夕闇がさす廊下を気怠げにスマホを弄りながら女子生徒が歩く
ふと、ゴムが焼けるような鼻を突く臭いを感じた生徒は顔をしかめ、辺りを見回す
【
突如響く声に生徒ー
彼女に歩み寄ってきていたのは異形の怪人
ドロドロに溶けた蝋を固めたようなあちこちに縄が絡まったような造形の大柄な胴体。そこから伸びる腕はしめ縄のような太い布が螺旋に絡まりゴリラの腕のような歪な大腕を形成している
「何…⁉︎なんなのよあんたァ⁉︎」
【お前は生きるに値しない。罰を受けろ‼︎】
怪人が腕を振るうと、そこから解けた縄が一本
「か、ぁ…⁉︎」
首が絞まる苦しみにもがく
「ぁ゛…‼︎ た、す……け……⁉︎」
助けを求めもがく
手を伸ばすがどこにも届かない
怪人が引き摺っていった先は校庭の隅に立つ一本の木
怪人は
「ひ、がぁ…あ゛ッ…‼︎」
首吊りの形となった
バタバタと脚を動かし、首に巻き付いた縄を引っ掻き足掻くが、縄は解ける気配は無い
【死ぬまで噛みしめろ…それがお前の…】
言いかけた怪人が何かに気づき振り返りざまに腕を振るい、飛来してきた黒炎の刃を払う
「そこまでだ、ノーワン‼︎」
目前に現れていたのは黒い炎をマフラーのように揺らめかせる骸骨のマスクを被る黒い怪人ー仮面ライダーレクイエムだった
レクイエムは怪人の背後で木から吊り下げられバタバタともがく女子生徒を確認し、手にしたアニマライターを構え直して駆ける
ノーワンを避け、生徒の方に駆けるレクイエムの脚にノーワンが放った縄が絡まり、転倒させられる
「くっ!?」
レクイエムを手繰り寄せながらノーワンは叫ぶ
【行かせるか…‼︎あの女への罰の邪魔はさせない‼︎】
「明確な意志が残っている…⁉︎フェーズ2ノーワンか…‼︎」
体を捻りながらアニマライターから伸ばした黒炎で縄を焼き切り離脱すると、ノーワンを蹴りながら跳躍して身を翻し構え直す
『バーンッ‼︎』
そこにどこからか響いた声と共に爆発が発生、レクイエムは思わず顔を覆う
『アッハハァ♪ご機嫌よう、レクイエム』
カツカツとヒールを鳴らしながら現れたのは溶けた灰色の蝋をドレスのように纏い、その上からシャンデリアのような金属装飾を纏う怪人
その手には灰色の巻物が握られている
「シャンデリア…‼︎」
『あら?あたしのことご存知なんて嬉しいわね。まぁ、仲良くする気は無いけどッ‼︎』
シャンデリアが巻物を振り抜き、広がったそれを鞭のようにしならせてレクイエムへと叩きつける
いくつかは回避するが、何度かの鞭撃が直撃し甲高い鞭音を鳴らしながらレクイエムを後退させる
「ぐっ⁉︎」
『ほらほらほらほら‼︎もっと踊ってみなさい⁉︎』
シャンデリアが巻物を掴み、頭上にアーチ状に広げるとそこから浮かび上がった文字や符号が灰色の炎を帯び、弾丸のようになってレクイエムへと降り注ぐ
「…ッぐ、くひィ……ッ」
一際大きく空気が漏れた音が響き、吊り下げられた少女が脱力する
【ー罰は下った】
ノーワンはそれだけ告げるとどこかへ飛び去っていく
それをみたレクイエムが拳を握り怒りを露わにするのを見たシャンデリアがクスクスと笑う
『お生憎さま〜ランタンみたいにあたしは放任主義じゃないのよ』
シャンデリアは巻物をくるくると丸め直し、レクイエムに突きつける
『あたしのお気に入り、簡単に傷物にはさせないわよ。レクイエム』
宣戦布告でもするかのように告げるとシャンデリアは灰色の炎を噴き上げながら優雅にカーテシーをし、その姿を消した
「……」
一人残されたレクイエムはデスサイズドライバーギロチンからアニマアルカナを取り外し変身を解除して事きれた少女を見上げる
悔しさを滲ませるように拳を握った
