仮面ライダーレクイエム   作:リョウギ

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長らくお待たせしてしまいすみませんでした

レクイエム更新です!
スランプようやく脱却できました!


第11話「8の正位置:泉の友達大作戦」

特殊車両ハーミット・ダイザーに戻ってきた十一宮(といみや) 正義(せいぎ)が椅子に腰掛け大きなため息を吐く

 

「ー市民の記憶洗浄、完了した」

「お疲れ様、正義(せいぎ)

 

正義(せいぎ)たち埋葬部隊はエレクトリック・ノーワンの事件を目撃したであろう人々の記憶を操作する作業に従事していた

 

アニマ干渉技術の応用により簡単な記憶操作が可能になっており、大多数の市民にノーワンが目撃された場合はこうした作業により市民の記憶からノーワンの情報を消去するのだ

 

そこにもう一人、隊員が戻ってくる

 

 

「こちらも終わりました。隊長」

 

 

機材を片付けながら告げる女隊員ー逸羽(いつは) 五月(さつき)を見て正義が表情を曇らせる

 

「お疲れ様、五月(さつき)ちゃん」

「お疲れ様です。九留美(くるみ)さん」

 

九留美(くるみ)五月(さつき)が敬礼で返礼する

 

「怪人の…ノーワンの姿を中継するなんて…そんなパニックを誘発するようなことをするなんて…」

 

証拠物件として保存されていたムエルトのライブ動画をタブレットで見返す五月(さつき)

その手に力が入り、タブレットが軋む

 

 

「……この非死者も、ノーワンも、あたしが止めないと」

 

 

どこか冷たい瞳でそう告げた五月(さつき)正義(せいぎ)は力無く眺めることしかできなかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

昼下がりの棺ノ宮(ひつぎのみや)中央学園 中庭中央庭園

 

「おじさん、いちごクレープ一つ‼︎」

『あいよ、いちごクレープな』

 

「こっちはタピオカ‼︎」

『タピオカ一つな』

 

訪問販売に訪れていたキッチンカーの前に生徒が群がり、クレープやらタピオカやらコーヒーやら注文している

 

実食している生徒たちの反応から相当美味しいらしく、その人だかりも何の誇張でも無いことがよく分かる

 

「おじさん…なんでそんなマスクしてんの?」

 

生徒の一人が無邪気にも問いかける

確かに店主の格好はだいぶ珍妙だった

 

黒いジャケットとジーパンに黒手袋をはめ、更に顔はレスラーが被るような黒い虎のフェイスマスクで隠されていた

全身黒づくめな上から大きな赤いハートのアップリケが付けられた黒いエプロンを付けたその姿は正直だいぶ不審だった

 

『あー…まぁなんだ…おじさんは恥ずかしがり屋でな。あんまり素肌を見せたくねぇのさ』

 

店主はばつが悪そうに頬を掻きながら答える

生徒は「そうなんだ〜」と興味なさげに返すと案外それ以上の追求はしてこなかった。よっぽど軽食が美味しいらしい

 

最後の生徒の応対をした店主が手を振り見送ると、キッチンカーのカウンターに置いてあったカードデバイスから声が響く

 

『大人気じゃねぇか、スカル』

『正直だいぶびっくりだよ。イマドキの高校生だし怖がられるかもとかも思ったが、案外すんなり受け入れてくれるもんだ』

 

(いずみ)の声にカウンターに寄りかかりながら店主ースカルが頷く

 

「…一体どういうつもりでこんなことしてるんだお前ら」

 

キッチンカー前のテーブルの一つに腰掛けたキャンドルー六黒(むくろ)がタピオカを啜りながら問う

 

『まぁ色々あるのよ、こちらにも』

 

ひらひらとスカルが手を振るのを見て六黒(むくろ)はつまらなそうにため息を吐き出す

 

「なぁ、スカル。お前は私のことについて何も思わないのか?」

『……あんたが六美(むつみ)博士から生まれたことについて、か?』

 

スカルはシュー…と息を漏らし、答える

 

『何も…ってわけじゃないが。今すぐどうにかしてやるとか銃を向けるとかはしねぇよ』

 

スカルの答えに六黒(むくろ)が片眉を上げる

 

『俺たちのしたい「復讐」は、感情任せでやるもんじゃない。何よりも…』

 

 

『ーあんたへの「復讐」をする資格があるとすれば、それは俺じゃないだろうからな』

 

 

その言葉を聞いた六黒(むくろ)はふぅ、と息を吐き心底つまらなそうにタピオカの残りを啜った

 

 

『で、コレがお前の作戦にどう繋がるんだ、(いずみ)?』

 

カウンターに立てられたアニマアルカナを指でつつく

 

『まずは下見が重要だろ。どんな作戦でもな』

 

(いずみ)が自信満々にそう返す

 

『何より、あいつオープンスクールとかすら行ってねぇから一応ここの生徒なのにこの学校のこと知らねぇだろうしな』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

時は数日前に遡る

 

『なぁ、キー子』

 

テーブルの上に立てられたアニマアルカナから(いずみ)がソファにうつ伏せに寝転がる(のぞみ)に声をかける

 

「ん…何?セン兄」

 

眠たそうな気怠そうな声で(のぞみ)が顔を上げる

 

