ご了承ください
デスサイズドライバーからセットされていたアニマ・アルカナを抜き放つと、レクイエムの姿が白い炎に包まれた後に一瞬にして
「ーいるんだろ、出てこいよ」
振り返らずに告げた
振り返った
つかつかと歩み寄ってくる
「どういうつもりだ…キャンドル‼︎」
恐る恐る目を開けたそこには、キャンドルの胸倉を掴み上げる
「どういうつもり、と言われても……私はただ、いつも通り観戦していただけだよ。いつも通りね」
「何がいつも通りだ⁉︎ 一般人にアレを見せてどうする気だ⁉︎」
キャンドルは怒鳴りつける
「ー分かりきった話だ」
キャンドルがニッと妖艶に微笑むとその姿が灰色の炎に包まれ、人間のものから人外の怪人の姿へと変貌する
頭部から伸びたキャンドルの蝋が髪のようになった頭部に白衣のようなぼろぼろの装飾を纏う、どこか科学者を思わせる容姿の灰色の炎を揺らめかせる怪人の姿に
『ー私の「退屈」を紛らわせるため、だ』
「ーッ⁉︎」
怪人の姿に変貌したキャンドルを見て
それを見たキャンドルはフフッと愉快そうに笑うと
「やめろッ!!!」
《エクスキューション・アップ》
《リバース・デス》
レクイエムの姿に変身した
『ハハッ、冗談じゃないか。私は人間を襲うなんて退屈なことはしないよ。わかっているだろう?』
「貴様のことなど、信用できるか…ッ‼︎」
レクイエムがキャンドルを引き寄せ、その顔を睨みつける
「ー撃てぇッ!!!」
そこに突然の声が響くが早いか、大量の銃声が響く
反射的に頭を庇った輪音の前にレクイエムとキャンドルが割り込み、弾丸の雨を弾く
「ー
新たに現れたのは棺桶のマークが刻まれた青いプロテクターを纏う特殊部隊のような姿をした一団
その先頭に立つ厳しい顔の青年がアサルトライフルを構えたままレクイエムとキャンドルを睨む
「……
レクイエムが舌打ち混じりに一団を睨む
「あの研究所の事故から逃走した貴様らは討伐対象であると同時に情報源だ。今度こそ拘束させてー」
青年が何かを告げるが早いか、レクイエムが右手、キャンドルが左手を振り抜くと埋葬部隊の目前に黒と灰色の火柱が上がり、思わず顔を覆う
一瞬の視界不良が治ると、そこにはもう2人の怪人の姿はなかった
「ーチッ、反応を追え‼︎逃すな‼︎」
青年は後続部隊に指示。部隊員たちは散開し、あたりの捜索を始めていく
残った数名が現場を検査している中、青年は腰を抜かしてポカンとしていた
「……話がある。我々に同行してもらおうか」
何がなんだかわからない中、既にキャパオーバーを迎えていた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
居室に戻ってきた
「……しつこい連中だ。埋葬部隊…」
「全くだな。せいぜいノーワンくらいしか倒せない豆鉄砲と技術を抱えて何がしたいんだか」
部屋の隅の一角
ぼろぼろの暗幕のようなカーテンを垂らした隙間から顔を覗かせたキャンドルがニヤニヤと笑う
「元はといえば、お前が煽るからだろうが」
「煽るのは当然だろう?」
薄目を開けた
机の上に膝を突き身を乗り出し、目と鼻の先まで顔を近づけたキャンドルの灰色の瞳が
「私は、「面白い」からお前と共にいてやってるんだ。お前が退屈なことばかりしているなら……」
チリン、と右耳のピアスを揺らす
「ー少しくらいは、目移りしてしまっても仕方ないだろう?」
妖艶な仕草からんべ、と舌を出しながらキャンドルが笑う
そのキャンドルから椅子を回して背を向け、
「
無視されてつまらなそうな様子でキャンドルが髪先をいじる
「……巻き込んだ以上、説明は必要…か…」
色々な計器類が並び、中には特殊部隊らしい人々が持っていたものと同じ武装やプロテクターなども並んでいる
「ごめんなさいね、彼顔怖かったでしょ」
不安そうに車内に視線を巡らせていた
先程の正義という青年よりも穏やかそうな様子で柔和な印象を受ける垂れ目が眼鏡の奥から見えている
「顔が怖いは余計だ。
と、そこに
「事実でしょ?あまり一般人の子を怖がらせちゃダメよ正義」
「…怖がらせているつもりはない」
「……不安がらせてしまったならすまない、改めて自己紹介をしよう。俺は
「埋葬部隊……警察の方だったんですね」
