翔
「えーと、これはあれなんだ、正当防衛…………にしてはやりすぎたか?
まぁとにかく吹っかけられたから少し返しただけなんだ。」
弁明を図るとその青年はまた、カカッと笑って見せた。
青年
「あァ、知ってるぜ?
見てたからなァ」
えー、だったら助けて欲しかったんだが…………
青年
「カカッ!そんなカオすんなよ、やられそうなら助けただろォしな。
まァ、その必要はなかったよォだがなァ。」
どうやら大分顔に出ていたらしい。
青年
「和泉 恭典だ、恭典で構わねェ。
オマエ、名前は?」
手を差し出しながら名前を聞かれた。
最初はただ乱暴なだけかと思ったがそうでもないかも知れない。
翔
「田村 翔。
俺のことも呼び捨ててくれて構わない。」
差し出された手を握り答えると、恭典はまたカカッと独特な笑い声を上げる。
恭典
「詫びってワケじゃァねェが少し奢らせてくれ。
腹、減ってるか?」
翔
「いいのか?
すまない、お言葉に甘えさせてもらうよ」
そんなこんなで恭典に奢ってもらうことになり、縛った二人を放置して恭典のうしろについて歩くこと10分ちょっと。
恭典
「大将、この兄ちゃんに『アレ』頼むわ」
連れて来られたのは寂れた中華料理店といった様相の店だ。
ただ店の中は満員で、人が途切れる様子はまったくない。
恭典
「一応聞いとくが、オマエ、辛いモンはいけるか?」
そんな恭典の言葉とほぼ同時に運ばれて来たのは…………。
翔
「麻婆豆腐に担々麺…………五目炒飯、八宝菜…………なんて量だ」
4つの料理が皿から溢れんばかりに盛られている。
翔
「一体いくらするんだ、これ…………」
恭典
「値段は気にするな、食い切ればタダだからなァ、カカッ!」
…………そういうことか、面白い!
まずは麻婆豆腐から…………。
翔
「っ⁉︎」
辛い⁉︎
恭典
「カカカカッ!辛いだろォ!
まぁ、無理してくわなくても…………おい、翔?」
辛い、辛いんだが…………!
翔
「ダメだ、レンゲが止まらん…………うまい!」
舌をヒリヒリと刺激した直後、香ばしい香りとともにあまりにもあっさりと辛さは引いてしまう。
一口口に入れるたび、ほんの一瞬の地獄の辛さのあと、柔らかでしっかりとした旨味が!
恭典
「お、おいおい…………こいつァすげェぞ」
無我夢中で食べ進める、この担々麺も、炒飯も八宝菜も、今まで食べてきた中華料理などニセモノなんだと思わせるほどに美味かった。
全ての料理を平らげ、手を合わせる。
翔
「御馳走様でした!」
恭典
「30分と少しかァ…………バケモノかよ、オマエ…………」
もちろんお代はタダでした。
今回のどうでもいい情報
翔はとんでもなくよく食べる