『学校そろそろ行かねぇか?』

 

(のぞみ)は少しムッとした様子で眉を寄せる

 

「……行かない」

『なんでだよ…俺だって帰ってきたんだし、もう心配ごと無いだろ?』

 

起き上がった(のぞみ)(いずみ)を睨む

 

「…あるよ。また……セン兄がいなくなったら嫌だし」

『キー子…』

 

自身の肩をギュッと抱きながら辛そうに答える(のぞみ)を見て(いずみ)も思わず言葉を詰まらせる

 

『……でもよ、やっぱキー子にはフツーの生活もというか…ちゃんと勉強もして欲しくてだな。ダチだって増えるぞ?学校なら』

「勉強ならやってるからいい」

 

(のぞみ)は床に散らばるチラシの中から何冊か参考書を取り出しながら告げる

 

「それに、ダチなんかいらない。セン兄がいれば、それでいい」

 

そっけなくそう返した(のぞみ)(いずみ)はむぅ、と不満げな息を漏らした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

昼休憩も終わりに近づいてきたのを確認し、スカルが後片付けをしていると突如悲鳴が鳴り響く

 

悲鳴の方向を見ると校舎の方から灰色の煙が噴き上がってきていた

 

『な、火事か⁉︎』

 

煙の中から生徒や教師が逃げ出してくる後から怪人が姿を顕にする

 

現れたのは灰色の蝋を人型に固めたようなノーワン独特の姿

両肩と腕には煙を噴き出す七輪のようなユニット。体の各所には発煙筒のようなパーツと網型の鎧が纏われていた

 

【行かないで…行かないでよ‼︎僕を1人にしないで‼︎】

 

ノーワンはそう叫ぶと腕のユニットを逃げていく人々に向ける

そこから放たれた灰色の煙の塊が2人の生徒にまとわりつく

 

頭部にまとわりついた煙が呼吸を妨げ、生徒2人が咳き込みながら倒れ伏し苦しそうにもがく

 

『ノーワン…‼︎』

『まじぃな…この状況は⁉︎』

 

六黒(むくろ)がスカルの肩を叩く

 

「おい、お前は変身しないのか?」

『俺だけじゃ変身できねぇんだよ。キー子がいなきゃムリだ』

 

スカルの胸ポケットに収まる(いずみ)が悔しげな声を漏らす

 

そうこうしているうちにノーワンが3人を見つける

 

【キミたちも、僕と一緒にいてよ‼︎】

 

腕のユニットを向けるがそこに黒い怪人が蹴りを浴びせ吹き飛ばす

 

「お早い出動じゃないか。レクイエム」

 

3人の前に降り立った黒い怪人ー仮面ライダーレクイエム・リバースデスが肩越しに振り返る

 

「そりゃ学校の中なら嫌でも気づくさ。というか…」

 

スカルと(いずみ)たちの方を見たレクイエムは頬を掻く

 

「……別に色々ツッコミたい所はあるが後だ」

 

ノーワンの方を向き直る

 

【なんなんだよ…僕は1人になるのが嫌なだけなんだよ‼︎】

「だからって殺す必要はないだろう⁉︎」

【殺さないと意味ないだろ‼︎一緒に、死んでもらうんだから‼︎】

 

七輪ユニットから凝縮した煙を弾丸として放つが、レクイエムはそれを手刀で叩き落としながら組み付く

 

煙に包まれた生徒たちの側にスカルたちが駆け寄る中、輪音(りんね)も駆けつける

 

「じゅ、レクイエムさん‼︎」

輪音(りんね)ちゃん‼︎襲われた人たちを頼む‼︎」

「わかりました…‼︎」

 

輪音(りんね)は頷いて倒れた人々に駆け寄り、まとわりつく煙を制服の上着で扇いだりして振り払いながら助け起こしていく

 

が、手作業だけでは振り払える煙が少ない

手こずっている中、突如吹いてきた突風が煙を大きく吹き飛ばす

 

「こ、この風は⁉︎」

輪音(りんね)ちゃーん‼︎」

 

声の主の方を向くとそこにあったのは大きな扇風機

その背後から顔を覗かせた(かなえ)が手を振る

 

「体育館から借りてきたよ‼︎これなら煙も吹き飛ばせる‼︎」

(かなえ)先輩…ありがとうございますー‼︎」

 

風に煽られながら輪音が鼎に御礼を告げる

 

「そこの黒い人らが怪物なんとかしてくれるなら、ボクにできるのはこれくらいだろうからね」

 

 

輪音(りんね)(かなえ)が生徒や教師を助け起こし、避難させていくのを見た(いずみ)は感嘆の息を漏らす

 

『中々肝が座ったヤツらだなぁ…いいね、ロックだ』

 

 

ノーワンは煙を肩や両腕から噴き出し、それを振り回しながら攻撃に用いる中レクイエムは煙をアニマライターの炎刃で振り払いにかかるが、煙に触れたアニマの炎は弱まり、掻き消える

 

「な、煙だから炎消しちまうのか…⁉︎」

 

アニマライターでの攻撃は不利と判断してレクイエムは徒手空拳に切り替えて組み付くが、体の各所の発煙筒から噴き出す火花を纏う煙がレクイエムの体を焼き、怯んだところを煙の薙ぎ払いが襲いかかる

