感想等書いてくださると、作者は踊り狂って喜びますので、是非ともよろしくお願いいたします。
【イメージOP】
PEOPLE1 - 銃の部品
【歌詞使用楽曲】
八代亜紀 - 舟唄
(作詞:阿久悠)
【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2
Question004 What do they fight for?
2021.10.10 18:45 東京都 新宿区 焼肉専門店 ぎゅう
とある焼肉屋の個室で、SOUPの六人は大量の肉を焼き、そこそこの量の酒を呑んでいた。
三人ずつ向かい合って掘り炬燵に座っている。
お酒はぬるめの
「どうして焼肉屋さんで、魚だとか船だとかの歌が流れてるんでしょうね?」
一番外側に座る薫は、自身の頼んだ肉を次々と焼き、バクバクと口に運んでいく。
「さぁね。多分、不二雄さんの趣味でしょ。だとしたら相当センスが悪いけど」
向かい合う碧も同じくらいの肉を頬張る。
「いやぁすみません。これ、主人の選曲じゃないんです」
この店の店主の一人、
「これ、
もう一人の店主、新井
「じゃあ仕方ないか」
「ね」
二人の視線は厨房にいる中性的な美青年──
この店の魅力は新井夫妻の人柄の良さだ。全員がそれに惹かれてよく利用している。強いて言うなら、薫が通う理由は日菜太のルックスなのだが。
「本当に来ることになるとはな……」
真ん中に座り、複雑な表情で焼き網の上の肉を見つめる森田。
「良いじゃないですか。割り勘じゃないんですから」
その前の圭吾は自身の頼んだハラミを、トングで焼き網に乗せ始めた。
さて、外側の席に座る春樹はトングでカルビをひっくり返した。
ふと前を見ると、深月が下を向いて複雑そうな表情をしている。
「お前、お酒苦手なの?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
「じゃあどうして?」
「…さっきの言葉の意図が分からなくて……」
お前は、何のために戦うんだ?
「特に深い意味はねぇよ。何となく訊いてみたかっただけだ」
「逆に、春樹さんは何のために戦うんですか? この国を護るためですか? それとも、
「みんなの笑顔…」
すると、突然春樹が吹き出してしまった。
「何が可笑しいんですか!?」
「
割り箸で焼き上がったカルビを取ると、タレにつけて口に運んだ。
食感と味を数秒間堪能した後、飲み込んで返答し始めた。
「俺は別に国を護るためとか、何だっけその、みんなの笑顔を守るためとか、そういうので戦ってるわけじゃない」
「じゃあ、自分のためってことですか?」
「そういう解釈で良いんじゃない?」
深月が溜息を一つ吐いたのと同時に、春樹はノンアルコールビールの入ったジョッキに手をかけた。
だがすぐには呑まず、ポツリと呟いた。
「どうすれば、皆んなを守ることが出来るんだろうな」
そのまま一気に呑み干す春樹。
その言葉の意味が、深月にはまだ理解出来ていなかった。
静かに厨房で作業を進める青年が選んだ曲はサビに入った。
しみじみ飲めば しみじみと
想い出だけが 行き過ぎる
涙がポロリと こぼれたら
歌いだすのさ 舟唄を
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2021.10.28 11:44 東京都 新宿区 SOUP
「ハァ…」
深月が頬杖をつきながら溜息を一つ
「どうしたの?」
前にいた碧が声をかける。
「いえ、何でも…」
「ここ二週間くらいそんな様子じゃん。悩む暇があるんだったらもう少し報告書速く仕上がると思うんだけどな」
薫が意地悪そうな顔で深月を見つめる。
「すみません…」
「悩める暇があるだけ良いじゃないか。僕なんて、寝る間を惜しんで色々やってるんだから」
目をかきながら圭吾が言った。
「その割には、メモリアルカードの解析が遅いように感じるが」
「仕方ないじゃないですか。碧さんが獲ってきた『スペード』のカードは、意外と情報量が多くて解析するのが大変なんですよ!」
森田の指摘に圭吾が反論する。
「それに、こないだの
ハァと思わず全員が溜息を吐いてしまった。
きっかけは10月10日の戦闘だった。
それまで仮面ライダーとフォルクローの戦いは極秘のものだった。
ただでさえ未確認生命体による殺戮やヒュージルーフの出現があったのだ。これ以上国民の不安を、悪戯に煽るわけにはいかない。そう判断した政府はSOUPの本来の職務とともに隠蔽したのだ。
だがダイヤの戦闘を100人以上の客が見てしまった。その中の数人がSNSに投稿した影響で、フォルクローの存在が明るみになったのだ。
すぐに総理はフォルクローの存在を認め、SOUPの本来の業務を公表。それと同時に、
総理はその次の国会で野党に辞任だ何だと問い詰められ、結果、
再度溜息を吐く深月。
そんな深月に碧が優しく声をかけた。
「ちょっと、外に出ない?」
「え?」
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2021.10.28 12:34 東京都 千代田区 皇居前広場
千代田区の20パーセントを占めるのは、緑で溢れた巨大な空間だ。
休日とあらば様々な人で溢れるが、木曜日の今日にいる人は一人だけだ。
税金で食べているサボり魔、椎名春樹である。
