百城千世子を生で見たい、なんなら喋りたいし触りたい 作:ジョー/ヤマナル
アキラ君って不思議なキャラだと思うんです
金も名誉も地位もあって、顔も良くて性格も良いスパダリなのにあんな人間らしくて泥臭い
まぁ初期夜凪と千世子ちゃんが人間らしくないと言えばそれまでなんですが
本当に魅力的なキャラです
ということでアキラ君視点です
今思えば君とは最悪の初めましてだったと思う
僕は昔は一世を風靡したあの大女優で、今はスターズの社長をしている星アリサの子供として生まれた
そんな僕の夢は役者だった
でもお母さんは僕に事務所を継いで欲しいようだった。そのためかよく撮影の現場に連れて行ってくれた
でもスターズの社長として事務所を経営している今の母さんより、撮影現場で握手をしてくれたあの人をカッコいいと思った
そしてその人より、今の母さんより画面の向こうで演技をする母さんに引き込まれた
迫真で、リアルで、まるで本当にそう感じているかのような演技
あんなことをしてみたいと、そうなりたいと憧れた
『あなたはもっと幸せになれる仕事につきなさい』
でもそれは役者は幸せになれないからと言って他でもない母さんから断られた
『じゃあうちの役者さんも皆幸せになれない?』
僕が呟いたその質問に母さんは答えず、ただ役者をやることをOKしてくれた
それから役者としてデビューした僕はトントン拍子で売れていった
テレビにもどんどん出るようになって、大企業のCMにだってキャスティングされた
それは自分の才能と努力のおかげだと思っていた
でも違った
それはすぐに母さんの力だと気づいた
母さんに見るようにいわれた週刊誌やネット、それらには星アリサのシナリオだとかごり押し俳優だとか書かれていて、自分の才能を肯定する文は一文たりともなかった
ショックで部屋に籠って、何が駄目だったのかを考えた。演技の指南書を読んで自分に何が足りなかったのかを考えた
諦めることだって思った。全部投げ出して母さん言う通りになれば楽かもとも思った。でも昔に覚えた役者という仕事に対する憧れ、そしてなによりお母さんへの憧れ
その情景は僕の目に焼き付けられていた
『アキラ、分かったでしょう。あなたはこの手の贔負や批判からは逃れられない。そういう星の下に生まれたの。なによりあなたは役者に向いてな』
ドアの外から聞こえる母さんの声を遮るようにしてドアを開く、僕の後ろに積まれた演技の指南書を見て母さんが驚くのが分かった
『母さん分かったよ、僕にたりなかったのは努力だ。誰にも母さんの七光りって言わせないくらいの"本物の役者"になる!』
それは母さんに向けた宣誓でも、自分に立てた目標でもなかった
ただただ自分に言い聞かせるように、逃げ出したくなる自分を無理矢理繋ぎ止めて逃げれなくするために口にした言葉だった
君に会ったのはそのすぐ後だった
誰でも名前は知ってるような俳優二人のサラブレッドとして生まれた君はその存在だけは広く知られていたが、地上波に出てきたことは今まで無かった。それがどんな事情かは解らないがスターズでデビューすることになった
それが決まっただけで大きな話題になり、その身に余る期待を背負う君の姿に少しだけ僕を重ねた。同年代で、所属が同じで、スターの息子、大衆だって僕たちを重ねて比べるだろう
そして重ねて、比べた上で君に対して抱いた感情は嫉妬だった
君は母さんから演技を習っていた
君は母さんがマネジメントして売り出していた
そんなこと僕にはしてくれなかったのに
そしてデビューしてから君はすぐに売れだした。子供とは思えないような大人びた雰囲気と頭の良さによる空気の読みと器用さは売れるには十分だった
そして僕と同じようにごり押しだとか言われて、星アキラの次はこいつかと飽きられる。そうなるはずだった
初めて君が主要キャラとして映画に出た時、君はそんな声も全部黙らせた。それほどの演技だった
今までバラエティやCMなどのあまり激しく演技することがない場にしか出ていなかったから気づかなかったその才能