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翌日、
1ーBの教室に着いた
中学も同じだったのか、それとも友達作りが上手いのか多くの生徒が各々グループを作ったり集まったりして談笑している中、上京してきたばかりの
(急ぐことでもないけど…誰とも喋る相手がいないのはなんだか落ち着かないなぁ…)
上京してから数日ほど、
そうこうしているうちに担任の先生が教室に入ってきて入学式後の簡単なオリエンテーションが始まる
当たり障りない連絡を聞きながらふと窓の外に視線を移す
「……あれ?」
と、窓の外ー校庭を一人歩く人影を見つけ、それが見知った姿に見えて思わず注視する
風に靡く黒色のポニーテール、覗く右耳にぶら下がる独特な炎の意匠のピアス。見間違うような見た目でもない
(あれって……キャンドルさん⁉︎)
ぎょっと見つめているうちにホームルームが終わったらしく、起立の号令に
もう一度視線を向けたがそこにはもうキャンドルらしい人物の姿はなかった
オリエンテーションの後はすぐに下校となり、
早く下校するように、とは言われていたが気になっていたことがあった
(……さっきの、キャンドルさんならなんでこんな所に…?)
「………ここ、どこ…?」
当然のように迷子になった
登校初日の学校。立地や建物の構造なんてわかりようがなかったのになんとも無謀なことをしてしまった…と頭を抱える
「どうしよう…早いところ昇降口を探さなきゃ…」
ひとまず手近な案内板を探して廊下を行く
ふと、校庭の隅に人だかりができていることに気づく
(なんだろう、あれ…?)
窓の側に歩み寄って人だかりの方を眺める
「誰か自殺したらしいよ。警察の人とか取り調べしてる最中だったはず。人だかりは物珍しい見物人とかだね」
側からかけられた声に気づき振り向く
いつの間に現れたのかそこには一人の長身な女子生徒が立っていた
「自殺…⁉︎」
告げられた恐ろしい事実に驚き、側に現れた驚きを忘れ声が漏れる
「あれ?HRとかで言われなかった?新入生とかも連絡されてると思うけど…早く下校するようにって言われてなかった?」
「あー………」
ぱしっ、と頭を叩く
キャンドルのような人物を見たことでぼーっとしていて話を聞いてなかったのだ
「そういう理由だったんですね…」
「まぁ、自殺するような子じゃなかったから事件性を疑われてるみたいだけどね。だから全校生徒早下校」
短く纏めたポニーテールを揺らし、こちらに向き直って女子生徒がニッと悪戯っぽく笑う
「そんな時に学校にまだ残ってるボクたちは随分と悪いことしてるって感じだねぇ」
「あ…⁉︎いや、えっと私はその…道に迷って…⁉︎」
女子生徒がぷっと吹き出す
「ごめんごめん、意地悪な言い方しちゃったね。どこに行きたいのかな?」
「とりあえず昇降口はここからどう行ったら…」
「昇降口ね。1年と2、3年で別だからわかりづらいよね。こっちだよ」
案内に従ってたどり着いた昇降口は案外近い位置にあった
「こんな近くだったなんて…」
「まぁ初登校だと迷いやすいよ。うち結構デカい学校だし」
案内してくれた先輩に頭を下げているとぱたぱたと新たな足音が聞こえてきた
「
「あ、いやその…ちょっと気になる本探してて…」
「キミも今日は早く…って⁉︎」
「え、
なんとそこに立っていたのは
「…え、まさかヒラさんと知り合い…?」
「ヒラさん…?」
「知り合いというか…一昨日くらいに知り合ったばかりだけどね。俺の管理してる霊園に迷い込んで」
「うわ、まさかの偶然…⁉︎こんなことあるんだ…」
驚いたまま固まっていた
「ボク、
