仮面ライダーアクト   作:志村琴音

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第85話です。
実は、今現在同時に連載している「Almost Human」の伏線になるような描写が結構ありますので、要注目でございます。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。



【イメージOP】
ソナーポケット - GIRIGIRI

【イメージサウンドトラック集】
https://open.spotify.com/playlist/23xA5ZAHZfdUR77F4JZ9lB?si=07c60fc3a3934b45&pt=97747cf874e1c0b08fb8e40c52da1ec2


EPISODE 29 最後のゲーム(THE LAST GAME)
Question085 What is his new game?


2022.05.12 07:57 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 3階 2年5組

 ようやくこの時が来た、とあまねは笑顔で教室の中に入った。

 遂にフォルクローとの戦いで傷付いた校舎や校庭の改修工事が終わった。待ちに待った新たな教室への移動に対する喜びが、入室せずとも入り口から漏れ出て来る。

 

 あまねの席は一番後ろにある窓の隣の席だった。そこへ向かうと、その隣に日菜太が座っているのが見えて思わず笑みが溢れてしまう。

 

「おはよう、日菜太くん」

「おはよう」

 

 日菜太に笑顔を向けるあまねの様子を見ていた男子生徒達は、はっきり言えば嫉妬に駆られていた。

 

 本人は全く気が付いていないのだが、あまねは男子にかなりモテる。才色兼備で何よりもスタイルが良い。一度で良いからそういうことをしたいと妄想に耽る対象としていた彼女が、クラスでそこまで目立つことの無い日菜太と仲良くしているのだ。それも、ただのクラスメイトと話す感じではない、もっと親密そうな感じで。

 

 そして彼らはあることに気が付いた。

 何処となく色気が増している。

 あの肉感のある肉体を持っていればそう感じることは当然なのだが、以前よりもより増しているように見える。

 

 ──まさか……!

 

 ある一つの結論に辿り着いた時、男子生徒達は血涙を流しそうな勢いで悔しがり始めた。

 

「取られた……!」

「そして、()()()()……!」

 

 彼らの羨望の眼差しなどつゆ知らず、あまねと日菜太は会話に花を咲かせていた。

 

「ところで、日菜太くんは()()()()()受ける?」

「ん? 何だっけ、それ?」

「ほらあれだよ。放課後にやる、有名なゲームクリエイターの人の講義。私の進路とは全然関係無いんだけど、一先ず受けてみようかなって」

「……じゃあ僕も受けようかな。事前申し込みとかいらないんだよね? あまねちゃんが行くなら僕も」

 

 あまねは大きく頷く。

 それを見て日菜太が微笑むと、あまねも笑みを浮かべた。

 そのせいか、嫉妬の炎がメラメラと上がっていくのに全く気が付かなかった。

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.05.12 15:03 東京都 千代田区 警視庁 17階

「まーた呼び出しだよ。めんどくせぇ」

 

 広い廊下に静かに響かせるように、八雲は呟いた。

 

「はっきり言って、同感ですね」

 

 圭吾もそれに賛同する。

 

「でも呼び出しってことは、それなりの緊急事態ですよね?」

「ああ。じゃなきゃ足を運ぶ必要は無い」

 

 薫の質問には森田が答えた。

 

「なんか、すごく嫌な予感がするんだけど」

「やっぱりですか? 僕もです」

「俺もだ。もう帰ろうかな……」

 

 春樹に碧、深月が無駄口を叩いたところで、全員はあの大きな会議室に再び足を運び入れることとなった。

 中では江戸川ミソラの件で世話になった桜井が立ちながら待っており、春樹たちを見ると、

 

「お疲れのところ、来ていただいて有り難うございます!」

 

 と一礼をした。

 

「で、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「──まずは、これをご覧ください」

 

 森田が訊くと、桜井は手に持ったiPadを操作し、大きなスクリーンに画像を表示した。

 カフェや誰かの自宅らしき内装が写された3枚の写真は、どうやら何かの現場を撮影したものらしく、数字の書かれた札や鑑識が着ている青色のつなぎの一部が見える。

 

「これらは、ある3人の男性の方が昏睡状態で発見された現場です。数分前までは元気だったのに、突然意識が無くなったと」

「原因は一体何なんですか?」

 

 薫の問いかけに桜井は首を横に振った。

 

