残り6話でシーズン2も終わりになる中、3話連続で碧推しの皆さんが発狂するような回をお届けいたします。覚悟してください(笑)
感想等いただけると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いします。
【イメージOP】
Roselia - 閃光
【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2
Question055 What did she decide to?
2022.03.06 11:31 東京都 千代田区 上田ビル 2階 メイドカフェ CATS
秋葉原にあるビルの中にあるカフェは、一昔前に大人気であったメイドカフェだ。猫耳のカチューシャを着けたメイド服の女性が配膳やサービスをしてくれる。オタクたちにとっての憩いの場だ。全盛期に比べて人気は落ちたものの、今でも多くの人たちが癒しを求めてやって来る。
特に今日は休日であるため、多くの客が押し寄せているのだ。
だが今日の店内で主役となっているのは、可愛らしいメイドたちではない。それよりも顔の整っている奥の席にいる二人の女性、碧と花奈だ。
花奈が奥のソファに座って、碧は手前の椅子に腰掛けている。本来、招いた側である花奈が上座に座るというのは失礼な行為ではあるが、骨折した碧が通りやすいようにという配慮のためだ。決して彼女に社会常識が無いというわけではない。
端っこに座っている彼女たちが客たちの目線を集めている事実は、メイドたちにとって嫌なものであった。そのためオタクたちの温かい目線に対し、メイドたちの目線は非常に冷たいものであった。
だがそんなことを全く気にする様子は無く、碧と花奈は話をしている。
「それで、貴女が言った、『春樹を元に戻す方法』って……?」
「これ」
花奈はポケットから1枚のカードを取り出して、碧の前に置いた。
カードはメモリアルカードと同じ大きさであるが、文字も書いていなければ絵も描かれていない。無色透明なカードだ。
「このカードを使えば、彼の体内に入った毒物を浄化出来る」
春樹が現在暴走しているのは、クラックボックスから注入される毒物の影響だ。おまけにそれは一度使ったら無くなるわけではなく、ずっと体内に蓄積されていくものであるという、かなり厄介な代物である。
「へぇ……。でもどうして、『私が死ぬ』だなんて言ったの?」
ただ浄化するだけなのであればそんなことを言う必要は無い。というより、春樹の身体から毒物を取り除くだけで何故碧の身に危険が生じると言うのだろうか。
「それは……」
すると、
「お待たせしました〜!」
碧の後ろからメイドがお盆を両手で持って、二人の間にある机の横に来た。二人を妬む気持ちを何処かに仕舞い、わざわざ笑顔を作って接客している。
「ご注文のスペシャルオムライスで〜す!」
花奈の前に出されたのは、白い楕円形の器に入ったオムライスだ。黄色いトロトロとした卵の膜の上に、大きく赤いケチャップでハートの文字が描かれている。
「最後の仕上げをさせていただきますね〜」
メイドは自身の胸の前で両手を使ってハートを作った。そして左、右の順で両手を移動させた後に、ハートをオムライスの方へ向けた。
「萌え萌えキュン」
それだけやると、メイドは一礼をして去って行った。こういう店だということは分かっていたが、慣れないサービスに驚いている碧はじっと去って行くメイドの後ろ姿をじっと見ている。
「……理由は、今のと同じやり方だから」
表情をそのままに再び前を向いた碧。目線の先では花奈がスプーンを取って左手に持っている。優雅に目の前の黄色い食べ物に食らいつこうとしている彼女の発言の真意が理解出来ないため、碧は花奈の次の発言に耳を傾けた。