「あ、私は、
慌てて
「
にこやかに手を握ると
「これ、ボクらの部活の紹介。今日配るつもりだったんだけど早帰りになっちゃって…興味あったら来てね」
チラシを
「じゃあ、流石に私も帰るよ。またね
「気をつけて帰りなよ、
「
「いや、流石に霊園の管理人と兼職はできないよ。俺は外部委託で頼まれてる部活の顧問だけやってる臨時講師みたいなものだよ」
そこには鮮やかなフォントで「描きたいならうちに‼︎」とだけ書かれた思っていたよりもシンプルなチラシがあった
「……えっと、何部なんですか?」
チラシを覗き込んだ
「……全く…ちゃんとした募集しないから部員が増えないってあんだけ言ってるのに…」
はぁと重いため息を一つ吐き出す
「美術部兼文芸部だよ。といっても、この学校は運動部の方が有名だったり有力だから、
「そうなんですね…美術、詳しいんですか?」
「大学まででかじってただけだよ。まぁ今もお供物とかでたまに制作するけど」
「…さて、学校案内のひとつでも普段ならしたいけど…今日はもう帰った方がいい」
「自殺のことですか?」
「半分は正解」
真剣な目付きになって
「ーあの自殺、本当はノーワンの仕業だ」
「!?」
数度遭遇しただけとはいえ、その異常さを知っている
「…まだ当の犯人が見つからない。だから、今日は早いとこ帰った方がいい」
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警視庁地下
「アニマの異常波動反応、まだ見つからないか?」
多数のモニターが並ぶ部屋
「見つからないわ。昨日の深夜に活性化反応があったのだけど…」
「……これだけ見つからないということは…」
「じ、十中八九…フェーズ2に覚醒した個体…だとお、思われます」
ボソボソと呟きながら新たな人物が現れる
ボサボサの髪の隙間から丸い眼鏡をかけた顔が辛うじて伺える白衣を纏うその人物はタブレットの情報をチェックしながらおどおどと
「プロフェッサー・ジュナ…貴女もそうお考えですか」
「あ、あ、アニマの異常反応が…なくなったり、あ、現れたりを繰り返すなんてことは…い、意志の薄いフェーズ1以下では…ふ、不可能ですから……」
ジュナの言葉に
「プロフェッサー。開発中のアレはまだ出来上がらないのですか?」
「ま、まだ、まだまだ不完全で、す…ライブアクティブシステムの、せ、せ、制御がまだあ、安定しなくて…ですね…」
「……そうですか」
あからさまに落胆した様子を見せる
苛立つような様子も見える
「焦っても何もいいことはないわよ、
「……ノーワンもジョンドゥも、0号ものさばらせておくことは許されない。連中は、一体残らず駆逐すべき存在だ」
鋭く目付きを歪ませ、拳を握る
「あんな存在は、記憶に残すことすら許すべきではない…‼︎」
モニタールームの外の廊下
タブレットの薄明かりに照らされた眼鏡を直しながらジュナが薄く微笑む
「あ、あ、あなたには……使いこなせますかね…?」
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校庭まで出てきた
規制線が張られ、近づけなくなっているそこには1人の男子生徒以外はもう人は見られない
それなりに長い時間生きてきたであろうその木の枝の一つに擦れたように樹皮が剥げていたものがあることに気づく
「首吊り自殺だったらしいよ、その生徒」
同じく木を見上げていた男子生徒が口を開く
おとなしそうでどこにでもいる平凡な雰囲気の男子生徒だ
「何でも、誰かをいじめていたことを後悔して死んだとか」
男子生徒はそれだけ告げると興味を失ったかのように木から離れていく
