破壊されたデスク
血を流し倒れる警官隊たち
そこには地獄が広がっていた
そこに、俺は立っていた
俺自身も腕を負傷していた
負傷し、動かない左腕を投げ出し右腕の銃を構える
警官隊と共に突入した、特務部隊が持っていた特殊拳銃だ
「何故…何故だ‼︎ ■■!!」
咆哮する
切れた口から血の味が広がる
対峙したそれはー
それの姿はーわからなかった
黒いノイズが入った、いやまるで世界というキャンバスの中から抜け落ちたように黒塗りになったそれは何やら言葉を放つ
【ー■■■か■た、う■■■った、アハハ‼︎】
その化け物を睨み、俺は引き金に力を込める
俺の目には、何故か涙が溢れていた
自室のベッドから十一宮 正義が飛び起きる
脂汗に濡れて張り付く髪を鬱陶しげにどかす
「また……あの夢か……」
忌々しい悪夢
全くもって荒唐無稽、でもどこか強い現実味のある気味の悪い夢
だが、あの黒い何かがノーワンだという確信だけは何故かあった
痛む頭を押さえながら、枕元の常備薬を飲み水をあおる
「……怪物は、記憶すら残らずこの手で…‼︎」
荒い息を上げながら、
「いやぁ、よかった。どこも悪い所は無くて」
大きなデスクの前に腰掛けた初老の柔和そうな男性が笑う
見ているタブレットの画面には人間ドックか健康診断の結果が表示されていた。どうやら自身の健康状態が良かったらしい
「…せ、先週からい、い、いきなり変化は…しないとお、思うのですよ…局長…」
局長と呼ばれた男の前に立つ白衣の小柄な女性が突っ込む
「いやいやわからないよジュナくん。人間いつ不健康になるか、しかもそこから死んでしまうかわからないものだ」
男ははぁ、とため息を吐き、背もたれに身を預ける
「死ぬのは怖いよ。とても怖い。全てがなくなるのも怖いが、何よりもどうなるかわからないのが怖い…だから、私は1秒でも油断はしたくないのさ、自分の健康にもね」
「き、き、局長の健康主義は…ち、ちょーっと、びび、病的すぎますが……」
局長ははは、と笑いながらジュナを見据える
「ー件のシステムの方はどうかね?プロフェッサー」
「で、出来上がっては来てます……せ、せ、先日の、
ジュナは手にしたタブレットを弄りながらボソボソと答える
「あ、あとすすす、少しばかりデータが揃えば…か、完成です…」
「素晴らしい手腕だ。さすが
局長は朗らかに笑いながら拍手を返す
「ー完成を急いでくれたまえ。ノーワンなどという不完全な不死など、塵も残さずに殲滅せねばならない」
「この研究は、一点のシミさえ許しちゃならないんだ」
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夜の街ー
ある町工場の中でチラチラと火が揺れたかと思うと爆発
壁や窓ガラスを吹き飛ばしながら大きく工場が炎上する
【燃えろォ‼︎工場なんて燃えちまえェ!!!】
周囲に野次馬たちが集まりかけたその時、燃え盛る工場の中から灰色の怪人がめちゃくちゃに腕を振り回しながら現れる
灰色の炎が眼窩に揺れる骸骨の頭を持つ怪人
同じく灰色の蝋を固めたような体には複数のシリンダーとパイプが絡み合い、まるで血管と内臓のような構造を作っている
あまりの事態に凍り付く野次馬だが、怪人ーノーワンが振り回す腕の先に備わる噴射口から灰色の火炎が噴き出すのを見て我に返り、我先にと悲鳴を上げながら逃走する
そこに現れたのは白い装甲車
棺桶のマークが入ったそれから、同じマークの特殊装備を着た武装隊が降りてくる
「対象、確認。これより攻撃に移る」
その先頭に立つ白いラインの入ったプロテクターを纏う青年ー
「ー撃てぇッ‼︎」
【ぐっ、オォォォォ‼︎しゃらくせぇ!!】
ノーワンが吠えると共に各部のパイプが大きく音を上げ、ガスを噴き出すと共に点火。体中から劫火を噴出して弾丸を溶かしながら埋葬部隊の隊員たちを焼き払い薙ぐ
