決勝当日。
昨日の傷は完全とは言えないまでも動きに支障が出ないレベルまで回復してくれた。
翔
「よし、大丈夫だな…………戦える!」
最初は翔子と紅零に、地底のおもてなしとやらをプレゼントするために参加した大会だったが恭典と友人になり、目的の一つに恭典と当たることが追加された。
そして昨日の恭典の戦いを見て、底知れないと怖がる気持ちと、奴を相手に戦えるのかという気持ちが湧き上がり、勝ってみたいとさえ思い始めてしまった。
紅零から喧嘩と聞かされた時は下品な大会だと思ったが、恭典のギリギリの戦いを楽しみたいという向上心や因縁をつけてきた欠鬼が大会前にしっかりとした戦線布告を行うといった喧嘩にもちゃんとした信念があると知った。
「赤コーナー、様々な戦闘スタイルを見せる趣味執事!
田村翔ーーーーーー!」
歓声に出迎えられ、リングに上がる。
翔
「おおおおおおおおお!!」
歓声のお礼に吠えて見せると今度は歓声に拍手と指笛までかえってきた。
「青コーナー、大会会長の刺客、ギリギリの喧嘩を望む男!
和泉恭典ーーーーーーーーー!」
恭典
「よォ、翔。
上がって来ると信じてたぜェ!楽しませてくれよォ!」
今にも仕掛けてきそうな恭典に負けじと視線を向ける。
翔
「ああ!最高な喧嘩にしようぜ!」
「決勝戦…………始めぃ!」
合図と同時に走り出し、勢いを乗せて右手拳を繰り出す。
恭典
「ッ⁉︎」
スウェイで拳を躱した恭典が同じように拳で反撃してくる。
翔
「ふっ!」
左の掌で恭典の拳を弾く、体制を立て直しながら距離を取り、すぐに地面を蹴り飛ばし恭典に突撃を仕掛ける。
恭典
「セイッ!」
前蹴りをステップで躱し、ジャブを放つが簡単に防がれる。
恭典
「シッ!」
回し蹴りを腕を交差させて受ける。
翔
「ぐっ…………!」
骨まで響く蹴りに歯を食いしばる。
あまりの衝撃に数歩後退させられてしまう。
翔
「…………痛ってぇ。
どんな怪力してんだよお前。」
ビリビリと痺れる腕をさすりながら悪態をついて見せる。
恭典
「オマエだって似たよォなモンだろォが、吸血鬼の中でも怪力な方だろ?」
獰猛な笑みを浮かべてながら恭典は軽くファイティングポーズを取る。
恭典
「本気で来ていいんだぜェ、翔。」
翔
「余り期待するとガッカリするかもしれんぞ?」
軽口を叩きながらも、お互いに睨み合う。
恭典
「構えねェのか?」
翔
「お構いなく、これが一番やりやすいんだよ。」
同時に駆け出す。
そこからは思考を置いていく戦いだった、頭で考えるより早く体が動いた。
先に集中力を乱したら打たれる…………!