 

【僕は1人で死にたくないんだ…そんな寂しいのは嫌だ…‼︎生きてくのも疲れたんだ!!!】

 

腕の七輪ユニットから火花を含む煙を火炎放射のように噴き出してレクイエムを吹き飛ばす

 

「思ったより厄介なヤツだなこいつ…‼︎」

 

反撃に移ろうとするレクイエムとノーワンの間に突如灰色の炎に包まれた蝋の塊がボタボタと何個も落ちてくる

 

蝋の塊は灰色の炎を噴き上げながらシンプルな人型に変化し、ゾンビのようによろめきながら立ち上がる

 

「こいつらは…⁉︎」

 

 

『ドロウよ。あたしたちの忠実なシモベ』

 

 

灰色の炎を噴き出し、炎の中からシャンデリアが現れる

 

「シャンデリア…‼︎」

 

カツカツ、とヒールを鳴らして苛立たしげにシャンデリアが吐き捨てる

 

『なんであいつは出てきてないのよ…あたしのお気に入りを、クールじゃないとか言ったあいつは…⁉︎』

 

苛立たしげにシャンデリアが炎の鞭を地面に叩きつける

 

「あいつ…?」

 

しばらく思案したレクイエムだがあることに気づき、ハッと顔を上げる

その視線はスカルと、(いずみ)に向いていた

 

『あたしの彩る死は、選ぶ死は‼︎最高にクールだってのに…‼︎』

 

シャンデリアが鞭を振り回す

レクイエムはそれを弾きながら後退、返す刀でアニマライターから炎の弾丸を放つ

 

 

[ 動 く な ]

 

 

シャンデリアの声が響く

 

その言葉に従うかのように弾丸が空中で止まる

 

「なっ…⁉︎」

 

レクイエム自身も身動きできなくなっているのか、アニマライターを構えたままに驚愕の声を上げる

 

『能力を使ってもいないあたしに一度土を付けた程度で思い上がらないでよね?』

 

 

[ ひ ざ ま づ け ]

 

 

シャンデリアの言葉が重圧となりレクイエムとスカルたちに降りかかる

たまらず皆ひざまづくようにうずくまる

 

『くっ…⁉︎』

「なに…これ…⁉︎」

 

身動きを封じられたレクイエムをシャンデリアが蹴り飛ばし、倒れ伏すその胸をヒールで踏みつけにする

 

「がっ…⁉︎」

『あっはははァ‼︎いいザマねぇ。あんたもあたしの芸術品だったハングを葬ってくれたからこれくらいしないと、ね‼︎』

 

グリグリとレクイエムを踏みにじりながらシャンデリアは手を広げる

 

『見てんでしょ?新しい仮面ライダー⁉︎早く出てこないと、お仲間が死んじゃうわよ?まぁ、お仲間じゃないなら関係ないかしら?あっはははははァ!!!』

 

シャンデリアの哄笑を聞きスカルがぐっ、と声を漏らす

 

倒れ伏す輪音(りんね)が顔を起こす

 

「ハング……彩奈(あやな)さんと沙彩(さあや)さんの、死が…芸術、品…?」

『ぁあん…?』

 

シャンデリアを睨みながら輪音(りんね)は言葉を絞り出す

 

「あの2人の死が…芸術なんて、ふざけたこと、言わないで‼︎」

 

シャンデリアの肩がぴくり、と震える

 

『……あんたも、あたしのクールを否定するのか…⁉︎』

「クール…?人の死は、キャンバスなんかじゃない…‼︎」

 

『黙れ、黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!!!』

 

シャンデリアは炎の鞭を振るう

しなる炎の一撃が輪音(りんね)に迫る

 

「輪音ちゃん‼︎」

「ーッ⁉︎」

 

必死に手を伸ばすレクイエムの前で虚しく炎の鞭は輪音(りんね)に迫り、輪音(りんね)は目を閉じる

 

 

「はぁッ!!!」

 

 

が、その鞭は輪音の目前で叩き落とされる

 

恐る恐る目を見開いた輪音の前、そこには白銀のライダーが立っていた

 

アンダースーツの形状や各所装甲のディテールは正義(せいぎ)九留美(くるみ)が変身するヴァジュラと同一規格だが、そのライダーの装甲はさらに軽量化され、スマートなシルエットを形成していた

 

X字型の緑の複眼が輝く

 

『あんた…あの白い連中と同じヤツらか⁉︎』

「だったらどうするよ?」

 

白銀のライダーが輪音(りんね)を庇うように手をかざしながら不敵に告げる

その声を聞いた輪音(りんね)は眉をひそめる

 

(この声…どこかで…)

 

『生意気な…[ひざまづけ]‼︎』

 

シャンデリアの再びの言圧にライダーが膝を突く

 

『さっさと消えろぉ!!!』

 

シャンデリアが鞭を振るう

ライダーは腰のベルトーヴァジュラドライバーのレバーを引いて戻す

 

Re():CHARGE(チャージ)

OVER(オーバー) ACTIVATION(アクティベーション)

 

腰のベルトからスパークするエネルギーが供給され、ライダーの体に走る緑のエネルギーラインと複眼が輝く

 

