前回クロトが言ったことは一切言及されずに数話進みます。ご了承ください。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
【イメージサウンドトラック集】
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Question082 What does her request mean?
2022.05.01 19:04 東京都 中野区 トキワヒルズA 601号室
「今回の戦い、私とお兄ちゃんは降りることになったから」
いつも二人が寝ている寝室で、春樹と向かい合いながら立つ碧が引き攣った笑顔で言った。
「何でだ?」
「解るでしょ? 戦っているのは私たちのお父さんだから」
彼女の言葉で春樹は全てを察した。
標的は碧と八雲の父親だ。ある種の温情が働いてしまい、任務は失敗に終わってしまう可能性が高い。
そのため、今回の戦いに碧と八雲を参加させることは出来ないとSOUPが、というよりその上にいる警察庁が判断したのだ。
本来であれば最初の方からそうすべきであったのだが、戦力不足のために仕方がなかった。けれどももうその必要は無い、ということらしい。
「だから春樹、お願い……」
碧は俯きながら春樹の服の裾を軽く掴む。
その軽さとは裏腹に、春樹は全身までもを持っていかれるような気がしてならなかった。
顔を上げた碧と目線が合う。真っ直ぐと見つめられて、春樹は思わず息を呑んだ。
「──お父さんを、私の代わりに倒して……」
「……良いのか? 俺がそんなことして」
黙って頷く碧。
春樹は彼女のことを何も言わずに抱き締めた。
その様子を、部屋の明かりを唯一灯してくれる、ベッドの近くにある机の上に置かれた照明だけが見つめていた。
「ねぇ、おじさん」
一方、部屋の白い照明が殆ど点けられているため明るい八雲の部屋にあまねはいた。部屋の真ん中にある食卓の周りの席に向かい合って座っている。
詳しい事情は分からないが、一先ず二人きりにした方が賢明だと思って逃げ込んで来たのだ。
あまねに話しかけられることなど滅多に無い。基本的に自分が話しかけてもぶっきらぼうな対応しかしてくれないため、まさか彼女から来てくれるとは……!
八雲は今の大変な状況を一旦忘れて、彼女と話をすることにした。
「どうした?」
「……今、好きな人がいてさ、告白しようと思ってるんだけど……どう伝わるのか怖くて……」
彼女は彼女なりに深刻な悩みを抱えているらしい。
暫く考えたところで、八雲は同じように真剣な面持ちを浮かべて言葉を発した。
「じゃあ、このまま言わない方が良いと思うか?」
首を横に振るあまね。
「……思ってることがあるなら言える時に言っとけ。先延ばしにしてると、絶対後悔するぞー」
一瞬だけ目線を逸らした八雲。彼の目は何も無い虚を向いている。
もうそこには何も無い。というより、誰もいない。何処にもいない三人目を目の奥で感じているのだ。
あまねは彼の様子を見てこれ以上は何も言わなくなった。彼がそんなことを言える理由を知っていたからだ。
俯いて同じように何も無い場所を見る。そこから何かが湧き上がって来るような気がしてならない。
ただ下を向いて再び前を向き始めたところで、あまねは部屋から去って行った。その時の彼女の目に照明の光が反射して輝いていたのを、八雲は見逃さなかった。
────────────
2022.05.02 09:33 東京都 新宿区 SOUP
翌日、班員たちは勢い良く話し合いをしていた。
パソコンの画面でディエンド・ノヴァの映像を確認しながら、ああでもないこうでもないと言葉を交わしていく。
この場に春樹と碧はいない。
想像以上に三人は深傷を負ってしまった。その療養をしているところなのである。
だが八雲だけは、別に俺は戦わないから、と言って会議に参加している。
「やっぱり、彼を倒すにはサーバーを使うしか無いですかね……?」
深月が誰にというわけでもなく訊いた。
それを使うことがどれだけ危険なことか解っているのだが、他に選択肢は無い。
「そうですね……。もうそれしか……」
「絶対に駄目です! あまりにも危険です!」
「でも他に選択肢は無いんですよ!」
「解ってますよ! 解ってますけど……」
圭吾と薫の意見は一致しない。
どちらもこの状況を打破しようとしてのことだ。
「なんとかしてサーバーを安全に使用出来る方法は無いのか?」
森田の言葉で、全員の目線は八雲の方へと向けられる。
当の本人はサーバーの設計図が映し出されたモニターの画面を確認しながら、頭を抱えて何かを考えている。
