東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

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雷(イカヅチ)の見る夢


第十七話

晃side

 

昔はそれらしい名前を持っていた、親から受け継いだ名字に親、祖父母が付けてくれた名前があって友達が付けてくれたあだ名もあったはずだがもう思い出せない……………………違うか、もう思い出す必要がない。

っていうのが正しい気がする。

俺はあの時一度死んだ。

 

晃

「…………雨かぁ、思い出してまうなぁ」

 

外は土砂降り、雨は恨みでもあるのかと思うほど強く地表に叩きつけている。

 

あの日も確かこんな雨が降ってたっけ。

 

 

生まれた時から何かと電気にいやというほど縁があった。

物や人に触れれば静電気が当たり前のように流れたし迂闊にコンセントに充電器なんか差し込んだ日にはブレーカーが必ず落ちた。

極めつけは雷が直撃したりもした……………幻想郷に来るまでに7度も。

気絶こそしたものの怪我はなく、【奇跡の少年】なんて呼ばれる始末。

 

幻想郷に来たのはそんな時、確か3、4年前だった気がする。

 

寒さと苦しさに目を冷ますと見知らぬ森にいて雨に打たれていた。

体の隅々まで痺れて動けない上に内蔵まで痺れて呼吸もままならない。

苦しい、助けてくれ。

って感情がなかった訳ではなかった、でもなんとなく俺はここで死ぬんだなぁ。

っていう気持ちの方が強かった。

怖かったけどそれと同じ位納得がいっていた。

そんな時、泥の上であがき、悶えて泥にまみれた俺を誰かが抱き起こした、暖かく、柔らかく、いい匂いがした。

 

「貴方は諦めるのかしら?

諦めてここで死ぬ以外に道を探す気があるのなら私と来なさい。

最高の主に巡り合わせてあげるわ。」

 

この女の声を聞いた瞬間、生きていたくなった、こんなところで死んでたまるか!生きたい!と強く思った。

 

「ぉ、俺を、つれ…………て行ってくれ、あ、アンタと…………一緒に、いさせてく、れ!」

 

無我夢中だった、今思い出しても恥ずかしい台詞だったけど仕方が無い。

それだけその女は綺麗だったから。

 

その後、俺はその女、十六夜 咲夜によって紅魔館に連れて来られ、彼女から名前を貰った。

お嬢様、レミリア・.スカーレットが以前、そうしてくれたように。

雷に関することは俺自身の能力だったらしく。

お嬢様のおかげで、自分で制御出来るようになった。

その恩を返すため、今は紅魔館で門番なんてやってる訳なんだよなぁ。

 

 

 

 

 

晃

「御坂 晃(ミサカ コウ)…………。

まぁ。なかなかいい名前もろたような気がするなぁ。」

 

降り続く雨を眺めていると控えめなノックが聞こえた。

 

晃

「はいな、なんか用事でっしゃろか?」

 

返事をかえすと扉が開いた。

そこにいたのは俺の名付け親。

特別な女だった。

 

咲夜

「晃、今朝から姿が見えなかったけれど、具合でもわるいの?」

 

あぁ、そう言えば朝飯も食ってなかったっけ。

 

晃

「いいえ、なんでもあらへんよ、咲夜さん。

この天気だと外には出れへんし、なんか手伝いましょか?

」

 

こうして、俺のささやかながら暖かい一日は、続いて行く。




晃の、過去編です。
主人公三人組空気でしたね(笑)
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