仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第45話です。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージED】
AI - 最後は必ず正義が勝つ

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


Question045 What is his bad ending?

2022.02.04 20:07 東京都 北区

「お兄ちゃん! これ本当にまずいよ!」

 

 碧がなんとか立ち上がって、仰向けで倒れたままの八雲を揺する。

 だが八雲は呆然としてしまっており、身動きをとることが出来ない。

 

 もうすでに建物は原型を留めておらず、壁だったものが無惨に残されているだけに過ぎない。

 あと少しすれば、自分たちも呑み込まれるに違いない。

 この危機から逃れようとするが、肝心の男は身動きをとることが出来ないのだ。

 

 そんなことをしているうちに、時はすでに遅くなっていた。

 

「え!?」

「!?」

 

 碧と八雲の体が徐々に浮き始めたのだ。

 地面に着いていた碧の両脚と八雲の背中はもう離れてしまっている。

 

 もう終わりだ。

 頭の中が真っ白になってしまった彼らのことを、エボルはニヤリと笑いながら見つめていた。

 

 

 

 だが

 

「はいストーーーップ」

 

 後ろから男性の癖の強い声が聞こえてきた。

 ふと後ろを向くと、そこに立っていたのはアールたち三人だった。

 

「何の用だ?」

「止めてください。その物騒なもの」

 

 何故そんなことを言うのか解らないエボル。

 ただ、アールたちの目線がいつもと違う雰囲気を纏っていることから、仕方なく黒い穴を消失させた。

 

 その影響で、穴に入りきらなかった物体や碧と八雲は地面に叩き落とされてしまう。

 

「あの()()の指示。その二人は絶対に殺さないで、だって。特に()()は」

 

 フロワは見つめながら言っていたが、何故か途中で倒れている碧の方を向き始めた。

 どうして自分の方を向き始めたのか分からず、碧は少しばかり首を傾げる。

 

「そう言うことだから、一旦今日は帰ろうよ。早く帰らないと()()()に叱られちゃうから」

 

 ピカロの言葉にエボルは思わず舌打ちをする。

 そしてアールたちが消えたのと同時に、エボルも自身の後ろに発生させた穴の中に、吸い込まれるようにして姿を消した。

 

 暫く動くことも声を出すことも出来ない碧と八雲。

 誰もいなくなった目の前をじっと見つめるだけだ。

 

 すると突如として、八雲がゆっくりと起き上がった。

 表情は暗く、ずっと下を向いている。

 そしてゆっくりと足を進めて行く。

 

「ねぇ、何処に行くの?」

 

 碧も痛みを生じながらも立ち上がって、右手で八雲のコートの右の袖を掴む。

 

「決まってるだろ。アイツを倒しに行く……」

「無茶だよ! そんな体じゃ!」

 

 袖だけでは無く、兄の左手で右手を掴む。なんとかして彼を止めたいようだ。

 だが彼は妹の両手を振るい落とした。

 

「それでもやらなくちゃいけないんだよ!」

 

 叫びが響いた。工場が跡形も無くなったとはいえ、もう夜になっていたのだ。声を響かせる環境としては十分だ。

 

「アイツは、俺の大切な仲間を奪った……。だから、アイツを倒さなきゃ……。そのためには、俺はどうなったっていい……」

 

 再び足を進め始めた八雲。

 虚な目で前を見据えて、一歩ずつ一歩ずつ。

 

 

 

 その時だった。

 

「ねぇ」

 

 碧が八雲の後ろ姿に話しかけた。

 だが当然の如く、八雲は足を止めない。

 

「本当にそう思ってるの?」

 

 足が、止まった。

 そして後ろを振り向く。

 

「え?」

「自分がどうなってもいいって、本当にそう思ってるの?」

「……」

 

「ふざけたこと言わないでよ!」

 

 今度は碧の怒号が響いた。

 

「そうなったとして、残された私はどうすれば良いの? もう……大事な人を失うのは()だよ……」

 

 碧の声は震え、目からは涙が次々と零れ落ちていく。二つの拳をギュッと握りしめて、頬を強張らせていた。

 

 その姿を見て、八雲はハッとした。

 自分の発した一言が、彼女をどこまで傷つけたのか、見れば一目瞭然であった。

 