「ああ。尤も、パニックを避けるために極秘に活動している部隊ではあるがな」
正義は襟元を整えながら
「我々の行動理念は先程の怪物……
「非死者……」
「半年ほど前、魂の物質化という研究を行なっていた研究所にてある発見があった……」
正義は懐から小さなカード型デバイスを取り出す
十三が持っていた黒いものよりも小ぶりなそのデバイスのスイッチを入れる
《イレブン:ジャスティス》
起動されたデバイス表面に心電図の波形が走り、白い炎が表示される
「それがこのアニマ……炎の形で物質化された魂の概念だ」
「その研究の途中、研究所で大きな事故が起こった……」
その表情を険しくさせ、拳を握りしめる
「その結果、白や黒とは異なる特異な状態になった《灰色のアニマ》を宿した怪物が生まれた。それがあの非死者…ノーワンたちだ」
その話を聞き、
「ノーワンは死者であって死者でなく、生者であって生者でない。死んでいないから活動するし、生きていないから殺すことができない」
「そんな怪物が、事故で野に放たれた。戒厳令を敷いて一般市民には秘匿されているがな…」
「殺すことができない…それならどうして、皆さんみたいな機関が?」
「殺すことはできない。だが、『死に直させる』ことならできる。研究により生まれたのは何も怪物だけではなかったというわけだ」
「アニマ干渉弾。着弾した対象のアニマに干渉波を撃ち込み、そのアニマの炎を掻き消す特殊弾丸だ。アニマ研究の延長として生み出されていたこれでなら、ノーワンたちの灰色のアニマを消して消滅させることが可能になる」
弾倉をしまい
「……そう、ノーワンを…ひいてはヤツらを生み出すジョンドゥを葬り去るのは我々の仕事であり使命。だからこそ、勝手を許せぬこともある」
「ー単刀直入に聞く。
「非死者…0号…」
一瞬問われた意味の理解が遅れる
すぐにそれが
「……あの、黒い人は…何者なんですか?」
「ヤツは、事故のあったその日…燃え盛る研究所で初めて確認されている。ジョンドゥと呼称される統率個体の2号ージャック・ランタンよりも早く」
「ー我々は、ヤツこそが非死者の生みの親だと判断し、最優先撃破対象として追っている」
何度目かもわからない息を呑む
その問いに、一瞬逡巡し
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『オーマイゴッシュ!!!なんたる悲劇!!!』
大袈裟な仕草で体をくるくると回しながらジャック・ランタンが天を仰ぎながら叫ぶ
『なんのことだ?』
側に腰を下ろしていたジャック・トーチが鬱陶しげに問いかける
『なんのこと!?何をおっしゃるか我が友トォォォォチ!?』
『我々の友になりうるノーワンが‼︎ トラフィック・ノーワンが死んでしまったのです‼︎ こんな辛い悲劇がありますか⁉︎ よ・よ・よ…』
どこから取り出したのかナプキンで目元らしい場所を押さえながらランタンが身を丸める
目元からは溶けた蝋が涙のように溢れ出している
トーチはその様を見ながらため息で灰色の灯を揺らす
『心にも無いことで騒ぐな。貴様が同胞と認めるのは決まって我々ジョンドゥの域に到達した者だけだろうが』
ランタンはスッと立ち上がると微かに肩を震わせる
『いやいや、悲しいのは事実だとも。いつ我々の友になるかわからないのがノーワンだからネェ』
ちーん、と鼻をかむような動作をするとポイっとハンカチを捨てて振り返る
『サァ、気を取り直して今日も新鮮な死を探しにいこうカ‼︎』
投げ捨てたハンカチは灰色の炎に包まれて燃え落ちた
埋葬部隊からの事情聴取が終わって解放された後、自宅まで送られてその後は疲れて眠ってしまった
バタバタで予定していた日取りから1日遅れてしまったが、
「えっと、
目的地である大きな病院ー
案内された病室を院内マップから見つけた
「おはよう
狭い病室の中、ベッドから体を起こした女性が
「うん、色々あって大変だったけどね…」
「こんな都会に来ることなんか初めてだもんね」
あはは、と朗らかに笑うその女性は
「でも本当によかったの?こっちに引っ越してきて」
「うん、大丈夫。ここの近くの学校の方が進学にも有利そうだから」
「それはよかった。高校生活も元気でね。怪我とかしないように」
優しく告げる
「?