「全く判りません。ただ、強いて言うなら、直前に一人の男に会っていたことが分かったんです」

「誰なんだ? その男って」

 

 春樹の問いかけに答えるように、桜井は新たに映像を写した。

 ビルの中にあるエレベーター前の廊下であろうか。2つあるエレベーターのうち、左側の方の前に立つTシャツを着た男に、ジャケットを羽織った男が話しかけていた。

 暫くしたところでジャケットを着た男が何かを右手に持ってそれを見せた時、Tシャツの男はその場に倒れ込んでしまった。彼の様子を見たジャケットを着た男は、その場を去って行った。

 

「あの男が持っている物は何だ? 強い光を放つ物でもなさそうだし……」

「ええ。あんな小型の物で昏睡に至らしめるだなんて、不可能ですよ……」

 

 この手の道具を作る側であることから、精通している八雲と圭吾でも一体何だか判らないらしい。

 

「いや、それより、あの男……どっかで見たこと無いか?」

 

 春樹の言葉で全員はピンときた。

 ジャケットを羽織ったあの風貌は、間違い無くあの男であった。

 

「クロト……!」

 

 碧の呟いた通り、それは(まさ)しくクロトであった。

 これで彼の持った装置のことが判った。あれは彼が変身に使用しているガシャットであった。どれほどまでの汎用性を持っているのかは分からないが、未知の装置に対する疑問は払拭出来た。

 

「えぇ。これは確かに、新型未確認生命体第十八号こと大野玄斗です。昏睡状態になった全員に彼が接触していました」

「何のために、ですか?」

 

 深月の問いに桜井が答えた。

 

「気になって部下に調べてもらったら、少々気になることが分かりまして……。実は、昏睡状態になった四人は、学生時代に大野を虐めていたらしいんです。しかもですね……あの『マイティアクションX』ってゲームはご存知ですか?」

「娘がやっていたな……。人気のあるアクションゲームですよね?」

「仰る通りです」

 

 「マイティアクションX」は主人公であるマイティが、塩を司る紳士のソルティを初めとする怪物達と勝負をする、という内容のアクションゲームである。

 2016年に発売して以来、森田の娘である奈緒美のような子供達を中心に世界中で愛されているのだ。

 

「そのマイティアクションXの開発に関わっていたのが、今回被害に遭った四人なんですが……実は、あれは元々大野が作ったものだったんです」

「!? どういうことですか……!?」

 

「要は、盗作ですね。彼が作り完成させたものを、あの四人が我が物として発表したというわけです。……これはあくまで私の推測ですが、自分の大切なものを奪った彼らへの復讐なんじゃないでしょうか……?」

 

 桜井の言葉で、碧は嘗てクロトが自分にかけてきた言葉を思い出した。

 ──君と僕は似ているようで似ていない。

 それはどうして自分に執着しているのかを尋ねた時に、彼が言った言葉だった。

 

 あの時は一体どういう意味なのかさっぱりであったが、ようやく理解出来た。

 碧もクロトも大切なものを失った身だった。碧は大切な家族を、クロトは心血を注いで作り上げたゲームを、だ。

 その悲しみや憎しみを仮面で隠し戦うという点で、彼らは同志なのだろうか。

 

「じゃあ、この四人に手をかけたってことは、もうこれでクロトがこんなことをする必要は無いわけですね?」

 

 深月の言葉で全員が安堵した。ターゲットがもういないのであれば、もう彼がこんなことをする必要性は皆無であるからだ。

 だが、

 

「いえ。実はもう一人いるんです。マイティアクションXを自分の名義で発表した張本人が──」

 

 

 

────────────

 

 

 

2022.05.12 15:51 東京都 渋谷区 城南大学附属高等学校 1階 講堂

 階段状になった床に備え付けられている座席には、あまねや日菜太を含めた数十名の生徒が目の前を向き、一番上の段にいる教員達も立ち見をしている。

 

 彼らの目線の先にいるのは、壇上に立つジャケットを着た青年であった。

 彼こそが、マイティアクションXの開発者と謳う青年だった。自信満々に生徒たちに講義を行う彼の姿からは、後ろめたさが微塵にも感じられない。

 

「──以上で講演自体は終了になりますが、ここで何か質問はありますか?」

 

 生徒達は一体誰が一番最初に挙手をするのかと待ち構える中、立ち見客の中の一人が左手を挙げた。

 

「では、そちらの方」

 