「このカードは彼の体内で直接解毒をするんじゃなくて、貴女が毒を取り込んで体内で浄化するの。つまり浄化するための装置に一時的になるってこと」
今、メイドがやったのは、自分のハートを相手に差し出すオムライスに注入する、という行為だ。簡単に言えばそれと同じで、まずは碧の身体を解毒するためのものに変換させ、その中に春樹の中にある毒物を流し込んで中和するということだ。
黄色い卵にスプーンを刺し、掬って口の中に運ぶ。卵のまろやかな味と中に入っていたケチャップライスの旨味と程よい酸味を堪能すると、それを呑み込んで話を続けた。
「浄化出来るのは貴女が椎名春樹に触れている間だけ。ただ、目に映るもの全てを破壊するマシンに成り下がった彼を、肉体的にも精神的にも受け止める余裕が無ければ、貴女は死ぬかもね」
どんどんと掻き込んでいく。食べ方こそ上品なものであるが、一口の量が量なので瞬く間に少なくなってもう後一口分になってしまった。
その前で俯く碧の姿を見て、花奈はふと笑みを浮かべた。
「どうするの? 愛する人のために、自分の身を犠牲に出来る?」
最後の一口分を掬った。表情を崩さずにゆっくりと目の高さまでスプーンを上げてまじまじと見つめる。
すると碧はスプーンを持った花奈の左手の手首を右手で掴んだ。突然のことに驚く花奈。見えた碧の表情は何故かにこやかなである。いや、ドヤ顔と言った方が合っているのだろうか。
「大丈夫。私、ドMだから」
余裕そうに笑顔を見せる碧。
だが花奈は、自身の左手を掴む彼女の右腕が、微かに震えていることを決して見逃さなかった。
────────────
2022.03.05 14:20 東京都 中央区
東京都と千葉県を繋ぐ都道50号線の途中にある橋の上は完全に封鎖されていた。バリケードが張られた橋の上では機動隊員たちが銃口を前に向け、その前でまだ完全には癒えていない八雲が立っている。
彼らの前に立ちはだかるのはリクだ。最早八雲一人の手には負えないような戦士である。
どうしたものかと八雲が考えていると、
「その状態で大丈夫なの?」
自身の左側に突然クロトが現れた。顔に浮かんでいる笑顔に、若干の苛つきを覚えたがそれは置いておくことにした。
「大丈夫だ。ていうか、こっち側についてて良いのか?」
「うん。だってあのリクとか言うの、僕とキャラ被りしてるんだもん」
なんともくだらない理由だ。だがそれでも自分の味方が一人増えるというのは有り難い話である。
「アイツの弱点教えてあげようか?」
「何だ?」
「ベルトだよ、ベルト。あれを破壊されると彼の力は半分くらいになる。まぁ、それでも勝てるかどうかは分からないけどね」
確か自身の母を殺した未確認生命体第0号は、四号に腹部のベルトを破壊されたことによる腹部神経断裂によって死んだ。恐らくはそれと同じ原理だろう。もしも彼がその四号と全く同じ身体の作りをしているのであれば、同じようなことをするのは可能な筈だ。
一先ず八雲は左耳に着けられたワイヤレスイヤホンのマイクで遊撃車の中に通達をする。
「ベルトが弱点だとよ、あのクウガもどき」
『分かりました。SATにはベルトを銃弾で破壊するように援護させます』
深月から合図があったらしく、後ろの機動隊員たちの銃口はリクの方へと集中され始めた。
「じゃあ、ゲームを始めようか」
リクの合図で各々がその
「「「変身!」」」
変身を遂げた三人。そしてネクスパイとゲンムは自身の標的に向かって走って行った。
次の瞬間、クウガは二人の方へと左の掌を向けた。その効果で二人は走る火だるまとなってしまう。
けれども彼らはそれを意に介さず前に向かう。するとどうだろう。走ることによって身体に纏わりつく炎は徐々に鎮火されていく。
そしてネクスパイは右の、ゲンムは左の拳を食らわせようとした。その攻撃は軽々と受け止められてしまうが、二人は何故か余裕そうであった。
「かかったね」