ライダーは急加速し、シャンデリアに肉薄してその胸を殴りつけ吹き飛ばす

 

『がぁッ⁉︎』

 

吹き飛ばしたシャンデリアを見下ろし、ライダーはその拳を握る

 

「あんたら怪物は、あたしが許さない。あたしが、全員滅ぼしてやる…‼︎」

 

『クソが…あたしをイラつかせるヤツらばっか…‼︎スモーク‼︎』

 

シャンデリアが背後でオドオドしていたノーワンースモーク・ノーワンを恫喝する

 

【は、はいぃッ‼︎】

 

スモーク・ノーワンは両肩のユニットから煙を吐き出してシャンデリアと共に包み込むとその姿を煙ごと霧散させた

 

「逃げたか…」

 

白銀のライダーはヴァジュラドライバーから《法皇》のアニマアルカナを取り出し、変身を解除する

 

そこから現れたのは、輪音(りんね)らと同じ棺ノ宮(ひつぎのみや)中央学園の制服を着たポニーテールの少女だった

 

その姿を見て輪音(りんね)は目を見開く

 

五月(さつき)…さん…⁉︎」

 

ライダーに変身していた少女ー逸羽(いつは) 五月(さつき)輪音(りんね)を助け起こし、埃を払う

 

「無事でよかった、輪音(りんね)…久しぶり‼︎今日からまた学校に通うようになっていきなりノーワンが学校に出てくるなんて…」

「ノーワンのこと、知ってるんですか⁉︎」

 

ふふん、と五月(さつき)が腕組みしながら得意げに微笑む

 

 

「まぁそりゃあね、特例隊員として埋葬部隊に入ったから」

 

 

「……え?」

 

五月(さつき)の言葉に輪音(りんね)は思わず呆けた声を漏らす

 

「あたし、ちょっとした特異体質?らしくてさ。このシステムに適合してるらしいんだよね。だから特例として隊員に任命されたんだよね」

 

五月(さつき)は頬をかきながら照れ臭そうに答える

 

その背後で立ち上がるレクイエムを振り返り、五月(さつき)は続ける

 

「……非死者0号。あんたも埋葬対象だけど、学校の中だから今は見逃すよ。輪音(りんね)も、(かなえ)先輩たちも巻き込みたくないし」

 

どこか感情を殺した伽藍洞の目がレクイエムを捉える

 

 

「ーあんたも、ノーワンも、化け物は全員倒す。ひとりも逃さない。ひとりも、許さないから」

 

 

冷ややかにそう告げた五月(さつき)をレクイエムはただ黙って見ていることしかできなかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「そんなことが……」

 

(のぞみ)(いずみ)を前に呟く

 

「……ごめんセン兄…私…」

『謝ることじゃねぇよ。無理なもんは無理だったんだから』

 

申し訳無さそうに頭を下げる(のぞみ)(いずみ)は慰める

 

『…まぁ、こんなことになっちまうからこそ、キー子には外に出てみて欲しいんだよなぁ』

 

(いずみ)の言葉に希は目を伏せ、クッションをギュッと握り顔を埋める

 

「………理屈は、わかる…でも…」

 

(のぞみ)の脳裏に記憶が過ぎる

陰で笑われ、除け者にされ

そして何よりもー

 

『友達になりましょう?』

 

 

「……やっぱり、嫌だ…こわ、い…」

 

 

『キー子……』

 

肩を震わせる(のぞみ)を心配そうに見つめる(いずみ)

 

『……まぁいきなり学校ってのも、難しいだろうし。そうだなぁ…まずは俺たちの屋台の手伝いからはじめてみないか?』

 

(いずみ)の提案に(のぞみ)はしばらく逡巡しながらもこくり、と頷く

 

『よし!じゃあ明日早速お昼に行こうぜ。ちゃんと寝とけよ』

 

(いずみ)の言葉に(のぞみ)は小さく頷く

 

(……すまんな、キー子。荒療治させてもらうぜ)

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

翌日 棺ノ宮(ひつぎのみや)中央学園の昼休憩

 

再びオープンされていた中庭中央庭園のキッチンカー前にはもう1人の人物が姿を現していた

 

売り込みのプラカードを持ったまま立ち尽くしていたのはスマイルマークのお面を被った小柄な少女

少し着崩して中にパーカーを着ているが、棺ノ宮(ひつぎのみや)中央学園の制服を着ている

 

「…………」

 

特に売り込みをする訳でもなく立っている異様な少女に驚きながらも、クレープやタピオカが美味しかったのか、学生たちはキッチンカーに集まっていく

 

楽しそうに談笑する少女たちをチラと、お面の下から(のぞみ)が見つめる

 

友達で集まって話をするごくありふれた光景

 

だが、(のぞみ)は胃がひっくり返るようなストレスも同時に感じていた

吐きそうになるのをグッと堪えながら、震える手でプラカードを持ち続ける

 

 

『友達だったらしてくれるでしょ?』

 

『裏切るんだ、あたしのこと』

 

『使えないヤツ。もういいよ』

 

 

頭に過ぎる声を頭を振って振り払う(のぞみ)

 

「あ、あの…」

 

そんな中に突然声がかけられ、ビクッと肩を震わせる

 