 教員からマイクを手渡されるその男の方を、着席していた生徒達が見る。

 この学校の人間ではなかったために誰なのかと騒つく中、正体を知っているあまねと日菜太は、どうしてここにいるのだ、と目を見開いた。

 

「クロト……!」

 

 マイクを口に近付けて話しながら、ゆっくりと階段を降りて行く。

 

「すごく良い講義でした。制作の裏話やクリエイターとして重要なこと。とても貴重なお話を伺えて非常に良かったです。そこで一つ質問なのですが……」

 

 階段の中腹あたりで立ち止まるクロト。

 その目は真っ直ぐと青年を睨んでいる。

 

(なん)で僕のゲームを奪ったの……?」

 

 彼の発言で目の前にいる人物が一体何者なのか判った青年は、驚きの表情を隠せない。

 

「どうして……。どうして君が、ここに……」

「言ってしまえば復讐しに来たんだよ。奪われたなら奪う。逆に奪ったなら、奪われるのが筋だよね?」

 

 するとクロトは大きな紫色のガシャットを右手に持って肩の高さまで上げた。

 ロボットに乗った紫色のマイティが描かれたそのガシャットは2本分の分厚さがあり、今までのものとは全く違う印象を持っている。

 

「じゃあ、君も僕のゲームのポイントになってよ」

 

 黒いボタンを親指で押した。

 

『メモリアルクロニクル』

 

 クロトの上に「MEMORIAL CHRONICLE」と緑色の尖った文字で書かれたモニターが現れる。

 すると、そこから紫色の粒子が大量に飛び出して青年の周りを彷徨き、そして体内へと侵入して行く。

 

 次の瞬間、青年はその場に倒れ込んだ。その時に出た鈍い音が講堂内に響き渡る。

 

「皆逃げてっ!」

 

 目の前で起きる惨状に理解が追い付かず呆然とする生徒たちであったが、あまねの叫びによって我を取り戻し、悲鳴を上げながら壁面に2つずつある扉から外へと逃げ出した。

 何が何だか分からないが、この場にいては不味いと言う本能だけが彼らの足を動かしていた。

 

 代わりに入って来たのは、ドライバーを装着した春樹と碧の二人であった。

 壇上の上でうつ伏せに倒れている青年を見つめるクロトを発見し、驚愕している。

 

「もう手遅れだったか……!」

「うん。遅かったね、二人とも。……そうだ。折角だしログインボーナスをあげるね」

 

 クロトは2枚のカードを碧に投げた。両手で受け止めて絵柄を確認する。

 一枚目には、夕暮れの中で鎖の巻きついている十字架を着けた女性が祈りを捧げている様が描かれていて、下部には「No.069 CLERGYMAN IXA」と白く印字されている。

 二枚目には、心臓のような形をした鉛色の道路を数多くの赤いスポーツカーが走行している様子が描かれ、「No.127 PAL HEART」と書かれている。

 

 パラレインから盗んできたのか……。

 

「一体この人たちに何をしたの?」

「……僕が作り出した『メモリアルクロニクル』というゲームを使ったんだ。これから発生するウイルスに感染した人は、自分のことを恨んでいる人や自分のトラウマになっている人、自分が後悔の対象にしている人によって、延々と殺される夢を見るんだ」

 

 非常に楽しそうなその様子は、まるで燥ぐ子供のようだ。

 

「これでゲームは終わりだろ? 早く目を覚まさせろ」

 

 春樹の言葉に、クロトは不穏な笑みを浮かべた。

 

「無理だよ。そんなプログラム組み込んでいないんだから」

 

 彼の笑顔はこれまでに見たことの無い程の満面の笑みであった。

 ようやく恨みを晴らすことが出来た、と言ったところであろうか。

 

「それに、まだゲームは終わりじゃないよ。後1人だけ、倒さなきゃいけない奴がいるから……!」

 

 その人物が誰なのか、春樹と碧はすぐに見当がついた。

 姉である花奈の命を奪った、あの未知の生命体だ。何れ自身が、そいつのための生贄と化してしまう前に、全てに蹴りを付けようとしているに違いない。

 

「折角だし君たちも参加してよ。僕の、最後のゲームに」

 

 すると三人がいる場所は、講堂の中から広い野球場のグラウンドへと変化を遂げた。

 ホームに立つ春樹と碧に、ピッチャーズマウンドに立つクロト。いつ間にかクロトの腹部にはゲーマドライバーが装着されており、先程のガシャットは右手に握られたままである。