「くっ⁉︎」
あまりの熱量に
【ァアァアァァ‼︎全部燃えろ‼︎燃えちまえェェ‼︎】
叫びながら今度は腕のバーナーが点火され、埋葬部隊に向けられる
それに備え、盾を構えた隊員が並び立つ
ーブォォォンッ‼︎
そこに突然の排気音が響く
ノーワン後方の炎の海を切り裂き、バイクに跨った黒い怪人が乱入してきた
「はぁっ‼︎」
【なっ⁉︎】
バーナーを構えるノーワンを黒い怪人がバイクを回しながら蹴り飛ばし、隊員たちの前に黒い炎の轍を残しながら着地する
その怪人を見た
「非死者0号…‼︎」
黒い怪人ー仮面ライダーレクイエムはバイクから降りるとチラと後方の埋葬部隊を一瞥し、すぐにノーワンに向き直る
【お前は…何もんだ…⁉︎】
「俺か?俺は、お前たちの『鎮魂歌』だ」
飄々と答えるレクイエムに苛立ちを見せたノーワンが両腕のバーナーから火球を放つ
手にしたアニマライターに点火し、黒い炎で火球を撃ち落としながらノーワンにレクイエムが肉薄する
腕を押さえながら膝蹴りを打ち込み、ゼロ距離からアニマライターの黒炎を撃ち込んでダメージを与える
【クソッタレがぁ!!!!】
逆上したノーワンは再び全身のパイプラインを加熱し、両腕のバーナーから超高出力の火炎を放つ
2つ目のアニマライターも取り出し、レクイエムも黒炎の火炎放射で応酬する
が、拮抗することもなく、ノーワンの灰色の炎はレクイエムの黒炎を押し戻し、その熱量にレクイエムが思わず顔を覆う
「クソッ、バカげた出力してやがる…この前のとは違うベクトルでパワフルなヤツだな」
顔を拭いながらレクイエムがノーワンを睨む
その時、ノーワンの様子が急変した
【ぁあ…あああ…?】
その体が揺らぎ、人間体のようなものが見え隠れしだす
【ぁあぁぁぁぁぁぁ!!!】
頭を押さえ、半狂乱になったノーワンは灰色の炎を撒き散らしながら逃走を図る
「ッ⁉︎待てッ‼︎」
追おうとするレクイエムとノーワンの間に突如何かが落下、大きな衝撃音と土煙を上げる
ゆらりと立ち上がる灰色の巨体を見上げ、正体に気づいたレクイエムが一歩たじろぎながら構える
「ージャック・トーチ…‼︎」
聳え立つ巨体は蝋の塊を削って塔のような装飾を施したような複雑な構造を持つ鎧に覆われ、塔の窓にあたる部分には灰色の炎が所々揺らめき、頂上にあたる部分には一際大きな炎が轟々と音を立てて燃えている
その左腕にはもう一つの塔型構造ー巨大な大砲が伸びている
『悪いな、仮面ライダー。アレはオレの選んだノーワンだ』
ジョンドゥの一体ージャック・トーチは淡々とそう告げると左腕の大砲を構える
『お前たちも、邪魔だ』
後方から機関銃を向けていた埋葬部隊に向けてトーチの砲撃が放たれる
着弾した巨弾は大きな爆発と灰色の炎を噴き上げ、機関員たちをおもちゃのように吹き飛ばす
「どけっ‼︎」
トーチの巨体にレクイエムが拳を打ち込む
拳の連打にもびくともしないトーチに今度は蹴りを打ち込むがそれをトーチは易々と右手で掴むと、その足を起点にレクイエムを持ち上げる
「な、にっ!?」
『軽いな』
トーチは左腕の大砲をレクイエムの腹に押しつけ、2発の砲撃を放ち大きく吹き飛ばす
「がはっ!?」
吹き飛ばされダメージを負いながらも立ち上がるレクイエムにトーチはほう、と感嘆の息を漏らす
『成る程。ランタンが興味を持つワケだ』
トーチはそう告げると左腕の大砲で地面を殴りつけ、土煙を巻き上げる
『また会おう。仮面ライダー』
煙が晴れる頃にはトーチの姿はノーワンと共に消えていた
レクイエムははぁーっ、と息を吐くと構えを解きグレイブースターに向かって歩き出す
「……俺はノーワンやジョンドゥでは無いぞ」
自身に機関銃を向ける
「非死者0号…お前は、ノーワンやジョンドゥのことを知っている筈だ…ヤツらの足取りも…‼︎ 根源のお前なら‼︎」
