当然だ。
未完成になってしまった絵を
小さな女の子を撫でる大人
その優しい人は、もういない
記憶にも残っていないのだ
「
その美術室に遅れて入室した人物がつかつかと棚に近寄り、
「ーへぇ、いい絵になったじゃないか」
フッ、と笑って愉快そうに告げた
埋葬部隊付属医療センター
真っ白な部屋の中、ベッドに腰掛けてうずくまる1人の少女がいた
ベッドの上や床には多数の紙や画材が散乱している
この部屋で保護された少女が注文したものたちだ
「ー
ベッドに座る彼女に視線を合わせてかがみ込むと、
うずくまる少女ー
酷い顔だった
火傷を負っていた右の額からこめかみには包帯が巻かれ、髪はボサボサになっている
濃い隈と腫れぼった目から、ずっと眠れずに泣いていたことが窺える
「……眠れないんだ…眠れない…怖い…」
「何が怖いんだ。俺たちに解決できることなら、いくらでも手を貸す」
いつもより幾分か優しい声色で
「……怖い、夢を見る…」
「夢?」
「……夢は、怖くない…あたしが、誰かと日常を過ごす夢…なんだ」
そこには絵が描かれていた
小さな少女の頭を撫でる誰か
その誰かの部分は乱暴に黒く塗り潰されている
「……その誰かが、分からないんだ。真っ黒に塗り潰されてて、目を凝らしても見えないし…思い出せない…間違いなく、あたしの記憶なのに……‼︎」
ギュッとその胸を強く押さえる
「……なのに、なのにそれを見るたびに胸が苦しくてたまらない…‼︎痛くて痛くて、涙が止まらなくなるんだ……‼︎ワケが分からない…怖いんだよ……‼︎」
錯乱する
その様子を唇を噛み締めながら見守り、
「……俺から、ここの医療従事者に相談しておく。今は、とにかく休め。キミは大きな事件に巻き込まれて非常に疲弊している」
「ー食事は疎かにするな。食欲が無くとも、食べておいた方がいい」
病室棟の廊下を進みながら
同時に、あの黒い怪人の声が脳裏に過ぎる
『……お前の『正義』は、ここにあるのか?』
「あ、あの…せ、せ、
そこに通りかかったプロフェッサー・ジュナがタブレットを抱きしめながらおずおずと告げる
ジュナの顔を睨み、
「
慌てふためくジュナを壁際に追い詰め、片腕を突きながら問い詰める
埋葬部隊が用いる兵装ーアニマ干渉兵装による攻撃でノーワンを『埋葬』すると、白と黒のアニマに戻ることなくアニマは消滅し、その結果として元の人物と深い関係にあった存在の記憶や生きた記録は完全に消滅する
トラフィック・ノーワンIIに変貌した母親が埋葬され消滅した際、その娘である少女も母が元からいないと認識し、失ったことすら自覚してないため精神状態は落ち着き、すぐに養護施設預かりとなって日常を過ごしている
だが、
「い、い、いいいや、そそそそそその‼︎アニマのえ、影響はここここ個人差がありますから‼︎」
「記憶の安定に時間がかかった被害者は確かにいた。だが、5日も経っても記憶が安定する様子もないのは異常だ‼︎家族が埋葬された関係者もここまでのことは今までなかったはずだ‼︎」
まごまごするジュナを見下ろし睨みながら
「アニマの研究をしている貴女は、わかっているんじゃないのか、こうなる原因が‼︎」
「わた、わたたた、私、は…‼︎」
「ー落ち着きたまえ、
過呼吸になり始め、いつもより落ち着きがなくなりつつあるジュナの言葉を遮り、明るい調子の声が廊下の奥から響く
「……
廊下の奥から現れたのは白と青のコートを着た初老の男性だった
柔らかそうな笑みを浮かべて
「ジュナくんでも、
男ー埋葬部隊管理局長・
「それに、アニマの研究について真髄まで知り得ているのは第一人者だった
「私とジュナくんは彼女の同僚だったとはいえ、アニマへの理解度に関しては彼女には勝てない。だから、研究と検証が必要なんだ」