「……すまない。あまりにも無神経だった」

「……ううん。解ってくれたなら良かった」

 

 八雲が碧の方に近づいて行く。そして互いに顔を見合った。

 

「協力させて。江戸川ミソラ退治」

「ああ。頼む」

 

 そして崩壊した夜の工場の中で、ようやく二人の顔に笑みが浮かんだ。

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.02.04 21:02 東京都 中野区 トキワヒルズA 602号室

 いつもなら軽く開ける筈の部屋の扉が、いつもよりも重く感じてしまう。

 

 なんとかして扉を開けた。

 部屋の電気を点けてリビングの様子が見えるようになった。

 

 食器棚の中にある4人分の食器。

 ハンガーに干されて部屋干しをされている、リョーマの使っていた白衣たち。

 食卓の上に乱雑に置かれている、ヨーコの読んでいた様々な資格の参考書。

 帽子立てに引っかかっている、シドの着けていた黒い帽子のスペア。

 

 どれももう、使い道を無くしてしまった。

 どれだけ祈ろうと、自分が使うことの無い物達は、もうどうすることも出来ないのだ。

 

 その事実に、徐々に目から何かが溢れてきた。頬を伝って冷えた床の上に落ちていく。

 元から握られていない手から、力が抜けていってしまう。

 

 すると、彼のコートの左ポケットの中に入っていたスマートフォンが音を鳴らした。

 冷め切った部屋とは不釣り合いな「サメのかぞく」*1のメロディが流れる。

 

 画面を見ると着信元は「非通知」である。

 心当たりは無かったが、念のために通話に出た。

 

「もしもし」

『よう。元気か?』

 

 声の主は低い男性のものだった。

 忘れられない、憎たらしいあの声。

 

「何のようだ?」

『お前を招待しようと思ってな』

「は?」

 

『明後日の17()時に日本体育館に来い。そこで決着をつけよう』

「おい。どう言うことだ」

 

『俺のゲームはそこで終わる筈だった。だから決着をつけるのはそこが良い。ただそれだけだ。待ってるぜ。チャ〜オ〜』

 

 

 

 電話を切ったミソラはステージの上に立っていた。

 ステージはただの骨組みだけで構成されている。組み立ての途中でライブの中止が決まったために、中途半端な状態になってしまっているのだ。

 

 ステージ上を右へ左へうろうろと歩きながら、自慢の低い声で鼻歌を歌う。

 いよいよ明後日、全てが終わる。自分のゲームがどうやって終わるのか決まるのだ。

 それが楽しみで楽しみで仕方がない。

 

 左手にボトルを取り出した。変身に使っている赤いボトルだ。

 鼻歌を高らかに歌いながら、ボトルを宙空に投げた。

 このままいけば、ボトルはすぐに自信の手元に真っ直ぐに戻る筈。

 

 

 

 だが、ボトルは彼女の手元には戻らず、床に落下をした。

 受け皿になる筈の左手が動かなかったのだ。

 

 何が起こったのか分からず、困惑するミソラ。

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

「もう、止めてよ……」

 

 ミソラの意思を無視して、声が出た。しかも低い声ではなく、江戸川美空本来の声でだ。

 それどころか体が鉛のように重く、上手く動かない。

 

 まさか──。

 

「お前……何で出てきたんだ……!?」

 

 元の男性の声で驚くミソラ。

 だがすぐに体の主導権は返されたようだ。

 今まで動かなかった分の反動で前の方に押し出されてしまう。

 

「まさか、こんなことがあり得るのか……」

 

 ミソラはその場にしゃがみ込んで、顔を上に向け大きく息を吐いた。

 見上げる先には何も無かった。

 目に映る以上に、空っぽに思えてしまった。

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.02.06 16:54 東京都 港区 日本体育館

 日本体育館は7万人近い観客を入れられるためにかなり大きい。

 それは当然なのだが、その大きさは実際に目の当たりにして改めて驚かされる。

 

 幾つかあるドームの出入り口では、機動隊員達が固唾を呑んで扉を見つめている。

 

 そして少し離れたところにある遊撃車の前では、碧たち六人が立っていた。

 どうやら作戦の最終確認をしているらしい。

 

「お二人のP-2-Pシステムを出来る限り強化しました。最大限能力を引き出せる筈です」

 

