東方歌唱録   作:苦労人ーくろうにん

32 / 106
退屈な鬼part5


第三十話

恭典

「オマエも出んのかァ、喧嘩大会」

 

すっかり打ち解けた俺達はお互いの事を話していて、たまたまこの旧地獄で行われる喧嘩大会の話をした。

どうやら恭典もこの大会に出るようだ。

 

「嫁と相棒に温泉旅行をプレゼントしたくてな」

 

もちろん嫁とは翔子の事で相棒とは紅零の事だ。

まぁ誇張した表現だと少し後悔したが嘘や偽りは言ってない。

 

恭典

「へェ、だったら残念ながら一位は諦めるこったなァ」

 

恭典が不敵に言い放つ。

 

「ほぅ、だいたい予想はつくが聞いておこう、何故だ?」

 

恭典

「カカッ!優勝すンのはこのオレだからなァ!」

 

「ほぅ、随分自身があるようだな、恭典」

 

普通なら皮肉の一つや二つ返してやりたくなるのが俺の性格というやつなのだが、不思議と今回の恭典のこの台詞には皮肉を返す気にはなれなかった。

 

恭典

「オレはなァ、楽しい喧嘩がしてェンだ。

一方的に相手をボコッても楽しくもなンともねェ、押されてるぐれェのほうが面白ェのさ」

 

「なるほど」

 

一方的な暴力ではなく、競り合いを望むということか。

今まで喧嘩と聞くと野蛮で下品な殴り合いを想像していたが少なくともこいつの言う喧嘩とはそんなものではないらしい。

 

恭典

「オマエには期待してるぜェ、翔」

 

「俺に?」

 

恭典

「さっきのチンピラを蹴散らした時からなンとなく思ってはいたが、一緒にメシ食って駄弁って確信した。

オマエ、面白ェヤツだ!」

 

カカカカッ!と何とも形容しがたい笑い声をあげる恭典、彼は俺を面白いと思ってくれたらしい。

 

「ククッ、ならば期待に応えるとしよう。

そして忠告しておこう、少しでも手を抜いて見ろ。

その隙をついて俺が優勝を頂いていくぞ」

 

恭典に指を指し、宣言してみせる。

一瞬ポカンとした顔で俺を見ていた恭典だったがだんだんと顔が歪んでいき…………。

 

恭典

「カーッカッカッカッカ!いいじゃねェか!

そう来なくちゃァなァ!翔クンよォ!」

 

ただ楽しそうに笑っているだけだというのに今の恭典は紅魔館で闘ったフランのように、眼に映るものを全て破壊してしまいそうな圧倒的な力を感じさせる。

 

「恭典…………薄々勘付いていたんだがお前鬼なのか?」

 

豪放磊落、または大胆不敵。

そんな言葉を思わせる恭典はやはり…………。

 

恭典

「あァ、その通りだぜァ。

そーゆーオマエは吸血鬼だろォ?根拠はねェがなンとなくわかるぜェ。」

 

お互いに探るような視線を交わす俺達だったが。

 

「無粋だな…………お察しの通り俺は吸血鬼だ。

だが種族なんて気にするべき事じゃないな…………」

 

恭典

「そォともぶつかったら存分にやり合うだけの話だァ」

 

そうしてまた俺達は笑い合い、健闘を誓いこの日は解散となった。

負けられない理由が一つ増えてしまったな。




今回は作者にしてはシリアス(なつもりの).回でした
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。