ちょっとだけ辛い展開になります。
宜しくお願いします。
【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2
2022.02.06 17:05 東京都 港区 日本体育館
「お前、何で進化出来たんだよ……!?」
ネクスパイが壁面から脱出し、自力で立ち上がり始めながら問う。
これまでエボルトは他のフォルクローを吸収することで進化を続けてきた。だが今回は誰も吸収をすること無く進化をした。一体何故──。
「フェーズ4になった俺は同族だけじゃなく、相手の攻撃のエネルギーを吸収して進化することも可能になった。今の俺にとっては、どんな攻撃も養分になる」
「そんな……!」
つまり彼女に何をしたとしても、もう無意味ということだ。
先程のような凄まじい攻撃力だけではなく、その能力。彼らは絶望をする他無かった。
「じゃあ、お前らも、俺の養分になってもらおうか」
エボルトは突如としてその場から消えた。またこの瞬間移動か。すぐに態勢を整えて警戒をする。
だが警戒しても想定外のスピードで奴は接近して来るのだ。対策のしようが無い。
ようやく立ち上がったリベードの眼前に彼女が現れた。すぐに自身も攻撃を仕掛けようとするが、その前にエボルトが両手両足を使って、リベードの全身にとてつもないスピードで打撃を加えていく。
「ッ!」
そして右足で思いっきり蹴り飛ばした。
「グハァッ! ……ゴフッ……!」
ステージの下の壁に激突したリベード。尋常ではない痛みに仮面の中にある自身の口からは、多量の血が吹き出す。血を吐き切った彼女はぐったりとしてしまった。
「碧っ!」
碧のところに駆け寄ろうとしたネクスパイの左肩をエボルトは掴み、顔面に強烈な打撃を与える。
「ガッ!」
後退するネクスパイ。だが怯む隙を彼女が許してくれる筈も無く、エボルトは攻撃を繰り出していった。
リベードの時とは違い、ゆっくりと重い一撃を食らわしていく。
そのため攻撃を仕掛ける時間はあるものの、何も出来ないのだ。
「これで、終わりだ……!」
エボルトの右手が振り上げられる。
だが肝心のネクスパイは左膝をついた状態で動けなくなってしまい、遠くにいるリベードも上手く体が動かない。
そして、動けなくなったネクスパイに向かって、エボルトの右手が振り下ろされた──。
筈だった。
「……あ?」
「「……?」」
何故かエボルトの右手は振り上がられたまま止まってしまっている。
攻撃の対象であるネクスパイや静観するしか無いリベードが戸惑うことは勿論だが、どうやら彼女本人も驚いているらしい。
すると
「……して」
彼女の口から声が聞こえてきた。先程まで聞いていた低い声ではない。テレビからいつも流れていた声だ。
どうやら断片的にしか自身の耳に届いていないらしく、二人は耳を傾けた。
「……殺して」
想像もしていなかった言葉だった。
そんな言葉を江戸川
ということは、今話しているのは──。
「江戸川……
「もうこんなことしたくないよ……。誰かを傷つけて、悲しい顔にさせるのは。私はみんなに、笑顔でいて欲しいのに……。だから……」
だがそれ以上、彼女が言葉を紡ぐことは無かった。
次に聞こえてきたのは低い溜息だった。
「また出てきたか……。最悪だなっ!」
「グァァッ!」
エボルトが腹いせとしてネクスパイを左足で蹴り飛ばした。
質量の軽い風船人形のようにステージまで飛ばされ、その上で仰向けに倒れてしまう。
「どうするの? このままじゃ私たちに勝ち目は無いけどっ……」
ステージの下でしゃがみ込みながら、リベードは上にいるネクスパイに訊く。
「……お前がヤツのエボルトリガーを攻撃した時、アイツの動きが鈍った。その隙にけりを付ける」
確かにリベードがエボルトリガーを攻撃した時、10秒近く動きが止まった。それを利用すれば良い。
尚且つ、エボルトリガーを破壊すれば彼女の進化は止まると圭吾が言っていた。要はあれを破壊すれば一石二鳥というわけだ。
「私が破壊する」
「良いのか? そんな体で」
「大丈夫。それに、とどめはお兄ちゃんが刺したいでしょ?」
リベードは少しだけ力を振り絞ってなんとか立ち上がる。