「いい気味だよ。本当に」
小声で男子生徒が漏らした言葉に
「やあ、
「キャンドルさん!?」
そこに現れていたのは黒色のポニーテールを揺らす白衣を羽織った女性ー窓から見たキャンドルらしい女性だった
「んー?よくわかったわね。髪色も違うのに」
悪戯っぽく笑いながらキャンドルがポニーテールに纏めた髪に指を通していくと、黒かった髪色が以前見たものと同じ灰色に変わっていく
「いや…ピアスとか独特でしたし…そんな気はして」
「あーなるほどね」
チン、と右耳のピアスを鳴らして頷く
「キャンドルさんは、ここで一体何をー」
キャンドルが
「ーここではその名前はだーめ。
「む、
キャンドルはニマッと笑うと纏う白衣を広げて見せる
「私はここの保険医ってヤツ。医師免許なら、生前持ってたし技能はここにあるから、ちょうど良く入れたワケ」
トントンとこめかみをつつく
「生前…やっぱりキャンドルさー
「そうよ?私はジョンドゥ。前に見たランタンとかと同じ、ノーワンを生み出す『非死者』ってヤツよ」
べーっと舌を出しながら答える
その灰色の瞳を見据える
「まぁ化け物だけど、ランタンとかみたいに人間に手は出さないわよ。つまらないし」
「ジョンドゥは……なんで人間をノーワンにするんですか?」
「そりゃあ、お裾分けでしょ。不死の力の幸福のお裾分け」
キャンドルの言葉に
「まぁ、大体がただの死の苦しみを繰り返すゾンビになるんだけどもねぇ〜残念ながら」
幽霊のように手を垂らしておどけてみせる
「……でも、意識がしっかり残ったままノーワンになるヤツもいる。生きてる時の執念とか、そういうもんをそのまま持ち越すヤツらね」
「そんなノーワンもいるんですか…⁉︎」
キャンドルは事件現場となった木を見上げる
「今回のは正にそういう、面倒なタイプって感じねぇ」
廃墟の中、大柄な人影が揺らりと現れ腰を下ろす
灰色の髪を短く刈り上げた大男はつまらなそうに手にした鉄パイプを弄ぶ
「〜♪」
その向かいの瓦礫の山に腰掛けた灰色の長い髪を持つ小柄な少女が鼻歌混じりに爪を弄っている
「……随分と余裕な様子だな。シャンデリア」
少女ージャクリーン・シャンデリアはニマッと笑う
「もちろん。今回のノーワンはあたしのお気に入り。とーってもイカした死から生み出したかわい子ちゃんだもの」
「……イカした死、か。相変わらず貴様の美学は分からん」
シャンデリアが立ち上がり、フフンと鼻を鳴らす
「頭でっかちのトーチには分からなくていいわよ。わかってもらう必要も無いし」
男ージャック・トーチを見下ろしながら嗤う
「ランタンみたいな無策じゃない。意志とクールさがある死からしかあたしはノーワンを作らない。だって、この力は選ばれた者に与えられるべきでしょう?」
カーテシーのようにスカートの裾をつまみ上げて首を傾げるシャンデリアの胸元に灰色のアニマアルカナに似たカードが炎の中から現れ、胸元に入り込む
《ツー:ハイプリエステス》
少女の姿だったシャンデリアの体が灰色の炎に包まれ、ジョンドゥたる怪人の姿へと変貌する
『まぁ見てなさいな。ハング・ノーワンはただイカす死を振りまくだけじゃないのよ』
上機嫌に手を振りながらシャンデリアがトーチの前から姿を消した
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その裏手にある雑木林のある木の下
木に何かを括りつけ、眼鏡をかけた女子生徒は手を合わせる
「くくり様、くくり様…どうか、どうかお願いします…」
「あいつに…
怨嗟のこもった声が響く
その目前で、木からぶら下がったロープが揺れていた
その先に「