すると、
「そういえばどうして、リベードンアクトよりもメモリアルカードの方がダメージを与えられたんでしょうね?」
深月が突然呟いた。
「確かに、何故かそっちの方が効いていたよな……」
森田のその言葉で、圭吾と薫も思い出した。
碧がパラレインに憑依される寸前の戦いで、様々なメモリアルカードを駆使した際にはかなり優勢に立つことが出来た。だがリベードンアクトという現時点での最強形態になった瞬間、徐々に追い詰められて行ったような気がする。
言われてみれば、一体どうしてそんなことになったのか皆目検討はつかなかった。
「……まさか、ヤツに有効なカードがある、ってことですか?」
「そうだったら一番良いんですけどね……」
八雲と同じように全員が頭を抱えた。
一体どうすれば良いのか。何をどう頑張っても分からない。
中でも特に悩んでいたのは、一番最初に悩み始めた八雲である。だがその悩みの対象はサーバーではなかった。
──最後の帆立のバター醤油焼きの
遺言の最後にあった、あれは一体何だったのだろうか。そんなくだらないことを考えていた。
否、実はくだらなくないのかもしれない。
あんな意味の無いことは言わないであろうし、そもそも仏壇にそんな面倒なものを捧げろと言うような人間でないことは八雲が一番解っている。
だとしたら、何故──?
何かを加えたとしても、加えられたものそのものの良さが薄れることは無い。
これが何を意味しているのか──。
その時だった。
八雲が一つの答えに辿り着いたのは。
「──そうか。別にそのまま使う必要は無いんだ……」
「……はい?」
今まで見たことの無い程に真剣な様子で、しかし興奮を隠し切らずに語り始めた。
「要はあのサーバーをそのまま使うんじゃなくて、安全に使えるまで力を薄めて、そこに零号、というより全てのフォルクローに有効なカードの力を集約すれば良いんだ!」
「そうすれば春樹さんや碧さんに何も危害が無い状態で使うことが出来る……!」
「早速製作に取り掛かります!」
「私も選定に参加します!」
八雲、圭吾、薫の三人が部屋から飛び出して行く。
これで残ったのは、深月と森田の二人だけとなった。
目線を合わせることは無く、ただ目の前のモニターを見つめている。
「……上手くいきますかね……?」
深月が呟く。
「……なんとかなる。今はそう信じよう」
森田の言葉に深月は深く頷く。
これでようやく、過去に囚われた悲しき怨霊を祓うことが出来るやもしれない。
本当に良かった。深月はずっと嫌悪を抱いていたのだ。何処となく、自分が辿ってしまったかもしれない道を見ているようで。
だが彼には今を考えることしか頭に無い。残された自分が今をどうやって生きていくか。それがきっと、先に旅立ってしまった者たちから出された問いのような気がする。
キーボードを叩き始めた。
叩かれる音だけが室内に木霊していく。
他に音は何もいらない。今はただ、それが聞こえるだけで充分と思った。
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2022.05.04 14:00 東京都 新宿区
清々しく暖かな晴天の下にある、新宿駅西口近くの大きな交差点を、人々は行き交っていた。
理由は勿論のこと、突如としてその真ん中に現れた化け物から逃げるためだ。
何処か安全な場所に行こうと足取りを速め、車に乗っていた者たちは飛び降りて徒歩でその場から離れる。
暫くして、交差点の真ん中に立ったディエンド・ノヴァは変身を解除して周囲を見回した。
もう誰もいない。周りのビルは黒煙や火花を飛ばし、主のいなくなった車が道路に無造作に放置されている。
ここは彼の独壇場となった。
だがすぐに来客たちがやって来た。
腹部にドライバーを付けた春樹が10メートル程離れた場所で海斗と向かい合い、車の大群の中で碧たちがその様子を後ろから見守っている。
「私を止めに来た、というわけか? 邪魔しないでくれたまえ。もうすぐで妻に会うことが出来るんだ」
「だったら破壊とかそんなまどろっこしいやり方じゃなくて、
正当なやり方。
それが一体何なのかすぐに察した海斗は、ネオディエンドライバーとカードを取り出し、争うための準備を始めた。
「させないよ。絶対に」
カードを挿し込んで銃身を伸ばし、握っている右手を挙げて銃口を宙空へと向けた。
『カメンライド』
「変身!」
『ディエンド!』
様々な怪物たちの虚像が辺りに現れ、それらが海斗と一つになると、彼は再び異形へと変貌を遂げた。
