仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第60話です。
今回でシーズン2が終わります。シーズン3からも宜しくお願いします。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、そちらも宜しくお願いします。



【イメージED】
AI - 最後は必ず正義が勝つ

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


Question060 Why did they cuddle each other?

2022.03.14 16:22 東京都 千代田区 警視庁 9階 会議室2

「以上が、僕の知っている全部です」

 

 深月が告げた後、若干の沈黙が流れた。

 彼の口から発せられたものを頭の中で整理しようと、一条は天を仰ぐ。

 

「つまり、椎名春樹に椎名碧、両名の反逆行為は暴走したことによるものであり、その対策手段はすでに確立されている、ということですか?」

「はい。そういうことです」

 

 もうこれで自分に出来ることは終わった。自分は春樹と碧のために十分人事を尽くした。後は天命を待つのみである。それが自分たちの望む結果となるかは分からないが──。

 

「……あの二人は、どうなるんでしょうか……?」

「あのお二人なら留置所に習慣していましたが、他の班員の皆さんの供述から無罪放免ということになり、今日付けで釈放になりました。ただ起こした事が事なので、明日から22日まで1週間の自宅謹慎です。後、3ヶ月の減俸も」

 

 最悪の事態は避けられたようだ。ホッと息を一つ吐いて胸を撫で下ろす深月。

 

「それから、他の皆さんも1ヶ月の減俸です。一応、彼らの行動に手を貸したことに変わりは無いので、そこはご了承ください」

 

 最低限の覚悟はしていたが、やはりこうなってしまったかと、溜息を一つして顔を下に向けた。だがそこまで憂鬱な気分にはなっていない。それ以上に自分の仲間が1人として欠けなかったことが嬉しかったのだ。

 再び前を向いた顔に付いている目には光が入っている。彼の目を見た一条は微かに笑みを浮かべて、「では」と一言言い残して席を立ちドアの方に向かった。

 だがドアノブに手をかけたところで、一条は動きを止めた。

 

「良かったですね」

「……え?」

「……彼らとまた、一緒にいられることになって」

 

 顔を深月の方に見せること無く、一条はドアを開いて部屋を出て行った。

 音を立ててドアは閉まる。廊下から入った光は扉が閉じられたために入ってこなくなり、外から差し込む日光だけが頼りになる。だがその光は鬱陶しい程に眩しく、深月は思わず目を瞑った。

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.03.14 21:31 東京都 中野区 トキワヒルズA 601号室

 さて、肝心の彼らはというと、つい先日まで散々な出来事に巻き込まれていたことを忘れるかのように食事を楽しんだ。デリバリーサービスで頼んだスパゲッティやチーズにケーキ、さらに春樹と碧は家のワインセラーに置いてあったワインを開けて嗜む程度に堪能した。

 

 細やかな祝宴も終わり、片付けを済ませた三人は各々自由に過ごしていた。あまねは緑色のソファに寝転がってスマートフォンをいじり、春樹と碧は食卓に座って水を飲んでいた。

 

「はぁ。どれも美味しかった〜っ」

「ね。パパとママの料理が一番だけど、たまには出前も良いね〜」

 

 満足そうに再度コップに口をつけて水を飲み干す碧。飲んだ水のお陰で、徐々に酔いが覚めていく。これでどうやら悪酔いする恐れは無くなった。

 

 すると、

 

「なぁ、碧」

「何?」

「ちょっと、話があるんだけどさ、……来てもらっても良いか?」

「? ……うん」

 

 碧を連れて行く春樹は碧を連れてリビングを出ると、玄関のすぐ近く、廊下の左側にある扉を開けて中に入った。

 そこは夫婦の寝室であった。部屋の大半をダブルサイズのベッドが埋め尽くしており、壁にはクローゼットに繋がる黒色の両開きタイプの扉が付けられている。そしてベッドの右側には木製の和だんすが、左側には丈の長い間接照明が置かれていた。

 

 春樹は碧をベッドの上に座らせる。その前で春樹は立ち尽くすのみである。

 碧が見上げた春樹の表情は、まるで何か覚悟を決めたかのように見えて、碧は胸をざわつかせた。

 

