仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第54話です。
言い忘れていましたが、後7話でシーズン2は完結します。
感想等書いてくださりますと筆者の励みになります故、宜しくお願いします。



【イメージED】
AI - 最後は必ず正義が勝つ

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


Question054 How did he play?

2022.03.05 08:19 東京都 江東区 キバランド

「嘘だろ……!? どうして……」

 

 遊撃車の中でパソコンの画面を見つめていた深月が驚愕していた。今目の前にいる怪人は、嘗て自分のことを守ってくれた異形の戦士に酷似しているからだ。自分の中の英雄が、今は自分たちの敵として現れている。その事実が、彼の心を惑わせた。

 

 彼程ではないが、ここにいない碧と八雲を含めた他のメンバーも同じだった。文献の中でしか見たことの無かった戦士が、こんな形で現れたのだ。

 願ってもいない機会。いや、願ってはいけない機会であった。

 

 誰も声を出せない。

 

 現場では四号がアクトを見ていた。異形になってしまったその顔では判らないが、きっと笑っているのだろう。遊び相手が、目の前にいるのだから。

 

「グラァァァッ!」

 

 アクトがとてつもないスピードで四号に迫って来る。獲物を狙う獰猛な獣は鋭利な鰭を使って身体を切り裂こうとしているのだ。

 

 だがこの四号の実力は想像を超えていた。ただ単に体色が見たことの無い金色になっただけではなかった。

 目にも留まらぬ速さで繰り出されようとしていたアクトの右手を、四号は軽々と自身の左手で止めたのだ。想定外の出来事に驚くアクト。呆気を取られている隙に、四号は掴んだ右手を下に払って、そっと右手を彼の胸に当てた。

 

 その時

 

「ッ!?」

 

 アクトは突如として吹き飛ばされたのだ。直撃されたメリーゴーランドは屋根が倒れて馬は吹き飛び、煙を出しながら完全に崩壊をしてしまった。

 

「春樹っ!」

 

 煙が晴れた先を見ると、変身を解除された春樹が仰向けで倒れていた。馬が彼の背中の下敷きになっており、自らが動いて動かない彼を退かすことは出来ない。

 

 その場の全員が彼の恐ろしさを知った。ただ念を入れただけでもこの威力だ。もしもまともに攻撃を食らいでもしたら、ひとたまりも無いことは簡単に分かってしまう。

 

「とりあえず少しだけ本気を出してみたんだけど、つまらないなぁ。もっと僕を笑顔にしてよ」

 

 退屈そうに春樹の方を見る四号。

 次はピアーズか。それとも自分たちか……。

 

「「変身!」」

 

 どちらにしろ、コイツだけは倒さなければマズイ……!

 すぐさま変身した碧と八雲は変身をした。

 

 リベードが剣を取り出し四号に接近して行く一方、ネクスパイはその場で銃を取り出して弾丸を発射していく。剣よりも先に何発かの銃弾が当たり、左半身の数箇所から煙が出る。

 彼が左に蹌踉めいている隙に、リベードは横に剣を振って腹部を攻撃すると見事に命中した。それから何回も斬りつけた。四号は攻撃のラッシュに退いてなんとか回避をしようとするが、あまりの速さに避けることが出来ない。

 さらにはネクスパイも次々を銃弾を撃ち出して攻撃しているために、形勢としては彼女らの方が有利であった。

 

 そしてリベードが剣を両手に持って縦に振り、怯んだ四号の脳天に刃を当てようとした。

 

 だがリベードの剣を、四号は右手で掴んだ。まだそんな力が残っていたのか、固く掴まれた手は決して刃を離さず、リベードがどれだけの力を込めようともびくともしない。

 

「折角だし見せてあげるよ。()()()()を」

 

 すると四号は空いている左手を伸ばし、掌を奥にいるネクスパイの方へ向けた。まさか先程のような衝撃波が自分を襲うのではないか。そう思ったネクスパイは衝撃に耐えられるように身構える。

 

 しかし繰り出された攻撃は想定外のものであった。

 

「!? グアアアアアッ!」

「!? お兄ちゃんっ!」

 

 いきなりネクスパイの身体が火だるまと化してしまった。嘗て自身が葬った江戸川ミソラの最期のように。

 突然のことに驚愕する一同であるが、一番驚いているのは炎に包まれている当の本人だ。

 