その表情の変化を見た
「どうかしたの?」
「…いや、ちょっとその…嘘、吐いちゃったというか…」
前日
「えっと…あの人のことは、よく知りません…通りがかった道で、出会っただけなので…」
でも、何故だか彼らの言うような事件の犯人だとはどうしても思えなかったのだ。
あの場にいた自分を、埋葬部隊が放った弾丸から庇ってくれた2人の背中を思い出しながら、
「……そうか、わかった。協力感謝する」
「感謝」という
「長く引き止めてしまってすまなかった。家まで送っていこう」
「その…今になってまた罪悪感が…」
「あらら、なんだか大変だったのね」
「優しいあなたのことだから、その嘘は多分意味があることだったのね。今でもそんなに罪悪感に思うなら、そう簡単に吐ける嘘じゃないわ」
「そうなのかなぁ…」
「
「……改まってどうしたの…?」
「あなたは、優しすぎるから。もっとあなたはわがままでいていいのよ」
ただ優しく告げる
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
新居であるアパートに足を運びながら
『だから俺は、死を弔うと共に二度と死なさない為に墓守を続けてるんだ』
同時に埋葬部隊ー
『ノーワンを、ひいてはヤツらを生み出すジョンドゥを葬り去るのは我らの仕事であり使命』
『ヤツこそが非死者の生みの親と判断し、最優先撃破対象として追っている』
(私は、どうしたらよかったのかな……)
はぁ、と
一般人の自分が考えても仕方のない話、そんなことはわかっている
でも、どうしても
考えるのをやめる気だけは起きなかった
キキィィィィィィッ!!ドンッ!!
突然の甲高いブレーキ音と鈍い衝撃音
ビクッと体を揺らしながら思わず
目前の道路で転がっていたのは横転した一台のバイクと倒れたドライバー
そして、頭から血を流し倒れた1人の女性だった
「た、大変‼︎」
泡を食って
そこに、新たな怪人物が現れたからだ
「おかあさん…‼︎おかあさん‼︎」
頭から血を流し横たわる女性を、娘らしい少女が揺さぶる
『よ・よ・よ…なんたる悲劇‼︎最愛のお母様が死んでしまうなんて‼︎』
そこに場違いな芝居がかった声が響く
少女は声の主人を、傍にどこからか現れた怪人を見上げた
『安心して、マドモアゼル。貴女のだーいすきなママは死なないとも。ワタシがここに来てラッキーだったねぇ‼︎』
怪人ージャック・ランタンは少女を錫杖で押し退けると倒れる彼女の母の胸元に錫杖を当て、かき混ぜるように回す
「ぁ゛、あぁあ…ッ⁉︎」
息絶えていたはずの母親の体がのけ反り、悲痛そうな声が漏れると共にその胸から灰色の炎が飛び出し、母親の体を包み込む
「おかあさん‼︎」
叫ぶ少女の目の前でそれは立ち上がり、炎の中から異形のシルエットを顕にする
砕けた骨や金属パーツを無理矢理に蝋で固めたような人型
頭部があるべき場所には骸骨が収まり、その眼窩には灰色の炎が揺らめいている
【ァア、アァァァアァアァァ…‼︎】
現れた怪人ートラフィック・ノーワンⅡを目にした野次馬たちが悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げていく
『あーらら…この前のとほぼ同じノーワンになっちゃったかー。まぁ交通事故死だから当然かぁ』
つまらなそうに錫杖で肩を叩きながらランタンがため息を吐く
「お、かあさん…⁉︎」
変わり果てた姿となり苦悶の声を上げる母親だったトラフィック・ノーワンIIを目にして腰を抜かしている少女を一瞥し、半壊したバイクのドライバーを見つけたランタンはヒラヒラと手を振る