そこに立っていたのは輪音(りんね)だった

 

「えっと…お話があるって聞いてきたんですけど…どこかで会ったことありましたっけ…?」

「ぅ、あ……ッ⁉︎」

 

輪音(りんね)の声かけに大きく後退り、(のぞみ)が目深にフードを被る

 

「え、えぇと……」

 

怯えた様子の(のぞみ)輪音(りんね)が所在無さげに声を漏らす

 

たまらずキッチンカーの奥に逃げ込んだ(のぞみ)と入れ替わるように、キッチンカーからマスクの人物が降りてくる

 

『嬢ちゃん、ちょっと話いいかい?』

 

ちょいちょい、と近くの席を指差すマスクの人物を警戒しながらも輪音(りんね)はゆっくり頷いた

 

 

席に着いて向かいあったスカルが胸ポケットから1枚のカードデバイスを取り出す。見覚えのあるそれに輪音(りんね)は小さく驚く

 

「アニマアルカナ…⁉︎」

 

『やっぱこちらの事情ある程度知ってんだな。なら話がはえぇ』

 

アニマアルカナに顔のような表示が現れ、その口が動くのを見て輪音(りんね)が思わずギョッとする

 

「アニマアルカナが、しゃ、喋ってる⁉︎」

『まぁちょっと訳アリでな』

 

スマホスタンドに立てかけられながらがっはっはと泉が笑う

 

『あー……こんなナリの俺が言うのもなんだが、俺たちは怪しいものじゃない。仮面ライダーレクイエム、平坂(ひらさか) 十三(じゅうぞう)のことも知っているし、向こうも俺たちを知っている。ノーワンやジョンドゥを正しく葬るための同士……とまで言い切るのは、おこがましいかもだが』

 

マスク越しに頬を掻きながら告げるスカルの言葉を聞いて、輪音(りんね)は少し警戒を緩める

 

十三(じゅうぞう)さんと…じゃあ、あなたも仮面ライダーなんですか?」

『俺は仮面ライダーのサポート側。変身するのは、こいつとその妹の方なんだ』

 

スカルが立てかけられた泉をつんつん突く

 

「妹さん…?」

『さっきのお面娘だよ。話はそこなんだが…嬢ちゃん名前まだ聞いてなかったなそういえば』

「あ、えっと…(つなし) 輪音(りんね)です」

『輪音か、オーケイ。オレは八七(やしち) (いずみ)。訳あってこの見た目だが一応人間だ。あと、このマスク男はスカルって呼んでくれ』

『よろしく。輪音(りんね)ちゃん』

 

泉がディスプレイの顔を笑みに変えて告げる

 

 

輪音(りんね)、キー子…オレの妹の友達になってやってくれないか?』

 

 

「…友達、ですか?」

 

思ってもみない言葉に輪音(りんね)が首を捻る

 

『ああ、そうだ。うちの最高の妹、キー子なんだが…親が早くに亡くなってからオレがずーっと面倒見てきたからか、オレにべったりでな…オレとしては嫌な気は、しないが…』

 

(いずみ)が微笑みながらも真剣に言葉を続ける

 

『あいつ、昔学校でいじめにあってから1人でオレ以外の人間と話すのを極度に嫌うんだ。そのせいで、まだ16なのに学校も通ってねぇ』

「そうなんですね…」

 

輪音(りんね)が目を伏せる

 

『……中々キー子のヤツ話さないから、なんかあったのはわかるんだが、このままじゃダメなのにも違いねぇ。だから、学校でもオレたち以外に支えになってくれる…友達ってヤツが必要と思ってな』

 

スカルが腕を組みながら頷く

 

『俺たち側に込み入った事情があるから、ただの学生だと(のぞみ)も色々気を使うかもと思ってしまってな。そんな時に輪音(りんね)ちゃんを見つけた訳だ』

『仮面ライダー側の事情とかがわかる、輪音(りんね)ならキー子の友達に申し分ないと思ったんだよ。それ以上に、中々クールなヤツと思ったからってのもあるがな』

 

(いずみ)の言葉に輪音(りんね)があはは、と照れ臭そうに小さく笑う

 

「あ、じゃあ今朝下駄箱に入っていたこれって…」

 

輪音(りんね)が取り出したのは小さなメモ用紙

書いてある内容は『昼休憩に裏庭に来て。話がある。お面とプラカードを持ってるのが私 八七(やしち) (のぞみ)』とあった

 

『俺が書いたニセモノだ』

『まぁオレは書けねぇからな』

 

何故か誇らしげに言う(いずみ)に乾いた笑いが漏れる輪音(りんね)

 

そんな輪音たち以外にも、様々な人々が行き交う中庭をふらふらと1人の男子学生が猫背で歩いていく

 

キョロキョロと辺りを見回すと、談笑する生徒やらボールで遊ぶ生徒、雑誌で何かを一緒にチェックする生徒が目に映る

 

「………み、みんな、羨ましい…友達たくさん…」

 

男子学生は掻きむしるように頭を抱える

 

「……僕も、友達が欲しい……で、でも僕には、友達が作れなかった…声かけるの…苦手だし……し、趣味も得意なことないし……」

 

