東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

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恭典の姐さんpart3


第九十五話

勇儀

「ほぅ………坊や、アタシの事は知っていたようだね?

じゃあ自己紹介は殆ど割愛でいいね?

星熊 勇儀だ、悪いね、わざわざこんなとこまで来てもらって」

 

予想外、いや違う。

これは嬉しい誤算だ、女性で鬼でさらに名前の通っていると言えば一番最初に浮かんだのは彼女ともう1人、伊吹 萃香(イブキ スイカ)であるが、まさかそんな有名人に簡単に会えるとは思っていなかった。

嬉しい震えを悟られないように笑顔で返す。

 

「田村 翔だ。

こちらも恭典が慕う女性とあらば合わなければ損だと思ったのでお邪魔させて頂く事にしたんだ。

気にしないでくれ。

あぁ、それから酒とつまみを土産として持ってきた、良かったらおさめてくれ」

 

大きな風呂敷を置くと、恭典も俺が置いた風呂敷の横に自分が担いでいた風呂敷を置く。

 

 

勇儀

「おぉ!気が利くじゃあないか坊や!

後で皆で頂くとしようか。

まぁその前に坊やにはちっとばかし顔貸して貰おうかね、ついてきな、坊や……………恭典!お前も来るんだよ!」

 

星熊勇儀の後をついて行こうとした瞬間、彼女は素早く振り返り、俺を見送ろうとしていた恭典の襟首を掴む。

 

恭典

「うおォい!?待て!?

なンでオレもなんだよ!?

いててて!引ッ張ンな!自分で歩くから離しやがれェ!」

 

必死に振りほどこうとする恭典をまるで何事もないように引っ張って歩く星熊勇儀。

この膂力には流石の俺も冷や汗を禁じえない。

あーこわ。

 

「えーと、星熊 勇儀。

俺達はどこにも向かってるんだろうか?」

 

しばらく歩いたのだが星熊勇儀は鼻歌交じりで俺達の先を歩くばかりだし恭典はなんとなくといった具合で顔色からはこれからどこにむかい、そこで何をすることにするかは読み取れない。

 

勇儀

「勇儀でいいよ坊や……………っとそれならこっちも名前で呼ばせてもらおうかね。

いつまでも坊やじゃ失礼だろうからね。

構わないかい?翔?」

 

裏表のなさそうな快活な笑みを浮かべる勇儀。

恭典にも言えることだがどうも力のある鬼というのは浮かべる笑みが幼いような気がする。

いつかの満鬼、欠鬼の笑顔は見たことがないが、彼らもおそらくこういう笑顔をとるのだろう

 

「構わないよ。

好きに呼んでくれ、勇儀」

 

勇儀

「よし。

っと、どこに向かってるか。

だったね。

ほら、あそこだよ」

 

勇儀が指さす先には……………。

 

 

「リング?」

 

医師で作られた一辺5m程の正方形のステージ。

四隅には柱のような物があり、外周に沿って紐のような物が貼ってある。

 

「リングだな。

大事でもないがなんとなく2回言ってみた」

 

嫌な予感がするぞ…………

 

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