『じゃあ、ワタシはもう1人も助けなきゃだからバーイ♪ 親子水入らずで楽しみたまえ』
離れていくランタンの代わりに歩み寄ってくるトラフィック・ノーワンIIに怯える少女に
「大丈夫、大丈夫だから…‼︎」
少女に、そして自分に言い聞かせるように呟く
「撃て‼︎」
が、迫り来るトラフィック・ノーワンIIの体に
「つくづく巻き込まれて体質だなキミは…」
部隊の指揮をしていた1人が振り返る
「
【ァアァァァァァァァアァァ!!!】
トラフィック・ノーワンIIは腕を振り回し、鎖に繋がれた金属塊を投げつける
部隊員たちは金属製の盾を構えて並び立ち、その金属塊の一撃を危なげなく受け止め弾く
「対象非死者1名、攻撃開始‼︎」
トラフィック・ノーワンIIの体にアニマ干渉弾が直撃し、白いスパークを放出していく
【ァアァアァァァァ……‼︎】
苦悶の声を上げてもがいていたトラフィック・ノーワンIIは膝からくずおれ、灰を散らすようにぼろぼろと崩れ去る
(倒した…⁉︎本当に倒せるんだ…)
「埋葬完了」
『あーーーーーーーッ!?ちょっとちょっとなーにしてくれちゃってんのせっかくワタシが救ってあげた命にィ‼︎』
その場から離れていたランタンがトラフィック・ノーワンIIの撃破に気づき抗議の声を上げる
「非死者2号…‼︎」
『だっさー……その名前やめてヨ。ワタシにはジャック・ランタンって名前があるんだからサぁ〜』
「ふざけるな。化け物が…‼︎」
部隊員が再び機関銃を構えるのをつまらなそうに眺めるランタンの背後から新たな灰色の炎が立ち上がる
【ァアァァァァ!!!アチぃイィィィ!!!】
新たに現れたのはバラバラになったバイクのパーツを無理矢理蝋で繋ぎ合わせ人型にしたような怪人
両腕と脚先にはタイヤも備わっている
【オレ、は…まダ死ニたくねェ…マだ、走リ足りネぇ!!】
バイク怪人は右肩から伸びたマフラーパーツから灰色の炎を噴き上げ、叫びながら腕を振り回し辺りに手当たり次第灰色の火炎弾をぶち撒ける
『ぉおいいねェ、バイク・ノーワン♪ 人一人轢き殺しといてまだ走りたいから生きたいとかァ、めっちゃ生き汚くてトレビアン♪』
「意識を保っている…フェーズ1か⁉︎」
【走り、足リねェェェェ!!!】
バイク・ノーワンはそのまま爆走し、道路に灰色の炎を轍として残しながら走り去っていく
『ま、そういうことでご機嫌よう、埋葬部隊の諸君〜♪』
ランタンはヒラヒラと手を振ると錫杖の先を地面に叩きつけ、その姿を消す
「フェーズ1非死者が逃亡中‼︎ そちらの対処を優先する‼︎」
部隊員たちが近くに停めていた装甲車に乗り込む中、携帯端末で何かを入力した正義は
「その少女は一旦頼む」
「へ、あ、はい⁉︎」
思わず返事をした
「えっと…大丈夫?怪我とかはない?」
近くの公園まで避難した
何故かぼーっとしていた少女は気がついたように隣に座る
「……お姉ちゃん、誰?」
「あ、えっと私は…そう‼︎ あなたのお母さんが事故で怪我しちゃって、今お医者さんたちが見てるから、付き添いというか…」
事実を伝えるわけにもいかず、言葉をなんとか取り繕って伝える
そんな彼女を見上げる少女はさらに首を傾げながら問う
「ーおかあさん、って…誰?」
「………え?」
少女の予想外の問いに間の抜けた声が漏れる
「……いや、お母さんはお母さんだよ?さっきまで一緒に…」
「…そんな人知らないよ?」
少女の顔を見て
先程、母親に泣き縋り懸命に母を呼んでいた少女