「安心してくれ。キミたちが救った彼女は私たちが救おう。キミは、より多くのノーワンを『埋葬』、殲滅してくれたまえ」
「ライフアクティヴシステムー仮面ライダーヴァジュラの運用センス、とても素晴らしかった。調整が完了したアレを、キミなら十二分に扱えるはずだからね」
微笑みながら告げた
「了解、しました」
「……
呼吸を整えたジュナが袋を仕舞いながら答える
「い、今のところは…他数例と、お、お、同じ所見、同じあ、アニマ波形が見られます、か、から」
「キミがそう断じるならほぼ間違いないだろうな。レクイエムに撃破される前に我々で埋葬できたのは運が良かった」
「アレをもう一つ準備しておいてくれ。他の手続きと彼女への治療は私が行おう」
「ー彼女らの分析が進めば、我々…否人類は大きな躍進ができるだろうからな」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「
ぶんぶんと手を振りながら近づいてくる
「
「うん、おはよ!ごめんね待たせちゃった…?」
「いいえ、私もさっき来たばかりなので大丈夫ですよ」
それを聞いた
先日の木曜日。
「隣町の高校生の出品作品が展示されるから、よかったら一緒に見に行こうよ」
幸い金曜日は創立記念で学校は休みなので
普通は平日であるためか電車の中はがらんとしており、座席にはすんなり座ることができた
「あっちの美術館の展示も色々あるから見応えあるよ〜高校生美術部の作品と侮るなかれ‼︎色んな画材とか描き方されてる作品が盛り沢山だから、絵の勉強にももってこいだよ〜‼︎」
「へぇ…そうなんですね。私はまだ美術とか絵とか分からないことが多いので、良い勉強ができればいいのですが…」
「……
「え?何もないですよ?」
「ほんとに?なんかここ一週間ずっと元気ないけど」
頬杖を突きながら
「
「ーあ」
「な、なにも無いですよ。
「…そっか」
「ー現れたな。
「そうか。わかった」
キャンドルが右のピアスを指で弾きながら
「この前のバーナー・ノーワン、何故埋葬部隊に遅れをとった?」
キャンドルが
「……アクシデントが多すぎた。
「本当にそれだけか?」
キャンドルの言葉に
「……どういう意味だ?」
「お前、何度か攻撃を躊躇っただろう?アレが、
キャンドルが背中越しに
「ノーワンは化け物だ。元人間だとしても、それは元の話。人間に戻すことはできず、埋葬部隊が消滅させるか、お前が処刑して死に直させるか、それしか選択はない」
「ー忘れた、とは言わさないぞ?」
キャンドルの言葉に
「……そんなことは、わかっているさ」
それだけ告げた
残されたキャンドルはタロットカードの束をシャッフルし、2枚のカードを取り出す
「《恋人》、そして《死神》の正位置…か」
出た結果を眺めたキャンドルは不機嫌そうな顔を一瞬見せる
机の上に放った2枚のタロットが灰色の炎を上げて燃え落ちた
平日の昼間ながらそこそこの交通量があるそこにふらふらと病院着姿の少年が現れ、目を輝かせる
「すごい…車がたくさん…‼︎」
少年はガードレール越しに行き交う車に視線を向けて歓声を上げる
微笑ましい姿に通行人も思わず顔が綻んでいた
「これならたくさん遊べる‼︎」
少年がバンザイするとその胸から灰色のアルカナー《愚者》の透かしが入った《杖》のカードが現れ、炎を上げて少年の姿を怪物に変貌させる
灰色の蝋を人型に無理矢理固めたようなスリムな人型
その体には壊れた車のおもちゃが取り込まれ、医療器具のようなチューブが体の各所から伸びていた
【よいしょっ】
怪人ーノーワンはガードレールの上に立つと行き交う車2台に手のひらを向ける