レクイエムは振り返らずふぅ、とため息を吐く
「ああ、よく知っているよ」
「⁉︎やはりー」
「ーだが、俺は連中の根源じゃない。俺は俺自身の正義で、連中を眠らせる『ただのレクイエム』だ」
レクイエムの答えに
「……お前の『正義』は、ここにあるのか?」
少しだけ振り返り問いを投げかけるとレクイエムはグレイブースターのエンジンを吹かし、その場から離れていく
「何度見ても思うけどぉ、あんたのノーワンめんどくさ〜」
どこかの廃墟
積み上げられた廃材に腰掛けたシャンデリアが頬杖を突きながら悪態をつき、トーチを見下ろす
『お前の趣味に合わせる必要はない』
「ーけっ、石頭松明野郎が…面白くねぇ〜」
足をぷらぷらさせながらトーチに罵声を浴びせる
トーチは胸からアニマアルカナを取り出し、巨漢の人間体に戻る
「オレの見出した死が生と混ざるまであと少しだ。それまでの暴走を眺めるのもまた一興」
普段無表情なトーチが獰猛な笑みを見せる
「ー破壊、破滅、それがドカンと燃え上がるのは、いつ見ても見ものだぞ、シャンデリア」
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ガランとした教室内の教卓を囲んでいたのは
「ノーワンと一口に言っても作り出すジョンドゥによって生み出され方も性質もかなり異なる。この前この学校に現れたのはシャンデリアが生み出す《杯》型」
「人間の『生きていて欲しかった』という白アニマの願いに死んでしまった別人の黒アニマを混ぜて生み出されるタイプのノーワンだ。基本的に意志も2人分になる分、フェーズ2が生まれやすい」
「フェーズ2……確か、明確な意志があって人間の姿に戻ることもできるタイプでしたよね?」
「その通り」
「意識がほぼ無く、死の苦しみを振り撒くしかできないのがフェーズ0、意志が少しだけ残るが人間体は持たないのがフェーズ1、人間体と強い意識を持ち、モノによっては特殊能力も手にするのがフェーズ2……そして、アニマに干渉してノーワンを生み出すことができるフェーズ3がジョンドゥたち、というワケだ」
教卓に4枚の大アルカナが広げられる
《愚者》《女教皇》《塔》そして《恋人》
「この前のノーワンと共に現れた《
《愚者》のカードを指差した十三が眉根を寄せたのを輪音は見逃さなかった
「……《
大アルカナをしまいながらどこか辛そうな顔を見せた
(キャンドルさんとは何かあるのはわかるけど…ランタンとも何かあるのかな…
見つめていると、
「ノーワンのタイプの話に戻るが、この前取り逃したのは《剣》型…ジャック・トーチが生み出すタイプのノーワンだった」
「《剣》型……」
「…何度か遭遇したことはあるが、攻撃性の高いノーワンになりやすい代わりにフェーズ2として完成するまで時間のかかるタイプだ。早めに見つかれば大事にはならないのだが…」
「あの、《剣》型はどんな形で生み出されるんですか…?」
「ランタンが生み出す《杖》型は『死にたくない、生きたい』という願いから生まれ、《杯》型は『生きていて欲しかった』という願いから生まれる。対して《剣》型を産む願いは『生きてみたかった』と言ったところか」
「『生きてみたかった』願い…?」
「人は、大なり小なり『押し殺したもしもの自分』がいる。その『殺された』もしもの自分を黒のアニマとし、今生きている自分の白のアニマに混ぜ込む。そうして生まれてくるのが《剣》型だ」
その時、美術室の扉が開いた
「お?ヒラさんと
教室に入ってきたのは
「そんなところ。気分転換みたいなものだよ」
「いいなぁ、ボクも占ってよ」
「今日はもう星の巡りが悪いからまた今度な」
えー…と
先日の『くくり様事件』が終わって
顔見知りである
「ちぃーっす…ってアレ?