同じようにステージの上でネクスパイも起き上がった。
「いや。あの
自身らを見る標的をじっと見つめるネクスパイ。
先程まで空っぽのように感じていた彼の心に今、何かが少しずつ埋まっていくような気がしてならなかった。
『DISPEL CRASHER』
リベードの右手にディスペルクラッシャー ソードモードが現れ、左手には攻撃の影響で落としてしまったインディペンデントショッカー スタンガンモードを握る。
それが、最後の作戦を開始する合図だった。
リベードは一旦剣を地面に刺し、腕輪のダイヤルを回して、下の方のスロットにトランスフォンを装填した。
『SUPER CONNECTION!』
再び剣を握り締めて、右手の小指球で押し込んだ。
『OKAY. "REVE-ED NEX" CONNECTION BREAK!』
ネクスチェンジャーから青色のエネルギーが大量に吹き出し、剣心とスタンガンの電極に吸収されていく。
そして目を青色に光らせると、目にも留まらぬスピードで移動を始めた。
エボルトの眼前に現れ彼女に向かって剣を振り下ろそうとするが、エボルトは左手で軽々と受け止めた。だが攻撃の威力が予想以上に強いのか、思わず両手で受け止めた。
「そんな満身創痍の状態のお前らに、今更何が出来る!?」
「そうね……。こういうことなら出来るっ!」
この時、エボルトは思い出した。
彼女が持っている武器は、右手の剣だけではないことを──。
「! まさか!」
「ハァァァァァッ!」
次の瞬間、リベードは左手に持っていたスタンガンを突き出した。狙いはただ一つ、エボルトリガーだ。
スタンガンの電極が当たった瞬間に蓄積されたエネルギーが流れ出し、許容量を超えてしまったエボルトリガーは粉々に砕け散ってしまった。
「グァァァァッ!」
後退するエボルト。肝心のアイテムを破壊されてしまったがために、その姿は紅の怪物から初期のフェーズ1へと戻ってしまう。
「今よ! お兄ちゃん!」
「オッケー!」
立ち上がったネクスパイはダイヤルを回して赤い面に合わせる。
『Are you ready?』
ダイヤルを押し込んだ。
『OKAY. "NEX-SPY" DISPEL BREAK!』
ダイヤルを押したのと同時に、エボルトの周りの上に4つの茶色いバケツが現れた。それが傾くと一気に中からオレンジ色の液体が溢れ落ち、彼女の腕や足元に集中してかかると、急速に固まり出した液体のせいで身動きが取れなくなってしまう。
さらに2つの複眼がオレンジ色に光ったのと同時に、ネクスパイの後ろに同じく茶色い放水機のようなものが幾つも出現した。
ネクスパイは前へと全速力で走り出した。縦に20メートル程のステージの端まで来たところでネクスパイは跳び上がり、右足を前に出した状態になると、後ろの放水機たちから大量のオレンジ色の液体が勢いよく噴射。それらがネクスパイに当たって、彼を猛スピードで押し出す形となった。
さらにネクスパイを送り出す役目を終えた液体たちは、なんと彼の右足に吸収されていって、キックをより強力にするためのエネルギーに再利用される。
「オラァァァァァッ!」
そして右足がエボルトの胸部に当たった。
当たっている足をなんとか外そうとするが、そもそも両腕が動かないために防御の仕様が無い。
ダメ押しではあるが再度右足に力を籠めてエネルギーを流し込もうとした瞬間、彼らのところで爆発が起き、会場中がその炎に包まれた。
目が覚めた時、碧は仰向けの状態だった。そういえばさっきの爆発で吹き飛ばされ、床に叩きつけられて変身を解除された。確かその筈だ。
ゆっくりと上体を起こす碧。
はっきりとしない視界が鮮明になった瞬間に見えたのは、ほんの少し離れた場所で
手に握られているのは3枚のカードだった。それぞれに違った種類の果実が描かれたメモリアルカードだ。
それが誰のカードなのか、すぐに分かった。
カードをギュッと握り締めてぶつぶつと呟く八雲。何を言っているのかは分からなかったが、逆に何も分からなくても良いとも思えた。
そんな八雲の表情は晴れやかなものになっており、彼の表情を見て碧も笑みを浮かべた。
だが二人がふと前を見た時、その笑みは消えることとなってしまう。