そこから放たれた灰色のリング状の光線が車に当たると、突如道の真ん中で車が停止し、玉突き事故が起こる
【それぇ‼︎】
ノーワンは無邪気に両手を振り回す
その動きに従うように、停車した2台の車は突如暴走し、多数の車を吹き飛ばしながら尚も動き回り続ける
そのうち2台の車はそれぞれ別の車と電柱に衝突し、大きく車体を凹ませながら停車し、煙を上げ始める
【あはははは‼︎おもしろーい‼︎】
悲鳴を上げて逃げ惑う人々の中、ノーワンは両腕をパタパタさせてただ愉快そうに笑っていた
そこに一台の黒いバイクが走ってくる
バイクから降りてきた男ー
【あれー?】
「妙な遊びはそこまでだ、ノーワン」
《サーティーン:デス》
「変身」
《エクスキューシュンアップ》
《リバース・デス》
【うわっ、頭取れちゃった…‼︎】
驚くノーワンを前に落ちた頭を戻してレクイエムへの変身が完了する
【わぁ‼︎すごーい‼︎】
変身を興味深そうに見ていたノーワンがパチパチと両手を叩く
「…なんか調子の狂うヤツだ」
ばつが悪そうに頬を掻きながらレクイエムが疾駆し、ノーワンに拳を撃ち込む
【あうっ⁉︎痛い…‼︎】
ノーワンが殴られた場所を押さえて泣きそうな声を出す
【おじさん…痛いことする人…?】
「おじさ…⁉︎んんッ、痛いことも何も、ただお前を止めるだけだ」
レクイエムが再びノーワンに迫る
【痛いことするなら、どっかいって‼︎】
ノーワンが声を上げ、周囲の車に手をかざす
事故に巻き込まれ横転していた車たちが突如エンジンを噴かし、中にはタイヤが外れたものもあるというのにレクイエムに向けて爆走を始める
「なっ⁉︎」
ガードレールを突き破りながら走ってきた車たちを回避していく中、その車の一台にまだ人が取り残されているのを見つける
レクイエムは人が取り残された車に飛び乗るとアニマアルカナを交換する
《リバース・テンパランス》
テンパランスフォームになったレクイエムはブラストロフィーを取り出し、サーベルモードに変化させる
バイザーのホロディスプレイに車内部の透過映像が映り、切断しても問題ない場所のガイドが表示される
「はっ‼︎」
二刀のサーベルで車体を切り裂き、露わになった人間を引っ張り出して抱えると側に停車させていたグレイブースターに縛り固定する
「近くの病院まで、頼むぞ」
スマホでグレイブースターに指示を入力するとエンジンが点火され、無人で運転を開始して走っていく
【それ、それ‼︎】
ノーワンが手を振り回し、更に車を走らせてくる
「ふっ‼︎」
マグナムモードに切り替えたブラストロフィーから炎弾を放ち、車を粉砕、それを見ていたノーワンは楽しそうに跳ねながら手を叩く
【すごいすごい‼︎花火みたい‼︎】
そのノーワンの様子にレクイエムは首を傾げる
「なんなんだこのノーワン…?妙に幼い気がするが、子供から生まれたノーワン…なのか…?」
警戒していたレクイエムを他所にノーワンは何かを見つける
【あ、電車だ‼︎乗ってみたかったんだ‼︎】
「電車に、乗ってみたかった…?」
【よーいしょ‼︎】
ノーワンは呑気な掛け声でジャンプすると建物の屋根をジャンプで伝いながら走り行く電車の方に向かっていく
「あ、待て‼︎」
レクイエムもそれを走って追いかけていく
同時刻
レクイエムとノーワンの戦闘場所から線路を挟んで向かいに位置する別の大通り
【あはは‼︎あははは‼︎楽しいなぁ‼︎楽しいなぁ‼︎】
そこもまた多数の車が暴走し、酷い事故を起こしていた
その中央に手を振り回してはしゃぐ怪物ーノーワンがいた
不思議なことにここにいるノーワンはレクイエムが戦っていたものとよく似ていた
そこに大型の白バイと装甲車両が駆けつけ、