禍々しい目は真っ直ぐに春樹を睨み、今にも襲い掛かろうとする気で深く呼吸をしている。
「じゃあ、強制的にやるしかないな……!」
春樹はサーバーを取り出して右手に握る。
だがその表面は銀色から緑色になっていて、左側面の細長いタッチパネルにはいくつものマークが白く描かれている。
これが八雲たちが改良した、オールマイティーサーバー
すると春樹は左手でトランスフォンを持つと、サーバーの下にあるスロットに挿し込んだ。
結果、サーバーの透明な表面からトランスフォンの画面が丸見えになる。
『COMBINE』
左手の人差し指を使って、タッチパネルのマークを下から順になぞっていく。
『KUUGA! AGITO! RYUKI! FIZE! BLADE! HIBIKI! KABUTO! DEN-O! KIVA! DECADE! DOUBLE! OOO! FOURZE! WIZARD! GAIM! DRIVE! GHOST! EX-AID! BUILD! ZI-O!』
右側面のボタンを押すと、いつもよりも豪華で軽快な音楽が流れるのと同時に様々なものが現れた。
まず春樹の上空に幅の広い大きな緑色の輪が出現する。その上に置かれている物は──
赤色のゴウラム。
金色の龍。
赤い龍。
銀色の鮫。
スペードの形をした銀色のオブジェ。
紫色の鬼。
大きな赤い兜虫。
赤色の電車。
黄色い蝙蝠。
マゼンタの色をした巨大な蚊。
緑色と黒色のUSBメモリ状のオブジェ。
赤色、黄色、緑色の3色で構成される大きなメダル。
白いロケット。
ドーナツ状の赤いオブジェ。
紺色の茎と枝の付いたオレンジ。
赤色のスポーツカー。
オレンジ色と黒色のパーツを連れた幽霊。
「マイティ」と呼ばれるピンク色のキャラクター。
赤色の兎と青色の戦車。
銀色のティラノサウルス。
どれも全て、メモリアルカードを使った時に出現するものであった。
それらが真ん中に現れた黄金の鎧と透明な緑色の仮面を取り囲むようにしてある。
サーバーを持った右手をゆっくりと左肩の方へと持って行く。手の甲を向けている状態であるため、手の内は見えない。
そして春樹は右手をひっくり返すと、言葉を発した。
目の前の標的を倒すために、最も有効な形態になるための言葉を──。
「変身!」
サーバーをドライバーに挿し込んだ。
『Here we go!』
鎧を残して輪が下降を始め、彼を囲む形で地面に落ちて来る。春樹の体をすり抜けた時には、もうすでに緑色の素体へと変身をしていた。
そこへ輪の上にいた物が春樹の変身した春樹へと吸収され、同時に宙に浮いていた黄金の鎧が全身に装着された。
ただの素体ではなく、嘗て何処かの世界で戦いをしていた20人の仮面ライダーの絵が全身に表れ、黄金の鎧は通常形態の物よりも若干尖っている。
そして緑色の仮面によって顔が覆われた頭部には4本の角が生えており、まるで四号が最後に変身をした「凄まじき戦士」のようである。
『All twenty in this server! This is perfect for me to fight! I’m KAMEN RIDER ULTIMATE ACT! It’s the strongest.』
仮面ライダーアクト アルティメットシェープ。
20人の戦士の力を得た、最強の姿となった。
「さぁて、やってやるか……!」
【参考】
東京の過去の天気 2022年5月 - goo天気
(https://weather.goo.ne.jp/past/662/20220500/)
ギリシャ文字 ─ Shinshu Univ., Physical Chemistry Lab., Adsorption Group
(http://science.shinshu-u.ac.jp/~tiiyama/?page_id=3782)
もうすぐシーズン3が終わるんですが、その最後に戦う相手って誰だと思いますか?
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パラレイン
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海斗
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アール
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ピアーズ
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クロト