そんな少女の顔に、今は涙の一つも無いのだ
まるで悲しいことなんて、なかったかのように
「なん、で…⁉︎」
「それが埋葬部隊のやり方の代償ってワケさ」
カツカツと響くヒールの音に気がつく
輪音の前に現れたのは、キャンドルだった
「代償…?」
「アニマ干渉弾でノーワンのアニマを破壊する。それは即ち混ざり合って曖昧になった生のアニマと死のアニマをまとめて揉み消しているに等しい」
続けて現れた
「それはつまり、ノーワンだった人間が『生きた証明』もまとめて消してしまうということ。埋葬部隊が葬ったノーワンに一般人が気づかないには、あまりにも便利な『代償』さ」
「待って…‼︎じゃあ、あなたがノーワンを倒しても…‼︎」
「そうならない為に、俺がいる」
「え…?」
「俺は誰も死に直させない。正しく弔い、その死に白黒付ける」
「それが俺の、『
それを
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【走ル、走る、走るゥゥゥゥゥゥ!!!!】
灰色の炎を噴き上げながらバイク・ノーワンは駆け、道路を走る一般車両を吹き飛ばしていく
撒き散らす火の弾に埋葬部隊の車両も思うように近づけない
そのさらに後方に
デスサイズドライバーギロチンを腰に巻き、アニマアルカナを取り出して起動する
《サーティーン:デス》
ドライバーにアニマアルカナを装填し、右親指を下に向けて自身の首をなぞるように、祈りを捧げるように横に引く
「変身」
デスサイズドライバーギロチンのレバーを親指で下ろす
《エクスキューション・アップ》
《リバース・デス》
十三の首元にギロチン台が現れ、その首に刃を下ろす
落ちた首を右手でキャッチすると共に首が黒い炎に包まれ、首元から漏れた黒い炎が全身を包み漆黒のコートを纏うような怪人に変質させる
落ちた首をヘルメットを被るように戻し、バイザーを下ろすようになぞると髑髏型の仮面が出現しつつギロチン型のバイザーが下りる
ブォンッ!!
激しいエンジンのいななきと共に
「な、非死者0号!?」
驚く
「お先に失礼」
レクイエムはベルトのスロットから鈍い銀に輝くライターを取り出し、蓋を開くとそのイグナイターを指で擦り上げる
《イグニッション:デス》
ガイド音声が流れたライターーアニマライターをバイクの後方に放り投げると路面とイグナイターが擦過し、黒い炎を大きく噴き上げながらライター自体が巨大化する
巨大化したライターは空中で分解され、バイクの後部座席に突き刺さり、新たなエンジンとマフラーユニットに変形して黒い大きな炎を噴き上げる
ハンドルを引き絞ると同時に黒炎が更に噴き上がり、超加速したバイクが疾駆する
【ァアァァァァ!?】
バイク・ノーワンは後方から接近する黒いバイクに気づき、早速火炎弾での反撃に移る
レクイエムはその火炎弾を見切り、スピードを落とさずにその火炎弾を回避しながらバイクノーワンに迫っていく
ベルトからもう一つ金のアニマライターを取り出したレクイエムはイグナイターに指を押し当て擦り、黒い炎を点火すると並走するバイク・ノーワンに振りかぶり薙ぎ払う
黒い炎の斬撃がバイク・ノーワンを捉え、その車体のバランスを大きく崩壊させる
【ガァァァァ!!!】
バイク・ノーワンは腕をレクイエムに伸ばし、掴もうとするがバイクを起点にした回し蹴りで払われ、返す刀の蹴りで吹き飛ばされる
【グゥアァァァァ!!?】
バランスを崩したバイク・ノーワンが大きく滑りながら怪人形態に戻っていく