「フェーズ2のノーワンか」
「車を操作して事故を誘発するなんて…厄介なことを‼︎」
ノーワンが
【おじさんとおねーさん、誰?遊んでくれるの?】
「ふざけるな。お前を埋葬するのが俺たちの仕事だ」
《
双方共に腰の両サイドに付いたレバー付きのデバイスをバックルに向けスライドさせ、戻す
《
移動と共に中央のバックルに電撃が走り、両側に開く
2人がそれぞれのアニマアルカナを取り出す
《イレヴン:ジャスティス》
《ナイン:ハーミット》
アニマアルカナを起動するとそれをバックルにスロット
「「変身‼︎」」
双方共にバックルのレバーを押し込む
《
2人の首に電撃を放つ枷が現れると共にそれを中心に白いアンダースーツが展開、待機していた白バイーアドミニストレータ11と装甲車ーハーミットダイザーの装甲や武装がそれぞれ分離し、
装甲の装着完了と共に十字目と菱形目の「仮面」が装着され、発光する
《
《
《
「ー執行を開始する‼︎」
《
ヴァジュラ・ジャスティスは背中のホルダーに収められていた特殊拳銃を抜き、射撃しながらノーワンへと近づいていく
ノーワンは手を振り回し、近くの車両を盾に使い、その上に飛び乗ると腕を大きく広げる
【そーれッ‼︎】
浮かび上がった車とバイクがヴァジュラ・ジャスティスに迫る
「
「了解ッ‼︎」
後方待機していたヴァジュラ・ハーミットが腰の右側のレバーを倒し、先端のスイッチを押し込む
《
《
ヴァジュラ・ハーミットの背から分離したアーマーユニットが浮遊し、シールドになって降り注ぐ車両やバイクを受け止め弾く
【うわわ…‼︎】
「ハッ‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスが跳躍し、ノーワンを車の上から蹴り落とす
落とされたノーワンは倒れたままバタバタと手足を振る
【痛い痛いぃ〜‼︎痛いことしないでよ‼︎】
ノーワンが立ち上がり腕を振り回すと、体から分離したミニカーたちがヴァジュラ・ジャスティスに襲いかかる
ヴァジュラ・ジャスティスは背中のホルダーから新たなガジェットーヴァジュラアームズを取り出し素早く変形させる
《
銃型に変形したアームズを構え、二丁拳銃でミニカー爆弾を撃ち落とす
「ー遊びは終わりか?悪趣味な遊びだったな」
ヴァジュラ・ジャスティスが冷徹に銃口を向ける
ノーワンは体を震わせ後退していくと、視界の隅に走っていく電車を見つける
【電車‼︎電車だ‼︎】
ノーワンはヴァジュラたちを置き去りに跳ねながら電車に向かっていく
「逃さん‼︎」
左腰のデバイスを操作すると後方に停められていた装甲が離脱しスリムになったアドミニストレータ11が走行してくる
それに乗り、エンジンを噴かす
「俺はヤツを追う。あの電車をマークし、必要なら援護を頼む」
「わかったわ‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスが電車に向かって走っていく
残ったヴァジュラ・ハーミットは左腰のデバイスを操作してハーミットダイザーを呼び寄せ、それに乗り込む
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ガタン、と車体の揺れる音が響く
「およ?何の音だろ?」
電車に揺られていた
鼎に続いて
【うわぁ〜本物の電車だ‼︎僕乗れたんだ‼︎】
「ーッ⁉︎ノーワン…‼︎」
怪人ーノーワンのことを知る
【人もいっぱーい。おもしろーい‼︎】
「ーえ、コレなんかの撮影…?ドッキリ…?」
事態が飲み込めずに半笑いになる
【危ないからみんなじっとしててね〜‼︎】
ノーワンは呑気にそんなことを告げるとどこからか取り出した紙テープを投げ出す