柔らかな緑色の大群を寂しげに見つめる春樹は、ベンチの右側に座り、真ん中に置いたコンビニの袋からサンドウィッチを取り出すと、開封して食べ始めた。
すると
「今日も、無断欠勤ですか?」
横から誰かが話しかけてきた。背広を着た顔の大きな中年男性だ。薄ら笑顔を浮かべる男はベンチの左側に座って、袋の中をガサガサと漁り始めた。
「お前には関係ないだろ、アール」
「まぁ、そうですね。でも、
アールと呼ばれた男に指摘され、バツの悪い顔をする春樹。
「要件は何だ? 手ぶらで来たわけじゃないだろ」
「やっぱ分かってるな」
袋の中からポテトチップスの袋を取り出し、パッケージを両手で開けた。そして右手で一枚取り出し、口に運んだ。
「実は、これから上位のやつらを送り込もうと思ってるんです」
「ふぅん」
「興味無さそうだね!?」
「興味が無いわけじゃ無いけど、そういうのって言って大丈夫なのか?」
「情報を出すことが君たちだけでなく、我々の利益にもなるのは重々承知のはずです」
「そうだったわな」
するとジャケットのポケットに入っている春樹のトランスフォンがバイブレーションを起こした。
ファスナーを開けて画面を確認する。
「お前がいるから一応訊いてみるわ」
「?」
春樹は手にしている端末の画面を見せた。
ロック画面が表示されており、画面の八割を赤い文字が埋め尽くしていた。
「
「……いや、違います」
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2021.10.28 12:32 東京都 文京区
首都高速5号池袋線近くのビルの一階にある蕎麦屋で、碧と深月は昼食を摂っていた。
深月はきつねうどんを啜り、碧はかけ蕎麦を口にしている。
「つまり、うちの旦那が言った言葉の意味が解らず、尚且つそれに吐いて訊いて出た答えも意味不明だった、と」
「はい」
「あの人はいきなり突拍子もないこと言い出すから、そんなに気にしなくて良いんじゃない?」
「そ、そうなんですか?」
「うん」
何かを思い出したのか急に嫌そうな顔をしだした碧。お互い麺を啜り終わった。
店員が碧に蕎麦湯の入った容器を差し出したのと同時に、深月が今まで手をつけていなかった油揚げに手を伸ばした。
「碧さんは何のために戦うんですか?」
「え?」
「正直、碧さんの方がまともな理由だと思うので」
「まともって……」
うーん、と頭を悩ませながら
並々注いだところで容器を置いて口を開いた。
「私は、目の前で苦しんでる人を助けたい。ただそれだけ」
「ま、まともな理由だ……!」
「けど……」
「? けど?」
「あの人、自分のために戦ってるとか言ってるけど、本当は誰かのために戦ってるはずだよ。本当に強い人は、それを面に出さずに、ただ行動するだけなの。あの人が自分のことしか考えてないんじゃない。そう見えないだけだよ」
つゆが作り出した水面を見つめるその目が、職場で見せるものとは違うことに深月は気がついていた。
初めて春樹と会ったあの日、夫に向けたものと同じだ。柔らかな笑顔を浮かべ、慈愛に満ちた優しい目をしている。
その時だった。
碧の端末が振動を起こした。
深月のポケットにも振動がきたので、ポケットからスマートフォンを取り出した。「あ違った」とSOUPから支給されたスマートフォンと取り替える。
そして二人とも画面を確認すると、次のような文字が大半を埋めつくしていた。
端末の文字を押すと、地図が現れ、現在地から出現予定地までのルートが表示された。
「ここって……」
「……すぐそこ、歩いて二・三分で行ける! 行くよ深月くん!」
「え!? あ、はい!」
席を立ち上がり伝票を持ってレジに向かう。
言っておくけど割り勘だからね、と状況と声のトーンと台詞が一致しない碧に押され、割り勘機能のある決済アプリで支払いを済ませた。
そしてすぐさま店のドアを開け、職務に戻って行った。
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2021.10.28 12:44 東京都 文京区
同じ首都高速5号池袋線沿いを走る二人。見上げると左のビルの奥の方から赤いカーテンが見えている。
大きな道を左に曲がったところで、碧たちは世にも奇妙な光景を見た。
巨大な生物が宙に舞っていたのだ。その生物はまるで
信じられない大きさに目を見張る深月。ふと隣を見ると、碧も同じように目を見開いていた。
すると二人の端末に着信が入った。SOUPの端末にはグループ通話機能が備わっている。それを使っての着信だった。
「はい」
「知ってはいるとは思うが、文京区にフォルクローが現れた」
森田からだった。
「そいつなんですけど、今目の前にいます」
「は!?」
碧の発言に驚く森田。
「そうか、分かった。警察庁から対象を新型未確認生命体第17号『ベトレイ』と呼称すると通達があった。我々もあと五分ほどで着く。どうにか粘ってくれ」
「分かりました」
通話を切った二人。深月の横で肩をブンブンと回す碧。
「行くか……!」
だが束の間、ベトレイの触手が突然動き出した。その触手は真っ先に二人の方に向かって行き、そのまま深月に絡みついた。
「うわぁぁぁぁ!」
「深月くん!」
そしてベトレイの体内に持っていかれる深月。透明な部分から深月の姿がはっきりと見える。
「な、何なんですかこれ!?」
内側から壁を叩く深月。だが
まずい!