「あ、えっと…はじめまして。
制服を少し着崩した髪を後ろで括った背の高い女子生徒が入ってくる
初対面らしい
「あたしは
顔を上げた
「
うんうんと
「俺は
「先生だったんスね…よろしくですヒラセン‼︎」
そうこうしてるうちにもう1人が教室に入ってきて
「………」
入ってきた男子生徒はフン、と鼻を鳴らすと教室奥に向かって製作中の絵を漁りだす
「
「あなたは…この前の⁉︎」
自殺した生徒を「いい気味だ」と吐き捨てたあの生徒だった
「
「そんな面倒なモノ、僕は勘弁だね。第一、僕がこの部の部長になったら色々面倒でしょ?」
その絵に思わず
その絵は猫を描いたモノだった
だがその猫は死んでおり、見開かれた目の片方は飛び出し、胴体からは崩れた内臓や骨が見えている
2人の反応を見た
「…今年の1年も偽善者ばかりだね」
その言葉を聞いて
「…感じ悪ぃ…」
1人絵を描き始める
「さて、一応活動的な部員も集まったから告知をしておこう」
教卓奥の黒板に
そこには『
「市の美術展ですか?」
「そそ、美術部としては恒例行事なヤツなんだよねぇ。入選したら
「すげぇ…‼︎あたしらも描いていいのか⁉︎」
「もちろん。3週間後の締め切りに間に合えば誰でも資格はある」
「描く絵のテーマは、『家族との思い出』だね」
「家族との思い出…なるほど」
「何描こうかなぁ〜
「論外だね。僕の絵で家族の思い出?問題にしかならないってわかるでしょ?」
「ま、まぁそうですよね…」
「
思ってもみない反応に
「……クソ親父のことなんて知るかよ…」
ハッ、と
「あ、その…ごめん…なんでもないから…」
「は、はい…」
気まずい間が生まれてしまい、
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その後、
とても綺麗なイラストで
「ほへぇ、
「そんなこと無いですよ。ただ心配なだけですから」
部活が終わった後、帰り道が途中まで同じということで
「いい家族だなぁ…なんか羨ましい」
「……
「うちは、そういうのに縁が無いから。母さんのことはよく覚えてないし、クソ親父は……」
何かを言いかけて
「……なんでもないわ。あ、あたしこっちだからまた明日学校で」
その背を見送っていると、しばらく先に進んだところの小さな町工場の入り口に入ろうとして何やら大声で怒鳴り始めたのが見えた
「
心配になって見ていると工場の中から作業服を着た眼鏡の男性が現れた。どうやらその男性と口論しているらしい
ひとしきり言いあった後、
「クソ親父‼︎死んじまえ‼︎」
捨て台詞を残して去っていく
「
だが
「
息を切らして追ってきた男性が
ふと、隣を見た男性がようやく
「……
「あ、えっとその…私は
それを見た男性は少し驚いていたようだが笑みを返す
「そうか、
男性は白髪混じりの頭を深々と下げる
「私は
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
部活が終わり、雑務を片付けた
「やぁ、待っていたよ」
待ち構えていたように壁に背を預けて立っていたキャンドルがヒラヒラと手を振る
「……なんの用だ、
「この前見つけたノーワンに逃げられたって聞いたぞ?《
はぁ、と