ノーワンが投げたカラフルな紙テープは縦横無尽に伸び、周りの乗客を縛って座席に括り付ける
「うわわッ⁉︎なんなのこれ…⁉︎」
紙テープに縛られた
【遊ぼ、遊ぼ‼︎たくさん遊ぼ‼︎】
ノーワンは体から大量のミニカーを分離させ、辺りを走らせ始める
そこに割れていた窓から白い影が突入してくる
【ああ…‼︎嫌なおじさん…‼︎】
目に見えて不機嫌になるノーワンの前に立ち上がり、ヴァジュラ・ジャスティスがはぁと息を吐く
「大人しくしろ、貴様はここで埋葬する」
ヴァジュラ・ジャスティスがヴァジュラズハンマーの銃口をノーワンに向ける
「ーッ、
「⁉︎
座席に縛り付けられた
そこにノーワンが投げたミニカーが飛来するが、一瞥もせずにヴァジュラアームズ・マグナムモードでミニカーを撃ち落とし、視線を戻す
【どっか行ってよ‼︎痛くしないで‼︎】
二丁拳銃の銃撃でミニカーやオモチャを撃ち落とす
爆発するオモチャに乗客が悲鳴を上げているのを見たヴァジュラ・ジャスティスが舌打ちを鳴らす
「このままでは被害が拡大する…一気に終わらせる‼︎」
《
《
ガイド音声と共にヴァジュラ・ジャスティスの複眼とスーツ上のラインが青く発光し、装甲として纏われていたパーツが一部離脱し、ノーワンの周囲に飛来してビームを放ち攻撃する
【いた、いたたッ‼︎もうっ‼︎】
ノーワンが鬱陶しげに腕を振り回し、アーマメントビットを振り払おうとする
その隙を狙い、アームズを腰にしまってベルト両サイドのレバーデバイスをバックル側に滑らせ離す
《
バックルからスパークし解放されたエネルギーが手にしたヴァジュラズハンマーに装填され、それをノーワンに向けて放つ
放たれた青い稲妻の弾丸はノーワンを青いエネルギー球に閉じ込め、スパークするエネルギーが辺りを青白く照らす
ヴァジュラ・ジャスティスが踏み出した右足に青白くエネルギーがスパークしていく
「ー正義、執行‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスが跳躍し、稲妻を纏う蹴りを放つ
ノーワンの体を貫いたヴァジュラジャスティスが着地するとその背後でエネルギーをスパークさせながらノーワンが爆発、エネルギー球がそれを押さえ込み被害を最小限にする
「ああ……」
一部の乗客が歓声を上げる中、ヴァジュラ・ジャスティスがノーワンを撃破することの意味を知る
それを
が、予想だにしない事態が起きる
【痛い…痛いよぉ…‼︎酷いことしないでよぉ…‼︎】
爆発したはずの中から無傷のノーワンがよろよろと立ち上がり、涙を拭うように目の辺りを擦る
「何……⁉︎」
ヴァジュラ・ジャスティスが驚愕し振り返る
【おじさんやっぱり嫌い‼︎嫌い、嫌い、嫌い‼︎】
ノーワンの駄々に呼応するように電車が大きく揺れる
「ーくっ!?」
バランスを崩したヴァジュラ・ジャスティスが倒れた隙間をジャンプし、前の車両に向けて逃走する
「待てッ‼︎」
すぐに立ち上がったヴァジュラ・ジャスティスは
電車の先頭車両
【うわぁ、すごい…‼︎】
操縦席に入ってきたノーワンを見た運転手が驚愕し、思わず操縦レバーから手を離す
「な、なんだあんた⁉︎」
【運転手さん僕にもやらせて〜‼︎】
ノーワンは紙テープで運転手を拘束して床に転がすと、操縦席に両手をかざして光線を放ち、めちゃくちゃにレバー類を動かし始める
電車のスピードが大きく上昇し、車体が大きく揺れ出す
【はやーい‼︎カッコいいー‼︎】
ポンポンと手を叩き喜ぶノーワンの背後の扉を蹴破り、デスフォームになったレクイエムが追いつく
「よせ‼︎電車を止めろ‼︎」
【邪魔しないでよッ‼︎】