このまま体内にいたままじゃ、深月くんの身体に何が起こるか分からない。
早く助け出さないと…!
逸る気持ちで碧がトランスフォンを取り出した時だった。
「そのまま倒したらダメだよ」
後ろから若い男の声が聞こえた。
後ろを振り返ると、春樹と同じくらいの背丈をした男が立っていた。
グレーのワイシャツとその上から黒いジャケットを着ていて、黒いスキニーパンツと茶色いスニーカーを履いている。
「何やってるの!? 早くここから逃げて!」
「71番の身体の中に取り込まれたものは、一時的に身体の一部として一体化している。つまり、あれを今倒せば、あの人は死んじゃうよ」
「じゃあ、どうすれば」
「僕に任せてよ」
青年は碧の前に立つと、あるものを取り出した。ピンク色のレバーが付いたライムグリーンのアイテムだ。そこには何かを入れるためのスロットが二つある。
それを腹部に着けると、黒いベルトが現れ、一つのドライバー──ゲーマドライバーへと姿を変える。
そして一本のゲームカセットに似た、紫色のアイテム──ライダーガシャットを取り出した。
「僕は、天才だから」
ガシャットを大事そうに見つめる青年。
ガシャットに付いているボタンを押した。
『マイティアクションX』
後ろにモニターが現れ、紫色のポップな文字と「マイティアクションX」というゲームに登場する主人公、マイティの色違いが表示される。
そして青年は呟いた。
自身が「天才」であることを証明するための言葉を。
誰かに認めてもらうための力を手にする言葉を。
「変身」
ガシャットを一番目のスロットに挿し込んだ。
『ガシャット!』
青年の前に幾つものパネルが現れた。コミカルなキャラクターたちが描かれたパネルのうちの一枚を左手で選ぶ。
そのパネルが青年のもとに向かって来ると、青年の姿は別のものに変わった。
『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?』
モニターに表示されていた、色違いのマイティのような顔立ち、様々なコマンドが書かれたアーマー、2頭身の白い身体。
その姿に碧は目を張って驚いた。
『アイム ア カメンライダー!』
「仮面、ライダー……!?」
仮面ライダーゲンム アクションゲーマー レベル1。
この世に存在するはずのない戦士が登場した瞬間だった。
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2021.10.28 12:44 東京都 千代田区 皇居前広場
さて、妻が驚愕している間、無断欠勤している夫はアールと一緒にポテトチップスを貪っていた。
笑顔を浮かべるアールに対し、春樹は上の空だった。
「どうしました?」
「どう考えても解らないんだ。どうしてお前らは今、上位の奴らを送り込もうとしているんだ?」
「というと?」
「俺たちがライダーシステムが使い始めて、まだ半年も経っていない。力を十二分に出すことなんていうのは到底不可能だ。なのにお前らは上位の奴らを送ろうとしている。
「確かにそうですねぇ。だから『絶対に殺すな』と向こうには伝えてあります。でももし
アールが春樹の方を向く。
笑顔こそ変わらないが、その目の奥に潜む感情がまるで違うことに春樹は気がついていた。
歓びというよりも、神妙な気持ちの方が出ているその目を見た春樹は、すぐに立ち上がり、その場を去って行った。
「全く。貴方は碧さんのことになるとすぐにこうなるんだから」
アールの外見や話し方に関しては、俳優の佐藤二朗さんがモデルです。
「勇者ヨシヒコ」シリーズや「浦安鉄筋家族」でのコミカルなイメージで読んでいただければと思います。
こんな感じです↓
https://onl.la/DT24g1V
今作のキャラクターたちの日常を描いたスピンオフがあったら、読みたいですか?
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読みたい。
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そうでもない。