するとクウガの後ろから赤色と金色が混ざった霧が滲み出ては宙空で消えていく。それは徐々に彼の力が弱体化していく証拠でもあった。
それだけではない。待機していた機動隊員たちが一気に引き金を引いて、弾丸を発射させた。狙いはただ一つ。怪人の腹部に着けられたベルトである。だがやはり作りが頑丈なのだろう。たかが弾丸
なので、彼らは次のチャンスを狙うことにした。
「「オリャァァッ!」」
受け止められた拳を前に再び押した。徐々に力が抜けていっているクウガは後ろによろめいてしまう。
その一瞬を、二人は見逃さなかった。
ゲンムはガシャコンバグヴァイザー ビームガンモードを右手に装着し、標的の胸部にエネルギー弾を食らわせる。未だに止まない機動隊員たちの銃弾と共に発射されているがために、クウガはじわじわとダメージを受けていってしまう。
その間、ネクスパイはインディペンデントショッカー スタンガンモードを取り出し、そこに腕輪に装填されているカードを挿し込んだ。
『Are you ready?』
柄に付いたボタンを押し込む。
『OKAY. "NEX-SPY" DISPEL HIT!』
「テリャァァァァァッ!」
そしてネクスパイはエネルギーが溜め込まれた2つの電極を、クウガのベルトの中心に叩きつけた。
「グァァァッ!」
その攻撃が、突破口となった。
見ると彼のベルトに真ん中から金色のひびが入っているのだ。割れかけたベルトを両手で押さえて悶え苦しむクウガ。
これで勝率が格段と上がった。
「さて、一気に片付けるぞ」
「オッケー!」
二人は武器を再度身構え、弱った獲物の方へと走り出して行った。
その場の全員が気付いていないようであったが、橋の真ん中の方に一人の男が立っていた。黒色のコートを着た男性、春樹である。虚な表情でトランスフォンを右手に、クラックボックスを左手に持っている。
恐らくは加勢するつもりなのだろう。ネクスパイとゲンムと戦うクウガの後ろ姿を見ながら、クラックボックスにトランスフォンをかざした。
『CONNECTING US』
ドライバーが出現し、右側にクラックボックスが移動して付けられる。そしてトランスフォンの中にカードを1枚挿し込もうとした──。
その時であった。
「さっきぶりだね、春樹」
後ろから声が聞こえた。振り向くと少し離れたところで碧が立っている。
左腕を三角巾で固定した痛々しい姿をしたとしても、彼は何の反応を見せることも無い。
すると碧は右手にトランスフォンを、左手に先程花奈から差し出された透明なカードを取り出した。
その二つを見つめながら、碧は数時間前のことを思い出していた。
────────────
「大丈夫。私、ドMだから」
震えた手で花奈の手首を掴む碧。
「……そう」
ゆっくりと碧が右手を離すと、花奈は最後の一口を口の中に入れた。
咀嚼して味を堪能する花奈に変わって、碧が口を開いた。
「でも、今の私はカードを使う術は無いけど……」
ネクスチェンジャーは先程破壊された。トランスフォンもとうの昔にジオウのカードの力で使用出来ないようになってしまっている。使う使わないの前の段階にも立てていないのだ。
「じゃあ、貴女のトランスフォン貸して」
「? え?」
「どういう理由でかは知らないけど、私と八雲だったら簡単にロックぐらい解除出来るから。彼がそういうことをしなかったのも、どうせクラックボックスによって洗脳されることを防ぐためでしょうね」
この得体の知れない女の言うことを信じて良いのかは分からないが、「溺れる者は藁をも掴む」というのは正に今のこの状況を言うのだろう。碧は素直にトランスフォンを取り出して、花奈に差し出した。
受け取った花奈は両肘を机について、左手で持った端末の画面を親指で操作し始める。普通にスマートフォンをいじるような所作に不安を隠すことが出来ないが、一先ずこの場を埋めるために会話を始めた。
「ねぇ、お兄ちゃんとどういう関係なの?」