「………だから、し、死ぬ時くらい…みんなで一緒に死にたかった、のに…‼︎」

 

 

男子学生の脳裏に先日の光景が思い出される

 

棺ノ宮(ひつぎのみや)中央学園の裏掲示板。そこで募集されていた「集団自殺」

 

これだと思った。死んでしまいたいほど孤独で、そんな孤独なのに友達を作る才能も無い自分でも、これなら死ぬ時は孤独でなくなる。最高の死に方だと

 

「げほっ、ごっ、ごほっ…‼︎」

 

思っていた

密閉した廃バスの中で炊いた練炭から発生する一酸化炭素の煙に大きく咳き込み、朦朧とする意識の中で周りを見る

 

周りの者たちは皆、既に眠るように息を引き取っていた

 

死んでいないのは、自分だけだった

 

(……僕は、死ぬ才能も…無いのか…)

 

 

『ーいいえ、あなたは抜群のセンスの塊よ?』

 

 

朦朧とした意識の中、高慢そうな女の声が響く

 

現れたのは灰色のドレスに豪奢なシャンデリアのような飾りを纏う怪人

 

その怪人が手を振るうと、周囲の死者から黒い炎が飛び出し、煙のように渦を巻きだす

 

【本当に死ぬなんて思ってなかった】

      【興味本位だったのに】

  【俺、もう死んだの…?】

         【こんなはずじゃなかった】

    【あぁ…】

 

 

【【【死にたくない】】】

 

 

『見なさいな、こいつらは無様にも死ぬことを受け入れてないのにこんなことをした。でもー』

 

怪人は男子学生ー灰谷(はいたに) 冬利(とうり)を指差す

 

『ーあなたは違う。自ら死を選んだ。まぁ、今の死に方は…あなたの望み通りでは無さそうかしら?』

 

その言葉に冬利(とうり)は朦朧とした意識の中でも頷く

 

(そうだ…僕は、僕は……僕を残して死んでほしくなかった…‼︎)

 

 

(こんな1人で死ぬのは、嫌だ…死ぬ時くらい、孤独は嫌なんだ)

 

 

『アハッ、最高にクールな願いじゃない』

 

パチン、と怪人が指を鳴らす

黒い煙となって渦を巻いていた死んだ生徒たちのアニマが一斉に冬利(とうり)の口に入り込み、冬利(とうり)が体をのけぞらせながらのたうち回る

 

苦しみ悶えるその体から灰色の煙が大きく吹き出し、中央に杯の描かれたカードが現れると、その煙が新たな怪人の姿を形作る

 

【ぁあああああ!!!】

 

現れた怪人ースモーク・ノーワンに近づき、シャンデリアがその肩にキスをする

 

 

『ハッピーバースデイ、スモーク・ノーワン♪』

 

 

「ああああああ!!!!」

 

冬利(とうり)が叫ぶと共に、その体が灰色の炎に包まれて燃え上がり、中央に現れた杯のアニマアルカナが取り込まれると共にスモーク・ノーワンへと変貌が完了する

 

突然現れた怪物に悲鳴をあげだす生徒たちに向けてスモーク・ノーワンは腕を振り回して煙を放つ

 

放たれた煙に頭を包まれた生徒たちは息苦しそうな様子を見せ倒れていく

 

 

【1人にしないで…1人で死にたくないだけなんだッ!!!】

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

美術室で片付けをしていた十三(じゅうぞう)が中庭から灰色の煙が噴き上げていることに気づく

 

「⁉︎あのノーワンか‼︎」

 

美術室の扉を開け、周囲に生徒たちや教師がいないことを確かめてデスサイズドライバー・ギロチンを装着する

 

《サーティーン:デス》

 

起動したアニマアルカナをセット、右手で首を掻き切るように、祈るように一文字を切り、親指を下に向ける

 

「変身‼︎」

 

《エクスキューション・アップ》

《リバース・デス》

 

ギロチンにより落ちて燃え上がった頭を軽く蹴り飛ばし、黒い炎を纏いながら疾走。ライダースーツのような姿に変身して頭をキャッチしながら窓を開けて身を乗り出して跳躍する

 

ヘルメットのように頭を装着し直し、レクイエムへと変身が完了した十三(じゅうぞう)は中庭に足を向けるが、その視界の端を横切った何かに目を向け、驚愕に目を見開く

 

 

少し背の高い眼鏡をかけた細身の男

 

見間違うはずがない。零楼院(れいろういん) 咲夜(さくや)ージャック・ランタンが鼻歌を歌いながら闊歩していたのだ

 

 

レクイエムー十三(じゅうぞう)の視界が途端に赤く、怒りに染まる

 

「ジャック・ランタン‼︎」

 

悠々と歩くその前にレクイエムが割り込む

ヒュウ、と口笛を吹きながら咲夜(さくや)は笑った

 

「おやおや、仮面ライダーレクイエム。こんなところで奇遇だネ」

「なんでお前が…ここにいる⁉︎」

「べぇつにィ?ただの探し物、サ。昔作った『オモチャ』がここにあるらしいからネ」

「探し物だと……」

 

レクイエムがギリ、と拳を握る

 

 

「ーふざけたことを、ぬかすなぁ!!!!」

 

 

《ワン・カウントダウン》

 