共演者として、目の前でその迫真とも言えるような演技を見た時、君と母さんが重なって見えた
性別も背丈も顔立ちも似ているわけじゃない、でもそれは僕が憧れた演技する母さんそのもので、僕の理想像だった
急に現れて僕は受けなかった待遇を受けて、僕の憧れに一足先に届いている
なんで僕じゃないんだって、僕はそれに嫉妬した
そしてそんな演技をするなって君に母さんは怒っていた
僕が憧れたあの時の母さんと同じくらいの演技を、僕の憧れそのものを母さんは否定していた
じゃあもし僕があんな演技が出来るようになっても母さんは認めてくれないんだろうか
僕は自分の憧れになったとしても、母さんが認めてくれなかったら僕は本当に幸せになれるんだろうか
あの時無理矢理繋ぎ止めた自分がバラバラになって離れていくのを感じる
演技の練習だってした。役作りのために体だって鍛えた。どう思われるのかも分かった上で母さんから仕事を受けた。バッシングだって受けた
それらを全部隠してテレビに出続けた
そしたら若手俳優として少しずつ結果だって出始めた。ファンだってつくようになった
でも君を見ているとそれらの僕が得た成果に、自分の努力の結果に僕自身が虚無感を覚えた
どこか自分で君のような人達には届かないと思ってしまった。君のようにはなれないって思ってしまった
そう思ったらもう駄目だった
あの時の情景が、憧れが揺らぐのを感じた
母さんも、自分自身も憧れを追うだけの理由にならなくなってしまった
でもそれで諦めたら今までの頑張りを捨てることになってしまう。だからまた頑張ってしまう。楽しいなんて思えない、どれだけ頑張ってもその成果に虚しさを覚えてしまう。それが嫌でもまた自分自身を縛り付けて頑張っていく
でもそれよりも僕を追い詰めるのは君だった。僕が持ってなくて君が持ってるその才能、待遇
僕が一番嫌だったのは僕が欲してたまらないそれらを君が捨てようとしていることだった
『いつまでもアリサさんに迷惑かけていられない』
『この演技法以外も身につけていかなきゃならない』
なんで! なんで君は僕が望んでも手に入らないものを手に入れてるのにそれを捨てようとする!?
ただの嫉妬だ、それは解ってる。それでも割りきれない激情だった
それを君に気付かれたくなかった
スターズの売り出し中の二人として君と番組で共演することだって多かった
こんな僕にも話を振ってくれる隣の席の彼に
番組以外でも一友人として喋りかけてくれる彼に
大人びた雰囲気とは裏腹に百城さんには年相応の反応を見せる彼に
役者としては憧れでも、それらを全部抜きにしたらただの友人の彼に
こんな感情をぶつけるのは嫌だった
筋違いって解ってたし、もしそうなったら僕は自分で自分を許せなくなると解ってたから
人を見るのが好きな百城さんは僕の内側の気持ちに気付いてたかも知れなかった。でも君に気づかれることはないと思っていた。君は百城さんしか見てないわけじゃないけど百城さんが君の大部分を占めていたのは間違いなかったから気づかれることはないと思ってた
百城さん以外の人には表面に触れてそれ以上の干渉をしてこない君は僕にだってそうだったから
でも何時からか変わっていった
百城さんに対する思いが小さくなったわけでもなく、百城さん以外の人の内面を知ろうとしてくるようになった
そうなった君は簡単に僕の気持ちに気づいた
でもそんな僕の醜い内面を見られた時、死にたくなるくらいの自罰心と謝罪の中に少しだけ嬉しさがあった
僕を見てくれた。という歪な嬉しさが
どこか母さんと君を重ねていた僕はそれが嬉しかった
それのほんの少しの嬉しさのために誤魔化すんじゃなくて君に心の内を、醜い内面を晒す
君への恨みの言葉を
君への妬みの言葉を
そして、君への感謝を
それらを全部聞いて、それら全部を受け止めてから君は僕についてを語った
一つ一つ僕の良いところを言っていって
僕の作った小綺麗な仮面じゃなくて、内面をしっかりと見て、その上で僕のことを肯定してくれた