「くくり様という
「くくり様…?」
キャンドルに送ってもらう道すがら、キャンドルは突然そんなことを
「七不思議と言っても最近になって生徒たちの間で流行りだした話ではあるがねぇ」
やれやれと肩を竦めながらキャンドルは続ける
「罰して欲しい相手の名前を書いて、ぬいぐるみをロープで木から吊るして『くくり様お願いします』と呟いたらくくり様が罰してくれる」
「ーその相手に、首吊り自殺をさせることで」
首に指を当てながら舌を出すキャンドルの言葉に
「それって…⁉︎」
「ヒヒ、呪いなんてものはありはしないよ
「……それなら…」
スッと、キャンドルの瞳が細められる
「ーあるのは事実としての死。それだけさ」
その言葉に
「何も死の形は一つじゃない。よくあるように生命活動が停止するだけが死じゃないのさ」
キャンドルがふと足を止め、隣の
「ー珍しい客人だね」
その目前にいつの間にか眼鏡をかけた細身の男が立っていることにようやく
ニヤニヤと笑みを浮かべた灰色の髪の男
キャンドルのものにも似た着古した白衣を羽織っている
「キヒヒ、久しぶりだネェ〜キャンドル♪」
「ああ、久しぶりだな。ランタン」
キャンドルが告げた名に
男ージャック・ランタンは肩を震わせながら笑うと両手を広げ、目を見開く
それに合わせてその胸元に灰色のアルカナが現れ、炎と共にその身に吸い込まれる
《ゼロ:ザ・フール》
男の姿が灰色の炎に飲み込まれ、のっぽな怪人ージャック・ランタンの姿へと変貌する
『キヒヒ♪ 今はシャンデリアのターンで少し暇してるんだァ』
ランタンは錫杖を振り回しながらキャンドルに杖先を向ける
『ーシャル・ウィ・ダァンス…?』
先程女子生徒がいた雑木林
そこに残されたロープから吊り下がるぬいぐるみ
それを異形の腕が掴み、ロープごと引きちぎる
【ーその願い、確かに聞いた】
異形ーハング・ノーワンは引きちぎったぬいぐるみとロープを自身の体に押し付け取り込むと、木陰にその巨体を溶け込ませて消えていった
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
背中は嫌な汗でぐっしょりと濡れている
命の危機を理解しているからだ。そうなっても仕方のない話だろう
いや、
『自殺』の理由などなくても
『殺される』理由ならー
【ー
ひっ、と足がもつれながらも立ち止まる
目前に巨大な両腕を垂らす怪人ーハング・ノーワンが現れたのだ
【お前は罪人だ…生きるに値しない】
巨大な腕からロープを伸ばし、もう片方の腕で掴みパシンッ‼︎と音を鳴らしてロープを張る
「な、なんなんだよ…‼︎なんで、なんで殺されなきゃならないんだよ‼︎謝るから、あいつには謝るから…‼︎」
【謝る…?それで済むと思うのか…ッ‼︎】
ハング・ノーワンはジリジリと
【お前の罪は、死によってしか贖えない】
【苦しみ抜いて、罪を悔いながら、死ねッ!!!】
ハング・ノーワンはロープを打ち鳴らしながら
ーブルンッ!!!
放たれたロープが
「逃げろ‼︎」
「キャンドルのやつめ…‼︎どういうつもりだ⁉︎」
【お前……‼︎】
ハング・ノーワンにバイクを向けながら
《サーティーン:デス》
デスサイズドライバーギロチンにアルカナをはめ、下に向けた右親指を首の前で祈るように引く
「変身‼︎」
《エクスキューション・アップ》
《リバース・デス》
「ーお前の死も生も、ここで白黒きっちり終わらせる‼︎」
【黙れ‼︎まだ終われない‼︎終わるわけにはいかない‼︎】
ハング・ノーワンが振り回すロープを逆ウィリーしながら回転して弾くと、ハンドルを引き絞りエンジンを吹かす
ーブォンッ!!!