 その場に転がって鎮火しようと試みる。だが炎は治らず、システムは苦肉の策として変身を解除させた。変身の解かれた八雲の服は完全に黒焦げており、顔や手にも炭が着いている。

 

「これが僕の能力さ。望んだだけで物を自由自在に燃やすことが出来る」

 

 それを聞いた時、碧と八雲はあることを思い出した。

 嘗て自身らの母親を殺害した怪物は、同じ手を使って母を殺したのだ。全身を焼き払い、誰なのかも判別出来ないようにした、忌まわしき行為。

 

「貴方……!」

「どうしたの? そんなにボーッとしていると、こうなるよ」

 

 剣を掴む四号の拳が徐々にメラメラと揺れる炎のようなエネルギーで包まれていく。金色や赤色、黒色の炎を見たリベードは何か不味いと思ったのか、すぐに剣から両手を離そうとするが、もう時すでに遅かった。

 

 四号はそれよりも先に刃から右手を離して、色鮮やかに彩られた拳を丁度挙がっているリベードの左腕に叩きつけた。

 

「ハァッ!」

「ッ!」

 

 後ろに吹き飛ばされて地面に転がったリベードは、変身を解除された状態で仰向けに倒れ込んだ。口の右端からは赤い液体が一本の筋を作って、ポタポタと地面に落ちては最後に小さな水たまりを作っている。

 

 なんとか立ち上がろうとした瞬間、左腕に激痛が走った。更には自由に操作出来る右腕と違って動かすことが出来ない。どうやら先程の攻撃で完全に折られたらしい。

 

 だがこれと同等に酷いことが起こった。彼女の左手首に着けられているネクスチェンジャーが破壊されていたのだ。火花を散らすその個体の姿は、誰がどう見てもまともに機能しないことが判る程だ。

 

「こんな感じかぁ……。まぁいいや。僕は一旦帰るね」

 

 すると四号はメリーゴーランドの方へと近づくと、気を失って倒れている春樹を左肩に抱えて碧の方まで歩いて行く。だが何も成す術が無い碧には何もすることは無く、彼女の横を通り過ぎた。

 続けてピアーズの二人とアールもその場を後にしようと足を進めた。

 

 残されたのは左腕の自由が利かない碧と、うつ伏せの状態で倒れた全身に焦げのある八雲のみとなった。

 八雲はただ俯くことしか出来ず、身体を動かすことが出来ない碧はただ茫然と青く澄んだ空を見ている。

 

 そんな残酷なまでに打ちのめされた彼のことを、先程春樹の下敷きとなっていた馬はじっと見ていた。何も言わず、ただ真っ直ぐと。

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.03.05 08:45 東京都 江東区 キバランド

 この遊園地の来場客の多くは子供連れかカップルだ。特に今日のような休日には大勢の客が押し寄せ、園内では子供の声やカップルの惚気で溢れかえっている。

 

 だが今日はいつも聞こえている筈の子供の声は聞こえないし、男女の番いはいない。代わりにいるのは数人の救急隊員とSOUPのメンバーたちだけだ。

 

 救急隊員たちによって八雲は顔や腕に大きな絆創膏が貼られ、碧は折れた左腕を三角巾を使って固定される。

 八雲は変身を早く解除したため軽い火傷で済んだが、碧は上腕を骨折していた。だが碧の再生能力だとボルトやロッキングプレートを使わずとも修復出来ると考え、今は三角巾と添え木を使うのみとなっている。

 

 そして黒い遊撃車の中で、その他のメンバーは向かい合って話をしていた。今は丁度森田が報告を始めようとしていた時である。

 

「あの四号(クウガ)は新型未確認生命体第五十八号と位置付けられた。『彼』と同じ姿をしたものが、我々に牙をむくわけがないと思ったのだろう」

 

 今から8年前。夏目(なつめ)実加(みか)が変身した通称「黒の二号」は自身の憎しみを原動力として暴走。未確認生命体第四十七号を倒すためだったとはいえ、東京タワーを中心に甚大な被害をもたらしたという出来事があったが、それは第四十五号や第四十六号を倒した功績があるために、大目に見られた。

