紅零side
懐かしい景色を見ている。
ここは俺が生まれた場所。
紙とインクの匂い。
周りには数えるのが馬鹿らしくなる位の本、本、本。
ぼんやりと薄暗い電球に照らされたこの空間で俺は生まれた…………。
特になにか行動を起こすこともなく、前後に揺れる座椅子に揺られて微睡む。
そんな日が終わったのはいつだっただろうか?
誰かに会いたい、何かを見たい
ここにいても退屈なだけだ、寝るのは好きだけどもういい加減飽きた
でもどこへいくんだ?
そもそもここからどうやって出るんだっけ?
めんどくさくなってきたなぁ
ひたすらこんな思考を繰り返す。
あー、そんなこともあったなー。
なんて思いながら自分の主観で過去を見る。
そしてこのあと気がついたら……
景色が変わる。
夜の街を歩いている。
視線は低い。
おそらく自分は子供なのだろう。
派手な格好をした女性数名がハイテンションで絡んできた抱きしめたり頭を撫で回したりとやりたい放題だ
「ごめんね、お姉さん。
少しどいてくれる?」
魔力を込めた言葉を発すると、女性達は虚ろな目をしながら道を開けてくれた。
今度は柄の悪そうな男性とぶつかる
なにやら怒っているようで大きな声を出しながらわめき散らしている。
「ごめんなさい、お兄さん。
気をつけるから今回は許してくれないかな?」
先程と同じく魔力を込めた言葉を紡ぐと、男性は「わかればいい」と道を開けてくれた。
そして宛もなく歩き続ける。
ありがたいことに疲れは襲ってこなかった。
話しかけられては魔力を込めた言葉で追い払う。
を繰り返してどれだけ経ったか分からなくなった頃。
小さな公園にたどり着いた。
そして目の前には同じ位の背丈の男の子。
黒いツンツンとした髪型をしていてこちらをしばらくじーっと見つめていてしばらく経つと口角をぐいっと上げて近付いてきた。
「お前、俺と来い!
お前は何かわからないが連れていかないと行けない気がする!」
男の子は無理矢理に方を組み(というかヘッドロックを決めて)俺を引きずっていく。
何故か追い払おうとは思えなかった。
行く宛もやるべき事もなかったし、彼についていけば何かあるかも知れないと思ったので俺は彼に引きずられて行くことを選択した。
そこで突然景色が遠ざかって行く。
紅零
「んあ?」
変な声が出た。
夢だったらしい。
夢は過去の記憶の整理をするために見られるものだとはよく聞くがまさかこれ程如実に過去の夢を見るとは………。
紅零
「ははっ。
これは近い内に何かありそうだな。
死亡フラグとかじゃなければいいんだけどな…………」
パジャマからいつもの執事服に着替えて一階のリビングに降りてくると。
翔
「……………」
俺を引きずって来た相棒がソファーに座りながら寝息をたてていた。
紅零
「何やってんだよ」
朝早く起きてきたはいいが静かな空気に負けて二度寝したんだろうな。
インスタントコーヒーに砂糖とミルクを多めに入れて飲む。
ドリッパーはあるけど今日は魔法でお湯を沸かした。
紅零
「ん。甘い。」
さて、今日も一日緩く行こう