それを見たハング・ノーワンが巨腕を振り上げる
ーその腕が更に巨大化する
ーガギュイイイインッ!!!
「ー何ッ!?」
レクイエムが驚愕の声を上げる
レクイエムのグレイブースターによる突進
それをハング・ノーワンは真正面から受け止めていたのだ
膨張し、血管か筋繊維のように脈動するロープが蠢く巨腕が前輪を挟み込み、金属音と焦げた擦過臭を振り撒いている
【ーァァアァァアァァァァァァ!!!】
ハング・ノーワンは力任せに前輪を持ち上げ、バイクごとレクイエムを持ち上げるとそのまま振り回し、大通りのガードレールへと放り投げる
「かはッ…!?」
グレイブースターごとガードレールに叩きつけられ、ガードレールをひしゃげさせながらレクイエムが呻く
バイクをどかし、よろめきながら立ち上がるレクイエムに突撃してきたハング・ノーワンの巨腕に咄嗟に受け身を取るレクイエムだがその一撃は凄まじいパワーでレクイエムのスーツに火花を散らしよろめかせ、更にもう一撃はその体を浮かび上がらせる
【邪魔をするなぁ!!!】
ハング・ノーワンの拳が浮かんだレクイエムを捉え、大きく吹き飛ばす
「かはっ!!」
乗り捨てられた車に叩きつけられ、レクイエムがのけぞる
「くっ…そ…ッ⁉︎ なんて力だ…⁉︎」
『キャハハハ‼︎ クールでしょう?ハングのパワー』
逃げ回る人々を見下ろしながらそこらの車のボンネットに腰掛け、シャンデリアがからからと笑う
『あたしが選んだサイコーの死から生まれたのだもの。あんたが倒してきたランタンの雑魚とはワケが違うのよ♪』
ハング・ノーワンの拳をいくつかくらいながらもなんとか受け身を取りながら身を翻すレクイエムだが、そのダメージの前に膝を突く
【邪魔をするお前も罪人…死の裁きを…‼︎】
「……そんなのはごめんだ」
レクイエムは迫るハング・ノーワンを睨みながら一枚のアニマアルカナを取り出す
先日
「これをお前に渡しておこう」
墓地の清掃をしていた
「……アニマアルカナ?」
「レクイエムの機能拡張用のアニマアルカナだ。ランタンどもが作り出すノーワンも、次第に手強くなるだろうからな」
カカッと笑うキャンドルを睨みながら
「ーただ、そのアルカナは恐らくそのままでは使えんぞ」
「…何だと?」
「アニマアルカナは持ち主自身のアニマに共鳴して起動する」
キャンドルが
「お前の内の内をよく見なければ、アルカナは微笑まない」
キャンドルの発言を思い出しながらもレクイエムは起動ボタンに指をかける
「知ったことか…‼︎」
レクイエムがボタンを押し込む
が、アニマアルカナの起動音は鳴らなかった
ディスプレイにも変化は無い
「何…ッ!?」
驚愕するレクイエムにハング・ノーワンのパンチが突き刺さり、その体を吹き飛ばす
苛立たしげに何度もボタンを押すがアルカナは反応しない
【消えろォオ!!】
「くっ!?」
振り回された巨腕を受け止めたレクイエムにもう片方の拳が何度も叩きつけられる
あまりのダメージによろめくレクイエムを、ハング・ノーワンのアッパーが打ち上げた
「ぐぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
『ー私の愉しみに触るな…‼︎』
対峙するキャンドルとランタン
「こんなこと、もうやめて‼︎」
「私の痛みも分からないヤツが、口を出すな‼︎」
「くくり様」の正体に近づく輪音
「お前の内に聞け。そうすればアルカナは微笑む」
キャンドルの囁きに十三は自身の内に力を掴む
次回
「15の逆位置:『悪魔』の証明」
《リバース・デビル》
「ここからは、悪魔的に行かせてもらう‼︎」