これは夢だ。
と、はっきりわかる夢を見る事はままあることだ。
今、俺はそれを見ている。
どこかの村みたいな場所を俯瞰で見ている。
「じいちゃん!行ってくる!」
元気な少年の声と共に場面は変わり、こじんまりとしている店のような家屋から少年が飛び出して駆けて行く。
年齢は15くらいだろうか?
パンの山程入ったカゴをぶら下げているその少年は俺に瓜二つだった。
「お、皆ー!パン売りの翔が来たぞー!」
若い男が言うと、多くの人達が広場のようなところに集まる。
どうやらあの少年名前まで俺と同じらしい。
翔(?)
「おはよう皆!今日のパンが焼けたぞー!」
少年が声を上げると沢山の人達が少年の周りに集まる。
「翔、パン二つくれ。」
「こっちには三つちょうだい!」
「今日のオススメどれー?」
翔(?)
「一度に言われてもわからねーよ!
並んでくれー!」
どうやらこの少年はパン屋らしい。
次々と客を捌いてゆき、人が周りに居なくなった頃には面白いくらいにパンが入っていたカゴにはシンプルなパンが三つ程残っていた。
翔(?)
「ふむ、今日の昼飯は三つか…………売れるのはありがたいが昼飯が少ないのが何とも…………」
文句を言っているようだが少年は満足、と言うよりは幸せそうにはにかみながらあまりのパンを頬張っていた
しばらくして少年がパン屋に帰ってくると人の良さそうなおじいさんが少年を出迎えた。
「お疲れ様、お昼ごはんのパンは足りたか?」
翔(?)
「腹八分といったとこかな。
じいちゃんが作ってくれるならまだまだ入るが」
頭を撫でるおじいさんのされるがまま弾けるような笑顔を見せる少年におじいさんは満足気に頷いた。
「そうか、そう言うと思って少しだが作っておいたよ、まだ温かいから、冷めないうちに食べなさい」
翔(?)
「ありがとうじいちゃん!」
そこで場面は変わり、教会のような場所を、またも俯瞰で見ている。
夜遅いようで、暗い教会に差し込む月明かりが跪く女性を照らしていた。
こちらは翔子に瓜二つだ。
翔子(?)
「私は…………もう誰の血も吸いたくない!
神様…………神様…………!」
泣きながら誰もいない教会で女神の像にひたすらに祈りを捧げる女性に声を掛ける青年がいた…………俺に瓜二つのパン屋にいた少年が成長した姿だ。
と何の根拠も無く思った。
翔(?)
「なぁ、あんた…………吸血鬼、なのか?」
突然話しかけられた女性は驚き、尻餅をついたまま後ずさりする。
目からは涙がこぼれ落ち、恐怖にも似た表情を見せる。
翔子(?)
「いや…………来ないで!
来ないで!」
女性の言葉を無視して青年が近づき、女性を抱きしめる。
翔(?)
「事情は…………聞いてしまった。
盗み聞きするつもりはなかったんだが…………。
突然で悪いがあんたに惚れた、俺に協力させてくれ!
あんたの力になりたいんだ!」
そこで俺の視界は暗転した…………。
翔が見た夢の正体とは?