「……この前のハング・ノーワンとはまた違うパワー型だった。放つ火炎の出力が強すぎてマトモに近づけなかった」
「エネルギー攻撃特化型のノーワンか。中々面白い…」
「それに、トーチの邪魔が入ってな。手こずっているうちに逃してしまった」
キャンドルがほう、と顎に手を当てる
「出不精のトーチが姿を現すとは珍しいな。なるほど、ヤツの作る《剣》型ノーワンなら、この妙な反応も頷ける」
キンッ、と右耳のピアスを鳴らす
「出現したのか?」
「いや?違うな。ただ予兆があっただけ、と言ったところか。朧げな気配が強くなってはきている」
その目前にキャンドルが1枚のアニマアルカナを渡す
「持っていけ。《
「また土壇場で使えない、なんてことは無いだろうな?」
キャンドルがやれやれと肩を竦める
「アレはオマエの問題だ。まぁ今度のアルカナは人ならば多くが持つ一面だ。起動できないことはあるまい」
キャンドルは唇に指を当て愉快そうに微笑む
「ただしご利用は計画的に、だ。《
キャンドルの言葉を聞いた
その背をキャンドルの灰色の瞳が静かに見つめていた
「いやはや、お見苦しい所を見せて申し訳ない」
「いえいえ、気にしてませんから…」
頭を下げる
「親子喧嘩中だったんですね」
「えぇ…
東吾の話を聞き、輪音は少し俯く
「……私も、子供の頃は美術で食べていきたい、なんて考えて絵の制作に打ち込んでいました」
「親父の町工場なんか継がない‼︎糞食らえ‼︎って工場を継がせようとする親父と何度も反発した。こんな親父なんか嫌だって何度も思った」
あはは、と
「今では私が、そんな大嫌いな親父と同じことをしてしまってるのは、本当に皮肉ですがね。妻を早く亡くして男手一つで育てた大事な娘なのに、私は嫌われてばかりだ」
寂しげな
「そんなことは無いと思います。
「……ありがとう、
そう微笑む
その足が急に止まった
「
中で作業している機械からは激しく火花が散っている
「工場……町工場……」
夢遊病のようにふらふらと歩んでいく
「あ、ぁあぁぁあ!?」
突如胸を押さえ苦しみ始める
「
灰色の炎と共に
道を行き交う人々が突然の怪物の出現に悲鳴を上げた
【がぁぁぁぁぁ‼︎町工場なんて燃えちまえぇぇぇ‼︎】
先程までとは似ても似つかない獣のような咆哮を叫び、バーナー・ノーワンが辺りに炎を振り撒く
炎の勢いに尻餅をついた
そこに駆けつけた
「大丈夫か、
「
「
「
バーナー・ノーワンは手当たり次第に辺りに火を放ちながら町工場に向けて歩んでいく
拳を握りながら
《サーティーン:デス》
「
「ーノーワンに変貌したその時点で、その人間は死んでいる。俺が終わらせるか、埋葬部隊が滅ぼすかしかできないんだ…ッ」
「ーそんな…」
力無く膝を突く
「ー変身‼︎」
《エクスキューション・アップ》
《リバース・デス》
【またオマエかぁぁあぁぁあ!!!】
バーナー・ノーワンが振り返りながら炎を噴出して攻撃する
レクイエムはその出力にたじろぎながらバックステップで回避する
「やはりその火力が厄介だな。なら」
その手に新たなアニマアルカナを取り出す
《フォーティーン:テンパランス》
アルカナを入れ替え、ドライバーのレバーを下ろす
《エクスキューション・アップ》
《リバース・テンパランス》
ーガシャンッ‼︎