ノーワンがミニカー爆弾を放ちレクイエムを吹き飛ばす
先頭車両から転がり出たレクイエムの前に飛び出してきたノーワンが紙テープで操縦席への道を閉ざす
【通行止めでーす‼︎】
立ち上がろうとするノーワンの肩を踏みつけ跳躍したノーワンはスキップするように後部車両に向けて去っていく
「ほんとやりづらいヤツだ…‼︎」
レクイエムは隣の車両に移るとノーワンに組み付き、パンチを打ち込み、怯んだ隙を逃さず回し蹴りで蹴り飛ばす
車両の床を転がったノーワンは殴られ蹴られた箇所を押さえる
【痛い…痛いよぉ…やめてよぉ…‼︎】
子供のような声で泣き出すノーワンを見たレクイエムが腕を止める
「……ッ」
その隙を逃さず逃げ出すノーワン
かぶりを振り、その後を追跡しようとしたレクイエムにノーワンと入れ違いに跳躍してきたものが飛びつき蹴り飛ばす
【僕の
宙返りしたそれがノーワンと並び立つように着地する
そこには、瓜二つの姿の小柄なノーワンが並んでいた
体の装飾の配置や模様・配色は左右対称の鏡写しになっているが、背格好は全く一緒だった
「なんだと…⁉︎同じノーワンが2体⁉︎」
【
【大丈夫?痛くされてない?】
2人のノーワンーツインズ・ノーワンがお互いに見つめ合い、ペタペタと互いの体を触って安全を確認する
【あのおじさん、悪いおじさん‼︎】
【悪いおじさんいっぱい‼︎やっつけよう‼︎】
ツインズ・ノーワンたちが共にミニカーと紙テープの爆弾を放ち、レクイエムを攻撃する
「ぐっ⁉︎」
吹き飛ばされたレクイエムを見て2人のノーワンがポンと手を打つ
【そうだ‼︎鬼ごっこしようよ‼︎】
【鬼ごっこ‼︎電車の中で鬼ごっこ‼︎】
立ち上がろうとするレクイエムを見てレクイエムが追っていた方ーツインズ・ノーワンYが指をくるっと回す
それに合わせて電車が再び加速し、体勢を崩したレクイエムが膝を突く
「くっ⁉︎」
【【鬼は、悪いおじさんたちねぇ‼︎】】
ツインズ・ノーワンたちはその体を紙テープ状に解くと電車のどこかへとその姿を消してしまった
「クソッ‼︎」
悪態を吐いたレクイエムが走り出し、次の車両に乗り込む
乗客のいない車両、そこにもう1人の人影がいた
「お前は……」
別方向の扉から現れた白い人影がレクイエムを睨む
「非死者0号……‼︎」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ビルの屋上に集まった3体のジョンドゥが加速していく電車を見下ろしていた
『何?あのノーワン。死にかけの双子とかいたわけ?』
『2人から生まれる、ならばシャンデリアのノーワンに似ているが…2人1組のノーワンは奇妙だな』
『でっしょー?レアものだよねェ』
ランタンが錫杖を弄びながら楽しげに告げる
『なんと、もっとレアなことにあのノーワンは1人の子供から生まれたのサ♪ワタシも驚きモモの木だよォ〜』
ランタンの言葉にシャンデリアが驚く
『はぁ?なんで1人から2人生まれんのよ⁉︎なんかズルいじゃないそれ‼︎』
『そう言われてもなァ…』
ランタンは困ったように肩を竦めながらも口角を上げ笑う
『ーま、ワタシはなんとなく理由はわかるケドねェ♪』
レクイエムたちの乗る5両編成の車両内
その2号車内部で2人は睨み合っていた
ヴァジュラ・ジャスティスがヴァジュラズハンマーをレクイエムに向ける
「今はノーワンの追跡中だが、目標の重要度は貴様が上だ。まずは貴様の無力化を優先する」
はぁ、とレクイエムがため息を吐き肩を竦める
「俺はノーワンでもジョンドゥでもない。ヤツらの詳しい情報も知らない。無駄足に終わるだけだぞ」