「ーまだまだ走りたいか。だがお前のツアーはここで終わりだ」
「罪も死も、ここで白黒付けてやる」
目前に転がり出たバイク・ノーワンを捉え、レクイエムがシートの上に直立して踵を打ち合わせると、エンジン部分と合体したライターの点火部が回転して直立する
ドライバーのレバーを3回下ろし、引いた片足を巨大化したイグナイターにかけ、引き絞る
バイクが黒い炎に包まれ、フロントに炎のギロチン刃が形成される
「ー俺の名はレクイエム。お前の『鎮魂歌』だ」
《ラスト・エクスキューション》
レクイエムが跳躍
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
バイク・ノーワンに炎を纏う右脚での飛び蹴りをぶち当てる
直撃と共にバイク・ノーワンの体を黒い炎が包み、その体を固定
そこに加速したバイクが疾走しフロントのギロチン刃がバイク・ノーワンを断裁する
バイク・ノーワンが爆発、灰色の炎が白と黒の炎に分かれ、白い残り火がドライバーらしい男の姿にゆらめく
『走りたかった…走りたかったんだ…けど…』
男は泣いていた。泣きながら膝を突き崩れ落ちる
『ちょっとした、不注意だったんだ…許してくれ…』
涙混じりに独白し、炎は消えて灰が残る
レクイエムはベルトから小さな壺を取り出し、灰を収める
収まった壺のプレートに名前が浮かび上がる
「確かに、聞き届けた。
ようやく追いついた
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日
「俺が使うこの力ーデスサイズシステムはジョンドゥによってかき混ぜられたアニマを断裁して正しく生を残して死を与える。
ある墓石の前にしゃがみ込みながら
隣にしゃがむ輪音はそれを静かに聞いていた
「…あのバイクの人は…」
「ちゃんと死ねたよ。俺が見届けた」
「でも、あの子のお母さんは…」
あの後少女は埋葬部隊に保護された
不思議な顔をしたまま連れていかれる少女の様子を見た
「……たしかに彼女がどう生きたか覚えている人はいなくなった。でも、彼女がいたことは俺たちが覚えて残していける」
他の墓石とは違う、昨日の日付だけ掘られた墓石
名前すら聞けずに消えてしまった、一人の母親の墓標
並んだ
「俺が『レクイエム』である理由だ。二度と誰も、『二度目の死』に至らせない。俺が絶対忘れさせないし、俺は絶対忘れない」
「俺はその為に、戦い続ける」
その手に握るアニマアルカナを握りしめながら
「ククク、お前も大概悪人じゃないか
木に寄りかかり2人を遠巻きに眺めながらキャンドルが笑う
「レクイエムである理由が『二度目の死』に至らせないこと、ねぇ。とんだ大嘘を吐く」
コートのポケットから取り出したものを弄び、日光に翳しながらキャンドルは目を細める
「忘れたなんて言わせないぞ、
逆さに翳したアニマアルカナはひび割れ、普段は暗転しているはずのディスプレイに絵柄が表示されたままだった
描かれた絵柄はー6番《
「お前は、愛しい恋人ー
「この、私をー」
転校先の高校で新たな生活が始まる輪音
「ねぇ、くくり様って知ってる?」
その学園にはある噂が流行っていた
加えて思わぬ再会にも恵まれる
「人が死ぬ、というのは何も生命活動の停止だけじゃない」
「死んで当然だった。ざまぁ見ろ」
何気ない学園の中に現れる死の影
奔走する《死神》の前に《女教皇》は現れる
『あたしのお気に入り、傷物になんかさせないわよ』
次回
「15の逆位置:くくり様が裁くもの」
「今のお前に、そのアルカナは使えない」