そこで僕と君は初めて友達になったと思う
憧れでも、母さんの代わりでもない、ただの一人の友人になった
君が売れてもそれを素直に誉めれるようになった
それからスターズの顔としてどんどん売れだした君に壁を作らないですんだ
一人の友達として居れた
あの演技もあまりしなくなって、母さんからもあまり構われなくなってしまって、百城さんのことを話だけで赤面する君
そんな君に向けられるのは友情だ
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あぁ、だから君を許せない
役者を辞めたのはまだ分かる。あの傷じゃあ続けるのだって困難だろう。まったく思う所がない訳じゃないが
それに対してああいう責任の取り方をしたのもまだ我慢出来る。友人としてはふざけるなと言ってやりたいが、スターズに所属する一人の俳優として僕たちは君に庇われている。君のことをどう思ってようが立場は変えられない以上君にその言葉を吐く資格はない
ただ今までの繋がりを全部断ってしまったのは許せない、役者を辞めてしまっても君は死ぬ訳じゃない、同じ会社の同僚ではなくなるかもしれないけれど一人の友人であることは代わりないはずだ。君と僕の立場上直接会ったりする訳にはいかないかもしれないけど連絡くらい取り合える
でも君はこちらが連絡を取り合おうとしても全く出ない、おそらくスマホごと変えている
母さんに聞いても知らないらしいし、君の親に聞いても知ってはいるが君から口止めを食らっていた
なぁ、こんな終わりが君が望んだことなのか? あれからもう半年は経つ、君がいなくなって空いた席はもう他の誰かが座っている。君が止めた時に多少出ていたスターズのせいという言葉ももう聞こえない、もうニュースにだって取り上げられなくなった、話題にも出てこない
まるで最初から居なかったみたいに
これで良いって本当に君は思うのか? 確かに役者界から君が抜けた穴はもう元に戻った。でも役者としての君は良いかもしれないけど僕の友人としての君、百城さんを好きだった君、君個人としての穴は元に戻らない
"スターは大衆の為にあれ"
君は完璧にその言葉を守ったらしい、そう言えば聞こえは良くて称賛されることだろう。実際に良いことだ
でも母さんは君のことを後悔していた。母さん自身も演技中の事故でもう演技が出来なくなってしまった人だ。そしてそれから誰も不幸にしないときめて立ち上げたスターズの顔とも言える君の事故、それはスターズの矜持すら揺るがす程のことだった
でもそれよりひどいのが百城さんだ。スターズの顔の片割れとして君が居なくなった穴を埋めている。元から忙しい方ではあったがそれ以上になっている。というか自分自身で仕事を詰め込んでいるように感じる。君が居なくなったことを誤魔化すように
君が百城さんのことを好きだったのは百城さん自身も気づいていたことだろう。僕だって気づいたんだし、向けられる感情に敏感な彼女が気づかないことはない
百城さんは君のことを少なくとも悪くは思ってなかった。それどころか百城さんは……
君は百城さんのことが好きだったんだろう? そんな好きになった人を放り投げて、悲しませて、本当にそれが望んだことなのか?
もう聞き出すことすら出来ない、会うことすら出来ない
だから君を許せない
今回は難産でした。後からこの話変えるかもしれません
何故か曇らせられるアキラ君、羅刹女出来そう
主人公君に何があったのか明かしたかったけど千世子ちゃん視点でやりたかったから今回はパス
この話書いてたら主人公視点の過去編も書きたくなった。っていうか主人公視点書いてからこの話を書くべきだったかもしれない
前回から二週間もかかってすいません。書き留めなんか作ってなかったし、ライブ感で書いてますので次が遅れるかもしれません、今回も一話の時には想定してなかったアキラ君視点でした
あと1月30に受験なのでそれでも遅れます
じゃあ何でこの小説書き出したん((