再びレクイエムの首がギロチンで斬り落とされる
首から吹き出した黒と青の炎がレクイエムの体を包み込み、その姿を変貌させていく
コートのようなスーツは少し丈が短くなり、漆黒ながら白衣のような服に変化し、腕や脚にパイプに接続されたプロテクターが装着される
首の周りに青い炎が変化した蛍光を放つリングが浮遊し、その首部分に落ちた首をはめ直し、仮面が現れる
指で目元をなぞると、ギロチン型のバイザーがゴーグルのように装着される
《ブラストロフィー》
炎が変化したカップ型の武器が両手に現れ、それに腰のアニマライターを装填する
《イグニッション・テンパランス》
「はっ‼︎」
バーナー・ノーワンの放つ炎に向けてブラストロフィーを向けトリガーを引く
ブラストロフィーから放たれた黒と青の炎が灰色の炎に真正面からぶつかりその炎を押し込み、バーナー・ノーワンを吹き飛ばす
「なるほど、これなら…ッ」
突如襲いきた眩暈にレクイエムが体をふらつかせ、頭を押さえる
「《節制》の逆位置…『浪費』ってワケか。今までの形態で一番エネルギーを消費しやがる。たしかにじゃじゃ馬だ」
バーナー・ノーワンが立ち上がるそこに突撃しながらブラストロフィーを捻りモードを変える
《モード:マグナム》
「はぁっ‼︎」
ブラストロフィーから放たれた火炎弾をバーナー・ノーワンはいくらか焼き払うが、弾幕全てを防ぐことは叶わず何発か直撃を受け体をよろめかせる
《モード:サーベル》
再びモードを変え、ブラストロフィーから炎の刃が伸びる
バーナーの炎を収束させて振り回すバーナー・ノーワンの炎を切り裂き、ブラストロフィーの炎のサーベルが縦横にその体を切り裂いていく
【ぐぁぁあぁぁあぁあ!?!?】
バーナー・ノーワンが地面に転がされる
レクイエムが構える中バーナー・ノーワンが立ち上がる
【俺は、俺はこんな町工場嫌なんだ…‼︎こんなもん全部燃やしちまえば、俺は自由になるんだァァ‼︎】
バーナー・ノーワンの叫びに
(《剣》型は、押し殺した自分を死のアニマにする…
『クソ親父‼︎死んじまえ‼︎』
脳裏に
レクイエムがブラストロフィーを捻る
《MAXイグニッション》
ブラストロフィー2つを連結し、バズーカ砲のように腰だめに構える
砲口にエネルギーが溜まっていく
それを見たバーナー・ノーワンも両腕のバーナーを合わせてエネルギーを溜めていく
【燃えろォ‼︎俺の邪魔をするヤツは燃えろォ‼︎】
「今終わらせる、お前の灰色の死を…‼︎」
レクイエムがトリガーに指をかける
が、引き金は引かれなかった
レクイエムの指が止まったのだ
【燃えろォォォォォ!!!】
バーナー・ノーワンが特大の炎を放つ
レクイエムは咄嗟にそれを転がって回避し、今度こそ引き金を引き爆炎を放つ
その黒青の爆炎弾はノーワンに当たる直前で乱入してきた巨体が弾き飛ばす
「⁉︎ジャック・トーチ‼︎」
現れてきたのはジョンドゥのジャック・トーチだった
トーチは左腕の大砲の砲口に右腕を突っ込む
『面白ぇ…‼︎面白ぇぞ仮面ライダー‼︎』
大砲が分割され、両腕に大型手甲として装備され頭部代わりの炎がより激しく燃え上がる
『久々に壊し甲斐のあるヤツが見つかった…‼︎遊んでやるよ、仮面ライダァァァァァ!!!』
トーチが拳を打ち鳴らし、跳躍してレクイエムに迫るレクイエムは咄嗟に防御体勢を取る