 

「春樹。ここで一気に片を付けよう」

 

 いつもより積極的な碧に少々戸惑い、右側にいる彼女の顔を見る。

 

「……お前、今日なんか調子おかしくないか?」

「……私と彼は似てるようで似てないんだって。だから、似ている者同士が蹴りを付けないと……」

「……そうか。分かった。じゃあ行くぞ」

「うん……!」

 

 春樹がクラックボックスを取り出し、そこにトランスフォンをかざす。

 

『CONNECTING US』

 

 クラックボックスが付けられた状態のドライバーが腹部に装着されたところで、二人は目の前に現れたカードを端末に挿し込んだ。

 

『『"REVE-ED'N'ACT" LOADING』』

 

 電源ボタンを押す。

 

『『Let's "UNITE"!』』

 

 宙空に銀色の鎧が浮かび上がる中、青色の直方体に入れられた碧と、緑色の円柱に入れられた春樹は各々がポーズを取った。

 

「「変身!」」

『『Here we go!』』

 

 リベードの素体になった碧が青色の液体に化すと、パイプを介して黒い怪物に変身をした春樹の中に取り込まれていく。体色が変化をした彼に鎧が装着されて、仮面ライダーリベードンアクトが完成した。

 

『Release all and unite us! We’re KAMEN RIDER REVE-ED’N’A-CT!! It’s just the two of us.』

 

 彼らの姿を見たクロトはふと笑みを浮かべた。まるで挑発をしているようなその様子に、若干の苛立ちを覚えてしまう。

 

「それじゃあ、ゲームスタートだ」

 

 ガシャットに付いた黒色のボタンを、右手の親指で押した。

 

『ゴッドマキシマムマイティX』

 

 ガシャットを90度回転させると胸の前まで持っていき、まるで合掌をするように両手で挟んだ。

 そして彼は静かに言ったのだ。

 最後のゲームを始めるための言葉を──。

 

 

 

 

 

「グレードビリオン。変身」

 

 ガシャットをドライバーのスロットに装填した。その分厚さ故に、全てのスロットが埋められてしまう。

 

『マキシマムガシャット!』

 

 レバーを引いて展開すると、ガシャットに描かれたのと同じ絵柄が表示されているモニターが現れる。

 

『ガッチャーン! 不滅(フーメーツー)! 最上級の神の才能! クロトダーン! クロトダーン!』

 

 荘厳な音楽が流れる中でドライバーから放たれたゲートがクロトを通ると、クロトの姿は仮面ライダーゲンム アクションゲーマー レベル0へと変化する。

 まず第一の変身を遂げた彼は、上にあるモニターからゲンムの顔を模したオブジェが出現したのを感じ取ると、ガシャットにあるゲンムの胸像を左手で下へと押し込んだ。

 するとゲンムはオブジェの中に吸い込まれていき、長い手足や頭部を出した彼は地面へと真っ直ぐに着地した。

 

『ゴッドマキシマームX!』

 

 大きな胴体にそのままの大きさをした顔。胸部にある模様のせいで、顔が2つあるように感じ取れてしまう。

 奇天烈であるその姿は、まるで土偶のようである。けれでも太古の時代で豊作祈願や鎮魂のために作られたものを模っているということは、それはまるで神のような姿なのだろう。

 そう思わざるを得ないような雰囲気を、この戦士からは感じ取れるのだ。

 

「これが僕の新しい力。レベル()()()()さ……!」

 

 その戦士の名は、仮面ライダーゲンム ゴッドマキシマムゲーマー レベルビリオン。

 このゲームにおける、所謂ラスボスである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q: What is his new game?

A: This game is that players will be killed by who hates them.




【参考】
仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーゲンムVS仮面ライダーレーザー
(高橋悠也 脚本, 鈴村展弘 監督, 2018年)
東京の過去の天気 2022年5月 - goo天気
https://weather.goo.ne.jp/past/662/20220500/
野球場 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%e9%87%8e%e7%90%83%e5%a0%b4
【DVD】仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング コンプリートBOX+ ゴッドマキシマムマイティXガシャット|仮面ライダーエグゼイド フィギュア・プラモデル・プラキット|バンダイナムコグループ公式通販サイト
https://p-bandai.jp/item/item-1000118562/
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