「お前……何でまだ生きてる……!?」
彼らの目の前にミソラが立っていたからだ。衣服は所々破れており、口元や右腕からは血が流れている。
だが流れているのは赤い血だけでは無い。緑色の液体も一緒にだ。
「ただお前らと同じ満身創痍の状態になっただけだ。ただ、おかげでもう進化出来なくなってしまった。最悪だな……」
これまでに無い程、顔を歪ませて二人を睨むミソラ。まだ戦闘が続くのかと二人は立ち上がってカードを取り出した。
けれどもその必要は無さそうだ。
突如としてエボルドライバーが破裂。砕け散った破片が音を立てて地面に落ちた。
「……は?」
もう、彼女は変身をすることが出来ない。
勝負はついた。これ以上は何をする必要は無いと、碧と八雲はカードを仕舞った。
その時。
「君にはがっかりだよ」
ステージの上から声がした。聞き覚えのある男女の声が混ざったものだ。
後ろの方を振り向くと、そこに立っていたのは鉄腕アトムのお面を被っていた黒ずくめの男──零号だった。気をつけの姿勢でじっと彼らの方を見つめている。
「何のようだ?」
「決まっているだろ。君を処分しに来た」
零号の発言に首を傾げるミソラ。
「君を他の者たちより自由にやらせていたのに、結局ゲームは成功出来なかったね。それが私は許せないんだ。だから、私は君を殺す」
シーンと静まり返る会場内。爆発によりスポットライトの殆どが破壊された影響で少しの灯りしか点いていない中で、会話だけがその場の雰囲気を掴むものだったがために、何故だが若干の恐怖が襲ってくる。
「君が選んだ死因は、横隔膜の麻痺による呼吸困難だったね。本来であれば溺死でもさせたいが、残念ながらここには水が無い。なので、私の自由にさせてもらおう」
すると何故か破壊された筈のスポットライトが点き始めた。地面に落っこちたものも光るため、不規則に並ぶ光の筋が地面に出来上がる。
そしてその怪人は、静かに判決を下した。
「火に呑まれて死ね」
次の瞬間、ミソラは火だるまとなった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
声にならない悲鳴を上げるミソラは、苦しみながら辺りを動き回る。だが炎は何処かに引火すること無く彼女だけが苦しみ
碧と八雲が何もすることが出来ずにただ炎を見つめていると、ミソラはバタリとその場にうつ伏せで倒れてしまった。
「後は、貴方たちにお任せします。ご自由にどうぞ」
それだけ言い残し、零号はステージの上から姿を消した。
だが彼らは振り向いて見送ることは無く、暗い部屋の中で鮮やかに上がり続ける炎をじっと眺めていた。
────────────
2022.02.06 17:14 東京都 品川区 平井ホールディングス本社 19階 社長室
社長室の壁はガラス張りになっている。そのため日が暮れた夜の街の影響で、部屋の明るさが際立っている。
その中で平井勝司はパソコンの画面を眺めていた。画面に表示されているのは火だるまになっている娘の様子だ。それを遠くの方から撮ったものらしい。
パソコンの画面を閉じて前を見ると、海斗が笑みを浮かべながら立っていた。目の前の男の娘が大変な状況だというのに、なんとも不謹慎な様子である。
「娘さん、残念でしたね。ご愁傷様です」
深く頭を下げる海斗。その言葉に悔やむ気持ちが入っていないことなど誰でも分かる。
頭を上げた彼の顔を見つめながら、平井は引き攣ったような笑みを浮かべた。
「だが、美空のおかげでフォルクローの技術の可能性を見せてもらえた。この技術があれば、亜美を完璧に甦らせることが出来るやもしれない……」
そんな彼の笑みを見て、海斗は笑顔を浮かべるのを止めた。
いきなり表情を変えた海斗に違和感を覚える平井。
「その件なんですが実は、お伝えしていなかったことがあるんです……」
平井勝司がオフィスのあるビルの屋上から飛び降りたのは、それから約20分後のことだった。
そう言えば、椎名夫妻とSOUPのメンバーの出会いを書いていなかったのですが、読んでみたいですか?
-
本編で読みたい。
-
スピンオフ形式で読みたい。
-
どっちでも読んでみたい。
-
そんなに読みたくない。