「ずっと後悔してたんだ。勝手に人のプライベートに土足で上がり込んで、君が人並みの幸せを掴もうとする前に選択肢ごと奪ってしまった……。本当に申し訳ない」

 

 深々と頭を下げる春樹。全く予想外のことであったためか、碧はキョトンとしてしまう。春樹は頭を上げて再び言葉を紡ぎ始めた。

 

「謝っても許されないことだっていうのは分かっている。もしかしたら君が、俺のことを恨んでいるかもしれないから……。だから──」

 

 言葉を言い終わる前に、碧は春樹の両腕を引っ張って自分の方に倒した。結果として春樹の顔が碧の豊かな2つの丘の谷間に挟まれる形となる。そして碧はゆっくりと春樹を両腕で抱きしめた。

 

「……恨んでなんかいないよ」

 

 春樹の耳元で溶けてしまうような声がした。

 

「私ね、君に出逢えて本当に幸せなんだよ。大好きな人と一緒になることが出来て、あまねちゃんっていう素敵な娘も出来て、これ以上に幸運なことは無いなって毎日のように思ってるんだ」

 

 部屋の外では車のクラクションの音が短く鳴る。交通量の少ない場所に位置するこの家にとっては珍しいことであるが、今の二人はそんなことなど意に介さない。

 

 碧は春樹を優しく抱きしめながら、笑みを崩すことなく言った。

 

「だからね、そんなに気負わなくて良いんだよ。むしろ君ばかりに背負いこませちゃってごめんね。辛かったよね。……だから今だけで良いから、私の胸で泣いて、ね」

 

 その時、空いていた春樹の両腕が倒れ込んだ碧の背中に回された。同時に胸元ではうっすらと何か呟きが聞こえたようであるが、彼女の体が壁となって上手く聞こえない。

 そして聞こえてきたのは、今まで聞いたことの無い、彼の泣き声であった。今まで自分が溜め込んできたものを呻きとして吐き出していく。

 自身の胸を濡らしながら奥底に溜まっていたものを出していく愛する人を見つめながら、碧はただ優しく包み込んでいた。柔らかな肌を全て使って、彼を癒そうと懸命になっていたのだ。

 

 暫くして声は聞こえなくなった。

 

「……有り難う」

「……どういたしまして」

 

 顔を上げた春樹。充血した目を起点にし、水が乾いて出来た特徴的な線が顔の上で僅かに伸びている。

 

「スッキリした?」

「……ああ」

 

 これ以上邪魔にならないようにと、春樹は碧から体を離す。二人同時に起き上がって共に正座をする形になった。

 

「「……」」

 

 一切言葉を発しないまま、互いの顔を見合う。何故か呼吸を忘れてしまうほどに見入ってしまった。これだけ愛する人の顔は美しいのかと。これだけ愛する人が目の前にいてくれているのだと。

 

 いつの間にか両手を相手の肩に伸ばして優しく掴む。そしてそっと目を閉じ、ゆっくりと互いに引き寄せ合って、もっと深くまで触れ合おうとした──。

 

 

 

 その時、バン! と廊下から乾いたがした。

 ある意味で正気に戻った二人が聞こえた方を見ると、あまねが廊下から彼らの様子をじっと見ていたのだ。地面には何冊もの本が乱雑に配置されている。

 

「あまねちゃん!?」「あまね!?」

「え、あ、ご、ごめん! すぐ部屋戻るからっ!」

 

 気まずくなってしまう三人。素早く床に散らばった本を掻き集めると、あまねは両腕に全てを抱き抱えて退散しようとした。

 が、何かを思い出したようにその場で立ち止まってしまう。

 

「パパとママってさ、もう子供作れないんだっけ?」

「え、そうだけど……」

 

 人間を捨てたが故に、子孫を作る能力を失ったことは、ずっと前にあまねに報告した筈だ。何を今更訊いているのかと疑問に思う二人。

 

「……もしかしたら今日、弟か妹が出来るかもしれなかったのにね……」

 