「それは貴様を捕らえて問えばいいだけのこと‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスが発砲しながら迫る
弾丸を回避し、レクイエムが振るわれる拳を防ぐがそのまま力任せに座席に押し倒す
「今までは貴様にただ遅れを取るだけだった…‼︎だが今は違う‼︎」
ゼロ距離で放たれる弾丸を避ける
「ヴァジュラシステム…仮面ライダーヴァジュラの力を手に入れた今の俺ならば…ッ‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスの言葉を聞いたレクイエムが起き上がり、その顔面に拳をぶち当て、逆転して今度はレクイエムが押し倒す側になり、壁面に叩きつけ睨む
「ーその名を、どこで知った…‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスをもう一度壁に叩きつけ、胸ぐらを掴んだまま壁から離し、力任せに蹴り飛ばす
「ぐっ!?」
「その名を、お前が軽々しく口にするな…‼︎」
いつもの様子が嘘のように激怒したレクイエムが怒鳴る
「本性を表したか…非死者…‼︎化け物め‼︎」
ヴァジュラ・ジャスティスが放つ弾丸をアニマライターから放つ炎の刃で打ち消し、アニマライターから放つ炎弾をぶち当てながら肉薄し、炎の刃でその白い装甲を切り裂く
怯んだヴァジュラ・ジャスティスだが、装甲に覆われた左拳を叩きつけ、レクイエムを掴み寄せると右手に握るヴァジュラズハンマーの銃口を脇腹に押しつけゼロ距離で弾丸を放ち吹き飛ばす
距離を取ったヴァジュラ・ジャスティスはヴァジュラズハンマーの銃身に《
《
《
展開した銃口にエネルギーを収束させながらそれをレクイエムに向け、両手で握る
「ーノーワンもジョンドゥも、全て『埋葬』する…‼︎」
「それが、お前の正義か…」
レクイエムは手にしたアニマライターのイグナイターを二度回す
《MAXイグニッション》
アニマライターの噴射口に黒い炎が充填されていく
「ーならば、俺はお前の正義を否定する…ッ‼︎」
2つのエネルギー弾が放たれる
黒と白の一撃が衝突する
が、それは乱入した灰色の影に阻まれ霧散した
「ーなっ⁉︎」
「ーッ⁉︎」
灰色に燃ゆる蝶の群れを纏い乱入してきたのは、灰色の白衣を纏う異形の麗人
「…キャンドル…⁉︎」
突如現れたジャクリーン・キャンドルに怯まず、ヴァジュラ・ジャスティスは銃口を向ける
『邪魔だ。イノシシ坊主』
キャンドルは視線をレクイエムに向けたまま右手をヴァジュラ・ジャスティスに向ける
向けられた右手から大量の炎蝶が飛び出し、小爆発を発生させながらヴァジュラ・ジャスティスを3号車まで吹き飛ばす
ダメージにより変身が解除された正義が床を転がる
「キャンドル…なんのつもりだ⁉︎」
『なんのつもりか、ねぇ』
キャンドルはその体を大量の炎蝶に分裂させ、レクイエムを押し流して1号車に戻す
そして元の姿に戻ると倒れたレクイエムを見下ろしながらキャンドルは冷淡に告げる
『私は、退屈してるんだよ。死ぬほど』
『だから、お前を消してみることにした』
『ーただ、それだけだよ』
『退屈でしかないお前は、いらないんだ』
レクイエムを襲撃するキャンドル
攻撃の手が鈍るレクイエムに「その名」を問う
「私はね、そんなヒーローになりたいな」
語られるは過去
十三の短くも温かな記憶
「輪音ちゃんの描きたいもの、決まった?」
未だ囚われる輪音に鼎がかけた言葉とは
「俺の正義は、違わない…‼︎」
謎のノーワンに向かう正義の銃口
揺れる暴走列車で今、「選択」は訪れる
次回仮面ライダーレクイエム
「6の正位置:キミのくれた名前」
「ーこの名は、ただの名じゃないんだ…‼︎」