ドライバーのレバーを一度下ろし、腕に出現させた黒炎のギロチン刃を回転させながら拳を振るう

 

咲夜(さくや)の姿が黒炎の中に掻き消え、レクイエムがその姿を探すと、背後にジャック・ランタンへと変貌した咲夜(さくや)が立っていた

 

『酷いことするなァ、キミは』

 

帽子の鍔をなぞりながらランタンがやれやれと肩を竦める

 

「酷い…だと…⁉︎ 六美(むつみ)を殺したお前がほざくなぁ!!!」

『殺したァ?バカ言わないでおくれヨ。ワタシは彼女を次のステージに導いてあげたのサ‼︎』

 

ランタンが芝居がかった仕草で腕を広げながら笑う

 

『そもそも、彼女ほどの天才はワタシがどうこうしなくとも遅かれ早かれ殺されていただろうヨ』

「なんだと…⁉︎」

 

杖をくるくると回しながら道化は続ける

 

『彼女みたいな「出る杭」を憎むにせよ、我が物にしようとするにせよ、どのみち彼女は人らしくは死ねない。ならば‼︎その頭脳が褪せることなく残せる今の方が彼女は幸せだろうよ‼︎』

 

 

『彼女を「殺した」のがワタシの責任とは、勘違い、言いがかりも甚だしいよネェ?クックック』

 

 

レクイエムが笑い続けるランタンの顔を殴りつける

 

『大体キミもさぁ、未練がましい男だよネ』

 

背後から現れたランタンがレクイエムの肩を杖で打ち据える

 

「がっ⁉︎」

 

『彼女を愛せなくなったなら、別の女を探せばいい』

『「繁殖相手」に拘り続けてワタシに八つ当たりとか、いいメイワクだよねぇ?』

 

ねぇ〜?と2人のランタンが顔を見合わせ、首を傾げて嗤う

 

「おかしな能力を…ッ!!!」

 

アニマライターで2人のランタンをまとめて薙ぎ払うと新たなランタンが2人校舎の影から姿を現し、杖から放つ光弾でレクイエムを前後から撃ち抜く

 

「ぐあっ!?」

 

『キハハハハ‼︎そのおかしな能力に手も足も出ないじゃないか』

『《死神》というのも名前負けかナ?』

『おいおいワタシ?それは流石に言いすぎだ、ぞ?』

 

と自分の頭を指で弾き、ケラケラと3人に増えたランタンが笑う

 

分身と合わせた数が1人足りなくなってることに気づくレクイエムをもう1人のランタンー頭が黒くのっぺらぼうになった分身が羽交締めにする

 

「くっ!?」

 

キャハハハハハ!!と耳障りな声で哄笑を上げ、3人のランタンがレクイエムを取り囲み、しがみつく分身ごとレクイエムを光弾で撃ち抜く

 

ダメージを負ったレクイエムが膝を突く

 

3(トレス)

2(ドス)

1(ウーノ)‼︎』

 

ランタンのカウントダウンとフィンガースナップに合わせてレクイエムにしがみついていた分身の顔が赤く肥大化して丸ごと爆発、巻き込まれたレクイエムに大きなダメージを与える

 

「ぐ、あっ……⁉︎」

 

たまらず変身が解除され、負傷した十三(じゅうぞう)が倒れ伏す

 

『キハハハハ‼︎ほんとブザマだねェ、十三(じゅうぞう)クン?』

 

哄笑を上げるランタンを十三(じゅうぞう)は怒りの籠った視線で見上げ睨むことしかできなかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『この煙…あのスモーク野郎か⁉︎』

 

話し込んでいた(いずみ)が中庭に蔓延してきた煙に気付き、スカルも立ち上がる

 

『あのノーワン、やはりここの生徒か何かか…』

 

輪音(りんね)も警戒しながら立ち上がり、辺りを見渡す

そんな3人が座る席にお面パーカー姿の少女ー(のぞみ)がずんずんと歩いて近寄ってくる

 

『おう、(のぞみ)‼︎オレたちのでばーんんッ⁉︎』

 

(のぞみ)(いずみ)の宿るアニマアルカナを乱暴に鷲掴みにし、お面を外して睨みつける

 

お面の下の顔に思わずスカルと輪音(りんね)もたじろぐ

普段表情の変化がわかりにくい(のぞみ)だが、この時ばかりはほぼ初対面の輪音(りんね)ですらわかるほどの激怒を見せていた

 

『え、えーと……(のぞみ)、サン…?』

「……セン兄、私を、騙してた」

 

ギクゥ⁉︎と聞こえそうなほど(いずみ)がアニマアルカナの体を震わせる

 

『………どこから?』

「キー子の友達になってやってくれないか、から」

『ノウ!!!!ほぼ全部!!!!』

 

(のぞみ)(いずみ)を掴む手に更に力を込めて握りしめる

 

「…………セン兄とスカルは、信じてたのに」

 

どこか悲しそうな声で呟くのに輪音(りんね)が気づく

が、それを(いずみ)たちに話すより早く(のぞみ)がアニマアルカナを振りかぶる

 

『ちょっ、キー子?(のぞみ)さん!?』

 

「ーセン兄なんか、知らない」

 