 一瞬、言葉の意味が解らず固まってしまう。だが「じゃ」と言ってそそくさと立ち去って行ったあまねの顔が赤くなっていたのを見て、全てを察した両親は同じように顔を赤くしてしまった。

 もはや夢物語の一つとなってしまったことへの、彼女の期待を一心に背負ってしまった彼らは下を向いて何も言えなくなってしまう。

 

「えぇっと、その──」

「あのさ」

 

 春樹がお茶を濁そうとした矢先、碧が先に口火を切ったため、春樹は彼女の方を見る。

 

「……いつか、私たちが元に戻れる時が来たら、その時は……あまねちゃんに作ってあげようね」

 

 振り絞って言葉を出した碧が、赤く染まった顔を春樹の方に向けた。

 それがあまりにも愛おしく感じられ、春樹は思わず碧を優しく押し倒した。

 彼の起こした行動が一体何を意味しているのか承知をした碧は、徐々に口角を上げていく。

 

「……こないだみたいに乱暴にはしないから」

「良いよ、君だったら激しくされても。そういうの大好きだし」

「いや、絶対優しくするから……」

 

 若干流れる沈黙。

 

「碧」

「ん?」

 

 

 

 

 

「愛してる」

「……私も」

 

 そして彼らは目を瞑って唇を合わせた。程よく熱せられた唇は柔らかさも相まって、彼らの気持ちを静かに昂らせていく。

 何度か唇を重ね合わせた二人は一度立ち上がり、手を繋いだ状態で足を進め、寝室の電気のスイッチの前で立ち止まる。

 

 もう何度目であろうか。ふと自分の愛する人の顔を見る。何故だか可笑しく思えてしまい、心の底から笑みが溢れた。そして再度前を向くと、繋ぎ合った手を使って、電源を落としたのだ。

 

 それ以降、白く透き通った二人の肌を照らすのは、静かに浮かんでいる月が放つ光だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SEASON 2 is finished.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?????

「我々の想定よりも遥に、彼らは強くなっています。現にフロワちゃんやピカロくんが変身したとしても、今のままでは勝てないでしょう」

「……だろうね」

 

 暗い部屋の中でアールが報告をする。彼の右にいる人物は、黒装束にお面を着けた、零号(彼らのボス)だ。

 二人の目線の先にあるのは、戦い合っているピアーズの姿だ。どうやら春樹や碧、八雲に対抗出来るよう、鍛錬に励んでいるらしい。手足や武器が激しくぶつかり合い、火花を散らせながら戦い合っているのだ。

 

 彼らの様子を見ながら二人は深刻な表情を浮かべて会話に花を咲かせていた。

 

「そのためにも、()()()()()()()()を、石川唯、いえ、筒井あまねから取り返さなくてはなりません」

「分かっているよ。けどね、どれだけ私が彼女と親密な関係になろうとも、立場上何も教えてくれないだろうね」

 

 淡白に返す零号。その様子からは一切の焦りを感じることは出来ないが、仮面の下は一体どうなのだろうか。それは誰にも分からない。

 

「なので、すぐさま対策を講じる必要があります」

「……一つ、お願いがあるんだけど──」

 

 

 

 

 

 その様子を、花奈は大きな柱の裏から見ていた。何を話し込んでいるかは距離が空いているために分からないが、大体の察しがつく。

 後ろを向いた彼女はゆっくりと前に進み出し、そして視界の中に入ってきた人型の模型の頭部を優しく撫でて呟いた。

 

 

 

「そろそろ潮時かもね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現時点で未確認物質解析班が把握している

新型未確認生命体の残り総数

通常51体

B群7体

不明1体

合計59体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: Why did they cuddle each other?

A: Because they wanted to confirm their love.




【参考】
東京の過去の天気 2022年3月 - goo天気
https://weather.goo.ne.jp/past/662/20220300/

シーズン2までに登場した女性たちで、皆さんは誰が一番好きですか?

  • 椎名碧
  • 筒井あまね
  • 橘田薫
  • フロワ
  • 江戸川ミソラ
  • ヨーコ
  • 大野花奈
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