。

 

 熱狂する三人は、意図せずとも一つとなったのだ。

 

 超超超いい感じ

 超超超超いい感じ

 

 

 

────────────

 

 

 

2021.12.25 13:00 東京都 杉並区

 とある廃工場の中。

 春樹と碧、そして海斗が向かい合っていた。

 外の道路には深月たちの乗った遊撃車、そして銃口を建物の中に向けた機動隊員たちがいる。

 

「昨日ぶりだな。調子はどうだ?」

「絶好調、だな」

「うん。まぁ、ね」

 

 互いの顔を見合う春樹と碧。

 その様子を見て微笑む海斗。

 

成程(なるほど)な。言わば、()()()()()()()、と言うわけか」

 

 その時、碧が何故か目を見開いた。

 そして顔を若干歪ませて海斗を睨みつける。

 

「どうして貴方がそれを……」

「知っているに決まってるだろ。何せ、いや、そんなことはどうでもいい。私も一つ試したいことがあるんだ。

 君たちが使っている()()()ライダーシステムがどれほどまでに力を発揮出来るのか、協力してくれ」

 

 銃を取り出し、カードを装填する海斗。

 

「そんなつもり更々無いんだけどな……」

「……行こう、春樹」

「ああ」

 

 二人も端末を取り出して、ドライバーを腹部に出現させると、カードを端末に挿し込んだ。

 

「「「変身!」」」

 

 互いのデバイスを操作して姿を変えた三人。

 

 余裕綽々と言った佇まいのディエンドに向かい合うアクトとリベードは、剣を取り出して腰を低く落とす。

 仮面の下に隠れるその顔は、狂気に満ちていた。

 獲物を狙う狩人。

 鋭い眼光を持った彼らを形容する言葉は、それだけで十分かもしれない。

 

「「READY……GO!」」

 

 そして、二人の戦士は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: Do you love each other?

A: Yes, of course.

*1
インドのお菓子。同量の砂糖と水を煮詰めて作るシロップは尋常で無いほどに甘く、脳天を突き抜けるほどだと言う。




さぁて、シーズン2のお話しをしますと、キーワードは「モーニング娘。」です。
どう言うことなんでしょうね……?
(特に物語に深い関わりは無いのですが、結構面白く読んでいただけるかなと思います。)

【参考】
イラストでよくわかる きれいな食べ方
(彩図社, ミニマル + BLUCKBUSTER著, 2012年)
世界一甘い食べ物はインドにある?!|Sweeten the future
https://www.kanro.co.jp/sweeten/detail/id=853
恋愛レボリューション21 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%8B%E6%84%9B%E3%83%AC%E3%83%9C%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B321
モーニング娘。 恋愛レボリューション21 歌詞 - 歌ネット
https://www.uta-net.com/song/12754/

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