質問を投げかけると透明なコップの中に入った水を飲み始める。
「えぇっと……それは……」
何故か口籠もってしまった花奈。頬がほんのりと赤くしながら目線を左下へと逸らしてしまう。
あからさまなその様子を見た碧の脳裏で一つの言葉が浮かんだ。
元カノ。
突然咽せてしまった。音を立てながらコップを置いてゲホゲホと咳が出てしまう口を右手で押さえる碧。あくまでも想像に過ぎないが、まさかこの謎の女が自分の兄とそういう関係だとは思ってもいなかったのだ。
「ねぇっ、まさか、ねぇっ」
「違うからっ! ……まぁ、貴女にそんな性癖があるだなんていうのは初耳だったけれど」
どうして勢いであんなことを言ってしまったんだろうか。今になって後悔が襲い掛かり、顔が赤く変色してしまう。
恥ずかしさのあまり右手で顔を押さえていたら、花奈が手を止めて端末を出した。
「どうぞ。これでもう大丈夫」
顔を押さえていた右手で端末を受け取る碧。
「……信じて良いのよね?」
「勿論。
まだ疑心暗鬼の碧に微笑みを向ける花奈。純粋さと怪しさの両方を兼ね備えたその笑顔は、碧の判断力を鈍らせるには充分なものであった。
すると花奈は机の上に置かれている伝票を左手に持って立ち上がった。
「じゃあ。ここは私が支払っておくから。またね」
そのまま花奈は入り口の前にあるレジカウンターまで歩き会計を始めた。
彼女の後ろ姿を見ながら碧は大きく息を吸い、再び前を向いてトランスフォンを見ながら大きく息を吐いた。
────────────
トランスフォンとカードを身構えて春樹の方を見る碧。呼吸は整い表情は崩れていないが、脚や腕が少しばから震えている。
──必ず二人で帰ってきて。
何故か頭の中であまねの言葉が流れてきてしまった。あの寂しそうな顔と服を掴んだ時の強さ。その全てが忘れられなかった。
これ以上娘を悲しませられない。それが母親としての義務だ。
けど──。
「ごめんね。私、彼のこと愛しているから」
両腕と両脚の震えが止まった。にこやかな笑みを浮かべて春樹の方を見つめる。慈愛で満ちた目をする彼女は、迷わずトランスフォンの中へカードを装填した。
『"*****" LOADING』
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
カードを装填した瞬間、碧の全身に激痛が走った。今までで経験もしたことの無いような痛みだ。全身をもがれるようにも、激しく殴られているようにも感じ取れてしまう。
痛みに悶える碧はその場にしゃがみ込んでしまう。立てるような状況ではないのだ。
すると彼女の体が青く発光するのと同時に不思議なことが起こった。
戦闘を止めてネクスパイたち三人とその他の全員が見守る中、突如として折れて動かない筈の左腕が突如として自由の効くようになり、さらには首元までしか無かった髪の毛が腰まで伸び始めるのだ。
そして激しい痛みの次に襲ってきたのは、幸福感だった。何故だかは分からない。けれどもあり得ない程の幸せに身を包まれながら、彼女はゆっくりと立ち上がったのだ。
その瞬間、彼女の身体は異形のものへと変貌を始めた。
棘の生えた青い全身まるで剣山のようであり、目はリベードと同じ菱形だ。さらに腹部と胸部だけはステンドグラスに似た虹色の模様がランダムに着けられている。
言うならば、リベードの怪人態だ。剣山のように全身は鋭利で冷たささえ覚えてしまうが、それ以上の温かみを感じる。
美しいその姿を見せるようにリベードは両腕を広げて、ゆっくりと春樹の方へ足を進めた。
「さぁて春樹。……愛し合おう、ね?」
そう言えば、椎名夫妻とSOUPのメンバーの出会いを書いていなかったのですが、読んでみたいですか?
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