 圭吾が碧と八雲にそれぞれ黒い腕輪を差し出す。

 差し出された腕輪を受け取った二人は腕輪を着けると、カードをかざしてネクスチェンジャーを召喚した。

 

「でもどうして圭吾さんが改造したんですか? 開発者の八雲さんがすれば良いのに」

「確かに俺は開発者だけど、その分頭が固まって純粋なアイデアが浮かばなくなる。だからコイツに頼んだんだ」

 

 薫の質問に八雲は答えながら、左手に着けられた腕輪をまじまじと見つめる。

 

 すると碧の前に深月が出て来た。

 何だ何だと少しばかり首を傾げる碧。

 

「お願いします……。みーたんを、助けてください……!」

「勿論。そのつもりだから」

 

 頭を下げる深月の肩に手を置いて、笑みを浮かべながら碧は声をかけた。

 

「かなり手強い相手です。いつも以上に気合を入れていきましょう。皆さん、お願いします」

 

 森田が自身の右腕を差し出した。

 そして全員が各々、掌を重ねて気の抜けたような声で決意を固めた。

 

「「「「「「うぇーい」」」」」」

 

 

 

 ステージの上で可愛らしい声で鼻歌を歌うミソラ。

 少しばかり手を抜いた感じに踊りを踊りながら、自身の曲を口ずさんでいる。

 

 だが突然、ミソラは歌うのを止めた。

 理由はただ一つ。客が来たからだ。

 

「よう。やっと来たな」

 

 もう一つの声で来客を歓迎するミソラ。

 

「いや。時間ぴったりの筈だが」

 

 ステージから少し離れたところに立つ八雲が反論する。

 返答に鼻を鳴らしながら、ミソラは3メートル程の高さがあるステージから飛び降りた。それでも痛そうな素振りを見せないのは、やはり改造された者だからだろう。

 

「さて、ゲームを始めるか」

「ああ。けど、お前の想像した終わり方じゃないかもしれないな」

「は?」

 

「俺たちがお前を倒す、って終わり方だよ……!」

 

 するとミソラは少しばかり笑い声を上げて八雲たちの方を見る。

 

「そんな結果は想定内だ。このゲームは、俺が勝つか、お前らが勝つか。その二択だろ?」

 

 ミソラも腹部にドライバーを出現させた。

 

「碧、行くぞ」

「うん。お兄ちゃん」

 

 それぞれがアイテムを取り出して、デバイスのスロットへと装填していく。

 

『コブラ! ライダーシステム! レボリューション!』

『"NEX-SPY" LOADING』

『"REVE-ED NEX" LOADING』

 

 ミソラはレバーを回して、自身の周りに3つの銀色の輪と大量の黒い立方体を出現させる。

 一方の八雲と碧たちは腕輪に着けられたダイヤルを回した。

 

 三人はそれぞれがポーズをとり、同じ言葉を叫んだ。

 

『Are you ready?』

「「「変身!」」」

『『Let's go!』』

 

 各々が独特なシークエンスで姿を変えていく。

 そうして完成した三人の戦士は、互いの姿を見合って一気に戦闘態勢に入る。

 

 そして誰かが合図するわけでもなく、戦いの火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現時点で未確認物質解析班が把握している

新型未確認生命体の残り総数

通常68体

B群8体

不明1体

合計77体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: What is his bad ending?

A: To be alone and to be happy without his buddies.

*1
原題は「Baby Shark」。作詞者・作曲者共に不明。元々はドイツの伝承民謡と言われており、欧米でキャンプでの定番曲として伝えられてきた。




【参考】
東京の過去の天気 2022年2月 - goo天気
https://weather.goo.ne.jp/past/662/20220200/
サメのかぞく - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%b5%e3%83%a1%e3%81%ae%e3%81%8b%e3%81%9e%e3%81%8f
日の出入り@東京(東京都)令和4年(2022)年02月 - 国立天文台暦計算室
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/dni/2022/s1302.html

そう言えば、椎名夫妻とSOUPのメンバーの出会いを書いていなかったのですが、読んでみたいですか?

  • 本編で読みたい。
  • スピンオフ形式で読みたい。
  • どっちでも読んでみたい。
  • そんなに読みたくない。
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