肘の開口部から灰色の炎を噴き出しながら放たれたトーチのパンチはレクイエムの防御すら貫通しその胸に直撃、大地に叩きつけアスファルトをひび割れさせる
メキメキメキ、と嫌な鈍い音が響く
「ご、はっ…⁉︎」
衝撃で体が浮いたレクイエムをトーチが蹴り飛ばす
「が、ぐ……あッ…⁉︎桁違いすぎるパワーだ…‼︎」
『まだ壊れてくれんじゃねぇぞ‼︎』
トーチの拳をなんとか回避し、レクイエムがアルカナを構える
「パワーならパワーだ‼︎」
《フィフティーン:デビル》
新たなアルカナをドライバーにはめ、レバーを下ろす
《リバース・デビル》
デビルフォームに変化し、たレクイエムがトーチの拳を受け止め、パンチに正面から殴りつける
「ぐうっ…⁉︎」
『ぬぉおッ‼︎』
ハング・ノーワンの拳を一撃粉砕したデビルフォームのパンチですら耐え、トーチの拳はレクイエムを退かせる
先程までとは違い、ただ押し負けることはなかったがそれでもトーチの方が圧倒的にパワーが高く、押し込まれていく
「
レクイエムのピンチを見守ることしかできない
「
「待ってください‼︎」
その背を
「あのノーワンは…私の友達のお父さんなんです…‼︎だからー」
「ーだから、なんだ?」
振り返った
思わず
「ノーワン化した人間は死亡扱い。アレはただの動く死体であり、ただの化け物だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「『埋葬』すれば、関係者の記憶からも消え去る。それの何が不都合だというのだ‼︎」
「‼︎待てー」
『おいおい余所見は禁物だぜッ⁉︎』
正義を止めようとしたレクイエムをトーチが遮り、殴りつけて吹き飛ばす
【燃えろォ‼︎全部燃えちまえぇぇぇぇ!!!】
町工場に火を放つバーナー・ノーワンを
【■■たかっ■‼︎■ちた■った‼︎アハハハ‼︎】
脳裏にあの黒塗りがよぎり、正義が頭を押さえる
「ノーワンは…化け物は全員殺す…‼︎」
「記憶にすら、残さずにッ‼︎」
手にした機関銃のコンソールを操作し、何かのロックを外す
《
《
無機質な女声のガイド音声が鳴り、機関銃が変形
展開された砲口に白いエネルギーがスパークしながら収束する
『……お前の『正義』は、ここにあるのか?』
レクイエムの言葉が脳裏によぎり、ぎりりと奥歯を噛み締める
「ーそれが俺の、『正義』だァァ‼︎」
機関銃からエネルギー弾が放たれる
必殺のエネルギー弾は狙い違わずノーワンに当たるー
「ダメェェェェェェェェッ!!!!」
ノーワンとエネルギー弾の前に
「彼に、彼に銃を向けるのがあなたの正義なんですか⁉︎」
「ノーワンに与するヤツらは、全て悪だ…‼︎」
正義の為す『正義』に反発する輪音
「五月さんの描きたいもの、きっともうわかってるはずですよ」
「あたしの、描きたいもの…」
戦う力の無い少女はそれでもと自分の向き合うべきものに向かい、共に筆を取る
『閉じ込めてた自分に素直になれ。その方が楽しいのはわかるだろうが』
「あなたの生は消えさせない…‼︎」
ノーワンと共に立ち塞がる強敵ジャック・トーチ
五月の想いは、父に届くのか
次回仮面ライダーレクイエム
「14の逆位置:不器用な親娘を繋ぐもの」
「ー正義……執行‼︎」