 だが今回に限っては違う。あのリクが変身をしたクウガはフォルクローの側につき、尚且つ碧と八雲に攻撃をして完封負けをさせたのだ。そんな彼を許す手立てなど無い。

 

「えぇ。あれは、僕の知っている四号じゃありません。……ただの、バッタものです……!」

 

 俯きながら震えた声を出す深月。

 彼には許せないのだ。自分を救ってくれた英雄の皮を被った、あの化け物が。

 

「それにしても、どうやって春樹さんを助け出せば良いんでしょうね……。まるっきり見当がつきませんよ、戻し方」

「えぇ。うちの研究チームと僕と八雲さんで研究してますけど、まるで突破口が見つからないんです。一体どうすれば……」

 

 頭を抱える薫と圭吾。何度も春樹と碧の危機をその確かな実力で救ってきた二人だ。彼らがこれほどまでに頭を抱えるのは、それだけ不味い状態にあるということであるのだ。

 

 だがどれだけ頭を捻っても誰も突破口を見出せず、おまけに碧と八雲は満身創痍と言っても良い状態だ。

 まさにどん底。彼らは成す術も無く、ただ狼狽えていた。

 

 

 

 さて、肝心の碧は固定された左腕の痛みを堪えていた。先程よりも痛みは引いてきたが、それでも若干の痛みが襲ってくる。

 この状態では何もすることが無いため、金属製の長椅子に座ってぼうっとしていた。腕を折られたことはさて置いても、肝心のネクスチェンジャーを破壊されてしまった。いくら強化された身とはいえ、仮に生身で戦ったとしたらただの足手纏いになってしまう。痛み以上にそれが耐えられない。

 

 すると自身の右側に置いていたトランスフォンが着信音を鳴らした。誰からなのかと画面を見ると、知らない番号からであった。

 何もやることが無いため、一先ず電話に出てみることにする。

 

「もしもし?」

『椎名春樹さんの奥さん、椎名碧さんですか? いや、仮面ライダーリベード、と言った方が良いかしら』

 

 思わず目を見開く碧。何故電話越しの人物がそれを知っているのか、まるで分からないからだ。

 

「どうしてそれを……!?」

『そんなことはさておき、今、貴女の後ろにいるの』

 

 左肩を通って後ろを振り向くと、中にある電話ボックスの中に誰かいるのが見えた。

 上半身を隠すだけの丈しかない白色のムートンコートに黒いスカートを履いた女性、花奈だ。敢えて公衆電話を使わず、緑色のスマホケースに包まれたスマートフォンで通話を行っている。

 

「誰だか知らないですけど、何の用ですか?」

 

『ご主人を元に戻す方法、知りたくないですか?』

 

 想定外のことに立ち上がってしまった。その勢いで左腕が痛んだが、それは決して問題ではない。

 じっと見開いた目で電話ボックスの中の花奈を見つめる碧。彼女に向けて花奈はふと微笑みを向けて応えた。

 

 その時、何故か碧は昔本で読んだ都市伝説を思い出した。

 小さな女の子が電話をかけてきて徐々に近づいて来ていることを知らせ、最終的には自らの後ろにいることを通達する。そして振り向いた者は女の子によって殺されてしまう。

 

 何故そんなものを思い出したのかは自分にも分からない。きっと本能的なものだ。

 だがそれでも聞かなければならない。思い出したものが何かを暗示しているのだとしても。

 

「あるの……? そんな方法が」

『えぇ。ただ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それやったら貴女、死ぬかもね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現時点で未確認物質解析班が把握している

新型未確認生命体の残り総数

通常51体

B群8体

不明1体

合計60体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: How did he play?

A: He plays burning various things.




【参考】
腕の骨折、骨癒合に時間がかかります。大人の場合は手術が必要です。
https://www.katahijite.com/forearm
骨折の応急処置が必要なときに。|知る・楽しむ|三井住友海上
https://www.ms-ins.com/special/bousai/chiebukuro/chiebukuro_27/
コートの種類を徹底解説!シーン別レディースコートの選び方 - &mall
https://mitsui-shopping-park.com/ec/feature/ladiescoat

そう言えば、椎名夫妻とSOUPのメンバーの出会いを書いていなかったのですが、読んでみたいですか?

  • 本編で読みたい。
  • スピンオフ形式で読みたい。
  • どっちでも読んでみたい。
  • そんなに読みたくない。
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