ぶんっ‼︎と思いっきり(いずみ)の入るアニマアルカナを放り投げて捨てる

 

『キー子ォォォォォォォォ!?!?』

 

『い、(いずみ)ぃ!?』

 

放り捨てられた(いずみ)を追いかけて駆けていくスカル

取り残された俯く(のぞみ)に何か声をかけようと手を伸ばす輪音(りんね)

 

【ぁあ、あぁ‼︎死んでよ、僕と一緒に死んでくれ!!!】

 

そこにスモーク・ノーワンが現れ、体のユニットから灰色の煙を噴出してくる

 

発生した煙を避けることもできず、輪音(りんね)(のぞみ)が煙に巻き込まれてその姿がかき消された

 

 

『ホウ、あのノーワン中々逸材じゃないか。シャンデリア、今度はいい素材を使ったみたいだねェ』

 

渦巻き、ドーム状になっていく黒みがかった灰色の煙を見上げてランタンが感嘆の声を上げ、ふうむと顎をなぞる

 

 

『これはひょっとしたらひょっとするかなァ?』

 

 

ランタンを睨む十三(じゅうぞう)がぼろぼろの体を無理矢理に立ち上がらせる

 

『その体で何ができるんだい?万全でもワタシに及ばなかったのにィ?』

「黙れ…ッ‼︎俺は…俺はお前たちのような悪魔を許さない…俺は、俺は…ッ!!!」

 

死神(デス)》のアニマアルカナを構える十三(じゅうぞう)にやれやれと肩を竦めながらランタンが杖を向ける

 

瞬間、背後から飛来してきた炎蝶の爆発がランタンをよろめかせる

 

ぱち、ぱち、ぱちと拍手を鳴らしながら十三(じゅうぞう)の側にジャクリーン・キャンドルが近寄る

 

『いい啖呵だったぞ、十三(じゅうぞう)。そういう言葉が聞きたかった』

「何の用だ…キャンドル!?」

 

怒鳴りつける十三(じゅうぞう)の右手を掴み、《死神(デス)》のアニマアルカナを取り上げると、別のアニマアルカナを握らせる

 

今までのアニマアルカナとは違う金色の複雑な装飾が施されている新たなアニマアルカナを

 

『たまには《恋人》らしくプレゼントしてやるってことさ』

 

その言葉に十三(じゅうぞう)が苛立たし気にその手を振り払う

 

十三がその新たなアニマアルカナを掲げ、スイッチを入れる

 

 

《テン:W(ウィール)O(オブ)F(フォーチュン)

 

 

普段よりも歪んだ音声が響き、黒いエネルギースパークと赤い波形を放ち、アニマアルカナが起動する

 

「変身ッ!!!」

 

それをドライバーにはめ、十三(じゅうぞう)がレバーを下ろす

 

《エクスキューション・アップ》

《ディサイド・フェイト》

 

ドライバーからいつもとは違う黒い稲妻と赤黒い炎が吹き出し、十三(じゅうぞう)が苦しみだす

 

「ぐっ、がぁあぁあぁあ……ッ!!!」

 

獣のような唸りと共に十三(じゅうぞう)が立ち上がり、天に向けて吠える

 

首に2つのギロチンが現れ、乱雑に落とした首を拾って乗せなおす

 

炎が体をライダースーツ状のスーツとして覆い直し各所に赤いラインが走っていくと共に赤い鋭い爪を持つ手を作り出す

 

赤黒い炎が頭部をなぞり、黒い仮面となると共にその両側にギロチン型のバイザーが2つ降り、竜のような禍々しいマスクを完成させ、バイザーの奥から真紅の眼光を輝かせる

 

 

《リバース:W(ウィール)O(オブ)F(フォーチュン)

 

 

「ーはぁぁぁ……ッ!!!」

 

息を吐き出しながら肩を震わせるレクイエム

 

『だから何度来てもムダー』

「グルァァァァァァウゥゥゥッ!!!」

 

獣じみた咆哮と共にレクイエムが腕を振り回して前方を薙ぎ払うと、赤黒い炎の車輪が出現してランタンを抉り裂く

 

『グゲぁっ!?』

 

吹っ飛ばされたランタンに一歩、一歩と歩んでいくレクイエム

 

「フゥーッ、フゥーッ…!!!」

 

その周囲に赤黒い炎の車輪が渦を巻き、背には後光の如き車輪が姿を現す

 

 

「グルゥゥゥアァアアァアアァァァァ!!!!」

 

 

竜のような咆哮を上げ、レクイエムが爪を立てながらランタンへと襲いかかっていった




新たなアニマアルカナの力に飲まれ、暴走するレクイエム
それと対峙するランタンの動向の真意とは

『ワタシの目的?キミたちには理解できないサ』

その一方でスモーク・ノーワンが発生させた煙のドームに閉じ込められた輪音は、1人ぼっちになった希と言葉を交わす

「…友達とか、いらない」
「ひとまずここをどうにか出ましょう。私も手伝います」

窒息死のタイムリミットが近づく中、頑なな態度を続ける希

絶対絶命の中、事態を覆す《運命の輪》は《力》を呼び覚ます

次回仮面ライダーレクイエム
『8の正位置:私のダチ』

「ー私のダチを、死なせやしないッ!!!」
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